福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2021年7月 8日

早期に民法を改正し、選択的夫婦別姓制を導入するよう求める会長声明

声明

 2021年6月23日、最高裁判所大法廷(大谷直人裁判長)は、夫婦同姓(夫婦同氏)を強制する民法750条と戸籍法74条1号について、憲法24条に違反するものではないと判断しました。
 夫婦同姓を定めた民法規定については、2015年12月16日に「合憲」とする最高裁判決が存在します。今回の大法廷決定は、2015年の判決以降の社会や国民の意識の変化等を認めながらも、同判決を引用したのみで実質的な検討は行わず、夫婦同姓を強制し別姓夫婦に法律婚の効果を認めないことがなぜ許されるのかという本質的な問いには答えませんでした。多数決原理で是正されにくい少数者の権利侵害状況を救済するのがまさに司法の役割であり、最高裁判所がその任務を果たさなかったことは、極めて不当です。

 しかしながら、2015年の最高裁判決では、5人の裁判官が、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であるとの意見を述べています。今回の大法廷決定でも、4人の裁判官が網羅的な検討を行い、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であると述べ、国会が長期間に亘りこの問題を放置してきたことを厳しく批判しています。さらに、いずれの多数意見も、制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべきと、立法府の取組みを促しています。

 もとより氏名は重要な人格権であり(1988年2月16日・最高裁判所判決参照)、改姓は、望んで行う場合は別として、アイデンティティの喪失に加え、個人の識別を阻害し、結果として、変更前の氏名に紐付けられていた当該個人に対する信用や評価が損なわれる等の重大な不利益をもたらします。現行法下では、婚姻によって当事者の一方がこの不利益を被り不平等な状況が生じさせられます。現時点でも婚姻時に改姓する大多数は女性である実情は変わらず、性別による不平等が存在しています。

 選択的夫婦別姓制は、1996年に法制審議会によって答申されているにもかかわらず、四半世紀を経ても未だ成立していません。

 当会は、これまで、夫婦同姓の強制(民法750条)が憲法第13条、第14条及び第24条に反するものであることを繰り返し指摘し、是正を求めてきました(2010年4月22日会長声明、2015年5月27日総会決議、2015年12月17日会長声明)。

 国際的に見ても、民法制定当時(1947年)と異なり、夫婦同姓を強制する法制度を残すのは日本の他にありません。国連女性差別撤廃委員会からは、女性に対する差別を助長する制度として、2003年から2016年までに3度に亘り是正勧告がなされました。これに対し、政府は法改正をする方針であると説明してきましたが、現在までの間、国会に改正法案を提出するには至っていません。

 もはや先延ばしは許されません。当会は、あらゆる形態の家族が尊重され、性別による不平等が解消されることを目指して、改めて、民法750条を改正し、望む人だけが改姓し望まない改姓が強制されない選択的夫婦別姓制を導入する立法を速やかに行うよう、強く求めます。

2021年(令和3年)7月7日   
福岡県弁護士会 会長 伊 藤 巧 示

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