弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
社会
2007年3月30日
決定で儲かる会社をつくりなさい
著者:小山 昇、出版社:河出書房新社
私と同世代、つまり団塊世代の社長が自分の実践にもとづいて書いたビジネス書です。なかなか説得力があります。
お客様アンケートには、普通を除き、大変よい、悪い、大変悪いにする。普通があると多くのお客がこれにマルをつける。それではアンケートをとる意味がない。なーるほど、ですね。アンケート項目は少ないほうがいいわけですので、これから私も普通はなくします。
やりたいことを決めるより、やらないことを決めると、うまくいく。やらないことを先に決める。仕事でも遊びでも同じ。
なーるほど、ですね。実は、私も同じです。カラオケしない、ゴルフしない、テレビは見ない、二次会に行かない。こうやって自分の時間を確保しています。
接待は、するのもされるのも基本は新宿で、かつ自分の行きつけの店とする。支払いは先方もちでも。店に喜ばれるのは自分。社員がお客様を接待するときには先方の行きつけの店で、ボトルの2本でもお客様の名前で入れるようにする。そうすると喜ばれる。お客様の喜ぶところにお金をつかうのが接待の基本。
ふむふむ、なるほど、そういうことなんですかー・・・。
経理担当者と社長の違いは何か。経理は正確でなければいけないが、社長はアバウトでいい。その代わり早く知ることが大切だ。そうだったんですか。そう言われたら、そうですよね。
支払手形は発行しない。受取手形もダメ。手形ほど怖いものはない。会社にとって、手形は麻薬以外の何者でもない。
この本を読んで大変勉強になったのは、銀行とのつきあいの点です。私も長いあいだ銀行と取引しているのですが、地元の信用金庫などは私の事務所に対して一応の敬意を払ってくれますが、都市銀行となると、ハナにもひっかけられません。いつも悔しい思いをしています。
銀行から融資を受け、毎月きちんと返済する実績をつくることは、経営の安定をはかるうえで、とくに大切なこと。昨年、複数の銀行から融資を受けた。どうしてもお金が必要だったというのではない。借入金額のキャパシティを広げるためのこと。金利が下がったので、月々の返済金利額を固定して、借入額を増やした。
銀行は常に過去の実績に対して融資する。支店長が会社にやってくるのは、挨拶に名を借りた融資のための基礎情報の収集のため。社内の雰囲気が明るいか、社員は元気そうか、などを見ている。たとえば、赤字企業の社員は一般に来客に挨拶しないものだ。
こちらから、毎月、銀行に出かけていって支店長に挨拶する。毎月の定期訪問で注意深く観察を積み重ねると、次第に銀行の状況も察しがつくようになる。
銀行訪問は、午前中がいい。午後2時以降は、銀行は忙しい。また、月末や月初め、そして5日、10日は外す。一行につき1回20分まで。銀行に内情を話すときは、悪いことを先に話し、よいことは後に話す。人間は最後に聞いたことが印象に残るから。
銀行からお金を借りるときには、根抵当権ではなく、抵当権で借りるほうがよい。担保は金融機関がもうけるための仕組み。ただでさえ、借り主は不利な構造だ。
銀行は晴れの日には傘を貸す。しかし、雨の日になったら傘を返せと言い出す。銀行を自社のチェック機関にする仕組みをつくりあげる。銀行に判断を仰ぎ、自分のチェック機関にする。なにしろ銀行は同業他社をたくさん見ている。その事業が伸びるかどうか、融資しても大丈夫かどうかを常に考えている。冷静かつ客観的に判断するという点では銀行に勝るところはない。
この会社の定着率の高さは驚異的です。2004年から2006年まで、3年間で28人の新卒社員が入社し、辞めたのはたった1人だけというのです。信じられません。
こちらの指示に対して、即座に行動できない人はダメ。どんなに成績が優秀でも採用しない。社長と同じ価値観を共有でき、素直な人材、こんな人を採用する。優秀な人間は、とかく他人の話を聞かないもの。
ふむふむ、なーるほど、なーるほど、いろいろ弁護士としても教えられること大でした。
自分を護る力を育てる
著者:宇都宮英人、出版社:海鳥社
著者は熊本出身で、いまは福岡で弁護士をしています。高校時代から空手を始め、京都大学空手部の副監督。そして子供たちに空手を教える日の里空手スクール代表として、長く大活躍中です。英語・中国語など語学も堪能な、異才の弁護士です。
この本は2冊目。著者より贈呈を受け、早速よみました。長く空手道にいそしんできた著者による実践的な護身術の心構えの本です。被害者だけでなく加害者にならないようにという複眼的な思考法が説かれている点がユニークです。
身を護るとは、生命、身体、自由を侵害しようとするなど、人の尊厳を脅かす行為に対して、被害者にも加害者にもならないようにすること。他人の尊厳を脅かす行為を自らしないことが、自分の尊厳を脅かす行為を防ぐことになるだけでなく、自分の尊厳を脅かす行為を防ぐことが、他人の尊厳を脅かす行為をしないことにも結びつく側面がある。
人の尊厳とは、生命、身体、自由など、人としてかけがえのないものであり、また、代わりのきかないもの。侵すことも、侵されることもできないもの。人としての価値を構成するのが人の尊厳。人としての尊厳は個人にしかなく、会社などの法人にはない。
他人を脅かさないだけでなく、自分をも脅かさない。護身には、自分から自分を護るという側面がある。
護身に必要な力は、人の尊厳に対する認識力、想像力、判断力、行動力、勇気、集中力、自己制御力、コミュニケーション力という言葉が連なる。
このような力を生み出す源泉として、からだ、ことば、心という三つの要素が重要だ。
現実の危険に対する回避行動は、どんな危険が生じているかを瞬時に把握し、その危険に対応する必要がある。護身において求められる身体技術は、瞬時に劇的な行為をとること。なるほど、そのために日頃から訓練しておくわけですね。
相手からの身体拘束を弱めるには、息を吐き、リラックスした状態になることが必要。それで自分の身体がいくらか小さくなり、相手の身体との間に隙間が生まれ、拘束が弱まる。この小さな空間が生まれることで、技を仕掛けやすくなる。
自分がリラックスすることで、相手方の力が弱められる。こちらが力を入れれば相手方に力が入るし、こちらが力を抜くと相手方の力も抜けるという相関関係にある。
相手方の身体的・精神的なバランスを崩すのは、静的な力ではなく、力の落差である。
空手の技法をことばで表現すると、次のようになる。短い時間と距離で、身体の力を抜いた状態と力に満ちた状態との転換を可能にし、その落差によって顕在化される身体のエネルギーを相手方の特定部位に伝えて相手方を崩したり、相手方に打撃を与える技術。そして、その時間と距離とを限りなくゼロに近づけていくのが技術の目標。
空手の本質は、護身にある。
さすが、空手道に40年以上も精進し、長く子どもたちに接しているだけのことはあるとつくづく感服しました。
2007年3月23日
世界をリードするオンリーワン中小企業
著者:木村元紀、出版社:洋泉社
日本の中小企業は、世界市場でも大いにがんばっているのですね。この本を読んで、そのことを知って、なんとなくうれしい気分になりました。
私は年2回の人間ドッグで胃カメラを飲んでいます。私の場合、麻酔の注射をうってもらいますので、すぐに意識が薄れて痛みも何もなく、いつのまにか検査は終わっているという感じです。ところが、胃カメラのような長いチューブを喉から差し込むのではなく、小型カプセルを飲み込むだけ、しかも身体の中から生中継できるというのです。驚いてしまいます。いえ、もう実用化されているというんですよ。すごいですね。
飲み込んで排泄されるまでの7〜8時間にわたって、体内の様子を撮影でき、リアルタイムでモニターできる内視鏡なのです。「ノリカ・3」は、大きさが23×9ミリ。照明用の発光ダイオード(LED)を3種類そなえ、解像度の高いCCDカメラで一秒間に30コマの動画が撮影できる。電池は不要。無線で体外から電力を供給する。
患者はコイルを埋めこんだベストをつけて大きな固定子とし、体中に入るカプセル全体を小さな回転子とする。患者の着るベストは、撮影した画像の受信、電力の無線伝送の役割も果たす。これはスゴーイ、そう思いました。体の外から体内で電気を起こさせたり、遠隔操作するというのです。まさしく逆転の発想です。
さらにすすんだものには、中央内部の二重構造になったカプセルの内筒の中央部分に 360度回転するレンズが付いている。
痛みを感じさせない超極細注射針。注射で痛みを感じるのは、針先か神経の末端である痛点にあたるから。この痛みを感じさせない注射針は、毎日、インシュリンを注射しなければいけない糖尿病患者を大きく励ますものだ。
実は、アメリカは中小企業の比率が高い国だ。従業員数は比率でみると、日本と変わらない。むしろ、大企業から独立した企業が多い。アメリカのGDPは日本の3倍。中小企業の数は3.5倍、個人事業主は6倍近い。
いまの日本の国内企業の最大の問題は後継者。創業者は、今や65〜70歳となっている。どこも跡継ぎがいないと頭を痛めている。弁護士会でも、今、この問題に取り組もうとしています。中央では中小企業庁とタイアップし、福岡では商工会議所との提携を考えています。
団塊世代の定年と日本経済
著者:樋口美雄、出版社:日本評論社
団塊世代とは、狭義には1947年から49年までの3年間に生まれた人のこと、人口にして691万人、就業者数にして539万人。他の世代に比べて2〜5割も多く、日本の全人口の5.4%、全就業者数の8.6%を占める。
団塊世代の出生数は806万人。もっとも出生数が多かったのは1949年で270万人。2003年に生まれた子どもは112万人だったから、その2.4倍である。団塊世代が生まれた出生地は、東京都49万人、北海道46万人、福岡35万人、大阪32万人、愛知32万人、となっている。あれー、福岡って多かったんですね。筑豊や大牟田に炭鉱があったせいでしょうね。1950年時点で734万人となり、1975年には、711万人だった。その後の30年間に172万人が死亡している。
アメリカは、日本と少し事情が異なる。アメリカのベビーブームは1946〜1964年の18年間。長期にわたって毎年350〜400万人が生まれた。イギリス、イタリア、フランスは日本と同じ3年間がベビーブームだった。
団塊世代の女子が生んだ子どもは676万人。単純にいうと、自らの世代よりも130万人少ない子どもを残したことになる。
これから退職一時金として5.5兆円、年金給付1.4兆円の合計7兆円の退職給付が毎年支給される。
団塊世代の未婚率は、最近の世代に比べると低い。団塊世代を世帯主とする世帯は、 2000年時点で、夫婦と子ども世帯(子どもは平均2人)が4割以上と、もっとも多い。子どものいない夫婦のみ世帯と、離婚や死別などによる単独世帯があわせて3割もある。
東京圏の団塊世帯数は、この5年間で2万世帯増加し、持家率も6ポイント上昇している。団塊の世代は、その上の世代に比べて、三大都市圏とりわけ首都圏に偏在して居住している。
1980年代後半までは、日本の純家計貯蓄率は世界最高だったが、その後、低下し続け、今では絶対的にも相対的にも高いとはいえない。日本人は、以前は貯蓄好きだったがもはや貯蓄好きとはいえない。
また、日本人は以前は借金嫌いだったが、近年は借金好きになっている。むしろ、日本人はG7加盟国の中でもっとも借金好きなのである。
あれれ、日本人って、すっかり変わってしまったんですね。
実は、私も来年、ついに還暦を迎えることになりました。ええーっ、そんなー・・・、と叫びたい気分です。先日、鏡を見て自分の顔を眺めたとき、眉毛に白いものを見つけて驚きました。初めは、何か糸くずがついていると思ったのでしたが・・・。まだ気はしっかり20代なんですが、お腹の出っぱりを見ると、そうでもないのを実感させられます。
トヨタ・レクサス惨敗
著者:山本哲士、出版社:ビジネス社
レクサスを運転していて、とても腹が立ちました。ええっ、この車は運転する人間をバカにしていると思いました。なにしろ、ひどいときには10分おきに「販売店からのお知らせがあります」というアナウンスが流れるのです。これでは、まるでレクサス様の奴隷のようなものです。せめて車のなかのプライベート空間くらい、自分の好きなように放っておいてほしいのです。にもかかわらず、次から次へコマーシャルを流しこみ、ご主人様はレクサス様であるなどというご託宣を並べたてられた日には、ストレスがつのるばかりです。
この本を読んで、レクサスが日本で売れないわけが分かりました。レクサス(トヨタ)は勘違いしているのです。
販売店からの案内というのは、テレマティクスというのだそうです。
テレマティクスとは、移動中の自動車でも家庭や職場と同じようにインターネットを介して情報やコンテンツを楽しんだり、メールをやりとりできるようになるというビジネスモデルのこと。実際には、トラブルの双方向データ通信、タイヤやオイル交換データの告知といった程度、そして、それに毛の生えた余計な情報提供があるだけ。自動車会社には、これによって顧客情報が常に得られ、顧客との関係が継続することで顧客の囲いこみができるという思惑がある。
私は車内では一人静かにシャンソンを聞いて楽しみたいのです。それを途中で遮られたくなんかありません。そして、今は、NHKフランス語講座のCDを聞いて、同じテンポで発音する訓練をしています。その邪魔をしてほしくはありません。
アメリカではレクサスは大いに売れた。すでに年間25万台をこえ、年間30万台に達しようとしている。アメリカでレクサスは通算100万台売れるまで10年を要したが、その後、通算200万台を4年で達成している。アメリカの自動車市場のうち高級車市場のシェアは、1990年代の8%から現在は11.4%にまで伸びており、レクサスは断然トップの 14%を占める。
アメリカ・レクサスのユーザーたちは巨額の資産をかかえる富裕層ではなく、年収10万ドルの層だ。2001年、アメリカでは年収10万ドル世帯が10年前の10%から14%へと伸びた。この層は、社会への自己主張がクルマを選ぶのではなく、有用性、性能、資産価値などで信頼できるブランドを自分のために求めるよう、はっきりと変わってきた。
アメリカ・レクサスは、日本トヨタのモノづくりにまったく相反して、アメリカの自動車市場に対してもまったく相反する世界をつくり上げたことによって大成功をおさめた。
レクサスを扱う店に行くと、そこが自分のとってパブリックな空間で、自分が自然にプライベートな存在になれることを好んで、アメリカ人はレクサスのディーラーショップに通いつめる。
アメリカ・レクサスは、オーナーたちに生活の快感をもたらすシステムを設計し、構築した。アメリカでレクサスが成功したのに対して、ヨーロッパではマイバッハが成功をおさめている。マイバッハの価格は4000万円とか5000万円、マイバッハのセールスセンターは、一日に一人しか予約を入れない。一人にだけ徹底する完全予約制だ。
日本のレクサスは高級車ではない。レクサスを販売する営業マンの教育のためにエアラインの客室乗務員を呼んで人材研修を行ったことを著者は痛烈に批判しています。レクサスに求められている最高のサービスが何百人もの客を数人で対応しているエアラインの客室乗務員から学べるとトヨタが考えているとしたら、それこそ笑止千万だ。
日本の富裕層は、レクサスのクルマとしての素晴らしさを理解しているが、見せびらかしたい相手である一般大衆層のほうがレクサスを高級車として認知していないために、買おうとしないわけである。
クラウンやマジェスタなどトヨタの上級車のオーナーがレクサスに乗り換えただけ。外国車からの乗り換えは1割ほどしかいなかった。
クルマは、今や単なるモノではないという指摘はあたっているように思います。レクサスがアメリカで売れているのに、日本でなぜ売れないのか、その分析は鋭いと思いました。
2007年3月20日
変貌する財界
著者:佐々木憲昭、出版社:新日本出版社
日本経団連の分析。これがサブ・タイトルの本です。どうせ、固くて紋切り型の分析だろうと、まったく期待せずに読みはじめたところ、どうしてどうして面白い。いえ久しぶりに知的興奮を覚えてしまったほどです。いやあ、そういうことだったのか。なーるほど。ついつい、何度も膝をうってしましました。
わずか20頁の序章に、この本の要約がなされています。その部分だけでも読む価値があります。もっとも、それを読んだら、もっと詳しいことが知りたくて、やっぱり本文も読みたくなると思いますが・・・。
日本経団連は、1002年5月に旧経団連と日経連が合同して発足した。役員の人数は13人から30人へと増えた。
経団連の役員を出している大企業の正規従業員数は、1970年に4万人超だったのが2006年には1万5千人と、36年間で3分の1に減っている。
ちなみに、日本の企業の正規従業員は、1997年にピークで3812万人だったが、2006年には3340万人。472万人も減っている。これに対して、非正規雇用者は、1997年に1152万人だったのが、2006年には1663万人となった。511万人も増加している。
海外に進出した日本企業は、進出先で1980年の72万人から2002年の 341万人へと現地雇用を5倍近く増大させた。日本企業の海外での雇用の63%はアジア地域である。
経団連の会長・副会長企業1社平均の輸出・海外売上高は、1970年に1761億円、2006年には3兆776億円となった。36年間で17.5倍となった。巨大企業ほど、海外市場への依存度が高い。経団連役員の所属企業は、国内市場から海外市場へと販売先を大きくシフトさせている。海外売上依存率が一番高い企業は日本郵船で82.5%。次いで本田技研工業80.4%、キャノン75.5%、ソニー70.7%、トヨタ自動車 68.0%、松下電器産業 1.4%。
最近、アメリカと日本の貿易摩擦の話が聞かれない。なぜか?
日本の輸出先に大きな変化が起きたから。1980年にアメリカ向け24.2%、アジア向け28.1%(うち中国向け3.9%)。ところが2005年には、アジア向け 48.4%(うち中国向け13.5%)。アメリカ向けは22.6%に低下している。
アメリカ自身の貿易収支が、1990年代以降、対日赤字より対中・対アジア赤字のほうが大きくなった。2004年におけるアメリカの対日貿易赤字は756億ドル。これに対して対中国貿易赤字は1619億ドル、東アジア全体の貿易赤字は2225億ドル。なーるほど。
日本企業の海外現地法人数は、1981年の2631社から、2004年の 1万2890社へと5倍に増えている。
日本経団連の役員を構成している巨大企業の発行済み株式のうち、すでに3割が外国資本の手中にある。日本経団連トップクラスの巨大企業ほど、その株式を外国資本によって保有されるようになっている。
外国人株主比率が一番高いのは、オリックスで57.33%。なんと、あの政商の宮内義彦の会社ではありませんか。道理で、いつもアメリカの要求どおりに何でも規制緩和しろ、自由化しろと声高に叫びたてるわけです。2番目は、日本経団連会長のキャノンで 51.73%。続いてソニー48%、武田薬品41%、三井不動産37%、日立製作所 36%、住友商事 34%、住友化学30%、イトーヨーカ堂30%。トヨタ自動車も 23%。役員企業26社の平均をみると29%という高さ。
今や、株主10位以内に外資の入っていない企業のほうが例外となっている。うむむ、そうだったんですかー・・・。
日本経団連のなかで指導的な役割を果たしている役員の所属する多くの企業が、外資によって株式の主要な部分を保有され、少ない企業の経営を直接支配されるに至っている。こうして、日本経団連企業の多くは、アメリカを中心とする多国籍企業の強い影響を受け、日本経団連は、全体として日米多国籍企業の共同の利益代表としての生活をいっそう強めている。
日本経団連の御手洗会長は就任挨拶で、官や国への安易な依存心を持つな、と述べた。ええーっ、じゃあ、自分たちはどうなんですか?巨大企業は、税金を大幅に引き下げてもらい、銀行のように法人税を一円も払っていないうえに、ガッポガッポと補助金を国に出させているじゃありませんか。よく言うよ。ホント、そんな気がします。
小泉首相(当時)は、奥田会長(当時)に対して、日本経団連の献金は一番透明だ。企業が政治家や政党へ協力することを禁止したら、税金で活動するしかなくなってしまうと語った。えーっ、そんな、バカな。企業献金なんて、アメリカでも認められていないものですよ。投票権もない企業が政党へ献金するということは、営利本位の企業が政治を左右して、弱者を切り捨てるということになるだけです。
税金で政党を支えているのは、既に現実です。例の政党助成金です。国民一人あたり 250円支払ってうみ出されている政党助成金をつぎこんで自民党のCMやホームページがつくられている。国民ごまかしのイメージ作戦の資金源は、実は国民が負担している。これを知ってホント腹が立ちました。
民主党も日本経団連に対して10億円もらおうと必死だということです。
自民党も民主党も、日本経団連の丸がかえだということがよく分かります。
政党が国民の税金から成りたっているなんて、よくよく考えたら、ホントおかしなことです。やっぱり政党助成金なんて、すぐに廃止すべきだとつくづく思いました。
2007年3月19日
10歳の放浪記
著者:上條さなえ、出版社:講談社
ボロボロ泣けてきました。だって、わずか10歳の少女が父親と二人して一泊100円の簡易宿泊書を泊まり歩いたり、食べるものにも困った状況のなかで、けな気に生きていくのですよ。タダで映画館に入って、マティーニにあこがれたり、パチンコ店の店員から玉を大量放出してもらい、それをヤクザの兄ちゃんが高く買ってくれ、そのお金で夕食を買って父親の待つ宿泊所へ戻ります。父親は妻に捨てられ、やけになって酒浸りなのです。
そんななかでも彼女のえらいところは、決して希望を失わず、少女らしい夢を抱き続けたことです。私より少し年下の団塊世代の女性です。私は読んだことがありませんが、今では立派な児童文学作家となっています。
1960年の秋から翌年の秋までの1年間、わたしと父はホームレスだった。わたしは10歳で、父は43歳だった。
今夜はここに泊まるしかないんだ。駅のベンチで寝るよりは、ずっとずっと天国だよ。 おとうちゃん、明日はご飯を食べられる?
父は、明日は明日の風が吹くさ、としか答えてくれなかった。
子どもって悲しいよね。大人に決められたら逆らえないし、どんなにいやなことだって、がまんしなくちゃならないんだもん。
うーん、そうなんですよね・・・。そう言われると、本当に返す言葉はありませんね。
母はわたしに約束した。一つお泊まりしたら迎えに来ることを。
お母ちゃん、本当に一つお泊まりしたら、お迎えに来るんだよね。
ええ、だから、いい子にしててね。
次の日、私は午前八時半に家を出て、バス停に向かった。昨日は、何か母に急用ができたんだとわたしは思った。だから、今日はきっとわたしを迎えに来てくれる。
バスは一日三本。午前九時、午後三時、午後五時。わたしはその時間になると、バス停に出かけて母を待った。
十日過ぎても、母は迎えに来なかった。それでも、一日三回、雨の日もわたしはバス停に立って待った。他にすることもなかった。
二十日たっても、バス停に母はあらわれなかった。わたしは、とぼとぼとおじさんの家に帰った。
わたしがたまたまバス停に行けなかったとき、突然、母が姿をあらわした。やっと迎えに来てくれたのだ。夜、わたしは母と一つの布団に入った。でも、母はわたしが期待したような言葉はかけてくれなかった。
あなたのお父さんのせいよ。
母はひとことそう言うと、長旅を疲れたのか、すぐに寝息をたてた。
それでも、わたしは幸せだった。広い八畳間に一人で寝る怖さから解放されて、ぐっすり眠った。
ほんと、このくだりはいじらしいですね。私も小学生低学年のころ、田舎のおじさんのところに泊まりに行って、広い八畳間にひとり(本当はすぐ上の兄も一緒だったと思うのですが・・・)寝て、怖い思いをしたことがあります。自宅にいる両親が火事にあって二人とも死んでしまって天涯孤独の孤児になってしまったら一体どうしよう、これからどうやって生きていったらいいんだろうと真剣に心配したのです。そのことを、ついこのあいだのことのように、私は今もはっきり覚えています。といっても、翌朝になると、そんな心配はすっかり忘れて、また一日中、魚つりしたりして楽しく遊んだのですが・・・。
父がわたしにクリスマスのプレゼントとしてくれたのは、十円玉一枚だった。そんな父と早く別れたいと思った自分を、わたしは冷たい人間だと思った。
映画館に入るときには、「あのう、お父さんが中にいるんですが、探していいですか?」と切符切りの女性に言う。すると、簡単に映画をタダで見れた。
わたしは、映画に出てくるマティーニを大人になったら飲みたいと思った。その夢のために、今この生活に耐えようと思った。父が「死のうか」と言ったとき、わたしは、「やだ。まだマティーニを飲んでないもん」と首をふった。
お金がない。パチンコ店の前を通ると、パチンコ玉が5コ落ちていた。わたしは台の前にすわってはじいた。台のうしろからニキビのたくさんある若い男が「どうしたの?」ときいた。わたしが「お父さんが病気で」とこたえると、そのうち、まるで台が壊れたように玉が出てきた。それを景品に換えるとヤクザの兄ちゃんが、45円で買ってくれた。
結局、わたしは父からすすめられて養護学園に入ることになった。
今はすべてをあきらめてがまんするけど、いつかきっと幸せになるんだと心に誓った。
わたしは自分の子ができたら、こんなかわいそうなことはしないと思った。
学園ではいじめにもあった。でも、いじめなんてなんでもない。それより、帰る家のない、明日泊まる所や食べることの心配をする生活のほうがどれだけ大変かと、子ども心に思っていた。毎日、寝るところがあり、三度の食事があり、勉強できる日々に感謝した。
やっぱり子どもから夢を奪ってはいけませんね。この本を読んで、つくづくそう思いました。私も一度だけ絵本を出版しました(残念なことに、例のごとく、ちっとも売れませんでした。私のせいではありませんが、その出版社は倒産し、先日も、破産管財人の弁護士から破産手続が終了したという報告書が送られてきました)。
著者は、小学校教員を経て37歳で児童文学を書いて、昨年10月までは埼玉県教育委員長もつとめました。すごいですね。見事にたちあがったのですね。拍手を送ります。
先日、マサイの男性と結婚した日本人女性の本を紹介しましたところ、著者よりメールをいただきました。近く福岡でも公演する企画があるということです。詳しくは著者・永松さんのHPをご覧下さい。http://massailand.com
2007年3月16日
千年、働いてきました
著者:野村 進、出版社:角川ワンテーマ21・新書
世界最古の会社は日本にある。創立578年。えっ、いつのこと。西暦578年です。これはなんと、飛鳥時代なのです。うむむ、そんな・・・。
大阪の金剛組という建築会社で、飛鳥時代から、寺や神社を建てつづけてきたのです。ですから、創業1400年をこえています。すごーい。
ところが、この日本最古、いえ世界最古の会社が最近、破産申立したというのです。しかし、周囲が助けました。なんとか金剛組は存続することができました。
金剛組の創業者はコリアンです。といっても、聖徳太子(実在の人物なのか疑問もあるようですが・・・)に招かれて朝鮮半島の百済からやってきた3人の工匠のうちの一人でした。
日本には、ほかに創業1300年の北陸の旅館、1200年の京都の和菓子屋、
1100年の京都の仏具店、1000年の薬局という店がある。創業100年以上だと 10万社以上あると推定されている。
ヨーロッパの最古の企業は1369年設立のイタリアの金細工メーカー。創業640年。これより古い日本の企業は100社ほどある。
韓国には三代続く店はない。中国の最古の店は337年前に設立された漢方薬の北京同仁堂。
日本の10万軒をこえる創業100年以上の老舗のうち、およそ4万5000軒が製造部門。ここに日本の老舗の特質がある。職が尊ばれるのは、アジアでは日本くらい。
1グラムの純金を太さ0.05ミリの線にすると、3000メートルになる。コンピューターの集積回路の接合部に金の極細線がつかわれている。太さは10マイクロメートル。人の髪の毛は80マイクロメートルなので、その8分の1の太さだ。これを日本の田中貴金属がつくっている。
ケータイの折り曲げ部分に使われている銅箔(どうはく)は、日本企業であるメーカー2社で世界のシェアの9割を占めている。
捨てられた不用のケータイを集めたゴミの山には1トンあたり280グラムの金がふくまれている。日本で採掘されるもっとも品質の高い金鉱でも1トンから60グラムの金しかとれないから、その4〜5倍も金がとれることになる。つまり、ケータイのゴミの山は、まさに金鉱そのものなのだ。
また、ケータイには、1キロあたり200〜300グラムの銅もふくまれている。これと同じ量を天然の銅鉱石から得るためには10キロが必要となる。
農林業関係者からひどく嫌われているカイガラムシは、真っ白なロウを分泌する。これは光沢があり、化学的にも安定している。これが、防湿剤や潤滑剤そしてカラーインクの原料として有望なのだ。老舗の会社が、研究・開発をすすめているのです。
同族経営・非上場には強みがある。社長が替わらない。株主の顔色をうかがわずにすむ。だから、長期的な視野で研究開発にのぞめるし、ハイリスク・ハイリターンのテーマに長期間、資金を投入することができる。むしろ、同族経営・非上場でないと、画期的な独自の研究開発はとても不可能だ。
長生き、元気で若く、女性の支持がある。この三つにマッチする商品は絶対売れる。女性がダメというものは絶対に売れない。
うまくいっている老舗は、不思議なことに三世代同居という経験をつんでいる。
日本人が昔からものづくりを大切にしてきたこと、そのためには必ずしも血縁ばかりを重視せずに伝統を絶やさないよう工夫してきたことなどの分かる、とても面白い本です。
2007年3月13日
企業舎弟・闇の抗争
著者:有森 隆、出版社:講談社α文庫
この本を読むと、日本社会の隅々にまで暴力団がいかにはびこっているのかを知らされ、ホント、嫌になってしまいます。そのうえ、暴力団の繁栄を支えているのが、実は、大銀行などれっきとした金融機関だというのですから、この世の中どうなっているのか、腹立たしい限りです。どうりで暴力団ひとり景気がいいわけです。税金だって払っていないのでしょうからね。
企業舎弟とは、企業経営者の仮面をかぶった暴力団の弟分のこと。そんな経営者が率いている企業をフロント企業と総称する。表向きは一般の会社であり、役員はヤクザではない。働いている人も普通のサラリーマンである。だから、暴力団が関係しているとは、一見しては分からない。だけど、もうかったお金を裏で暴力団に上納し、その有力な資金源となっている。
会社が厄介なトラブルに巻きこまれたとき、暴力団が登場して会社を守る。これをケツ持ちという。ケツ持ちとは、カネで雇われた用心棒ではない。上納金を受け取る権利のこと。ケツ持ちが出てきたとき、初めて会社の正体が分かる。
日本における経済ヤクザの代表選手が東の石井、西の宅見。稲川会二代目会長の石井進(故人)と、山口組のナンバーツーだった宅見勝(内部抗争で殺された)。
関西裏社会のドン、許永中が狙い定めた相手を籠絡する手口は、二段階に分かれる。最初に大金をつかませ、相手を金縛りにしてしまう。そして、引き出した資金の一部をキックバックして、相手(個人)にもうまい汁を吸わせる。その手法は単純明快だ。
住友銀行からイトマン・グループへの融資は5549億円にのぼった。このうち少なくとも、3000億円が仕手資金や不動産の購入資金の名目で闇の勢力に流れた。大銀行が5500億円もの巨額のお金を焦げつかせても倒産しなかった秘訣は、政府が税金を投入したことにあります。そして今、大銀行は空前の利益をあげているにもかかわらず、一円の法人税もおさめていないというのです。ホントに間違った政治ですよね。そして、大銀行は税金を国におさめないかわりに、自民党などへ多額の政治献金をしているのです。
エースとは、裏世界が表世界へ送り込んだ切り札のこと。企業に喰らいついたエースは、手形の乱発、無担保融資、会社資産の売却など、あらゆる手段をつかって企業の資産を外に持ち出す。持ち出した資金の受け手は、もちろん裏世界の人間だ。喰いものにされた企業は借金漬けになって破綻する。
料亭の女将への巨額融資が焦げ付いて問題になったことがありました。1991年のことです。このとき、国内信販の副社長が興銀に女将(尾上 縫)に紹介した。
尾上の架空預金証書は、合計40通、7425億円分が偽造された。大きすぎて、とても考えられない金額です。
1993年8月、和歌山市で阪和銀行副頭取が射殺された。
1994年2月、富士写真フィルムの専務が刺殺された。
1994年9月、住友銀行の名古屋支店長が自宅マンション前で射殺された。
企業に対するテロ事件は、ほとんどが未解決。捜査当局は、もう2人か3人、死者が出ないと銀行は本当のことをしゃべらないと語った。
これらの死によって、関西の金融機関は闇社会への2000億円の融資の回収を断念した。なんと、なんと、許せませんよね。銀行は、それほど裏社会とダーティな結びつきがあるというわけです。
殺害犯人は今も捕まっていません。外国からきたプロのヒットマンではないか。日本の闇の勢力が金で雇ったのではないかと推測されています。
国内信販は、バブル期に不動産融資にのめり込み、そのため、不良債権の山を築いた。
暴力団のからむ瑕疵物件に、楽天の名前がたびたび登場する。
楽天KCは、私の法律事務所も日頃ちょくちょく相手方となるクレジット会社です。こんな暗い過去があるということを初めて知りました。
それにしても、日本の大銀行がこんなにまで暴力団と密接に結びついているのを知るのは不愉快きわまりありません。
2007年3月 2日
腐蝕生保
著者:高杉 良、出版社:新潮社
生命保険会社のドロドロした内実が、これでもか、これでもかと暴き出され、本当にいやになるほどです。でも、この先いったい主人公はどうなるんだろう、どうするのかという思いに負けて、ついつい読みすすめてしまいます。さすがは企業小説の大家だけあります。たいした筆力です。上下2巻あり、1巻が400頁という大部の本をあっという間に読み終えてしまいました。
生保の社長がアメリカ視察に行く。ゴマスリ幹部が、社長の愛人も現地で同行するように手配します。まるで、会社の私物化です。それでも、そんなゴマスリ幹部は社長の覚えが目出たくて、どんどん出世していくのです。
そんなー・・・と思いつつ、これが企業の現実のようです。苦言を呈する輩は、どんどん閑職へ飛ばされていき、ワンマン社長の周囲にはイエスマン重役しか残りません。やる気のある若手はそんな上部の腐敗ぶりに嫌や気がさし、さっさと他の会社へ転職していきます。そんな勇気も自信もない人は、うつ病になったりします。ノルマに追われるのです。 生保レディは、契約とってなんぼの苛酷な世界に生きています。そこでは、やる気のあるレディーを確保し、成績をあげることのみが数字で追求されています。生保レディーは、また入れ替わりが極端に激しい世界でもあります。
苛酷な競争が強いられるなか、架空契約、色仕掛け、なんでもありの世界が生まれます。
自爆とは、業績をあげるため、あるいはノルマを達成するために、架空契約をつくって保険料を自腹を切って支払うこと。
イラクではありませんが、自爆は日本の生保業界では昔から横行しているのです。
ノルマを達成しきれない営業所の責任者はついに夜逃げし、自殺に走ってしまいます。まさしく悲劇です。でも、その悲劇を踏み台にしてのし上がっていく幹部もいます。企業犯罪とまではいきませんが、こんな企業の実態をそのまま是認していいとはとても思えません。鳥肌が立ってしまうほどの迫真の経済小説です。