弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2007年5月 2日

パチンコの経済学

著者:佐藤 仁、出版社:東洋経済新報社
 日本の食品スーパーは1万8500店。パチンコ店は1万5000店。えーっ、多い。パチンコ業界は30万人が働く巨大な産業。
 先日、トイレ休憩で久しぶりにパチンコ店に入りました。私も司法試験の受験生だった学生のころは、図書館へ行く前にちょっと寄り道してパチンコ店に入り、たまには景品でチョコレートなんかをもって帰って友だちにプレゼントしていました。いまのパチンコ店は、トイレなんてピカピカ、きれい過ぎるほどです。スロットマシーンの前にはずらり老若男女が並んで坐っていました。空いている席がないほど埋まって、みんな真剣に盤面を見つめています。ただ、久しぶりにパチンコ店に入ると、あの騒音がたまりません。頭がおかしそうになって早々と退散しました。
 パチンコ業界の年間売上は28兆7000億円。パチンコ人口は1710万人。パチンコ機とパチスロ機とを合わせて490万台の遊技機がある。
 パチンコホール企業数は7000社、遊技機メーカーは50社。日本人の一年間のレジャー支出は80兆900億円なので、パチンコの占める比率は36%。
 パチプロは、一般に月10〜20万円、パチスロで20〜30万円かせぐのが可能だ。それには時間がたっぷりあり、遊技に関する情報収集に熱心で、フットワーク軽く動けることが条件だ。ただし、長くしていると健康を損ない、ひいては人格も失いかねない。うむむ、よく分かる指摘です。
 現在のパチンコ機は長くて1年、短ければ2〜3ヶ月で撤去されるという短期の入れ替えサイクルになっている。お客はピーク時の3150万人から、半減している。しかし、売上は減っていない。単位時間あたりの消費金額を増やして粗利益の絶対額を維持しようとしている。
パチンコ人口は10年後(2015年)は1270万人となり74%に減り、15年後(2020年)には1130万人と66%になると予測されている。その大きな理由は加齢現象。なるほど、パチンコが面白いといっても、最近の若者を大々的に呼びこめるものではないということなのでしょうね。
 日本のパチンコは面白すぎるのでギャンブル依存症の温床となっている。
 ひゃあー、そうだったんですか。知りませんでした。借金まみれになった人のうち、少なくない人々が、このギャンブル依存症です。なかなか抜け出せない病気です。でも、決してあきらめてはいけません。

2007年4月27日

空飛ぶタイヤ

著者:池井戸 潤、出版社:実業之日本社
 欠陥車のリコール隠しの罪と罰をテーマとした面白い小説でした。なかなか読ませます。たいしたものです。私も、いつかはこんな小説を書いてみたいと思ったものでした。次はどうなるのだろうと、ぐいぐい魅きつけられてしまうのです。見習いたい筆力です。
 小さな運送会社を経営している。ある日、従業員がトラックを運転していてブレーキを踏んだ拍子にタイヤが飛ぶんです。歩道を歩いていた人にぶつかって即死させてしまった。なんということ・・・。
 トラックの整備不良が、まず疑われた。しかし、整備不良でないことに運送会社の社長は確信をもった。では、何が原因か?トラック自体の欠陥ではないのか。でも、どうやってそれを立証できるのか。
 2004年6月、公益通報者保護法が成立し、内部告発した社員は保護されることになった。しかし、現実は、そう甘いものではない。次のようなセリフが登場します。
 内部告発したから解雇できたのは既に過去の話だ。解雇するのなら別な理由がいる。だから、本人にしてみれば許容できそうもないところへ異動させるんだ。必ず戦意喪失して退職を決意するような仕事に移すんだ。ただし、駐車場の整理係や受付などというあからさまなものはダメ。降格も許されない。もっとさりげないところへ、だ。
 退職の理由は、あくまで自己都合でなければいけない。
 なーるほど、ですね。この本でも、会社の「欠陥」隠しは徹底していて、警察も容易に、その尻尾をつかむことができませんでした。でも、そのとき勇気ある内部告発社員が登場してきたのです。逆にいうと、そんな勇気ある社員が一人でもいなかったら、真相は闇の中に隠されたまま、被害者となった人々も、ユーザーもみんな泣き寝入りせざるをえなかったというわけです。背筋がゾクゾクしてきますよね。いやな世の中です。まだまだ会社第一と考える会社人間が圧倒的なんでしょうね。

2007年4月24日

我、自衛隊を愛す。故に、憲法9条を守る

著者:防衛省元幹部3人、出版社:かもがわ出版
 防衛庁は、いつのまにか防衛省に昇格してしまいました。教育訓練局長・小池清彦、官房長・竹岡勝美、政務次官・箕輪登の3氏が憲法9条の大切さを説いた貴重な本です。多くの日本の国民に読まれるべき本だと思います。150頁ほどの薄くて軽い本です(定価1400円)が、内容はぐっと厚味のある重たい本です。
 憲法9条改正のねらいには、自衛隊の海外派兵を恒常化することにではなく、海外派兵の体制づくりにある。このことをぜひ知ってほしい。本の前書きで強調されています。まったく同感です。
 もし平和憲法がなかったら、日本は朝鮮戦争(1950〜1953年)にも、ベトナム戦争(1965〜1975年)にも、湾岸戦争(1991年)にも、世界のほとんどの戦争に参加させられていて、今ごろは徴兵制がしかれ、日本人は海外で血を流し続けていたはずだ。平和憲法のおかげで、日本人は海外で血を流さずにすんでいると実感している。
 日本の自衛隊がいまイラクへ行っているが、これは国際貢献ではなく、対米貢献である。対米貢献を国際貢献と言っているだけ。そんな対米貢献で、日本人の命を落としてはならない。
 自衛隊がイラクでやっている兵站(へいたん)補給の支援というのは、戦闘行為のなかで一番大切な部分だ。
 硫黄島に送られた2万人の日本軍将兵のうち半ばの1万人が死傷したとき、なぜ大本営は名誉の降伏を許さなかったのか。もし許されていたら、残る1万人は、戦後の日本で愛する家族ともども平和な人生を享受できたはずだ。
 日本の有事とは、在日米軍を含むアメリカ軍と日本周辺国家との戦争に巻きこまれる波及有事のみ。万一にもアメリカ軍が一方的に北朝鮮を崩壊させようとしたとき、北朝鮮の200基のノドン・ミサイルが日本海沿岸に濫立する十数基の原子力発電所を爆破するかもしれない。たしかにその危険はあります。でも、そうならないようにするのが政治ですよね。
 イラクに派遣された自衛隊は、武力行使が禁じられていることを理解され、オランダ軍やイギリス軍が心温かく守ってくれた。ところが、憲法9条が改正されると、自衛隊全体が軍隊そのものに変質する。
 後藤田正晴氏は、「アリの一穴」を恐れ、猪木正道・元防衛大学校長も「私は護憲論者である。なぜかというと、これをいじりだしたら、とてつもなく右傾化してしまう。日本の軍国主義的性質は本当に恐い」と警告している。
 戦後60年、日本が一人の外国人兵も殺さず、一人の自衛隊も殺されなかったという、世界に誇る名誉の看板は取りはずすべきではない。
 いやあ、やっぱり憲法9条2項は絶対に守るべきです。
 福岡ではイラクへ自衛隊派遣の差し止め裁判が起きていませんが、これは残念なことです。自覚したそれぞれの人々が、各々のやりやすいところで、憲法9条(とりわけ2項)を残したいと連携しあっています。あなたもぜひ、その輪に加わってください。

2007年4月20日

日本の裏金(下)

著者:古川利明、出版社:第三書館
 下巻は検察・警察編です。
 検察庁には調査活動費、「調活」という裏金がある。これは戦前の司法省(思想検察)の機密費をダイレクトに受け継いでいる。検察庁ではナンバー2の次席検事が毎月、裏帳簿の決裁をする。しかし、「調活」はあくまでトップのポケットマネーである。
 調活がなくなったら、検事正になりたいなんて言うヤツなどいなくなる。
 これは佐々木成夫・大阪高検検事長が大阪地検の検事正だったとき、三井環元大阪高検公安部長に言った言葉だそうです。
 加納駿亮元大阪地検検事正は、740万円の調活を受けとった直後の2000年3月、芦屋で5000万円ほどの自宅マンションを購入した。福岡高検の検事長にもなりましたが、今は大阪で弁護士です。大阪府の裏金問題についての調査委員会のメンバーにもなりました。自ら裏金を手にしていた人物が、どんな調査をするのか、マスコミが話題にしました。そうですよね、身につまされるところがないから引き受けたということでしょうが、本当に大丈夫ですか?
 五十嵐横浜地検検事正が1年間に70回もゴルフコースに出れたのも、この調活費のおかげ。原田明夫元検事総長が法務事務次官のとき、銀座の高級クラブに頻繁に出入りしていたのも調活費によるもの。
 警備公安警察の裏金はすごい。他の捜査部門より捜査費がふんだんに予算計上されている。警備公安部門では、幹部以上になると、途中でピンハネできる。それこそ「濡れ手に粟」のような裏金の恩恵に与ることができる。そのうえ、大企業からもみかじめ料みたいな形でお金をとっている。だから、警備公安では、課長クラスでも愛人がもてる。共産党を捜査対象としているからだ。いわば共産党のおかげで、警察庁長官以下、警察幹部は裏金の恩恵にあずかっている。
 警視庁の本庁警備部の筆頭課ともなると、毎月、管理する裏金の総額が億円に達する。
 警察組織での裏金使途の大半は幹部の私的流用である。
 警察幹部には、毎月、茶封筒でヤミ手当が裏金から出る。大体の相場は、署長は本部課長で5〜7万円、本部の部長クラスで10〜13万円。県警本部長に対しては、月100万円という見方もある。
 国松孝次警察庁長官が狙撃された自宅マンションの購入費は1億円のはず。これを担保設定もせず国松長官は購入している。借金せずに1億円の物件を買えたということは、それなりの資産(貯え)があったわけである。それが裏金だった。この狙撃事件は今もって解明されていませんが、国松元長官が即金で1億円のマンションを購入した点も追及したら、たしかに隠された面白い事実が出てくるのでしょうね。でも、今の日本のマスコミ(大新聞やテレビ局)に、そんな勇気のあるところはありますかね。残念ながらないでしょうね。

2007年4月18日

労働弁護士の事件ノート

著者:東京法律事務所、出版社:青木書店
 会社の経営が苦しくなってきたことを理由として人員整理がはじまり、労働者が解雇されることがあります。そのとき、その解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえるためには、次の整理解雇の4要件をみたす必要があります。これは、一応、確立した判例になっています。
 ? 人員削減の必要性があること
 ? 解雇を回避する努力を尽くしたこと
 ? 解雇される対象者の選定に合理性があること
 ? 解雇手続きが相当であること
 これらの要件をみたしていないときには、その解雇は権利濫用として無効となります。
 ある事件では、会社が解雇通告した同じ月に、次年度に20人の新規雇用を計画していることを、その解雇対象者がインターネットで見つけて、それが決定打となって解雇は無効となった。企業は、投資家への情報開示のために労働者には見せない財務情報をホームページに堂々と公開していることがある。なーるほど、こういう手もあったのですね。
 「辞めろ、会社を。お前、いらん。迷惑かけてまで。どういう親や、顔も見たくない。辞表もってこい、辞表を」
 「会社の都合を考えていないだろう。そんな考えだったらいらんちゅうの。辞めてくれや、言うの。お前に払っている給料で2人雇えるんだからな。明日から会社に来んでもええで」
 これは損保会社で40代半ばの支店長が、50代前半の労働者を辞めさせようとして罵倒したときの言葉です。罵倒された労働者は録音テープを隠し持っていました。これが解雇無効につながりました。時と場合によって、相手の承諾なしでとった録音テープでも、裁判の証拠となりうるのです。
 この事件では勝利的和解が成立し、解雇された労働者は職場に復帰することができました。逆に、さんざん罵倒していた支店長のほうが退職してしまいました。
 労働者派遣が大流行しています。職場にいろんな種類の労働者がいて、団結することもできない労働条件のもとで、本当に生産効率は上がっているのでしょうか。私には疑問です。
 労働者派遣とは、派遣元である事業主と、労働契約を締結している者が、派遣元事業主との間で労働者派遣契約を締結した派遣先事業主の指揮命令にしたがって派遣先の事業場で就労する働き方のこと。派遣社員は、雇用する事業主と、指揮命令する事業主とが違うところに特徴がある。
 業務委託とは、一定の業務処理の委託を受けて、その業務を遂行し、それに対する報酬が支払われる働き方をいう。
 業務請負は、一定の仕事の完成を約束して、その仕事の完成に対して報酬が支払われる働き方をいう。委託も請負も、仕事の方法について指揮命令を受けないで業務を処理するのが建前。たとえば、請負では、仕事をする人は、注文主の指揮命令は受けず、求められるのは仕事の完成という結果のみ。
 首都圏青年ユニオン(労組)では、派遣労働者を組織して団体交渉を行った場合、派遣元企業から解雇を撤回させて復職させ、新しい派遣先を紹介させる、新しい派遣先が決まるまでの給料は派遣元企業が支払う、という内容で解決している例がある。
 さすがに労働事件専門の弁護士をたくさんかかえた東京の法律事務所がつくった本です。いろいろ大変勉強になりました。福岡では労働裁判は激減したままの状況です。

2007年4月17日

ザ・取材

著者:関口孝夫、出版社:華雪舎
 日本共産党の機関誌である赤旗編集局長をつとめたベテラン記者が新米記者を前に語った講話が本になりました。さすが数々のスクープをものにした敏腕記者の話だけに、ついつい耳を傾けさせるものがあります。
 戦後の日本の利権史に名を残す政治家の双璧は、河野一郎(河野洋平の父)と田中角栄だ。河野一郎は農林大臣として国有林処分に、田中角栄は大蔵大臣として国有地処分にそれぞれ辣腕を振るった。60年代、田中角栄が国有地処分で得た利権はざっと100億円と見積もられ、これを小佐野賢治と2人で折半したという「通説」があった。田中角栄が大蔵大臣のときの国有地払い下げは群を抜いていた。
 田中角栄は鳥屋野潟の湖底地を買い占めた。その総面積は98ヘクタール。そのうちの干田化した13ヘクタールを、政治力で新潟県・市に買い値の2倍で売りつけた。これは買収総面積に相当する額だった。だから、残った湖底地85ヘクタールはただで手に入れたも同然。ところが、上越新幹線の開通で、その湖底地は新幹線駅前に位置するため、地価は一気に150億円へと高騰した。これを取材してまわったのです。
 著者に会うのを渋ったキーマンを取材したとき、著者はキーマンに次のように言った。
 「きょうは話を聞きに来たのではなく、私の話を聞いてもらいたいと思って来た。この問題については私なりに調べ、輪郭をとらえているつもりだ。ただ、この問題の真相をはじめて世に問うことになるだけに、活字にするにあたっては正確を期したいし、大げさな言い方をすれば歴史への責任もある。立場があるというのなら、私がしゃべる調査結果を聞いて、不正確なところを指摘してくれるだけでもいい」
 さすがにこのように前置きされると、そのキーマンは、「そこは違う」「そう、そのとおり」と合いの手をいれはじめ、ついには、「ワタシが直接しゃべったということでなければ、書いてもいい。真相はこうなんだ」と語り出した。
 田中角栄にしてやられた。あいつの方が一枚も二枚も上手だった。これがキーマンの弁だったというのです。さすが、すごい取材力ですね。
 警察の手がける汚職事件は、地方政界の市長、せいぜい地方議員、地方公務員規模の贈収賄事件どまりが相場。高級公務員がらみの事件は皆無ではないが、あくまで例外。
 警察の汚職捜査は、どちらかというと上に伸びず、下に伸びる傾向にある。
 警察庁長官などをつとめた警察官僚が次々と自民党の国会議員に転身する光景に象徴されるように、自民党の一党支配が長期にわたった下で、日本の警察組織が長年にわたり政権与党へ形づくってきた組織と人脈構造癒着の産物である。いいかえれば、支配する政治勢力にもっとも左右されやすい番犬のような組織ともいえる。なーるほど、ですね。
 新聞記者の心得。
○ 拾ってきたものを何もかも原稿用紙の上にぶちまけようとするな。何を拾うかではなく、何を捨てるか、だ。
○ 前文に力を注げ。ここに全体の3分の2の精力を注ぎこめ。そこで苦しめば、後は楽だ。前文の中に、整理記者が見出しに拾いたくなるような珠玉のことばを入れろ。
○ 120行以内で意を尽くせる記事しろ。それがスピード時代の読者の一読判断の基準だ。それを1時間で書きあげろ。
○ 筆がすすまないのは事実が少ないからだ。事実の薄さを修飾語や形容詞でごまかそうとするな。
○ 一つの記事に同じ表現を2度つかうな。文語調のもったいぶった表現はつかうな。接続詞はいらない。記事が短文の積み重ねだ。
 体験にもとづく、なかなか含蓄ふかい講話でした。弁護士にとっても、現場に足を運んだうえで準備書面を書くのは大切なことです。読む人への説得力が格段に違います。

2007年4月13日

日本の裏金(上)

著者:古川利明、出版社:第三書館
 首相官邸・外務省編とある上巻です。内閣の機密費のルーツは、皇室の内帑金(ないどきん)にあるということを初めて知りました。
 敗戦時点(1945年)、皇室の財産は当時のお金で37億円を有していた。三井や三菱でも3〜5億円であったから、その10倍以上だったわけである。内閣機密費は、天皇家から下賜されていた。そして、この機密費は会計検査院の検査の対象外であることが法で明記されていた。
 戦前の機密費は、内閣と外務省については戦後、予算名目上は報償費と交際費とに分割されて今日まで命脈を保っている。
 2000年度予算における機密費の額は、外務省56億円、内閣官房16億円、防衛庁2億円、警察庁1億円。
 官房長官のつかう毎月1億円の官房機密費は領収書が一切いらない。しかし、この月1億円の機密費というのも、実はオモテの予算枠にすぎない。いわばオフィシャルな裏金である。すごいというか、ひどい話です。みんな血税なんですよ、これって。
 戦後、ある時期まで、自民党政権を支えていたのは、CIA資金をはじめとするアメリカからの財政援助だった。CIAは、1955年に自民党が結成されたとき資金援助をしたが、その後も年間100〜150万ドルを援助していた。池田内閣のとき、アメリカからの資金提供を断ったら、本当にお金がこなくなった。
 1968年11月の沖縄主席の初の公選のとき、CIAは、72万ドルを東京の自民党本部を経由して、沖縄自民党副総裁に流れた。ところが、それだけの裏金を投入しても、革新の屋良朝苗が3万票差で当選した。
 消費税を導入するときにも、この官房機密費5億円が動いている。公明党と民社党を抱きこんだのだ。道理で、今でも自公政権なんですね。
 1998年11月投票の沖縄県知事選のときには、現知事陣営でかかった選挙費用のトータル4〜5億円のうち、自民党から来た分が2億円から3億円であり、うち、官房機密費からの分が1億円をこえていたという。
 ホント、世の中いやになってしまう話のオンパレードです。それにしても、街中をメルセデス・ベンツに乗っている人が本当に多いですね。どうやってそんなにもうかっているのでしょうか。裏金のおこぼれにあずかった人はどれだけいるのでしょう。選挙を通じて田舎にも少しは流れてきているのでしょうか・・・。

2007年4月11日

日本一ベンツを売る男

著者:前島太一、出版社:グラフ社
 この本を読むと、日本は本当に格差社会になってしまったことが実感できます。
 今、六本木や麻布の交差点で信号待ちしていると、まわりの車がメルセデスだらけということがある。メルセデスは、もう大衆車だ。かつては、メルセデスに乗っているというのはステータス・シンボルだった。家にプールがあったり、クルーザーをもっていると同じ感覚。
 メルセデスというのはベンツのことです。ヨーロッパでは日本と違って、ベンツと呼ばずにメルセデスと言います。
 この本で紹介されているベンツのセールスマン吉田満は、10数年にわたって年間に100台以上のベンツを売り続けてきた。しかも、ベンツのなかでも1000万円以上の高級車ばかり。1ヶ月に22台(1996年)、年間に160台(2000年)という記録を出している。セールスを始めて20年間に、ベンツの累計販売台数は2000台をこえる。すごーい。信じられない台数です。
 吉田満のお客の7〜8割はリピーター。吉田満のお客は、メルセデスを妻や恋人へのプレゼントにすることが多い。
 吉田満のケータイの1日の着信数は120件。ケータイ通話料は月4〜5万円。多いときは月17万円だった。吉田満の頭のなかに、お客の電話番号が150件も入っている。ケータイの電話帳を見ることなく、電話がかけられる。これも記憶力を訓練した。
 お客と、ベンツの値段を話はあまりしない。2000万円のベンツを買う客は、吉田満のすすめるまま車を買い、お金を払う。ここには2000万円が2万円ほどの感覚で動いている世界があるわけです。
 発注から納車まで、最短4日。普通なら、商談に1週間、納車まで1ヶ月というのが常識なのに、この早さ。吉田満はお客のオーダーをきく前に自分の責任で事前にオーダーしておく。商談の勝負は一度だけ。会った瞬間、相手の目を見ただけで買うかどうか、ある程度わかる。1〜2分でも会話をすれば、買うかどうかの判断はつく。
 一流のサービスとは、痒いところに手が届くサービスではなく、痒くなりそうなところをかいてやること。お客がほしいと求める前に、その要望に完璧にこたえた車を仕入れておいて、届ける。
 洋服は自分のスタイルを活かすための必須アイテム。TPOを考えたうえで、少しでも客の予想をこえたものを提供する。これがサプライズ・サービスだ。
 メルセデスを買うというのは、満足を買っているわけなので、売る人間(セールスマン)も大切なファクターになっている。だからスーツはいわば戦闘服。こいつから買ったら安心かも、と分かってもらいやすいから、良い服を着ている。客に対して、どれだけ印象深い人間になれるか、それだけを常に考える。客から一目置かれる存在になる。そのためには自分を背伸びさせても自己投資する。
 メルセデスというクルマは、頭を下げてまでして売るような商品ではない。うーん、そうなんですか・・・。ちっとも知りませんでした。
 日本もアメリカと同じ恐ろしい世界になってしまいましたね・・・。

2007年4月 9日

アガワとダンの幸せになるためのワイン修業

著者:阿川佐和子、出版社:幻冬舎
 いつものことながら、この二人のおばさん(おっと失礼しました)、二人の妙齢の佳人の語り口には、ついつい引きこまれてしまいます。
 このところあまり美味しいワインにめぐりあっていませんでしたが、この本を読んで、またまたボルドーワイン(サンテミリオンに行ってきましたので・・・)を、いやブルゴーニュワイン(ボーヌにも行って来ましたので・・・)を、飲んでみたくなりました。
 ボルドーは熟成したときの優雅さとしなやかさが女性的なのでワインの女王として、ブルゴーニュはきっぱりとした風味の強さや味わいが男性的なのでワインの王と言われている。
 ところが、私には、いつも反対のように思えてなりません。ブルゴーニュのワインの方が優雅でしなやかだし、色あいも深味のある赤のような気がしてなりません。初めてブルゴーニュをボーヌで飲んだときの初印象が今も尾を引いているのでしょうね。ボーヌのホテルで食前酒として飲んだキールの美味しさは今も忘れられません。
 苦い香り、甘い香り、酸っぱい香りというありきたりの表現は、ソムリエには禁止されている。そうなんですよね。それじゃあ、素人そのままですからね。じゃあ、何と言ったらいいのでしょう。
 まずはグラスを回さずに匂いを嗅ぐ。空気を入れると、発酵が熟成からくる香りで見えにくくなる。果実からくる本来の香りを嗅ぐためにはグラスを回さないほうがいい。
 そのあとグラスを回し、空気を入れた香りを嗅ぐ。こうやって二段階で香りを楽しむ。
 ふむふむ、グラスをすぐに回すのではなく、回す前に匂いを嗅いでみるんですかー・・・。知りませんでしたね。
 ワインは、熟成がすすむと、果実香が少なくなり、ミネラル、枯葉、キノコ、土になっていく。渋味がとれて、溶けたときに、腐葉土のような香りが出てくる。
 熟成してくると、タンニンは減ってきて、今度はグリセリンのねっとりした感じが出てくる。酸味と渋味のバランスが少し落ちて、アルコールのもっているボリューム感が残る。それがコクにつながる。
 なるほどなるほど、このように表現するのですね。
 白ワインはキリリとした感じがあるが、これはリンゴ酸のせい。青リンゴやレモンなどにも含まれる酸味と同じ成分がブドウの中にも含まれている。しかし、赤ワインには含まれていない。
 おいしいシャンパーニュには一つの原則がある。口の中にいれた瞬間は元気のいいクリーミーな泡がわっと広がるけれど、喉を通っていくときには泡が溶けてやさしい味わいになる。
 イタリアワインには土壌の土臭みがある。クリーンなんだけど、必ず土壌からくる何かの香りがあって、酸味が多少ある。それがイタリアワインの基本。タンニン、土臭さ、ほどよい酸味。最初に腐葉土の香りを楽しみ、飲むと酸味がちょっとくるブルゴーニュ系、そして最後に黒胡椒のような刺激がある。
 ワイン好きは違う。ワイン好きは、いつも前を向いている。いつ、どんな機会に、あのワインを飲もうかって、ワクワクしている。
 うーん、いい言葉ですね。私もいつも前向きに生きていきたいと思っています。
 この本に登場してくるソムリエが、長崎出身、熊本出身(2人)、福岡出身と、半数も九州の人なのにも驚きました。偶然のことなんでしょうが・・・。
 私はワインは赤と決めています。あの渋味というかコクのある色あいにもほれこんでいます。白をいただいたら、知りあいに譲ってしまいます。なんたってワインは赤です。

2007年3月30日

決定で儲かる会社をつくりなさい

著者:小山 昇、出版社:河出書房新社
 私と同世代、つまり団塊世代の社長が自分の実践にもとづいて書いたビジネス書です。なかなか説得力があります。
 お客様アンケートには、普通を除き、大変よい、悪い、大変悪いにする。普通があると多くのお客がこれにマルをつける。それではアンケートをとる意味がない。なーるほど、ですね。アンケート項目は少ないほうがいいわけですので、これから私も普通はなくします。
 やりたいことを決めるより、やらないことを決めると、うまくいく。やらないことを先に決める。仕事でも遊びでも同じ。
 なーるほど、ですね。実は、私も同じです。カラオケしない、ゴルフしない、テレビは見ない、二次会に行かない。こうやって自分の時間を確保しています。
 接待は、するのもされるのも基本は新宿で、かつ自分の行きつけの店とする。支払いは先方もちでも。店に喜ばれるのは自分。社員がお客様を接待するときには先方の行きつけの店で、ボトルの2本でもお客様の名前で入れるようにする。そうすると喜ばれる。お客様の喜ぶところにお金をつかうのが接待の基本。
 ふむふむ、なるほど、そういうことなんですかー・・・。
 経理担当者と社長の違いは何か。経理は正確でなければいけないが、社長はアバウトでいい。その代わり早く知ることが大切だ。そうだったんですか。そう言われたら、そうですよね。
 支払手形は発行しない。受取手形もダメ。手形ほど怖いものはない。会社にとって、手形は麻薬以外の何者でもない。
 この本を読んで大変勉強になったのは、銀行とのつきあいの点です。私も長いあいだ銀行と取引しているのですが、地元の信用金庫などは私の事務所に対して一応の敬意を払ってくれますが、都市銀行となると、ハナにもひっかけられません。いつも悔しい思いをしています。
 銀行から融資を受け、毎月きちんと返済する実績をつくることは、経営の安定をはかるうえで、とくに大切なこと。昨年、複数の銀行から融資を受けた。どうしてもお金が必要だったというのではない。借入金額のキャパシティを広げるためのこと。金利が下がったので、月々の返済金利額を固定して、借入額を増やした。
 銀行は常に過去の実績に対して融資する。支店長が会社にやってくるのは、挨拶に名を借りた融資のための基礎情報の収集のため。社内の雰囲気が明るいか、社員は元気そうか、などを見ている。たとえば、赤字企業の社員は一般に来客に挨拶しないものだ。
 こちらから、毎月、銀行に出かけていって支店長に挨拶する。毎月の定期訪問で注意深く観察を積み重ねると、次第に銀行の状況も察しがつくようになる。
 銀行訪問は、午前中がいい。午後2時以降は、銀行は忙しい。また、月末や月初め、そして5日、10日は外す。一行につき1回20分まで。銀行に内情を話すときは、悪いことを先に話し、よいことは後に話す。人間は最後に聞いたことが印象に残るから。
 銀行からお金を借りるときには、根抵当権ではなく、抵当権で借りるほうがよい。担保は金融機関がもうけるための仕組み。ただでさえ、借り主は不利な構造だ。
 銀行は晴れの日には傘を貸す。しかし、雨の日になったら傘を返せと言い出す。銀行を自社のチェック機関にする仕組みをつくりあげる。銀行に判断を仰ぎ、自分のチェック機関にする。なにしろ銀行は同業他社をたくさん見ている。その事業が伸びるかどうか、融資しても大丈夫かどうかを常に考えている。冷静かつ客観的に判断するという点では銀行に勝るところはない。
 この会社の定着率の高さは驚異的です。2004年から2006年まで、3年間で28人の新卒社員が入社し、辞めたのはたった1人だけというのです。信じられません。
 こちらの指示に対して、即座に行動できない人はダメ。どんなに成績が優秀でも採用しない。社長と同じ価値観を共有でき、素直な人材、こんな人を採用する。優秀な人間は、とかく他人の話を聞かないもの。
 ふむふむ、なーるほど、なーるほど、いろいろ弁護士としても教えられること大でした。

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