福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

会長日記

会長日記

平成22年度会 長市 丸 信 敏(35期)

はじめに6月12日、九州地方の梅雨入りが発表されました。宮崎県での口蹄疫被害は容易に治まらず、梅雨との困難な闘いを余儀なくされることが案じられています。来る8月7日に福岡市(福岡地裁)で開催される高校生模擬裁判選手権九州大会には、宮崎県から宮崎西高校が初参加する予定です。この月報が会員の皆さまのお手元に届く頃には、口蹄疫問題が沈静化していることを、そして、宮崎県の関係者の一日も早い再起を願う次第です。先にご案内のとおり、宮崎県弁護士会(松岡茂行会長、福岡県出身)は口蹄疫被害に関するボランティアの活動を支援するため、自らも多額の義捐金を拠出したうえ、各会にも協力を呼びかけています。重ねて会員の皆さまのご協力をよろしくお願い致します。(義捐金送金口座;宮崎銀行宮崎支店(普通預金)96325「宮崎県弁護士会緊急ボランティア支援基金 会長 松岡茂行」)司法修習生の給費制維持への運動今月もまた、修習生の給費制維持運動の報告とご協力願いからです。執行部がこの取り組みを始めて分かってきたことの一つに、身近なところにいる若手弁護士のうちにも、法科大学院当時の授業料等で多額の奨学金等の負債を抱えているひとが少なくないという厳しい事実があります。でも、そういった人たちが、続くべき後輩のために先頭に立ってこの運動に取り組んでくれています。・ 天神での街頭行動(6月7日~11日)上記の5日間、毎日、昼休みの1時間、天神交差点(パルコ前)で街頭行動を行いました。連日入れ替わりで駆けつけてくれた10数名から20名ほどもの多くの会員が、梅雨入り前の強い紫外線をものともせずにビラ配り・署名集めに汗を流しました。新人・若手の会員を含めて、多くの会員が交代で次々とハンドマイクを手にして、切々と市民に訴え、理解と署名への協力を求めました。とりわけ自身や仲間の実情を訴える若手の会員の声には説得力がありました。(写真1・2)街頭行動を始める前には、この問題は、なかなか市民の皆さんにはわかりにくい問題で、容易には共感が得られないのではないかと覚悟していましたが、意外にも沢山の人に関心を払って頂き、期待以上の署名が得られました。初日の模様をTV、新聞それぞれで報じてくれた効果もあったと思いますが、それ以上に、「頑張ってください」と声をかけて署名に応じてくださる市民が少なくなかったことに表れているように、弁護士や弁護士会がこれまで努めてきた幅広い公益的な活動に対して市民の皆さんの理解や支持があったからこそだと実感しました。これからの取り組みに向けて大いに勇気が得られた思いです。ご協力頂いた会員の皆さまに、あつく感謝申し上げます。次回の街頭行動は、7月12日~16日、今回と同様に、天神交差点で昼休み(11:45~13:00)に挙行します。今回にもまして沢山の会員で辺りを埋め尽くしたいと思います。どうか、短い時間で結構ですので、ご協力をよろしくお願いします。・ 市民集会(7月31日)への参加ご協力を!給費制維持に向けて、下記の通り、市民集会を開きます。この運動のピークをこの大会に持ってきて、市民・マスコミ・国会議員に向けて最大のアピールの機会にしたいと思います。どうか、一人でも多くの会員の皆さまに、一人でも多くの連れをお誘い頂いて参加して頂きますよう、よろしくお願いします。 日時 7月31日(土) 午後3時~5時 場所 福岡市「中央市民センター」        (高等裁判所ま裏) 終了後、天神までデモ行進・ 署名協力のお願い会員の皆さまには、6月10日付で、署名用紙をお届け致しております。当会としての署名集めの目標は5万人です。お配り致した用紙は会員お一人に10枚。1枚で10人まで署名できますので、お一人で100人。会員数は870名(6/11現在)ですので、5万人の署名は決して達成困難な数字ではありません。どうか、ご家族・事務員さん・友人・知人・お客様・顧問先等々から、沢山の署名を集めて頂きますよう、よろしくお願い致します。用紙が足りない分は、コピーして頂いた用紙でも大丈夫です。定期総会・役員就任披露宴等(5月25日)5月25日には、新執行部にとっての重要行事である定期総会、役員就任披露、記念講演会が、会員の皆さまのご協力のおかげで、いずれも盛会のうちに無事終えられました。定期総会には、100名を超える会員の皆さまにご出席(本人出席)を頂き、決算・予算案はじめ、すべての議題を無事にご承認頂きました。なかでも、中小企業への積極的な法的支援を行う宣言、国選付添人制度の拡大を求める決議、司法修習費用給費制の維持を求める緊急決議という、いずれも重要な宣言・決議案は、執行部として期待していた以上の力強い賛成意見の数々に支えられて、いずれも満場一致で採択されました。これら宣言・決議については、総会終了後に直ちに会場のホテル内で開いた記者会見を経て翌朝の日刊紙数紙に報道され、当会からのメッセージの発信がいささかできたものと思っております。 総会についで開催致しました役員就任披露宴にも、210名ほどのお客様(内、一般来賓140名余)に出席を頂きました。一般来賓には、弁護士会が取り組んできている社会的活動、公益的活動の一端や、弁護士(会)の人権擁護・社会正義の実現に向けた諸活動の姿やその心意気を少しでも理解して頂きたい、司法修習生に対する給費制の維持が重要であることをご理解・ご支持頂きたいとの一念で企画し、新しい試みとして会場内でのパネル展示などの準備をさせて頂きました(写真3)。準備・運営をお手伝い頂き、また、ご出席を頂きました沢山の会員の皆さまに、心から感謝申し上げます。(なお、これらのパネルは、現在、県弁護士会館内に展示しておりますので、来館の折りにご覧下さい。)総会に先立ち開催しました記念講演会「どん底の会社よ、よみがえれ!」には、181名もの聴講者に来場頂きました。講演会では、中小企業を支援することは命を守ることに他ならないと、みずからの経験を踏まえて静かに語る講師・村松謙一弁護士(東京弁護士会)のメッセージは、感動的で、弁護士としての原点(魂)を呼び覚まされた思いでした。中小企業支援活動は、当年度執行部が掲げた最重点課題です。釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典・祝賀会(6月11日)6月11日、当会と釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典・祝賀会が福岡市内のホテルで盛大に挙行されました。式典で基調講演を頂いた九州経済調査協会の森本廣理事長の話にもその趣旨がありましたが、一口に20年と言っても、一世代が入れ替わるにも相当する年月です。この20年間の交流で取りあげられた実務協議のテーマは数え切れないほどあります。会場に参席頂いた両会の歴代の会長や執行部、国際委員会などの皆さんが釜山の旧友と親しく韓国語を交えながら会話を交わしておられる姿を拝見しますと、自分などヒヨコ同然であることを痛感しました。偶然の巡りあわせとはいえ、このような大きな節目に大事な役を任されて、光栄かつ恐縮の思いを致すとともに、この隣人との国際交流を、今後に向けて持続させ、受け継いでゆかなければと強く感じた次第です。未来を担って頂ける当会の若手会員も多数参加して頂いた2次会で、釜山のメンバーと腹蔵無く爆弾酒・カラオケに興じ得たことも有意義なひとときでした。なお、今回、釜山地方弁護士会(会員数404名)からは、実に110名(家族を含む)もの大訪問団の来訪を受けました。(当日の祝賀会は、総勢で220名もの参加者でにぎわいました。)この20周年の記念式典は、本年11月5日、釜山市においても開催予定です。このときは、当会が大訪問団をもって答礼を致す番です。国際委員会において11月5日~7日の充実した楽しい旅程を組んで頂いたうえで会員の皆さまに正式案内を差し上げる予定ですが、会員の皆さまにおかれては、あらかじめ上記日程を空けておいて頂きますよう、よろしくお願いします。国際委員会の伊達健太郎委員長、大塚芳典実行委員長ほかの皆さまには、今年2月の大連市律師協会との交流調印式・祝賀会に引き続きの大イベントのご準備、誠にお疲れ様でした。広報関連委員会等集中連絡会議(6月6日)わかりにくい会議名ですが、要は、広報関係の3委員会(広報、ホームページ、対外広報PT)と業務関係の3委員会(弁護士業務、法律相談センター運営委員会、中小企業法律支援センター)と執行部とで「半日合宿」を行ったものです。日曜日の午後!というはた迷惑な会議招集にもかかわらず、各委員会や各部会からもれなく集まって頂き、相談センターはじめ相談件数等の減少が続いている現状の認識や原因の分析、対策の協議、とりわけ対外広報の有効な在り方、これら関連委員会の連携など、熱心に意見交換しました。当会では、数年来、積極的なTV・ラジオによる業務広報を手がけてきておりますが、目下、それに留まらず、その取り組みで獲得できたパブリシティ(無料出演)枠や、新たに西日本新聞社のコラム欄(「ほう(法)!な話し」。6月4日連載開始、毎週金曜の朝刊)を沢山の委員会が手分けして執筆することとするなど、あの手この手で、弁護士会の公益活動や業務広報に努めている状況にあります。法律相談センターは、県民の皆さんが、いつでも、どこでも、だれでも、容易に司法にアクセスできるようにという、「市民の司法」を掲げて取り組んできた当会の司法改革運動のベースをなすものです。当会が県下20箇所に相談センターを展開していることは、多くの県民の方の権利擁護に大きな貢献をしてきています。私たちは、今後とも、法律相談センターの充実に努め、リーガルサービスの質を向上させる努力を不断に継続すべきと考えます。会員の皆さまの一層のご理解・ご協力を頂きたいと願う次第です。

2010年6月18日

会長日記

平成22年度    会 長 市 丸 信 敏(35期)


薫風の季節。風に乗った新緑の香りは命の息吹を感じさせてくれ、また、咲き誇る花々は心を癒し人としての優しさを取り戻させてくれるように感じます。5月12日をもって怒濤の挨拶回りに終止符を打ち(笑)、時間的には少し余裕をもって会務に向かうことができるようになりました。 司法修習生の給費制維持のための闘い  さわやかな五月晴れとなった5月16日は、本年度の新司法試験の最終日でした。その九州会場である福岡市内のビル入り口前に、夕刻、日曜日にもかかわらず当会会員10数名が結集して、試験会場からあふれ出る受験生に、ビラ配り・署名集めを致しました(写真)。司法修習生の給費制維持に向けた当会の救急対策の取り組みのスタートです。  司法修習生に対する国庫による給与・手当の支給制度(給費制)は、修習専念義務の制度的担保として、昭和22年にわが国で司法修習制度が始まって以来続いてきた制度です。給費制は、法曹一元の理念に裏打ちされた統一修習制度とあいまって、法曹の卵である司法修習生に対して法曹として求められる高い公共心、使命感を涵養することに貢献してきました。わが国の司法修習制度は、国内外からも高く評価されています。実際、修習生時代に国から給与を頂いて生活の保障を受けながら一人前の法曹になるべく大事に育てて貰ったという経験に基づく感謝の念が、その後の法曹・弁護士としての社会的・公益的諸活動の原点にあると感じておられる会員も少なくないはずです。  ところが、残念ながら、平成16年12月の裁判所法改正の結果、その給費制は廃止され、国が生活資金を貸し付ける制度(貸与制)に変更されることが決まりました。その改正法の施行日が本年11月1日に迫っています。日弁連や当会を含む全国の弁護士会は、この裁判所法の改正に反対し、給費制を存続させるよう運動を続けてきましたが、効なきまま今に至りました。  ところで、平成21年11月における日弁連調べ(回答数1528名)によれば、司法修習生(新63期生)の半数以上の人(52.8%)が貸与制の奨学金や教育ローンによる返済債務を抱えており、その平均額は318万8,000円で、1,000万円を越える人が11名もいます。こうやって、修習生が現実に多額の負債を背負っている実態、しかも、相談件数・事件数・裁判件数等々が伸び悩み、むしろ収縮傾向さえ顕著になるなど弁護士の業務基盤が伸び悩み、また、司法全体の容量の拡大も期待したところにはほど遠い状況下にあって、昨今の司法修習生が厳しい就職難にさらされている現実などを思うと、心が痛みます。  今後は、このうえ更に、給費制の廃止によって司法修習の1年間のために約300万円もの借金の上積みを余儀なくされるであろう人が相当割合に及ぶことを思うと、到底、事態を看過することはできません。  このままでは、合格率の逓減等によりただでさえ司法試験を目指す人が激減しているなか、給費制の廃止は、経済的に余裕のある人しか法曹を目指さないような社会を招きかねません。これでは、経済的に困難にある人も含めて、多様な人材を法曹界に迎え入れることを目指した司法改革の理念に反します。給費制の廃止は、司法を支える法曹全体の変質をも来しかねない、極めてゆゆしき事態なのです。  日弁連の会長に就任した宇都宮健児さんは、永年、多重債務問題、貧困問題等に取り組んできた市民派の弁護士らしく、市民の理解を得て、市民を味方にした闘いを展開してその中に勝機を見いだすとの強い決意で、司法修習費用給費制維持緊急対策本部を設置しました(4月15日の日弁連理事会)。早速、翌日の毎日新聞(朝刊)では、「金持ちしか法律家になれない?」「修習生 無給 あんまり」との見出しで、6段抜き記事で大きく取り上げました。  当会執行部としても、やっぱり最後まであきらめてはいけないとの思いを強くし、日弁連の対策本部と呼応しつつ、5月の連休中にも臨時の執行部会議を開くなどしながら、急ぎ対応を検討・準備しました。そして、5月14日の常議員会で、当会「司法修習費用給費制維持緊急対策本部」の設置が承認されたことを受けて、早速、冒頭のビラ配り等の行動に臨んだ次第です。  緊急対策本部には、60期~62期生の全員に加わって頂く等、会を挙げての取り組みとなります。5月25日の当会定期総会では、給費制の維持に向けた緊急決議を、昨年総会に引き続き、採択して頂く予定です。7月31日(土)午後3時からの市民集会(福岡市中央区の中央市民センター)には、宇都宮日弁連会長も出席します。そして、ビラ配り・署名集めなど街頭行動や、関係諸団体への協力要請、国会議員要請等々に取り組みます。9月に見込まれる参院選後の臨時国会での法改正を目指します。当会の緊急対策本部の実質責任者である本部長代行は、市民運動でならした羽田野節夫会員(司法修習委員長)です。  すでに、地元新聞でも給費制廃止の問題状況を「司法修習生「返済」ムリ」「給与廃止、11月から貸付制」「奨学金と二重苦に」などの大きな見出し、9段抜きの記事で大きく取り上げるなど(西日本新聞5月10日夕刊)、マスコミも、この問題が司法制度のありようや市民にとっても大変重要な問題であることについて、かなり理解が進みつつあります。  給費制問題は、市民のため、司法制度を守るための戦いです。最後まであきらめない!との弁護士の本領を発揮して、皆さんとともに戦いましょう。 「新人ゼミ」  今月(5月)から、新人ゼミ(正式名称は「新規登録弁護士研修支援者制度」)が始まりました。新規登録後1年以内の会員(本年度は62期生)を対象に、毎月1回(4月以降(今年は5月以降)12月まで、小分けした班単位でのゼミを開くというものです。新人研修プログラムの新メニューで、必修科目になります。新人を10人以内程度に班分けをして(福岡に5班、北九州・筑後・飯塚に各1班)、各班には、執行部や司法修習担当などの経験のある会員から講師が2名、研修委員会から幹事役の会員を1名が張り付けます。テキストには「即時(早期)独立開業マニュアル・Q&A集福岡版」「新規登録弁護士のための民事弁護実務ハンドブック」「弁護士懲戒議決事例集」を原則として使用して、1時間を講義、1時間を質疑応答や討議などにあてます。また、ゼミ終了後には懇親会(任意参加)を開きます。新たに創設された主任指導弁護士制度とも相まって、新人研修の実をあげようというものです。 司法改革による新しい法曹養成制度のもとでは、司法修習期間が1年に短縮されており、前期修習もありません。新人の質の向上を課題として指摘する声も根強くあります。しかも、司法試験の大量合格を受けて、当会でも沢山の新人を迎え入れています(当会の60期~62期の会員は合計191名)が、修習生の就職活動は困難を極め、タク弁(ソク独)、ノキ弁など、弁護士登録後も以前のように先輩弁護士の指導を十分に受けながら育っていくという環境は急速に変容しつつあります。新人弁護士に対する指導・支援や研修は、全国の弁護士会に共通する目下の重要課題です。決して大げさではなく、新人弁護士をキチッとフォローして皆で育ててゆくということは、わが弁護士制度・弁護士自治を堅守するための、大切な取り組みにほかならないのです。  会員の皆さまのご理解を頂きますとともに、ゼミの講師・幹事役の会員各位には大変なご苦労をお掛けしますが、どうかよろしくお願いします。 裁判員制度1年  昨年5月21日に施行された裁判員制度が1年を迎えます。会員の皆さまの精力的なお取り組みのおかげで、おおむね順調に推移していると理解しております。もちろん、実務的な諸課題も見えてきております。その中身は、紙幅の都合上、別稿(「会長談話」)などに譲らせて頂きます。

2010年5月18日

会長日記

平成22年度会 長 市 丸 信 敏(35期)

はじめに 「会長日記」執筆の命を受けました。元来、遅筆で、広報委員泣かせで恐縮ですが、一所懸命に責めを果たすように頑張ってみたいと思います(実は、早速、初回から大幅な期限遅れです。スミマセン!)。 今年度の重要課題については、先月号の月報(就任挨拶)で簡単ながらご披露させて頂き、また、先日も「2010(平成22)年度重点課題(執行部会務執行方針)」を会員の皆さまにお届けさせて頂いた次第ですので、会務に関するご報告は現時点ではそちらに譲らせて頂き(なお、ご高覧を頂きまして、執行部に対するご意見等、なんでも忌憚なくお寄せ頂きますようお願い致します。)、さしあたりは初心者マーク会長としての雑感を少し述べさせて頂きます。 バトンゾーン 任期が始まってまだ3週間ですが(4/21執筆時点)、すでに半年は優に過ぎたような気分です。この3月も終わりの頃、某副会長(当時はまだ「副会長予定者」)が某会合の挨拶で述べた「この2ヶ月が2年ほどにも感じます。考えてみれば、まだ任期も始まっていないのに…。」という絶句(?)に象徴されるように、準備期間も結構忙しいのです。挨拶回りの時に、弁護士会の役員の任期は全国的にも1年限りであることを弁明しますと、相手先は、大抵は驚かれたり、あきれられたりします。しかし、「1年が限界なんですよ。」と話しますと、「ハハーン」と大方は納得顔です。 私なりには、弁護士会執行部はトラックリレーの走者としてのイメージです。トラック1周を全力で駆け抜けて、次の走者にバトンリレーをする、無限にその繰り返しである、と。そうしますと、2月、3月の準備期間は、さしずめバトンゾーンです。このゾーンでバトンを受けてトップスピードまで持ってゆかねば、と自分に言い聞かせて準備にあたった積もりでした。…が、トップスピードどころか、駆け出してみますと、いかに足腰がか弱いかを早速に痛感しています。分からないことだらけです。そもそも、リレーに加わるまでのトレーニング不足が決定的に響いているようです。そんな訳で、謙遜ではなく、本当に他の執行部メンバーや常議員、各部会長、委員会の皆さん等々、会員の皆さんに支えて頂きながらの会務執行にならざるを得ませんので、どうかご支援の程を重ねてお願い致す次第です。 眠らない弁護士会 8年ぶりの執行部入りで感じていることのひとつに、弁護士会は眠らない、ということがあります。昔ですと、年度変わりの頃に委員会も一息つく、という感じでしたが、今では、すっかり様変わりをしています。いまや多くの委員会で利用されているMLでも、ほぼ24時間近くメールが飛び交っている感じがします(因みに、新執行部専用のMLだけでも、1月末頃に立ち上って以降の80日余でやりとりされたメールが早くも1200通を超えてしまいました)。 シンポジウムその他の行事が4月早々に予定されていたり、日弁連からの意見照会も年度をまたいで4月×日期限での回答を求めてくる等々。まして、この4月1日スタートした「中小企業法律支援センター」事業は、年度またぎ事業の最たるものでした。世の中全体が何かにつけスピードアップしており、日弁連や弁護士会自体が極めて短期日の即応を求められてきているこの時代、当会の常議員会も、やむなく年間23回の開催予定です(常議員の皆様、申し訳ありません)。 あいさつ廻りの苦しみと喜びと (あいさつ廻りの実態) 新執行部にとって、任期中(任期前を含めて)でもっとも忙しく肉体的にもつらいのは、おそらく、執行部立ち上げの準備と就任の挨拶回りが重なるこの時期です。今年度執行部は、初日(3月23日)の県知事、県警本部長などへの訪問から始まって、日程が許す限りは終日を費やして挨拶回りに努めてきました(実は、このスケジュールの調整に追われる井上・吉野の両事務局長がもっとも大変です!)。それでも常議員会の日や執行部会議の日、日弁連理事会出席で留守の日などは予定が組めず、結局、4月21日までの約1ヶ月間で延べ14、5日間ほどしか動けませんでした。しかも、4月に入ってからは第1回委員会が目白押しで始まり、その開始時刻までには会館に戻るように努めましたので、どうしても1日に回ることのできる訪問先数は限られてしまいます。 主な訪問先としては、裁判所・法務検察関係、自治体関係(首長さんや消費者センター)、社協など公的福祉団体、各種経済団体、金融機関、主要企業、政党、労働団体、マスコミ各社、専門職団体、法科大学院等々、約150~160箇所が目標です(4/21現在で140箇所程度の訪問を終えました)。今年は、訪問先を絞り込む作業の一方で、中小企業支援を重点課題に掲げさせて頂いておる関係上、各種中小企業団体や金融機関、各地の商工会議所等10箇所以上を新規の訪問先に加えました。その訪問先の示唆・紹介で新たな訪問先を加えたりしたことも幾度かありました。実は、訪問できていない大事なところがまだありますので、4月末頃までは追加して動き回ります。 (伝統の重み) 最近、幾人かの他会会長と話をする機会がありましたが、他会では、福岡県弁のようには挨拶回りをしていないところが多いようです。知る限りでは、ほとんどが法曹関係者先だけで済ませておられるようです。福岡が100数十箇所に回っていると話しますと一様にビックリされます。そして、名刺交換だけではなく、きちんと15分から20分程度(状況によって30分近く)は話をしている、と話しますと、2度ビックリされます。福岡のやり方が当然と思っておりましたので、他会の実情には、私こそビックリです。 挨拶回りでは、実は、当会の最近の重点活動などをレジュメやパンフレット類などを示しながら、さながらミニ・プレゼンテーションをさせて頂く時間が多くを占めています。当会で抱える委員会が55個に及び、沢山の会員が手分けして人権擁護その他多方面の市民向けリーガルサービス活動等を支えていることをアピールさせて頂きます。首長さん、会長・社長さん、会頭・専務さん、長官・所長・検事長・検事正さん等々、お会いさせて頂くみなさんは、実に誠実に耳を傾けて頂けます。そして、弁護士会に対してお世話になっていることの感謝を述べて頂き、あるいはこれからの期待を述べて頂き…。もちろん課題を頂いて帰ることもあれば、今後の連携強化に向けての有り難い糸口を頂くことも少なくありません。特に、今年は、中小企業支援活動についての今後の各団体等とのパイプ作り、連携について種蒔きができたと思っております。 当会が、日弁連でも、もちろん地元でも、活発な活動振りに高い評価を頂くことができているのも、これまで努力して来られた歴代執行部や本当に多くの会員の皆様の尽力の成果であり、そして、日頃からの地元の各界各層、市民の皆さんの理解と支援があったからこそであることは言うまでもありません。この挨拶回りを通じて、弁護士会が本当にいろんなところで受け容れられ、支えられているのだということを痛感します。あいさつ廻りは、苦行ではありながらも、実は新執行部のメンバー一同にとって新鮮な感動の日々であり、そして、担うべき責任の重大さが身に染み入ってくる貴重な体験でもあるのです。 (役員就任披露宴にご協力を) 今年は、実は、挨拶回りに際して、来る5月25日の役員就任披露宴(会場:ホテルニューオータニ)の仮案内書をお渡しして参りました。この役員就任披露宴も、弁護士会のことを地元のいろんな方に広く知って頂くための大事な行事にほかなりません。できるだけ多方面から多くの人に足を運んで頂いて、弁護士会・弁護士と接して頂きたいと願ってのことです。どうか、会員の皆さまにおかれましても、当日の総会・記念講演会ともども、是非ともご参加を頂きますよう、最後のお願いです!(今からでも、お申し込みを受け付けます。) 穏やかな船出 さる4月15・16日の両日、日弁連で第1回の理事会が開催されました。注目の宇都宮新会長でしたが、冒頭の会務執行方針の説明を終えた時点で理事席(各会会長)からは拍手が湧きました。また、その後の議事も波乱なく進行し、温かい空気のもとで2日間の審議を無事に終えました。日弁連新執行部の具体的施策については今後順次に繰り出されてきます。当会としても、逐次、ご報告・ご相談を致しながら進みます。

会長日記

その12  <小さく生んだ器に、新たな酒が盛られることを期待して> 2月15日~3月14日

平成21年度 会 長 池 永   満(29期)

活動を集約しつつバトンを渡す 会長日記も12回目となり最終回を迎えました。(残る3月の半月分については、5月号掲載予定の退任挨拶で触れることになると思います。) 今回の日記期間は、初日(2月15日)に次期執行部への引継書の作成を完了するための執行部会議を開催し、2月21日には執行部各位が分担執筆し冨山総務事務局長が編綴した190ページに及ぶ引継書(門外不出、執行部限りの「平成22年度用福岡県弁護士会会務マニュアル」)を手渡しての引継会議(第1回)と懇親会、2月23日は次期執行部のため県弁各委員会の今年度の到達点と次年度の課題を報告することを主目的とした第4回委員長会議の開催、3月6日は県弁職員の皆さんの1年間のご苦労に感謝して慰労するとともに次期執行部の紹介を兼ねての懇親交流会、そして3月13~14日、大丸別荘で開催された横浜弁護士会、愛知県弁護士会と当会との現・次期執行部メンバーが勢揃いしての3会交流会を前にして13日午前中一杯使っての引継会議(第2回)により執行部としての引継を完了させる期間となりました。 と同時に、この期間は、今期執行部がその実現のために関連委員会の皆さんとともに1年を通じて努力してきた諸課題を総達成して活動を終局させるとともに、次年度執行部における活動の円滑なスタートを支援するための土台を築くという、最後まで「死に体」内閣になれないという過酷さを抱えつつも極めて充足感に満ちた時期ともなりました。   大連市律師協会との交流提携協定を調印 2月26日~28日、張耀東会長を始めとする大連市律師協会代表団18名が来福し、両会の「交流に関する合意書」を調印しました。代表団を歓迎しての記念行事等の詳細については別項記事に委ねますが、北九州で開いた前夜懇親会には北橋北九州市長が、調印式後の記念祝賀会には吉田福岡市長、郭中国総領事館首席領事ら多数のご来賓に出席いただき、また、多くの会員の皆さんが多忙の中、ご参集いただき成功のために尽力いただきましたことに心から感謝申し上げます。 とりわけ両会の調印式と記念祝賀会に、当会との交流提携協定を締結してから満20年が経過する釜山地方弁護士会の代表(2名)に参加いただいて、一衣帯水の間柄である日本・中国・韓国の3国において活動する弁護士会が、国際的な3会交流をスタートさせることにつき、互いに賛意を表明しあったことは極めて重要な意義があることだと思います。次年度は6月と11月に釜山地方弁護士会との間で交流協定20周年記念行事が計画されており、そのいずれかで3会交流を実現できればすばらしいことです。 なお私が記念祝賀会で行った挨拶は後掲のとおりです。 「パパ・ママ弁護士支援」の会費免除制度を創設 ~4月1日から適用へ 朝日新聞で標記の呼び名がつけられた「育児期間中の会費免除規程」が3月11日の臨時総会で採択されました。その実施規則も同日の常議員会で承認されました。1歳未満の子供さんを抱えている会員(男性女性を問いません)が、1月平均で週あたり35時間未満まで就業時間を削減しながら育児に励む場合に、その支援のために会費等を免除する制度です。その申請方法や免除される会費等の範囲等については別途詳細に連絡していますが、当初女性会員のみに対する会費免除提案から出発したものが、両性の平等委員会を中心とする会内討議の中で、男女が共同して育児にあたることを支援するという思想に基づいた会費免除制度として結実できたことに深い感慨を覚えるとともに、男女共同参画時代の弁護士会づくりという観点からも一歩を踏み出すことができたのではないかと喜んでいます。 新規登録弁護士への「指導弁護士制度」を会則に明記 ~新62期以降の新人全員に「主任指導弁護士」を選任します。 3月11日の臨時総会において「会員研修規程」の改正が採択されました。改正点は、新規登録弁護士が研修に励むように援助する「指導弁護士」を配置する制度を会則上明記したことです。 指導弁護士の選任方法等については、同日の常議員会で採択された「新規登録弁護士研修規則改正案」で定められていますが、従前、新規登録弁護士に義務付けられていた個別研修を支援するための個別指導弁護士とは別に、やはり研修が義務付けられている集合研修や会務研修等を含め、1年間を通して新規登録弁護士の研修への参加等を指導援助する役割を持つ「主任指導弁護士」を新規登録弁護士の全員を対象として選任配置することにしたものです。 主任指導弁護士は、事務所に就職している会員については、原則として新規登録弁護士を雇用している弁護士や先輩弁護士が就任することになりますが、同一事務所内に適任者を確保できない場合や即独の会員に対しては会長が適切な主任指導弁護士を選任することとしています。なお、会長は指導弁護士の選任等に関する事務を新規登録弁護士が所属する部会の部会長に委託することができることとされています。 なお新規登録弁護士に対する1年間の研修内容の充実策については、現在、研修委員会を中心として司法修習委員会、法科大学院運営協力委員会を含めた関連委員会の協議会を開催して検討を進めています。また、研修の拡充に必要な予算を確保する方策として、3月11日の常議員会において「財務に関する規則」を改正して弁護士会の一般会計における勘定科目の中に「研修費」の中科目を新設するとともに、執行部において各部会が運営している相談センター会計の中から研修費の実質増額を支えるための一般会計への繰り入れ(600万円前後)を行う方向での予算協議を始めています。5月定期総会において協議の結果を反映した予算が採択され、当会における新人研修を含む会員研修計画を抜本的に拡充していく一歩が切り開かれることを期待しています。 弁護士会として初めて会員に対する義務的研修を定めた従前の会員研修規程は16年前の総会で制定されましたが、実は当時の研修委員会担当副会長であった私自身が起案したものです。会員研修規程に基づいて、会長は毎年「会員研修基本計画」を定めて周知するとともに、それを実行する体制を確立し、予算措置を講じることとされています。 会員研修規程が制定されて以降、研修委員会を中心とする関係者の努力の中で、会員研修自体は年々拡充してきましたが、その制度枠組みにはほとんど手を加えられず、前述のように勘定科目には「研修費」という費目すら設定されないままに推移していました。今回新規登録弁護士に対する研修体制の強化を検討する中で、会員研修規程の改正を総会に提案することになりましたが、何か不思議な因縁のようにも思えます。 地域に開かれた新会館建設への夢を語り合おう 3月12日、九州大学が六本松跡地をURに売却する契約を締結したと新聞発表されました。法曹三者も、それぞれURとの間で、URが取得する六本松跡地への移転に関する協定を締結しています。新会館を建設するための準備を本格的に、かつ公然と進めることができる段階に入りました。 そうした中で当会の公害環境委員会が、「福岡県弁護士会の新会館建設に関する、地球温暖化防止対策の観点からの提言書」を執行部宛に提出しました。そこでは、・太陽光発電システムを導入すること、・無駄な空調や照明の使用を避けるために、会館自体を自然の風や太陽光等を利用しやすい構造とすること、・その他、二酸化炭素排出量削減の取組に配慮した構造とすること等が提言されています。 私も、提言書が指摘しているように「環境に配慮する弁護士会」を社会にアピールしていくという観点はもとより、弁護士会自身も地域社会を構成する一員として地球温暖化防止のための社会的責任を担うという立場に立って、ぜひともこの提言が生かされることを願っています。また他の委員会や会員におかれても、これから数10年にわたる弁護士活動の拠点となるべき新会館のあり方や備えるべき機能等に関して、多くの意見や希望を持たれているのではないかと思います。 もとより、そうした希望を生かそうとすれば、当然のことながら新会館建設費用の高額化を招き、短期的にはより多額の資金負担を会員にお願いしなければならないということにもなろうかと思いますので、そうした点も含めて、会内における積極的な検討を進めることが不可欠であろうと思います。 併せて考えなければいけないことは、地域に開かれた弁護士会として市民の信頼の中で活動してこそ、弁護士・弁護士会の将来があるとすれば、その活動拠点である新会館の建設に関しては、会内議論だけではなく、末長い隣人となる六本松地域の住民の方々との話し合いも必要不可欠ではないかと思います。その際にも今回の公害環境委員会の提言等をふまえた姿勢を確立しておくことは、地域住民の方達の理解をいただく上で一つのポイントになるのではないかと思われます。 私は、この提言書を常議員会に報告するとともに、新会館取得本部(本部長は会長です)において、なるべく早期に広く会内議論を巻き起こすための重要な討議資料として取り扱っていただけるよう次期会長に対して引継を行いました。 日弁連会長の年度内決定を喜ぶ 史上初の再投票となった日弁連会長選挙。3月10日の再投票でも決まらず、4月の再選挙必至かとの悲観的な予測を覆して、宇都宮健児弁護士が会員票において劇的な逆転勝利をおさめて当選されました。 今後の会務運営という点では、日弁連執行部内の調整はもとより、日弁連執行部と日弁連各委員会、あるいは日弁連と単位会等の間において、司法制度改革課題を推進していく上での方針上の調整など相当困難な事態が予測されますが、私は、日弁連のために、とにもかくにも年度内に決着がついて会長が選出されたこと自体を心から喜んでいる一人です。 いずれにしても、当会選出の田邉宣克日弁連副会長のご苦労が偲ばれますが、健康に留意されて御奮闘いただきますよう祈念しております。 (3月14日記)

2010年4月13日

会長日記

その11 <新たなうねりに背中を押され、追い込みとリハビリと>  
1月15日~2月14日

平成21年度 会 長 池 永   満(29期)

新たなうねりとともに幕を明けた新年 1月19日、62期の方達の歓迎会を兼ねた新年会が開催されました。昨年度の72名よりは少なくなりましたが、現行7名、新55名、合計62名の新規登録会員の皆さんが発する若々しいエネルギーがホテルモントレ・ラ・スール福岡のホール一杯に充満しました。 その4日後の23日、九弁連管内の裁判所支部や独立簡裁所在地で活動している弁護士の交流会が開かれました。会場となった県弁会館3階ホールは、入場制限を出す限度の100名に近い弁護士で一杯になりました。支部交流会を企画した九弁連司法改革連絡協議会の担当理事として出席した私も含め、この日参加していた九弁連理事や主に都市部で活動している弁護士は、一堂に会した支部等の「弁護士過疎地域」で活動している弁護士各位の実像に接して、言葉は悪いけれど「田舎臭い年寄り弁護士」というような従前のイメージが完全に打ち砕かれ、目が醒めるような思いだったのではないかと思います。 そのほとんどが弁護士経験1年から数年程度という新進気鋭の若者達で占められていたというだけではなく、一人一人の生き生きとした活動報告がとても新鮮で、乏しい司法インフラをものともせず、自ら行動して社会的弱者や地域住民の権利擁護者として活動している姿を彷彿とさせるものでした。今や、法テラスのスタッフ弁護士、ひまわり基金法律事務所の弁護士、弁護士法人の従たる事務所の弁護士、弁護士会の過疎地域支援システムを利用して独立開業した弁護士等が支部等で活動している弁護士の主要な構成メンバーになりつつあるということもよくわかりました。つまりは司法制度改革の落し子達です。 そうした流れの中で10年前には1名の弁護士しかいなかった支部で現在は10名の弁護士が活動し訴訟事件数も大幅に増大した地域や、事件数の増大に応じて非常勤が常勤に、さらに常勤裁判官の増員へと裁判所機能の充実をもたらす原動力にもなっているという経験も生まれています。間違いなく司法制度改革の成果が息づいていることを実感することができました。 地域における弁護士会の顔    ~あらたな相談拠点づくり進む 従前は月に1度の土曜日だけ相談を行っていた豊前市に、月曜日から金曜日まで毎日相談できる北九州部会豊前相談センターが2月から開所されることになり、1月29日、開設披露式が行われました。豊前市長、市議会議長を始め豊築地域の全ての自治体幹部の皆さんが参集していただき、熱烈な歓迎の祝辞をいただきました。昨年4月、就任挨拶に訪れた際、市長から、弁護士が一人もおらず、いざという時に相談できない不便さや、少なくない市民の方がお隣の大分県中津市の弁護士を訪ねていること等をお聞きし、その帰り道で何としても豊前市での常設相談所を開設したいと交々語り合った北九州部会の服部弘昭部会長の決断とこれを支えて準備を進めてこられた北九州部会の会員の皆さんの努力の結晶でした。 時を同じくして、数ヶ月に及ぶ常議員会での議論に耐えて奮闘された野田部哲也担当副会長の執念と上田英友委員長を始めとする法律相談センター委員会の皆さんや職員の方達の周到な準備の中で、県弁護士会の旗艦である天神弁護士センターを抜本的に拡充するための移転拡張工事が完了し、2月1日、福岡県や福岡市の市民相談担当部局の責任者らをお招きして、リニューアルオープンの披露式が行われました。会員の皆さんからいただいた負担金から蓄積してきた埋蔵金(?)の一部を取り崩してのリニューアルでしたが、相談に訪れる市民の方はもとより相談を担当する会員の皆さんや職員の方にも喜ばれる環境を整えることができたのではないかと思います。新装となった天神弁護士センターには2月27日には大連市律師協会訪日代表団の、3月13日には横浜弁護士会新旧執行部の方々の視察訪問も予定されています。 2つの相談拠点の拡充を記念して全県で実施した無料相談も盛況裏に終わりました。弁護士(相談)センターが市民と弁護士会をつなぐ大切な接点であるとともに、会員における業務活動の場としても一層重要な役割を果たせるように発展させていくことが重要だと思います。 全会一致で「人権救済調査室」設置へ、 主任指導弁護士配置など「新人研修制度の拡充策」と1歳未満児育児中の会員の「会費免除制度の創設」に向けての検討進む 1月28日、久留米で開かれた常議員会では、今年度執行部が昨年4月の常議員会で表明した「重点課題」に関連して、この間までに委員会や常議員会で頭出し的に検討されてきていた重要案件が審議題として一斉に上程されました。3月11日に予定している総会議案とするためには、2月に予定されている2回の常議員会の中で議決を得る必要があるためです。 上程した重要案件の第一は、当会における人権救済機能を抜本的に拡充強化するために従前の人権擁護委員会と密接に連携をとって活動する「人権救済調査室」を会長の下に設置する議案です。昨年5月の総会において採択されている人権救済機能強化特別決議を具体化する提案でもありますが、人権救済調査室は従前委員会が行っていた予備調査等を集中処理してスクリーニングすることにより、委員会の活動を本調査中心にシフトさせて充実させるとともに滞留案件を増加させないことなどを眼目にしています。人権救済調査室には会員の中から当面5名程度の嘱託が委嘱される予定ですが、嘱託会員には常議員会で定める報酬が支給されます。 「人権救済調査室設置規程案」は2月10日の常議員会において全会一致で採択されましたので3月11日の臨時総会で承認を得られれば年度内にも嘱託の委嘱準備が進み、新年度から発足することになります。 残りの重要案件は、主任指導弁護士配置など「新人研修制度の拡充策」と1歳未満児を育児中の会員の「会費免除制度の創設」に関連する会則改正案ですが、2月10日の常議員会ではさらに検討すべき点が指摘されましたので、次回(25日)に持ち越しています。次回での議決が得られれば、やはり3月11日の臨時総会に上程される予定です。 なお2月10日の常議員会では、年度末に向けて各委員会から新たな議題や報告事項が直前に執行部に提出されてきたこともあり、重要案件に加えて想定外の追加議題が目白押しとなり終了予定時間を90分もオーバーする長丁場になりました。あきれ顔ながら最後まで匙を投げずに職務を全うしていただいた福島康夫議長に感謝、感謝です。 1年間の封印を解き、リハビリを開始しました。 昨年1年間、弁護士会の課題以外の講演等は一切お断りをしてきたこともあり、主として患者の権利に関連するものですが未整理の貴重な情報が私の頭には一切インプットされないまま、事務所の机のみならず、会務の便宜のために設営した赤坂オフィスや自宅の至る所に山をなしています。このままでは会務明けの4月以降であればということで安請合いしている研修会等の日程に首尾よく対応することができるのか、甚だ心もとない状況です。 そこで自分自身の情報の更新とリハビリを兼ねて、新年に入ってから封印方針を転換することにし、1月15日には久留米保健所主催の医療安全対策研修会で「医療施設における患者の安全を確保するための法的視点」、1月29日には九州大学病院個人情報保護セミナーで「病院における個人情報~とりわけ診療記録情報の取り扱いにおける留意点」を講演させていただきました。これからの日程ですが2月17日には今年中に「医療福祉生協連合会」へと組織変更を予定している全国の医療生協が「患者の権利章典」を制定してからの20年を振り返り、これからの展望を語りあうシンポジューム「医療生協の患者の権利章典の今後を考える」で報告することも引き受けてしまいました。当時からの資料をひっくり返しながら新鮮な気持ちで胸を躍らせている自分に気づき苦笑しているところです。 さらに言いますと、昨年設立する予定でしたが会務に集中するために延期していました朝倉市と糸島市での法律事務所開設のための現地調査にも着手しました。「善は急げ」という私の性分から、新たな課題に着手すると瞬時に気持ちが移って走り出してしまいますので、今から1ヶ月は「じっと我慢の子であった」ということでもありませんが、はやる気持ちを抑えつつ、3月11日の臨時総会で無事に重要案件が議決され今期執行部としての役割を果たし終えたうえで、本格的な事務所開設の準備に入りたいと考えています。 (2月14日記) 

2010年3月12日

会長日記

福岡県弁護士会 会長日記
平成21年度 福岡県弁護士会会長  会 長 池 永   満(29期)

その10  <「新しき華」のかおりを窺いつつ、自らに号令かけて> 12月14日~1月14日 熱烈歓迎 ‘大連市律師協会代表団’ ご案内のとおり大連市律師協会代表団(張耀東会長ほか18名)が2月26日来福し、翌27日、当会との姉妹提携協定の調印式と歓迎レセプションがホテル・ニューオータニ(福岡市)で開催されます。 当会においては昨年12月14日に代表団歓迎実行委員会(実行委員長・清原雅彦会員、委員長代行・伊達健太郎国際委員会委員長、事務局長・冨山敦県弁総務事務局長)が活動を開始し、第1日目に代表団が訪問する北九州部会では独自の歓迎体制(中野昌治実行委員長)も整えており、会を挙げて歓迎したいと思います。 長い交流の歴史がある日本と中国、その中でも文化的・経済的・地政学的にも極めてゆかりの深い福岡県と大連市において活動する両弁護士会が、従前の断続的交流により培われた信頼関係を基礎とし、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という法律家としての共通目標を掲げた交流協定を調印して継続的・安定的交流へとステップを進めることは、社会的にも国際的にも意義深いものがあります。 歓迎行事への多数の参加を始め、今後における両会の交流の発展のために会員各位のお力添えを宜しくお願いいたします。     始まった新旧交代の時期 年末も押し迫った12月28日定年まで若干の期間を残して依願退官された仲家暢彦・前福岡地裁所長が弁護士会館に退官挨拶にこられました。仲家前所長には、裁判員裁判の実施準備や法曹三者による検証協議会の立ち上げのために、毎月開催された四庁会(地裁・家裁・地検・弁護士会)における意見交換のみならず互いに直接行き来する等して、フランクな協議の機会を設定していただき、最終的な合意を形成する上で大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。年が明けた1月7日新任の山口幸雄地裁所長の就任挨拶を受けました。山口所長からは、弁護士会との協力関係は裁判所にとっても一番重要なことであるという認識が表明されましたが、あわせて応接室に陳列している各国弁護士会からの記念品等を前にして、当会における国際交流の状況に関しても強い関心を示されていました。四庁会等でご一緒できる機会は3月までですが、裁判員裁判が本格化する時期でもあり、山口新所長と意見交換の機会が持てることを楽しみにしています。 また福岡高等検察庁においても、有田知徳・前検事長が退官され、三浦正晴・新検事長が着任されました。検事長の退任と就任の挨拶については前田豊九弁連理事長とともにお受けしましたが、有田前検事長からは福岡県弁護士会の活動に対する高い評価が、三浦新検事長からはこれから本格化する裁判員裁判に取り組む検察庁としての抱負等をお話しいただきました。  「市民のための司法改革」のバトンタッチ 当弁護士会においても、新年早々の1月6日、次年度役員の選挙が公示され、会長立候補者の所信が配布されました。その所信は、同時に進行している日弁連会長選挙候補者による政策表明に比べても、地に足の着いた論理と丁寧な語り口で「市民のための司法改革」を推進する立場を堅持してきた当会の基本方針の継承を鮮明に打ち出されておられ、候補者自身の会務に関する慧眼を十二分に窺い知ることのできるものでした。 仮に定数以内の立候補者であれば、立候補受付期間が終わる1月18日には次期執行部予定者の顔ぶれが確定し、次期執行部としての事実上の活動を開始することになります。 そこで、選挙公示日に先立つ1月5日、新年初めての執行部会議において、私たちは、次期執行部予定者が確定次第直ちに次期執行部としての会務方針策定や委員会構成等の検討作業に着手できるように、必要な情報提供の準備を行うとともに引継ぎマニュアルの作成作業を急ぐことを確認しました。 それとともに、現執行部や委員会が作業中の重点課題や常議員会で甲論乙駁の議論が進行している協議題については先送りするのではなく、可能な限りの手だてを尽くして会内合意の形成に努め、3月11日に予定している現執行部としては最後の臨時総会を目途に着地点を見いだし、次期執行部に引き継ぐ「宿題」を極力最小化するために、担当副会長を先頭に執行部が一丸となって努力することを決定しました。 どこまで首尾よく果たせるかは予断を許しませんが、自らにも号令をかけ、新旧ともに晴れやかな気持ちで「政権交代」を行えるようにがんばりますので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (1月14日記) 

2010年2月16日

会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)

その9 
<「こうあるべき世界を目指し」つつ、新年を展望する>
        11月13日〜12月13日

新年あけましておめでとうございます。
自身が「2つの戦争のただ中にある国の軍最高司令官という事実」の中で、「戦争を平和に置き換える努力についての難問」を弁明しつつも、「核なき世界」を求める努力を放棄しないことを鮮明にしたオバマ大統領は、昨年12月10日、オスロでのノーベル平和賞受賞演説をこう結んでいます。
「ガンジーやキング牧師のような人々がとった非暴力は、いかなる状況でも現実的で可能なことだとはいえなかったかもしれない。しかし、彼らが説いた愛——人間の進歩に関する彼らの根源的な確信、それこそが、常に我々を導く北極星であるべきなのだ」「我々には出来る。なぜなら、それこそが人間の進歩の物語であるからだ。それこそが全世界の希望だ。この挑戦のとき、それこそが、この地球で我々がやらなければならない仕事なのだ」
今、マスコミの多くが普天間基地の移転問題で「北極星」を設定しないままに「早期決着」を求めていますが、日本防衛ではなく海外への殴り込みを目的とし、沖縄県民に対する暴行凌虐やヘリコプターを大学に墜落させるなど危険きわまりない普天間基地の米海兵隊は、沖縄から即時無条件に撤退させるという視点こそ「1丁目1番地」ではないのでしょうか。今から42年前の1968年6月2日、在学中の九州大学にベトナム帰りのファントムが墜落し、全学と県民挙げての怒りと運動の中で板付基地撤去を実現した経験を持っている私には特にそう思えるのです。
2010年は日米安保改定から50年。折しも九弁連大会(10月22日)が沖縄で環境問題を主テーマとして開催されます(福岡での九弁連大会には沖縄弁護士会から80名を超える参加をいただきました。福岡からも沖縄大会に大挙して参加しましょう)。戦後60年余が経過したにもかかわらず、沖縄を始め首都東京を含む全土に外国軍隊が駐留し続けている日本。世界では軍事同盟は縮小の一途をたどり、非軍事の平和条約機構が急速に拡大しています。その中心となりつつある「東南アジア平和機構」(TAC)は「外圧に拠らずに国家として存在する権利」「締約国相互での内政不干渉」「紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇または行使の放棄」など日本国憲法9条と同様の平和主義理念を掲げています。日本は2004年にTACに加入しており、2009年には域外のEUとアメリカの加入も承認され、今や、東南アジアを中心として地球を一周する帯のように27カ国・組織による巨大な平和友好地帯が出現しているのです。  
そうした激動する国際情勢の中で、いつまでも軍事同盟中心の日米関係で良いのか、鳩山政権は何を道標として、アジアにおける日本の信頼を高め、対米交渉を進めるのかについても、交渉相手のオバマ大統領にならって理想を掲げた挑戦を続けて欲しいものです。

先輩法曹と若手が一堂に会した忘年会
ところでオバマ受賞演説の日は、ちょうど福岡部会の忘年会の日でもありました。2009年に米寿と喜寿を迎えられた9名、在職50年と40年の表彰を受けられた7名の先輩法曹がおられますが、忘年会の冒頭に行う恒例の表彰式には、米寿を迎えられた司法修習1期、法曹経験50年を超える松村利智先生、弁護士在職40年の九弁連表彰を受けられた司法修習21期の半田萬、大原圭次郎、髙木茂の各先生が出席いただきました。記念品贈呈の後に、皆さんから語られた簡潔の中にも含蓄があるお話とあふれる気概にふれて、参加者一同笑いと元気をいただきました。
引き続く懇親交流会も楽しい福引きをはさみながら、先輩、同僚、若手が隔てなく互いの労をねぎらい、新年に向けた弁護士業務や弁護士会活動の展望を語りながら、激励し合い、杯を交わすという福岡らしい忘年会の姿が再現され、個人的にも晴れ晴れとした「望年会」となりました。
私たちの任期も余すところ3ヶ月です。やりかかっている作業課題を確実に結実させ、次期執行部に過大な宿題を引き継がないようにがんばるつもりですので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

新63期の受け入れ準備と実務修習の開始
昨年11月14日、新63期生の実務修習開始を前にして、5年目になる福岡県弁護士会主催の合同事務所説明会が開催され、過去最高の110名を超える修習予定者が全国各地から参加したことは、月報12月号で伊藤功示会員(司法修習生就職問題及び新規登録弁護士支援対策室長)が既に報告しているとおりです。参加いただいた14事務所と情報提供いただいた7事務所に感謝しますとともに、次年度に向けて参加事務所の拡大についても会員の皆様の積極的な協力をお願いいたします。
福岡を修習地とする新63期生82名については、11月25〜26の両日、弁護士会主催の事前研修を行い、27日から司法修習が開始されました。司法修習委員会や多くの指導担当弁護士の会員各位には、ご苦労をおかけしますが、修習生の進路に関する助言や支援を含めて、よろしく御指導のほどお願い申し上げます。
なお、新62期の新規登録(12月17日付け)は54名を予定しており、全員が登録されれば福岡県弁護士会の会員数は880名となります。

裁判員裁判検証・運営協議会始まる
昨年12月1日、裁判所・検察庁・弁護士会の法曹三者による「裁判員裁判検証・運営協議会」が正式にスタートしました。これに先立って、常議員会は11月の2回にわたる審議をへて、「裁判員裁判検証・運営協議会設置要綱」を採択しました。
裁判員裁判は、日本の刑事司法にとって歴史的な改革の実行であり、法曹三者にとっても全く新しい経験ですから、従前の議論や想定の範囲を超えて色んな問題や解決すべき課題が生起するであろうことは言うまでもありません。裁判員法自身も付則において3年後の制度見直しを予定しています。
従って、実際に裁判員裁判に取り組んでいる現場において都度の検証を行いながら、必要な制度の改善や改革を提言し実施していく必要があります。問題によっては、制度改革を待つまでもなく、法曹三者がそれぞれの立場から運用を改善することにより、裁判員裁判の充実を図ることが出来ることも少なくないでしょう。そうした意味において、法曹三者が具体的な経験を通して都度の検証活動を行う意義は極めて大きいと思います。設置要綱を文書で確認して公式に協議会を立ち上げたのは九弁連管内では始めてですが、全国的にもモデル的な役割を果たすことが期待されています。
弁護士会としては、この協議会に協議員を出す関連委員会を、裁判員本部、刑事弁護等委員会、子どもの権利委員会、犯罪被害者支援委員会等とすることや協議の内容と結果を会員に周知する方法等に関して、常議員会申し合わせ事項も採択していますが、実際に裁判員裁判の弁護人として活動された会員の皆さんが、積極的に協議題等を提起していただき、裁判員裁判の運用改善や制度改革につながるようご協力いただければ幸いです。
また、この協議会では、裁判所からは最高裁が集約している裁判員に対するアンケート調査の結果が都度報告されるとともに、弁護士会が実施している市民モニターによるアンケート結果の内容についても随時情報提供して協議の参考に供することにしています。
なお、設置要綱や申し合わせ事項については、全文を本月報に掲載していますが、設置要綱第6項において、「協議の結果、各庁会の意見が一致したものについても、個々の訴訟活動、弁護活動、訴訟行為等を制約するものではない」ことが確認されていますので、念のために申し添えます。

多重会務の解消とリーガルサービス活動
の強化に向けて
昨年12月1日、第3回委員長会議を開催しました。
テーマの一つは、本年度執行部が採用した「多重会務の解消と全員野球による委員会活動の活性化」を目的とする委員委嘱方針等の検証でした。会員自身の希望を基本として1会員につき2〜3委員会の委嘱を原則としましたが、その後の委員会からの追加委嘱希望との調整もあり、上限5委員会に達している会員も相当数残っています。データ的には、委員会への出席会員数も出席率も共に昨年度より向上している委員会が多数に昇っており、多重会務の解消についても一定の成果はあげていますが、幾つかの委員会からは、委員会推薦で対外的な業務に従事していた会員が上限に達していたために委員に追加委嘱されなかったために善後策で困難があったこと等も報告されました。但し、そのことによって委員会活動自体に具体的な支障が起こったとの報告はなく、多重会務の解消に向けての取り組みは継続的に実施されなければ元の木阿弥になりかねない性質のものだから、少なくとも3年は継続したうえで検証することが大切であるとの意見も出されました。
現執行部としては意見交換の結果を次期執行部にお伝えし、委嘱方針を策定する上での参考に供したいと思います。
第2のテーマは、委員会が関与して実施されている第三者に対するリーガルサービス活動(面談や電話による法律相談、学校や団体に出向いての講師活動等)については、原則として担当会員に対して日当を支払うことにしたいという執行部方針に関する意見交換を行うものでした。
執行部が、そうした方針を検討している背景としては、面談による法律相談では原則として担当者に対する日当が支払われているのに、11月30日に行ったハローワークにおけるワンストップサービスなどのように日弁連等の要請で全国的、臨時的に取り組まれる出張相談等の場合には全く支払いがないものもあること、逆に電話相談では多くの場合支払いはなされていないが、一部には日当が支払われているものもあること、外部団体における講師活動等では、相手方からの支払いがあることも多く、原則として担当者に対する日当支払いがなされているものが多いが、相手方の予算措置が困難な(学校や団体での)講師活動等には支払いがないものもある等、担当者に対する手当の仕方にアンバランスが生じていることがあります。
そうしたアンバランスを解消したいとする執行部方針については、多くの委員長から概ね賛成の意見が出される中で、担当者に日当支払いを行って相談活動を行うのであれば相談後に受任に至った場合には負担金の納入を求めるべきであり、そのためには相談記録等の作成による事件管理を行うことが不可欠であること、日当支払いをすることにより委員会が適宜実施しているホットライン等の活動が自由に出来なくなるのは良くないとする意見等も出されました。
また、法律相談や講師活動など直接的なリーガルサービス活動ではないが、一部の会員に過度な負担を強いている会務、例えば人権擁護委員会の調査活動等に対する手当を同時に行うべきであるという意見も出されました。
執行部としては、上記の意見交換をふまえて、以下のような方針を固めました。
即ち、直接的なリーガルサービス活動にたいしては、前述のとおり既に原則として担当者に対する日当等の支払いが行われていますが、その出所は法律相談センター特別会計やリーガルサービス基金特別会計、或いは県弁一般会計等まちまちであり、その支払い基準についても必ずしも統一されていないので整理する必要があること、日当支払いを行う場合には、その支払額や、支払いの対象とする活動を認定する基準や手続を定めるとともに、委員会が実施を予定しているリーガルサービス活動で、事件管理システムを確立した上で担当者に対する日当支払いを行うことを希望する活動の規模をあらかじめ集約して予算規模のシミュレーションを行うなど、年間予算を策定するための作業が不可欠であること、従前のリーガルサービス活動のカテゴリーに含まれていなかった、つまり日当等の支払いを想定していなかった会務の一部に対する支払いを行うとすれば、出所となる会計規定等の改正やその財源を確保するための機構財務の改革も行う必要があること等、いくつかの検討課題をふまえた執行部案を作成した上で、新年明け可及的速やかに常議員会に提起して3月までに新たなルールの策定につき会内合意を得て、次年度からの全面実施をすすめたいと考えております。
なお今年度においては、11月以降2010年3月までの間、担当者に対する日当支払いを行うことについて委員会からの事前の要請があり、執行部において支払いが相当であると判断されるリーガルサービス活動に対しては、執行部の責任において県弁一般会計の特別活動費から支払いを行うこととし、既に執行を始めました。支払いの基準は、法律相談活動については現在支払われている相談活動日当の最低額と同額の時給計算とし、講師活動については現在実施されている講師料の最低保証額と同額とします。
これらの措置が、委員会が主催するリーガルサービス活動の一層の活性化と、多少なりとも担当会員の活動に対する支援になればと考えています。

(12月13日記) 

2010年1月19日

会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)

No455 その8<九弁連大会やイベントの狭間、手探りで匍匐前進> 10月15日~11月12日

九弁連大会へのご奮闘とご協力に感謝!! 福岡市では18年ぶりの開催となった九弁連大会(10月23日)。 羽田野節夫九弁連大会実行委員長をはじめとする実行委員会の皆さんの長期にわたる用意周到な準備と「九弁連はひとつ」の合い言葉にふさわしい九弁連関係者の一致協力した取り組みのおかげで、シンポ、大会、懇親会、スポーツ交流や公式観光等、全てのイベントが充実した内容で大成功に終わりました。日弁連宮_誠会長を始め多くの参加者から開催県としての当会の底力をみせつけるものであったと大きな賞賛もいただきました。 関係各位のご努力に、感謝、感謝です。 今回の日記期間は、九弁連大会のみならず、各種のイベントが目白押しで、あさかぜ基金法律事務所の1期生井口夏貴弁護士を所長として送り出す「対馬ひまわり基金法律事務所」の引き継ぎ式(対馬、10月28日)、法曹三者協議としては10月7日の一審強民事部会に続く「一審強刑事部会」の開催(10月30日)、日弁連における最大のイベントである「第52回人権大会」も和歌山で開催されました(11月5~6日)。 私的には「患者の権利宣言25周年記念集会」(名古屋、10月31日)、憲法フェスタ(11月3日)、中学卒業48周年記念同窓会(11月7日)等にも顔を出し、日頃のご無沙汰を詫びつつ旧交を温める機会をもつことができました。 来年2月、大連市律師協会との交流協定調印へ 前回月報の会長日記で予測していたとおり、大連市律師協会との交流が新たな局面を迎えることとなりました。大連市律師協会から10月17日付けで当会が送付したモデル案(釜山地方弁護士会との合意書)とほとんど同一内容が記述された中国文の合意書案を添えた回答が寄せられたことを受け、10月29日の常議員会において全会一致で同会との相互交流に関する合意書を調印することが承認されました。 合意書調印のため来年の2月26日から28日までの間、大連市律師協会の張耀東会長をはじめとする代表団が福岡を訪問される予定です。詳細日程や合意書調印後の具体的な交流の進め方等については、これから国際委員会を中心として実務的協議を行うことになりますが、当会としては代表団の歓迎実行委員会(委員長・清原雅彦会員)を組織し、20年前に実施した釜山地方弁護士会との調印式の事績も参考にしながら、会をあげて歓迎に向けた準備を進めていきたいと思います。 臨時総会で補正予算を承認~福岡、北九州で相談センター拡充へ 各部会集会の議をへて10月15日の常議員会で議決した天神弁護士センター会計と北九州法律相談センター会計の補正予算案は、10月29日に開催された臨時総会において、ほぼ満場一致の賛成で承認されました。これにより、本年4月以降、野田部副会長と法律相談センター運営委員会を中心に取り組まれてきた天神弁護士センターのリニューアル大作戦は実行段階に入り、今後レイアウトの最終的な詰めを行った上で、遅くとも来年1月中には移転場所における業務開始を目指して作業が開始されます。私は来年2月に訪問される大連市律師協会代表団にも市民に対するリーガルサービスの拠点である新天神センターを是非視察してもらいたいと考えています。 北九州部会が立ち上げる豊前相談センターは、従前は月に1回の土曜日しか行っていなかった法律相談を、月曜から金曜日まで毎日実施する常設相談所として新規に開設するものであり、弁護士過疎地域である豊前地区において当面の赤字は覚悟しても市民に対する継続的なリーガルサービスを展開する拠点を創出するという画期的な試みです。 私は会長就任時に県下20カ所の相談センターを訪問させてもらいました。その際の印象から、サテライト相談所を市民がいつでも駆け込める頼りがいのあるものにするためには連日相談にのれる対応体制を作ることが不可欠ではないかと考えており、豊前相談センターの今後の推移と成果を注目したいと思います。 新人研修制度の検討開始~新人研修PTの答申を受けて 本年度執行部が重点課題としている新しい「新人研修制度」の構築を検討するため研修委員会内に設置された新人研修PT(座長・石渡一史会員)による答申が2回にわたり提出されました。(答申は執行部に対するもので、これから執行部案を作る際のたたき台としての性格を持つものですが、執行部としては早期に多角的な検討をすすめるためにも、そのまま関連委員会や常議員会に情報提供する取り扱いにしており、第1回答申は9月30日の、第2回答申は11月12日の常議員会でそれぞれ報告しています)。 新人研修PTの最初の答申は、新規登録弁護士に対して現に実施している倫理研修、会務研修、各種相談担当登録研修等に加えて、長期的視野に立って登録から1年間にわたり弁護士業務の基礎や基本を修得できるような新人研修プログラムのメニューのたたき台を網羅的に示したものです。 第2回目の答申は、新人研修制度を実施していく仕組みを構築するための研修規則や細則の改正案を内容とするものですが、登録から1年間にわたり一人一人の新人弁護士に対して会長が「主任指導弁護士」を選任して新人研修を促進することや、主任指導弁護士の選任手続きなどの会長事務を新人が所属する部会の部会長に委託することができる規定を設けることにより、新人研修を各部会中心に行う体制を作ること等が付加された主な点になっています。なお主任指導弁護士は新人が所属する事務所の先輩を選任することを原則としています。 執行部としては、2つの答申に加えて、新人研修制度を実施するために必要となる講師等に対する謝礼や経費をまかなうための財源をどう確保するか(そのために必要な規則改正等があればその改正案を含む)に関しての提案をまとめた上で、プログラム、仕組み、財源という3点セットを含む新人研修制度に関する総合的な執行部としての提案(たたき台)を取りまとめた上で、早ければ11月下旬の常議員会に提出して会内合意を形成するための本格的な議論を始める予定です。 リーガルサービス活動等の実情調査と有償化の検討を開始 現在、県弁の各委員会が関与して実施されている市民や団体に対するリーガルサービス活動(法律相談や講師活動等)は極めて多面的になっており、多くの会員が熱心に取り組んでおります。日弁連からの依頼等により臨時的に実施する相談活動等も急増しています。 ただ法律相談の場合でも、面談相談の場合には担当する会員に対する日当が支払われているものが大半ですが、逆に電話相談(ホットライン等)においては支払われていないものが大半です。出張しての講師活動等においても相手方から支払われるものもありますが、無償で実施されているものも見受けられます。 執行部としては、市民や団体等に対するリーガルサービス活動をいっそう活性化させるとともに、会務負担の公平性の観点や若手会員の参加を促進するためにも、リーガルサービス活動に従事する会員に対しては原則として日当を支払うシステムを確立することが必要ではないかと考え、そうしたシステムを実施する場合の予算規模や支払い基準、留意すべき事項等を検討するために、各委員会の委員長に対し実情照会を行いました。 あわせて、第3者に対するリーガルサービス活動のカテゴリーには該当しないけれども、仮にリーガルサービス活動に対して原則的に日当支払いが行われることとなった場合には、それに準じて有償化を検討すべき会務活動等の存否についても照会をしています。執行部としては現段階において会務活動一般について有償化する方針は持っておりませんが、既に大阪弁護士会等においては人権調査活動等に対する日当支払いが実施されていることなど他会の動向を考慮すれば、この際、会務負担の公平性等の観点もふまえて総合的な検討を進めるために、委員会活動の実情を正確に把握したいと考えています。 この照会結果については、第3回委員長会議(12月1日)における意見交換や常議員会等における検討を行った上で、可能な限り早期に、この問題に対応するシステムを確立したいと考えています。 あれやこれや、執行部としては来年3月の任期までに残された時間をにらみつつ、手探りで着地点を求めながら匍匐前進(?)を続けていますので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 (11月12日記)

会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)

No454 その7 
<新しい息吹き、天高く想い膨れ、語り合う我ら> 9月16日~10月14日

新しい息吹きを感じる季節 9月16日、新政権の誕生とともに、法テラス・スタッフ弁護士として養成する弁護士(旧62期)が私の事務所に着任しました。会務のためほとんど仕事をしていない私だけでは鍛えることができませんので、事務所の若手弁護士を指導担当弁護士として共同で事件処理をし、12月には新たに入所予定の三名の新人弁護士(新62期)をライバルとして切磋琢磨しながら、期間は1年と短いですが可能な限り色んな経験を積んでもらい、勇躍して過疎地に赴任できるよう支援したいと思います。 9月18日は福岡修習新62期生の合同送別会。2日目の日弁連理事会を午前中だけで早退して帰福し参加しました。みんな無事2回試験を終え、笑顔で福岡に帰ってきて下さいとエールを送る。昨年は1年間で70名を超える登録がありましたが、今年は何名が福岡県弁護士会に登録し、私たち法曹の仲間として新たな1歩を切り開くことになるのか。 10月2日、NPO法人九州アドボカシーセンター(理事長/馬奈木昭雄弁護士)の合格祝賀会が開催されました。アドボカシーセンターは地域で人権のために活動する弁護士をめざすロースクール生に生きた事件から学ぶための「人権セミナー」や「自主ゼミ」の機会を無償で提供するため、法科大学院発足とともにスタートしたNPO法人です。県下四大学のロースクール学生が研究生として登録していますが、新60期1名、新61期2名、新62期4名、そして今年9月に合格発表があった新63期は8名と、倍々ゲームで合格者を出しています。所属大学も違いますのでセンターとしては特段の受験指導等はしていませんが、人権セミナー等に参加することにより、どのような法律家をめざすのかという自分自身のモチベーションを形成し維持することが勉強への励みを生み出す力になっているのではないかと思われます。 弁護士会としては、こうした法曹をめざす新しい力を積極的に受入れて、彼らが地域社会の隅々で「社会生活上の医師」として活動していけるような仕組みを編み出し、多様な受け皿作りに努力する必要があるでしょう。 あれもこれものシルバーウイーク 9月の大型連休が、5月の「ゴールデンウイーク」とともに「シルバーウイーク」とよばれて、私を誘い出そうと微笑みかけていることに気付いたのは直前のことです。実は私の手帳では9月19日から27日までは早くも4月から斜線が引かれており一切の日程を入れず封印されていました。弁護士会としての「人権救済システム等の海外調査」を予定したものです。 しかし、そのもくろみが頓挫したため、突然ぽっかりと大型連休が私の眼前に開かれたのです。そのために雑然と、あれもこれも風に、しかし楽しい日々となりました。 最初の2日は2~3の原稿書きと墓参りをしたあと、前期執行部からの引継書をチェックして今期執行部として後半戦における取りこぼしがないように検討するための執行部合宿の準備。 真ん中の連休(2泊3日)は山登り。長男夫婦とそれぞれの両親、あわせて三組6名の一行で久しぶりに久住山に遊んだ後、私たち夫婦だけで熊本県菊池の八方ヶ岳へ。もっとも狙いは山よりも付近の温泉三昧でした。 そして最後の数日は、中華人民共和国成立60周年祝賀会(9月25日)、適格消費者団体設立総会(9月26日)、そして、会務のため面会の間隔が開きがちになっている成年被後見人やその家族のお見舞いの病院巡り(9月27日)、執行部合宿と台北福岡事務所との懇親会(9月28日)と、いささかバテ気味で締めたのです。 「核兵器廃絶」を後押しするノーベル平和賞 オバマ大統領にノーベル平和賞が授与されました。まだ実績があるわけではないけれど、「核爆弾を投下した唯一の国としての道義的責任」を明言した上で「核兵器のない世界」をめざすことを誓い、国連等においても行動を開始しているオバマ氏に対する大きなエールであり、オスロの授賞式への参加も良い意味で強いプレッシャーとなるでしょう。ノーベル賞の中で唯一スウエーデンではなくノルウエー国会が授賞主体になっている平和賞については、たまに首を傾げたくなるものもありましたが、今回は実にすばらしい政治判断をしたノルウエー・ノーベル委員会に拍手を送りたいところです。 その後、日本では東京落選決定を待っていたかのように、2020年に平和の祭典オリンピックを広島・長崎に招致する呼びかけが発せられ、「核兵器廃絶」にむけた想いも大きく膨らみつつあります。オバマ氏には近日中の広島・長崎訪問も期待したいところです。「自分の生きている時代には実現しないかもしれない」というような弱気を捨てて、速やかに「核兵器廃絶」を直接の議題とする国際交渉を始める力仕事の先頭に立つ決意を固めてもらうためにも。 和気あいあいに学び合う3会交流 大阪弁護士会、広島弁護士会、当会による定例の3会交流会が10月11日当会の会館ホールで開催されました。この組み合わせの3会交流は10年前後の歴史がありますが、個別の交流はそれより前から続いています。私は今から15年前、国武格先生(故人)が会長のときの副会長でしたが、当時急速に拡大しつつあった当番弁護士等の活動を支えるためにリーガルサービス基金を確立する必要があり、国武会長は破産管財人報酬からの負担金徴収の導入を決断され自ら多額の負担金を拠出されましたが、その方法は大阪弁護士会から学んだものでした。またマスコミ担当副会長であった私は、当時有料で宣伝していた当番弁護士の広告に代えて無料でかつより効果的な広報はないものかと考えていた時、広島弁護士会が当番弁護士名簿を断続的に地元新聞の記事として掲載させていることを知り、早速現物を取り寄せ福岡の司法記者クラブ加盟各紙に働きかけ、「今週の当番弁護士」欄を設けて広報してもらえるようになりました。このように、大阪会や広島会から多くのことを学んできた感謝の思いは、相手方においても共通であり、執行部が代わっても引き継がれています。今回も裁判員裁判の検証や市民窓口の運営、委員会活動活性化の方途等、全ての協議題で互いに学び合い、共鳴し合うことが多くあり、稚加榮で開催した懇親会、更に2次会まで和気あいあいの議論に花を咲かせました。 民主党議員との懇談会 既に参議院では2回可決されている取調べ過程の全面可視化法案。新政権で法務大臣に就任した弁護士の千葉景子さんは、最初の記者会見でも、日弁連への就任挨拶でも、第一に「捜査の可視化」を進めると明言しています。そうした情勢を受けて、日弁連は、臨時国会開会前に与野党を問わず全ての国会議員に対する緊急の要請活動を展開することとしました。 福岡県弁護士会も執行部が手分けして、全ての議員に要請活動を行うとともに(私は10月10日自民党の武田議員と山本議員を訪問しました)、民主党については日本弁護士政治連盟(弁政連)九州支部を通じて懇談会を申し入れることにし10月12日開催されました。懇談会には松本龍衆議院議員(民主党福岡県総支部連合代表)をはじめ県内選出の8名の議員本人と4名の議員代理(秘書)の方々に出席いただき、弁護士会からも県弁護士会、九弁連、弁政連九州支部の執行部からそれぞれ数名、合計14名が参加しました。予定の2時間びっしり使って、可視化法案の展望にとどまらず、法曹養成問題や司法改革の現状認識、新政権における政策決定のあり方など幅広く率直な意見交換をすることができました。 今回は初顔合わせで互いに集団山見せのようなものですので、今後具体的な課題毎に必要な協議の機会を設定することになりますが、松本議員も強調していましたが、国会での立法作業などを念頭に置けば政権党である民主党とだけの協議で事態が打開できるものでもありません。政治に対する働きかけは、先月号で予測したとおり、なかなかの力仕事になるように思われます。ということで、弁政連九州支部では今後自民党や公明党等との懇談会も検討されています。 (10月14日記) 

会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成21年度会 長 池 永   満(29期)
No453 その6 
<多事争論、そして実りの秋へ> 8月17日~9月15日

<裁判員裁判の公判始まる> 遂に裁判員裁判の公判が始まりました。第1号事件(9月9日~11日)第2号事件(15日~18日)にむけた検証体制を議論する中で市民モニターに加えて弁護士モニターも配置することを決定したことに伴い2席以上の傍聴席を確実に確保するために、裁判員本部のみならず福岡市内の会員弁護士と事務職員の皆さん、市民モニターに登録されている皆さんにも傍聴整理券確保のために協力をいただきました。おかげで連日の法廷の全てを、2名のモニターはもとより執行部や裁判員本部の弁護士等も傍聴でき、やはり模擬裁判とは異なる緊張感あふれた裁判員裁判の公判をリアルに体感することができました。感謝、感謝です。 とりわけ市民モニターの視点は裁判員裁判の検証を進めるにあたり有効性が高いということでマスコミをはじめ各方面から注目されており、他の弁護士会においても設置する動きが始まっています。
<動き出した地域司法計画> 7月号月報で報告しました「福岡地域司法計画(第2次案)」(2008年2月作成)の取り扱いについては、第2回委員長会議(7月29日)における意見交換を踏まえた上で、8月27日の常議員会において、弁護士数や相談センターの活動状況等に関する最新データを補充するとともに第2次案作成後に進展した制度改革や弁護士会の取組みを紹介する内容の「前文」を付した上で第2次案本文はそのままの形で確定し公表することが承認され、9月1日付で会員各位や関係機関等に送付されました。 常議員会は同時に「福岡地域司法計画推進室」の設置規則を制定しました。推進室(室長・牟田哲朗会員)の眼目は、第2次地域司法計画の内容について、関連委員会に対し担当分野の課題を計画的に推進するための「年次計画案(計画の補正や新規追加を含む)」の提出を求めるとともに、担当委員会がない分野(例えば弁護士過疎対策等)に関しては自ら年次計画を作成し、これらを集約して執行部に提案し、「福岡地域司法計画」の進行状況を検証しつつ着実に推進していくための活動を行うところにあります。 現在日弁連のもとで全国の単位会や地方弁連における第2次地域司法計画の集約作業が進められていますが、これを検証・推進する体制を確立したのは当会が全国で初めてのようです。 地域司法計画の推進に関連して既に具体的な取組みも始まっています。一つは相談センターの充実です。天神相談センターについては、相談時におけるプライバシーの保護やゆとりのある相談室や事務室、或いはADR室や待合室の配置等を実現するための移転拡充計画が準備されています。また北九州部会においては、従前会議室を都度借用して相談活動を行っていた豊前市において、通常日は毎日相談担当弁護士を配置する「豊前相談センター」を新設します。これらは各部会集会における議決を経て10月末の県弁臨時総会に必要な補正予算案が提出される予定です。 また地域司法計画を推進する上では、民事法律扶助のアクセスポイントの拡大(契約弁護士事務所における直接受任を推進するための広報活動)をはじめ弁護士会と法テラスとの連携強化も重要な課題になっています。とりわけ法テラス・スタッフ弁護士との関係では、従前の国選対応に関する補完協力に止まらず、弁護士会が推進している生存権支援活動、或いは労働、社会福祉分野等における多面的な人権救済活動において連携した活動を強化する必要があります。 この点で、法テラスの今年度におけるスタッフ配置計画案(福岡事務所にプラス1名、北九州事務所にプラス2名)を検討するため全員協議会を開催しました(8月26日)。北九州では既に部会集会で承認されていましたが、福岡においては従前全員協議会で協議して回答していたため、これを踏襲したものですが、スタッフ増員についての反対意見はなく、今後はいちいち全員協議会を開催することなく、基本的には県弁執行部と法テラスとの間の協議により対応すべきであるとの意見が大勢でした。 執行部としては前述したように法テラスとの総合的な連携強化という観点に立って、既に飯塚部会の要請として法テラスに提出されている平成22年度における筑豊地区(特に田川)へのスタッフ弁護士の配置等について協議を始めています。
<大連市律師協会との安定した友好交流へ> 大連市律師協会との交流のため9月1日から4日まで中華人民共和国の大連市を訪問しました。当会と大連市律師協会との交流は10数年の歴史がありますが、釜山地方弁護士会とのように正式な姉妹提携がなされていないため、その時々の執行部の判断で断続的なものになっており、今回は3年ぶりの訪問でした。 実は以前、大連市律師協会から両会の交流を促進するために『合作交流意向協議書』の締結が提案されたことがあります。それは、両会の相互交流に加えて、双方が1年程度滞在する数名の留学生を受入れ、その滞在費を受入側が負担するというような重厚な内容を含むものでした。当会としては、そのような財政負担力もありませんでしたし、緩やかではあっても息の長い友好交流関係を樹立することが適切であると判断して、当時、既に姉妹提携を結んでいた釜山方式を提案しました。これに対して「貴会が提案された意見は、両会の交流を進めるために有益であり、ふさわしいものだと当会も考えます。貴会と釜山弁護士会が署名した『交流に関する合意書』のモデルを参考にして当会と貴会の提携合意書に署名することに同意します。具体的な事柄については、当会が派遣する代表団が訪日した際に改めて協議させていただきたいと思います」との返事が寄せられました。1999年4月29日付のものです。 つまり当会が提案した釜山方式による姉妹提携につき相手方も同意され、大連側の訪日団との間で協定調印の実務作業に入ることが予定されていました。ところがその後に行われた大連市律師協会の役員人事異動のために代表団の訪日が延期され、双方の執行部も交替する中で、協定書調印にむけた実務作業が進められないまま今日に至ったというわけです。 今回、大連市律師協会との協議会において、「日本における外国研修生の法的位置」や「日本企業が中国に投資するに際しての中国法上の留意事項」などあらかじめ設定されていたテーマに関する意見交換を終えた後、今後の交流の進め方に関する協議が行われました。その際、当方からは前述の経過を確認的に紹介したうえで、これからの10年にむけて、より安定した交流関係を促進するために、10年前に両会で合意されている協定書の調印にむけた実務作業を進めることについて双方で検討してはどうかと提案しました。もちろん私としては相手方のお国柄を考え、「ご返事は、今日ではなく後日連絡いただければ結構です」と付加えることを忘れませんでした。 これに対して大連市律師協会の張燿東会長は即座に応えました。「当方の事情で調印作業が進まなかったことをお詫びする。私としては今直ぐにでも調印したい気持ちである。9月末に開催する役員会で検討するので協定書のモデル案を送って欲しい」。その日の夜、当方が主催したお礼の宴席で、張会長は更に「私は戦時中でも日記を習慣にするような方がいる几帳面な日本民族を尊敬しています」「できれば来年の2月頃にでも福岡を訪問して協定書の調印をしたい」と申し出られました。 幼少時を大連で過ごされたことのある清原雅彦先生(今回の視察団長)は、大連側の迅速かつ心温まる対応に大きく感動され、何度も杯をかわしながら得意のハーモニカを披露されました。この10数年、一貫して大連側とのパイプ役をされてこられた大塚芳典先生も感慨無量の様でした。 今回の訪問に出かける前の執行部会議では、今後の交流の進め方について議題になる場合には前述のような提案を行うことについての話はしていたものの、相手方から即答されることを想定していなかった私は、帰国の道すがら伊達健太郎国際委員長や服部弘昭北九州部会長始め視察団の面々と対応方針を協議し、帰国直後の執行部会議(7日)と常議員会(9日)において経過を説明して、とりあえず9月末の大連会の役員会に間に合うよう協定書のモデル案として釜山との合意書の中文訳を送付することについて了承をいただいたのです。突然の上程であり手続上問題があることは承知しつつ、対外関係を重視して了承をいただいた常議員会の皆さんに感謝、感謝です。 この月報が発行される10月中には大連側からの回答があり、両会の安定した友好交流にむけて新しい局面が展開していくかもしれません。
<日弁連60周年に「日本の立ち位置」を考える> 日弁連60周年記念式典が東京で開催されました。偶然ではありますが、この日は「9・11」の8周年記念日でした。「日弁連は、こんな日に記念式典をやるなんてすごいですね」と言いながら記念講演をされた寺島実朗さん(財団法人日本総合研究所会長)のテーマは「世界の構造転換と日本の立ち位置」。豊富なデータを示しながらの講演で、極めて示唆に富むものでした。 まず驚いたのは、9・11以来、アメリカが引き起こしたイラク戦争等による米軍戦死者は丁度8年後の本年9月10日までに5、161名(アフガンでの死者822名を含む)に達し、累積戦費の額は実に7,119億ドル(現在でも月60億ドル以上の消耗)。昨年来のアメリカ経済崩壊の原因には良く語られるサブプライム問題のみではなく「巨大な浪費として経済の根幹を消耗させているイラク戦争」があるということです。 日本の貿易構造も大きな変化を。米国との貿易総額の比重は27.4%(90年)、18.6%(04年)、17.5%(06年)、16.1%(07年)、13.9%(08年)、13.6%(09年上半期)と年々逓減。これに対して、対中貿易比重は3.5%(90年)から20.5%(09年上半期)へと大きな伸びを示しており、今やアメリカを抜いています。その背景には、もちろん中国自身の経済成長があります。中国のGDP世界ランキングは1990年10位から2007年3位、2010年には日本を抜いて2位になる見込み。「陸の中国」(中国本土)に「海の中国」(香港・台湾・シンガポール)を加えた「大中華圏」では、2008年GDP(5.1兆ドル)で日本(4.9兆ドル)を凌駕しているそうです。 そうした中で国際的物流にも大きな変化が。2008年世界港湾ランキング(コンテナ取扱量)は、1位シンガポール、2位上海、3位香港、4位深_、5位釜山と並んでおり、福岡とも関係の深い釜山のハブ化が注目されています。私は知りませんでしたが、最近のアメリカから中国へのコンテナの大半は、九州の南方からではなく津軽海峡を通過して日本海を経由し釜山や中国の港湾に入っているそうです。そのため、日本では太平洋側港湾が空洞化し、日本海側が港湾への物流シフトが始まっており、「日本海物流時代」とも言うべき変化が起こっているとのこと。 こうした「構造転換」を前にして、寺島氏は最後に、「太平洋の先のアメリカを通してしか世界を考えられない風潮を改める必要がある」「戦後60数年が経過してもなお外国の軍事基地があることは普通ではない」「偏狭なナショナリズムではなく普通の状態の国家にするための努力をしなければ、日本は世界の人々から尊敬されない」(ドイツではベルリンの壁が崩壊後、米軍基地の撤去に関する話し合いが進められたそうです)と結びました。
<新政権の発足と弁護士会> 明日(9月16日)、日本に新しい政権が誕生します。私たちも、ようやく選挙で与党政権を退陣させるという貴重な政治体験をしました。連立政権合意文書には、「生活保護母子加算の復活」や「労働者派遣法の抜本改正」など当会の総会や常議員会で採択された会長声明等の内容が取り入れられているにとどまらず、最終節の「憲法」は「唯一の被爆国として、日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」と結ばれています。 弁護士会としても、司法制度の改善や基本的人権を擁護し社会正義を実現するという責務に照らして一層活発に社会的提言を行うとともに、それらをストレートに実現させるための政治への働きかけを行うことにやりがいを感じる時代が到来したのかも知れません。もちろん相当な力仕事であることは覚悟の上で。 (9月15日記)

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