福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2021年11月19日
成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のための措置を求める会長声明
声明
民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下、「本法律」という。)の施行日は2022年(令和4年)4月1日とされている。
18歳、19歳の若年者は、就職、進学等で社会との接触が一気に増える時期であるが、友人関係の影響を受けやすく、リスクを十分把握しないままに誘いに応じてしまったり、被害に遭ったときにどう対応すればいいか分からず、解決が遅れ、被害が深刻になってしまったりする事態が生じやすい。この時期こそ、消費者被害に巻き込まれることから防止しなければならない。成年年齢が引き下げられ、若年者に民法上認められていた未成年取消権が失われれば、消費者被害に巻き込まれた場合の救済策が不十分なものとなってしまう。
当会では、2018年(平成30年)2月23日、「民法の成年年齢引下げに反対する会長声明」を発出した。この会長声明では、仮に成年年齢の引下げを行うとしても、①事業者が消費者の判断力、知識、経験等の不足につけ込んで締結させた契約を取り消すことができる規定(消費者契約法の改正)と、②知識、経験、財産状況に照らして、当該取引を行うのが適切でない若年者に対する勧誘を禁止するとともに、そのような勧誘が行われた場合にはその契約を取り消すことができる規定(特定商取引法の改正)を設けること、③若年者がクレジット契約をする際の資力要件とその確認方法を厳格化すること(割賦販売法の改正)及び④若年者が貸金業者等から借り入れを行う際の資力要件とその確認方法につき厳格化を図ること(貸金業法と主要銀行向けの総合的な監督指針等の改正)が必要であるとしていた。
ところが、本法律制定から3年以上が経過した現時点でも、これらの対応は不十分である。
①の取消権については、消費者庁での検討会で議論されているが、創設の目途はたっていない。②から④についても、改正は具体化されていない。
また、消費者被害の防止のためには消費者教育が重要であるところ、福岡県下の公立高校をみても、外部講師を招いた消費者教育についての予算措置がないなど、取り組みは遅れている。
一方で、大学生などの若年者に対する消費者被害は依然として発生し続けている。SNSやインターネット上の広告を通じて、簡単に稼げる方法があると誘い込む副業詐欺や、本来は受け取れない持続化給付金を受け取る方法を教えるという詐欺、海外の不動産への投資と称してお金を支払わせておきながら、その後、連絡が取れなくなるといった詐欺など、手口は多様化、巧妙化している。
そこで、当会は、国に対し、成年年齢引下げに伴う消費者被害防止のために、早急に、先に指摘した①から④の改正や、場合によっては成年年齢引下げの施行延期などを含めて、十分な対応措置がとられることを求めるものである。
2021年(令和3年)11月18日
福 岡 県 弁 護 士 会
会 長 伊 藤 巧 示