福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2024年7月10日

旧優生保護法最高裁大法廷判決を受けて、全ての優生手術被害者に対する被害回復の実現を求める会長声明

声明

2024年(令和6年)7月3日、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法違憲国家賠償請求訴訟について、同法のいわゆる優生条項が憲法13条及び14条1項に違反することを明らかにした上で、被害者らの賠償請求を認容する判決(以下「本判決」という)を言い渡した。

旧優生保護法は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」として1948年に制定された法律である。
同法が個人の尊厳と人格の尊重を定める憲法13条、法の下の平等を定める憲法14条に違反することは明白であるが、1996年に母体保護法に改正されるまでの48年間もの長きにわたって存続し、その間、少なくとも約2万5000人に不妊手術が実施されたほか、優生思想に基づく教育がなされるなどの優生政策が推進されたのである。
その結果、日本の社会には優生思想が深く浸透し、今もなお障がいを有する人々に対する根強い偏見差別が存在している。
国は、優生保護法が改廃された後も、不妊手術の実施なども「かつては合法であった」などと強弁し続け、国連や日弁連の勧告などにも耳を貸さなかった。
それでも、2018年に不妊手術を受けさせられた被害者が仙台地裁に国家賠償請求訴訟を提起したことがきっかけとなって、いわゆる一時金支給法が制定されるに至ったが、真の権利回復にはほど遠い状況であった。
しかも、国は、各地の同種訴訟において、旧優生保護法の違憲性を認めることを回避した上で、改正前民法第724条後段の除斥期間の経過により被害者の損害賠償請求権は消滅したと主張してきた。

しかし、本判決は、このような国の主張を一蹴し、国が除斥期間の経過を主張して損害賠償責任を免れることは著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できないと述べた上で、国の除斥期間の主張は信義則違反又は権利の濫用で許されないと判断した。15人の裁判官が、全員一致で、国の主張の根拠とされてきた最高裁判所平成元年12月21日第一小法廷判決を見直すことを明言し、これにより、全ての被害者の権利回復の途がひらかれたのである。まさに、画期的な判断である。
当会は、最高裁判所が旧優生保護法による被害者の声を正面から受け止め、人権保障の最後の砦としての役割を果たしたことを高く評価する。
国は、本判決を厳粛に受け止め、旧優生保護法による全ての被害者に謝罪するとともに、被害の全面救済に向けた取り組みを早急に開始すべきである。
当会としても引き続き、旧優生保護法による全ての被害者の被害回復の実現に向けて、必要な提言、相談会の実施等の取り組みを行っていくとともに、今なお社会に存在する優生思想に基づく障がい者に対する差別・偏見を解消すべく活動していく決意である。

2024年(令和6年)7月10日

福岡県弁護士会

会長 德 永 響

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