福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2023年5月11日

旧優生保護法に関し国に賠償を命じた度重なる地裁、高裁判決を踏まえて、改めて全面解決を求める会長声明

声明

 旧優生保護法による障害者に対する強制不妊手術について、昨年の2つの高裁判決(2月22日大阪高裁、3月11日東京高裁)に続き、本年1月23日熊本地裁、2月24日静岡地裁、3月6日仙台地裁に加え、3月16日札幌高裁、3月23日大阪高裁の両判決は、いずれも、旧優生保護法の違憲性、国による加害行為及び被害の重大性を明確に指摘し、かつ、除斥期間の適用は正義・公平の理念に反するとして国の損害賠償責任を認めた。特に、本年3月23日大阪高裁は、明白に違憲である優生条項とそれに基づく手術の違憲性を未だに争い続け、なおかつ除斥期間の適用を主張して責任を否定する国の姿勢を厳しく断じている。
 このように、司法の趨勢は、国に対してこの問題の責任を果たすことを強く促しているものと言わなければならない。
 ところが、国は、上記各判決全てに対し、控訴及び上告または上告受理の申立を行い、解決を先延ばしにする態度に出ている。
 このような国の態度は、各判決が共通して指摘する本件加害の非人道性に加え、被害者が高齢化し、平成30年1月30日の最初の仙台地裁への提訴後も福岡地裁の原告1名や他の全国の訴訟の原告4名を含めて、次々に亡くなっているという現状に照らせば、到底許されることではない。
 当会は、すでに令和4年の大阪高裁判決及び東京高裁判決を受けて、同年3月16日、「旧優生保護法訴訟において国の賠償責任を認めた大阪高裁及び東京高裁違憲判決を踏まえて、被害者の全面救済を求める会長声明」を発出したが、上記のとおりのその後の訴訟の状況を踏まえ、改めて、国に対し、旧優生保護法に基づいて過酷な被害をもたらしたことを真摯に反省し、各判決に対する控訴や上告または上告受理の申立てを取り下げるとともに、旧優生保護法問題の全面解決に向けて、各判決が示した法的な賠償責任を前提に、被害を償うに足りる十分な賠償・補償はもちろんのこと、責任の明確化と謝罪及び真相究明・恒久対策について早急に検討し、一人でも多くの被害者に被害回復の途が開かれるよう積極的な対応を行うよう求める。
 当会としては、今後も、旧優生保護法の問題について、あまねく被害回復がなされるよう必要な提言を適時行っていくとともに、旧優生保護法により侵害された尊厳の回復を含むあらゆる人権課題について真の被害回復の実現に向けて、真摯に取り組んでいく所存である。


2023年(令和5年)5月11日

福岡県弁護士会

会長 大 神 昌 憲

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