福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2016年12月13日

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に対し反対し、廃案を求める会長声明

声明

2016年12月2日に「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」が衆議院の内閣委員会で可決された。

当会は、2014年10月15日付けで「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明において、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)などの問題が生じることを指摘していた。また、ギャンブル依存症は経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある深刻な問題であること、カジノ解禁推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれることなどを併せて指摘し、カジノ解禁推進法案に強く反対してきた。

そもそも賭博が刑罰をもって禁止されているのは(刑法185条、186条)、人の射幸心に付け込んで賭博を行わせることで、国民の勤労意欲を削ぎ、国民の健全な経済活動や勤労観念を阻害するからである。現行法制度の下、賭博を行うことができるのは特別法に基づいて許可を受けた公営団体のみとされているのは、上記のような危険性に鑑みてのことである。したがって、民間企業における賭博を認めるにあたっては、上記の危険性に対する具体的かつ十分な手当てが行われていなければならない。

しかしながら、カジノ解禁推進法案は、2013年12月に国会に提出されたものの実質的な議論が行われないまま2014年11月の衆議院解散に際して一旦廃案となり、その後、2015年4月に再提出されたものの1年半以上もの間全く審議されていなかったものが、2016年11月30日に急遽内閣委員会で審議入りをし、僅かその3日後には採決に至ったというものである。この経緯からも明らかなとおり、上記の危険性に対して慎重な議論がされたとは到底言えず、また、本法案について国民のコンセンサスを得たとも考えられない。

諸外国のカジノ事情の調査結果などを見ても、却ってカジノを設置した自治体周辺の人口が減少したり、IR型カジノの倒産が続くなど、カジノを設置したとしても、必ずしも期待していたほどの経済効果がもたらされないことが見て取れる。

我が国においては、ギャンブル依存からの脱却や暴力団その他の反社会的勢力の排除を支援して、国民が安心した生活を送り、健全な経済活動を行える環境を整えることこそが喫緊の課題となっているというべきである。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に改めて強く反対し、その廃案を求める。

2016年(平成28年)12月13日
福岡県弁護士会
会長 原田直子

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