弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

社会

2015年12月21日

さらばアホノミクス

(霧山昴)
著者  浜 矩子 、 出版  毎日新聞出版

  小柄な著者の講演を何回か聴きましたが、そのたびに小気味のいい切れ味で、すっかり共感したものです。この本は、著者の語りそのままが活字になっていて、読んでスッキリ、納得できます。
  なんで、こんなアホなアベ首相を支持する人が今なお4割を超えているのか、私には理解できず、不思議でなりません。
  アベノミクスは、経済政策とも呼べない。まともな政策の体(てい)をなしていない。「三本の矢」といっても、矢どころか、的そのものかはずれ。
  アベノミクスは、強さと力と大きさのみ。これらに固執していると、人間不在の世界になる。経済活動は人間の営みなのに、その中で人間が主役になれない。労働者ではなくて労働力。技術者ではなくて技術力。国民ではなくて国力。関心の商店が「人」から「力」へ移っている。
  アベ首相は、アベノミクスは外交安全保障政策と表裏一体だと高言した。防衛費を増すことは考えても、国民福祉の考えはない。防衛費は3年連続で増やし続け、今や5兆円をえている。他方、生活保護費は削減するばかり。
  アベノミクスは、貧乏人を救うためには、金持ちをより金持ちにすることが必要だという。何ともおかしな考え方である。今の日本でやるべきことは、分配政策。豊かさの中の貧困の解消だ。今の日本経済は成熟経済だ。成熟経済に必要なのは、分かち合いの論理であって、奪い合いの論理ではない。一握りの強者が栄えることで、全体が元気になれるという発想は幻想だ。
 政策は強き者をより強くするためにあるわけではない。弱き者の生きる権利を守ることが、その本源的役割だ。
 とても切れ味よく、爽やかな読後感のある小冊子(190頁)です。すぐに読めます。あなたも、ぜひ、ご一読ください。
(2015年12月刊。1100円+税)

2015年12月17日

NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか


(霧山昴)
著者  上村 達男 、 出版  東陽経済新報社

 NHKの籾井会長が今もなお罷面されずに居座っているのが不思議でなりません。
 九大を出て三井物産に入り、副社長にまでなっているので、グローバル人材と言えるはずなのですが、その内実は粗野にして卑、なにかというと怒鳴り散らすという、知性のかけらもない人物のようです。残念です・・・。
 「政府が右と言ってるものを、我々が左と言うわけにはいかない」
 「特定秘密保護法案は成立したのだから・・」
 NHKが政府の方針に反する報道はできないというのは、放送法に明らかに反する。NHKの会長が、そんなことも理解できないとは・・・・。
 籾井会長は、理事全員に日付のない辞表の提出を強要した。それが国会で問題になったときには、理事にカン口会を敷いたが、理事たちが造反して、事実を証言した。
  籾井会長は、人を敵か味方かに分けて、自分を批判する人は、敵だからと受け止める。いかにも単純な二分法なので、これでは議論が成り立たない。
  「不偏不党」「自立と表現の自由の確保」を定めた放送法の精神は、籾井会長とそれに追従する人々によって、危機に瀕している。
NHKの会長は経営委員会によって選任される。著者も3年間、その経営委員12人の一人でした。
従軍慰安婦問題について、籾井会長は、「どこの国にもあったことです」と言い、「日韓条約で全部解決している」と高言した。とんでもない間違いだ。籾井会長は、これを失言と認めるつもりは、今もない。
籾井会長は、人の話を聞けないし、人のいうことが理解できない。だから、議論ができない。建設的なコミュニケーション能力がまったくない。理事が報告書を出しても読まないし、読めない。
今のNHKは、物事をまともに考えている人たちを、何も考えていない人が支配し、結果として、その人たちの人生を好きにもてあそんでいる。
籾井会長は、ふだんからNHKの番組は見ていない。ところが、偏向番組という評価だけは、しっかり認定している。
「俺は宴会は得意だ」。こんなことを籾井会長は言うのだそうです。やり切れませんね。
2015年3月の国会におけるNHK予算の審議においては、それまでの与野党全会一致という原則が崩れて、可否同数になった。実質的には否決されたということ。
日本の文化を世界に発信してきた天下のNHKが、今、泣いています。モミイなんて会長は一刻も早く更迭すべきです。

  
(2015年10月刊。1500円+税)

2015年12月13日

小泉今日子・書評集

(霧山昴)
著者 小泉今日子  、 出版  中央公論新社

  歌手であり、女優としても有名な著者の10年分の書評が本になりました。
  キョンキョンというそうですが、テレビを見ない私には、どんな女性なのか全然知りません。
  「あまちゃん」に母親役で出演していたそうですね。
  でも、この書評はよく出来ていると感嘆しました。文章が生きています。思わず手にとって書評で紹介されている本を読んでみたいと思わせます。そして、著者の息づかいとともに著者の日常生活の一端が伝わってきます。そして、それによって著者を身近に感じることが出来て、親しみを感じるのです。
  紹介されている97冊のうち、私が読んだと思った本は9冊しかありませんでした。
  私は毎年500冊以上の本を読んでいますので、10年間だと5000冊になります。そして、10年以上にわたって1日1冊の書評を書いていますが、それでもわずか1割しか本が重ならないのですね。これは、ホント不思議な気がしました。でも、読書傾向が異なると、そうなるのでしょうね。
  私は、知りたいから読むという感じが強いのです。何を知りたいのかというと、世の中の仕組み、そして人間なのです。まだまだ探求の旅は続きます。
  本を一冊読み終えると心の中の森がむくむくと豊かになるような感覚がある。その森をもっと豊かにしたくて、知らない言葉や漢字を辞書で調べてノートに書き移した。
  本を読めば勉強になるし、頭の中のことではあるけれど、どこにでも行くことができる。未来でも過去でも、ここにはない世界にでも。ただ文字が並んでいるだけなのに、不思議だなって思う。
  同じ日本語を使っているのに、作家ごとに全然違う世界がつくられているというのもすごいこと。
  家から一歩もでなくても、宇宙でもどこにでも行ける。そして、本を読みながら、自分のこと、誰かのことを考える。それが自分にとって大事だった。
  小説はタイムマシーンだ。ページをめくれば、どこにでも、どの時代にも旅することができる。とても贅沢で、かけがえのない時間が、そこにある。
  本は、心を豊かにしてくれます。そして、そんな本を紹介してくれる書評の本です。
  私も、この書評コーナーを2001年から始めました。


(2015年11月刊。1400円+税)

2015年12月 4日

涙のあとは乾く

(霧山昴)
著者 キャサリン・ジェーン・フィッシャー 、 出版  講談社

  日本に住むオーストラリア人の女性がアメリカ軍の兵士にレイプされ、不屈にたたかっているというのは、ときどきのニュースで読んで知っていました。今回、その真相と女性の心境を知ることができました。
 痛ましい話です。誰かが飲みものにデートレイプドラッグを入れたというのです。これって、本当に許せませんよね。冗談として見過ごせる話ではないと思います。
 問題は、日本で起きたレイプ事件が刑事手続でどう処理されるのか、ということです。
 まず、犯人がアメリカ兵だということです。結局、アメリカ兵は、公務遂行とは何の関係もないのに、日本の法と法廷で処罰されることなく、アメリカ本国へ帰ってきました。ひどい話です。日本政府は、それを許しているのです。
 アベ政権が日本国民の安全を守るために安保法制が必要だと言っていますが、それが真っ赤なウソだというのは、これだけでも明白です。
 そして、レイプ被害者は、レイプ状況の再現を求められます。これが「第二のレイプ」と言われるものです。ある意味で仕方のないことではありますが、それにしても、被害者への温かい配慮は必要ですよね。
 そして、著者は日本にレイプ被害者の助けを求めるセンターがないことを憤ります。なるほど、ですよね。著者の怒りはあまりにも正当です。
日本人がアメリカの将兵によって被害を受けたとき、実は日米政府の密約があって、アメリカ人は刑事上も民事上も責任を負うことはない仕組みになっているのです。これが現実の日本地位協定の運用です。日本って、本当にアメリカの従属国なのですね、、、。日米安保条約は、本当に不平等条約そのものです。でも、日本政府さえしっかりしていれば、日米安保条約は通告によって廃棄できるのです。
 アメリカ頼みの平和って、危ないばかりではありませんか。
 個人の安全だけでなく、国の安全までよくよく考えさせられる本になっています。
(2015年5月刊。1600円+税)

2015年12月 2日

下流老人

(霧山昴)
著者  藤田孝典 、 出版  朝日新書

  いま、日本に下流老人が大量に生まれている。下流老人の存在が日本社会に与えるインパクトは計り知れない。
  下流老人とは、生活保護基準相当でクラス高齢者とその恐れがある高齢者のこと。
  下流老人には、次の3つがない。
  第1に、収入が著しく少ない。
  第2に、十分な貯蓄がない。
  第3に、頼れる人間がいない。困ったときに頼れる人間がいない。
65歳以上の一人暮らしが増えている。1980年には、男性19万人、女性69万人だった。2010年には、男性139万人、女性341万人。
  下流老人は、あらゆるセーフティネットを失った状態。
  下流老人には、日本人の誰もがなりうる。つまり、私たちの問題なのである。
  団塊世代より上の層の老人には、日常生活力が驚くほど乏しい。仕事一筋できた男性は老後に離婚しないこと、されないことが必要。
  これからの日本社会には、もはや中流は存在しない。いるのは、ごく一握りの富裕層と大多数の貧困層だ。
  自己責任論、努力不足論が、明日のあなたを殺す。
  下流老人になったのは怠けていたからだ、自己責任だと現役の正規労働者の多くが考えている。しかし、現実はそうではない。
  自民党の片山さつき議員は、生活保護を受けるのを恥ずかしいと思えと言わんばかりのことを言っている。しかし、社会保障制度を利用するのは憲法上の権利であって、何も恥ずかしいことではない。国会議員のインチキパーティーなどで金もうけしているほうがよほど恥ずかしいことではないでしょうか・・・。
  生活に困ったら、困る前に、変なプライドなんか捨てて、公的援助制度を利用すること。
  私も本当に、そう思います。軍事予算が5兆円をこすというのは、福祉や教育予算を切り捨てたうえでのことです。とんでもないアベ政治は許せません。

(2015年10月刊。760円+税)

2015年12月 1日

「大国」への執念、安倍政権と日本の危機

(霧山昴)
著者 渡辺治・岡田知弘ほか 、 出版  大月書店

  アベ政権は本当に怖いと私は考えています。ところが、一般的な支持率が4割もあるというのです。不思議でなりません。安保法制とかTPPや、労働法規制などでは、圧倒的に不評なのですが・・・。
  安倍政権は、戦後の歴代政権のなかで特異な性格を有する政権である。その特異性とは、安倍政権が一方では保守支配層が長年にわたり実現を待望しながらできなかった課題を強行する支配層待望の政権であると同時に、保守支配層が望まないことまでやってのけるという、きわめて扱いにくい政権だという二面性があるから。
  安倍政権は、発足以来、つねにマスメディアに話題を提供し続けている。
  欧米のメディアが注目しているのは、アベ政権のタカ派的言動への警戒と懸念である。
  もう一つは、アベノミクスへの関心である。
  なんとも厄介な政権だということは、一方で、アベでなければ出来ないことをやってくれるが、他方、その制止を振り切って歴史修正主義にこだわるから。
  二つの顔は、当のアベにとっては何ら矛盾していない。それどころか、どちらの顔もアベにとって、なくてはならない顔なのである。
  アベ首相の目指す「大国化」は軍事大国になることを意味する。そのためには、自衛隊の海外派兵の自由は不可欠の土台である。
  アベ政権は、日本の大国化を、あくまで対米従属、つまり日本同盟の枠内で、日米同盟を強化する方向でしか展望していない。アベ首相の言う「強い国家」とは、第日本帝国以外にない。
アメリカのオバマ政権も日本の財界も決断した。こんなアベでなければ、長年の課題達成は無理だ。アベの見るからに危険な顔を前面に出さないようにコントロールしながら、アメリカ政府はアベ政権をいつものように、なんとかの一つ覚えのように全面的に支えてきた。
  アベ政権は、官邸主導の集権的意思決定の体制をつくりあげている。
  自民党は弱体化し、新自由主義の抵抗体とはならなくなった。
  自民党って、かつての民主党と同じほど、古臭くて、非民主的な政党ですよね。
  アベ首相は、全世界を専用機で飛び回っています。しかし、残念なことに、そのとき憲法9条の素晴らしさ、教訓がまったく生かされていません。
「政治主導」を標榜し、官僚機構に敵対した民主党政権のもとで、むしろ、政権の依存度は高まった。
  アベ内閣の閣僚のほとんどが日本会議の国会議員である。
  アベ政権内でハト派の政策と政治的影響力が低下している最大の原因は、グローバル競争国家に対抗する独自の国家構想がないからだ。
  先の9月国会で「成立」した安保法制法については、古賀誠、与謝野馨、加藤紘一、山崎拓など自民党の元有力議員が名前を出して否定ないし消極だった。
                  (2014年10月刊。2400円+税)

2015年11月27日

老後破産

(霧山昴)
著者  NHKスペシャル取材班 、 出版  新潮社

  いまの政治は「貧乏人」に本当に冷たいですよね。まともに税金を払っていない大企業には法人減税をどんどんすすめ、庶民には消費税10%を押しつけようとしています。
  政治って、弱者を保護するために必要なものだと思うのですが、アベ政権のやっていることは弱者切り捨てそのものです。そして、自分もその弱者になるかもしれない人たちが、その自覚のないまま「自己責任」論に踊らされています。
  この本を読むと、老後破産というのが、多くの日本人にとって、「明日は我が身」という状況にあることがよく分ります。その状況はあまりにも寒々としています。
  今のNHKは、モミイ会長の下で、アベ政権にタテつかない報道がひどくなっていますが、それでもまだ、こんな良心的な番組が残っているのを知ると、ほっとします。
  いま、超高齢社会を迎えた日本で「老後破産」ともいえる現象が広がっている。
  「お金がないので、病院に行くのをガマンしている」
  「年金暮らしなので、食事は1日1回。1食100円で切り詰めている」
  現に「老後破産」状態にある人も、実は、みな若いころには、そんなことはありえないと考えていた。元気に働いているし、税金も払っているから、自分の老後は政府がなんとかしてくれるはず・・・と、幻想を抱いていた。
  お金がないから、電気をまったく使わないで生活している人がます。もちろんテレビは見ません。乾電池で聴けるラジオだけ・・・。なんということでしょうか。
  年金を10万円(月額)うけとっているので、生活保護の適用はないと考えている人がいる。まったくの誤解。そして、自宅(持ち家)があるから生活保護は受けられないと考えている人が多い。これも誤解。
  大阪の橋下市長は「生活保護は甘すぎる」と攻撃していますが、とんでもありません。生活保護を受けられるはずの人の多くが申請すらしていないのが日本の現実です。実に冷たい人物です(橋下氏が弁護士だというのが本当に残念です)。
  貧乏したら何が辛いかって、周りの友だちがみんないなくなること。だって、お金がないから食事会やら旅行に参加することができない。誘われるたびに断っていると、次第に断ることが辛くなる。そうすると、顔をあわせなくなる。そのうち誰からも誘われなくなる。
  東京では年収150万円が生活保護の水準。3割をこえる人がそれに該当する。
  配偶者を亡くすと、年金が一人分減ったために生活を維持していけなくなる。
年金も介護保険も、家族と同居するのがあたりまえの時代につくられたもの。今は違う。しかし、制度の見直しはされていない。
  餓死者まで頻発する現代日本社会をとらえたNHKの番組が本になっています。本当になんとかしなくてはいけません。年金一揆が起きて不思議ではないのです。
(2015年8月刊。1300円+税)

2015年11月21日

その時、名画があった


(霧山昴)
著者  玉木 研二 、 出版  牧野出版

  私はテレビは全然みませんが、映画は月1本のテンポでみるようにしています。福岡ではKBCシネマ、そして東京では日比谷シャンテか岩波ホールです。やはり大画面の迫力には圧倒されます。この本は、私より3歳だけ年下の新聞記者による映画評をまとめたものです。その映画がつくられた時代背景やら、日本で封切り上映されたときの社会情勢まで紹介されていますので、2倍楽しめます。
映画と言えば、すぐに出てくるのはチャップリンですよね。私は市民向けの法律講座30年以上も続けていますが、初めのころはチャップリンの喜劇・短編を上映していました。自分がみたかったからです。チャップリン「街の灯」だとか「独裁者」とか、心にしみる映像には心が揺れ動かされます。
 そして、日本映画では、「七人の侍」ですね。私は福岡・中州の映画館でのリバイバル上映もみました。あの雨のなかのすさまじい斬りあいが、なんと東京、世田谷のスタジオにセットを組んで撮られたとは、信じられません。
黒澤明の「生きる」は志村喬の熱演が心に刻み込まれます。人間、何のために生きているのか、しみじみ考えさせてくれます。
 そして、「二十四の瞳」も素晴らしい映画です。少し前に弁護士会のシンポで部分的に上映しようとしたら、そんなことは許されないというのも知りました。
 「男はつらいよ」は、私が大学3年生の5月、東大・本郷の学園祭(五月祭)のとき、教室で第一作をみた覚えがあります。東大闘争が終わってまもなく、学内にまだ殺伐とした雰囲気が残っているなか、腹の底から笑いこけました。映画館で上映されたのは、8月27日からだったとのことです。寅さんが、小学校の同窓会に出たたき、みじめな思いをさせられた話があるそうです(28作)。いい映画でした。
「幸福の黄色いハンカチ」は1977年10月に封切られたとのことですから、もう40年近く前になるのですね。青空に黄色いハンカチが画面いっぱいにはためく様は泣けてきました。高倉健は、これでやくざ映画から脱却できたのでしょうね。
「火垂るの墓」は、わが家ではこれを見なければ大人になったとは言えないと子どもたちに話してきたものです。可哀想で、二度とみたくありませんが、日本人ならみなければいけない映画だと思います。ざっと、いくつかの映画を紹介してみました。私としては、ほかにも「初恋の来た道」とか、いろいろ取りあげてほしい映画もあるんですが、、、。
(2015年8月刊。2200円+税)

2015年11月18日

民主主義ってなんだ?

(霧山昴)
著者  高橋源一郎、シールズ 、 出版  河出書房新社

  シールズの自己紹介から始まっています。
  シールズの奥田くんの父親は北九州の牧師で、ホームレス支援している。NHKの「プロフェッショナル」でも紹介された。その息子として、奥田くんは中学生のときから自宅を出て、沖縄の島で生活し、高校も島根県の小さな町に通っている。たしかに立派すぎる父親をもつと、子どもにとっては息苦しい、息が詰まってしまうのかもしれませんね。
  シールズの前の反原発の運動のときには、ICUと明治学院大学が多かった。
  実は、私の娘もICUの卒業生なのです。ICUって、ちょっと変わった個性をもつ人材を輩出していますよね。
  高橋源一郎は、作家であり、教授です。私より少しだけ年下になりますが、激しかった学生運動のなかで活動していたようです。
  私たちのころは、個人の言葉がなかった。これは、私もまったく同感です。あのころは「我々は・・・、たたかうぞ」と、リーダーが叫ぶのに唱和するだけでした。
  今は、「私は、○○大学の○○です」と名乗りをあげて話し出します。まったく違います。だから、卑劣な個人攻撃も受けやすくなるのです。「ネトウヨ」って本当に嫌な人種ですよね・・・。
  「昔の左翼は、権威を嫌いすぎた。国家権威を忌避しすぎた」 
  これって、どうなんでしょうか・・・・。だって、今の沖縄の状況をみたら翁長知事は県民の総意を受けて正当な職務権限の行使をしていますが、安倍や菅という連中は、権力と税金を私物化していますよね。こんな現実を直視したとき、権威とかが国家権威を嫌ったり、警戒したり、反発するのは当然ではないでしょうか・・・。
  シールズって、組織的なことを何もしていない、あくまでも自然発生的な運動体かと思っていました。ところが、その組織には、たくさんの班があるのですね・・・。デザイン班、デモ班、サロン(イベント)班、コンテンツ班、インターナショナル班、広報班、出版班、物販班、映像班、コールセンター、会計、あとは副司会官。
  私が大学生のころには、学内の集会やデモ行進となると、何千人も集まっていました。全都集会となると、軽く1万人をこしました。それが、その規模までにはいきませんが、今、ようやく近い人数にまで発展してきました。その中心にすわっているシールズの面々の話は、今どきの大学生の気分を知るうえで、大変参考になりました。

(2015年11月刊。1200円+税)

14日(土)午前中、いつものようにフランス語教室に顔を出しました。フランス人講師から何が起きたか知っているかと訊かれました。朝刊を読んでいましたから、地震があったことですかと答えました。鹿児島と佐賀で震度4の地震が早朝にあったのです。いやそんなことじゃないとフランス人講師はネットニュースをみせてくれました。そこで初めてパリで同時多発テロが起きたことを知りました。私もパリは何度も行ったことがあります。娘もしばらく留学していました。そのパリで、レストランや劇場、そして、サッカースタジアムが襲われたというのです。その恐ろしさに声も出ませんでした。これは戦争だと、フランス講師は繰り返していました。シリアからヨーロッパに戦争が拡大してしまったのですね、、、。
アベ首相が余計なことを再び言ってテロリスト集団を無用に刺激しないことを心から願っています。
テロリスト集団は絶対に許せません。でも、私は空爆にも反対です。そして無人機をつかってテロリストを暗殺しても、ほとんど何の解決にもならないでしょう。単に暴力の連鎖を生むだけです。
51ヶ所もの原発をかかえる日本です。テロリストが自爆攻撃したら、もう日本は破滅です。テロリスト絶滅と称して軍事行動をエスカレートさせることのないよう、心から願っています。まわり道のようではあっても、九条の精神で、本格的な民生支援しか国際社会が生きのびる道はないと確信しています。今度、この問題をフランス語で発表することになっています。

2015年11月11日

国防政策が生んだ沖縄基地マフィア

(霧山昴)
著者  平井康嗣・野中大樹 、 出版  七つ森書館

  普天間飛行場移設問題の足下で、総額5300億円にものぼる巨額の公共工事をめぐって、スーパーゼネコンをはじめとする沖縄県内外の土木建築業者、商社らが、少しでもその分け前にあずかろうとシノギを削っている。
  東開発グループの中泊弘次会長は、97年の住民投票で数千万円とも言われる内閣官房機密費を政府から受けとり、地元で差配した。
  それにしても、先日、辺野古の3地区の区長を首相官邸に招いて国が直接に地区へ交付金を渡すことを約束したというのは目を疑いました。これは民主主義国家ではありえないことです。封建制度の殿様なら、自分のお気に入りに手づかみでお金をバラまけたでしょうが、今どき、そんなことをするなんて・・・・。マスコミが、このことをあまり問題にしないのも私には理解できません。これこそまさしく税金の勝手なムダづかいでしょう・・。
  沖縄へ国からおりてくる振興補助金は一部の業者に偏っていて、談合の温床になっている。
  2014年5月、沖縄防衛局は名護漁協に5年間の漁業補助費36億円を支払う契約を結んだ。その前に24億円を提示したが、漁協が難色を示して倍額された。これで辺野古の漁民は一人あたり3200万円を受けとることになる
  実は、アメリカ軍の基地を撤去したら、沖縄の経済は大きく発展することが確実なのです。基地があることでもたらされる新興策は一時的なものでしかない。基地を撤去して、その跡地を利用することによって、雇用が100倍に増えたという実例がある。
  むしろ、アメリカ軍の基地こそ、沖縄経済の発展を阻害している最大の要因なのである。おもろまちでモノレールを降りると広大なショッピングセンターが広がっています。聞けば、ここはアメリカ軍の基地がなくなった跡地だということです。
  戦争ではなく、平和。軍事ではなく民生施設。これこそ、私たちの望んでいることだと思います。ノーモア米軍基地、ノーモア・アベ首相です。

(2015年7月刊。1800円+税)

前の10件 36  37  38  39  40  41  42  43  44  45  46

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー