福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2023年1月26日

特定少年の実名等の公表及び推知報道を控えることを求める会長声明

声明

1 「少年法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第47号)が本年4月1日に施行され、18歳又は19歳の少年(以下「特定少年」という。)について公判請求(起訴)された場合に、氏名、年齢等、その者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事などを新聞紙その他の出版物に掲載すること(以下「推知報道」という。)の禁止が解除された。
そして、2022年(令和4年)11月28日、福岡県内で特定少年2名が起こしたとされる事件について、福岡家庭裁判所久留米支部が検察官送致決定をしたことから、今後、この事件が福岡地方裁判所に公判請求される可能性が高く、その場合、特定少年の推知報道が可能となる。
2 推知報道がなされることにより、その後のインターネット、SNSによる情報拡散などを通して、少年が長期間にわたって社会から疎外され、地域からの援助の機会を失い、ひいては少年の社会復帰が著しく制限されるおそれがある。特定少年についても、少年法が目的とする健全育成の趣旨が及ぶことは明らかであるところ、こうした結果は、健全育成の趣旨に反するものである。
3 推知報道を一部認める法改正の審議の過程では、参議院法務委員会において、「特定少年のとき犯した罪についての事件広報に当たっては、事案の内容や報道の公共性の程度には様々なものがあることや、インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならないことの周知に努めること。」との附帯決議がなされており、衆議院の法務委員会でも同様の附帯決議がなされている。
4 当会は、2015年(平成27年)6月25日に「少年法適用対象年齢を18歳未満に引き下げることに反対する会長声明」を、2020年(令和2年)12月9日に「法制審議会答申(諮問第103号)に反対し、改めて少年法適用年齢引下げに反対する会長声明」をそれぞれ発出し、両声明において、推知報道が少年の更生において重大な支障となることを指摘してきた。
 今般、前述の検察官送致決定がなされたことを受け、当会は、検察庁に対して、特定少年に関する事件広報において、少年の健全育成及び更生に対する影響の大きさから実名等の公表を控えるように求めるとともに、報道機関に対して、仮に公判請求後に検察庁により特定少年の実名公表がなされた場合にも、推知報道を控えるように求める。

2022年(令和4年)11月29日
福岡県弁護士会会長 野 田 部 哲 也

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