福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2014年7月25日
福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書
要望書
平成26年7月25日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長 西田 博 殿
法務省福岡矯正管区長 竹下 正宏 殿
福岡県弁護士会
会 長 三 浦 邦 俊
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 前 田 憲 徳
福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えの予算措置等を求める要望書
第1 要望の趣旨
1 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)の建て替えのための事業費を来年度予算として計上すること,および,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じること
2 仮拘置所を建設するにあたっては,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や弁護権に最大限配慮すること
3 当会に新小倉拘置支所の設計図面等を早期に開示するとともに,開示後に当会の意見を聞くための協議の場を設置することを強く要望する。
第2 要望の理由
1 要望の趣旨1について
(1)未決拘禁者は,無罪推定の原則の適用を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は一般市民と同様の立場にあることから,拘置所内の生活においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。
(2)しかしながら,小倉拘置支所は昭和35年に築造された建物であり,既に築後50年以上が経過しているため,建物の老朽化は著しく,建物の各所で塀の倒壊や外壁の落下等の危険が生じ,未決拘禁者や面会に来る市民及び小倉拘置支所職員の生命・身体への危険が生じ得る状態となっている。
また,小倉拘置支所は,昭和25年公布の旧耐震基準に基づいて建築された建築物であり,現在の耐震基準を満たしていない上,建物の駆体部分の老朽化も著しい。そのため,地震等の自然災害が発生した場合には,甚大な被害が生じる危険性が極めて高い。
さらに,給水設備については,蛇口からは赤水が出る,トイレの水の流れが弱いために排泄物がなかなか流れない等,設備使用上の不具合が生じており,未決拘禁者の生活環境は極めて劣悪な状況におかれている。未決拘禁者の収容部屋についても,雨漏りが発生する部屋が多数存在する上,室内でダニが発生する,布団から虫が出る,カビが発生する等,衛生面における問題も極めて深刻である。
この点,2014年(平成26年)年5月23日に,当会北九州部会の会員が小倉拘置支所を見学した際に,内部の状況を確認したが,未決拘禁者の劣悪な生活環境については一向に改善が見られなかった。
このように,無罪推定の原則の適用を受ける未決拘禁者が,現在の小倉拘置支所の劣悪な生活環境の下で収容されることは,未決拘禁者の基本的人権を侵害するものであり,かかる状況は一刻も早く改善されなければならない。
(3)ところが,小倉拘置支所の建て替えに必要な事業費は未だ予算化されておらず,建て替えの際に必要不可欠となる仮拘置所建設のための予算措置も未だ講じられていない。
このままでは,小倉拘置支所の建て替えが遅延することは確実な状況であり,建て替えが遅延することは,未決拘禁者の基本的人権の侵害状況が継続することを意味する。
したがって,予算措置の遅れによって,小倉拘置支所の建て替えが遅延するといった事態は絶対に避けなければならない。
(4)また,仮拘置所が完成しなければ小倉拘置支所の建て替えに着手できない以上,仮拘置所建設のための予算措置についても,小倉拘置支所の建て替えにも匹敵するほどの重要性をもっていることから,仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じる必要がある。
(5)そこで,当会としては,小倉拘置支所の建て替えを早急に行うべく,そのための事業費を来年度予算として計上すること,および仮拘置所建設のための予算措置を早急に講じることを強く要望する次第である。
2 要望の趣旨2について
(1)小倉拘置支所の建て替えの際の仮拘置所についても,無罪の推定を受ける未決拘禁者を収容する施設である以上,新拘置所の建築が完了するまでの暫定的な施設であるからといって,未決拘禁者の基本的人権や弁護権が軽んじられるような施設や設備となることは断じて許されない。
(2)そのため,仮拘置所内においては未決拘禁者と既決囚を峻別し,未決拘禁者の生活環境にも十分に配慮した施設とすることにより,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮することを強く要望する。
また,弁護人接見室の数が現在の小倉拘置支所の3室より減少したり,接見室内の防音性能が低下したりすることによって,弁護権の保障が妨げられる事態のないよう配慮することも強く要望する。
3 要望の趣旨3について
(1)未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮した拘置所を建設するためには,未決拘禁者の人権を制約する立場にある拘置所側の意見のみに基づいて設計・建築を行うのでは不十分である。
この点について,当会は,これまで,小倉拘置支所の未決拘禁者に対するアンケート調査を実施して,現在の小倉拘置支所における問題点を明らかにするとともに,未決拘禁者の基本的人権への配慮という点で高い評価を受けている大韓民国のソウル拘置所の視察を行い,未決拘禁者の基本的人権に配慮した拘置所の建設に向けた様々な活動を行ってきた実績がある。
そのため,小倉拘置支所の建て替えに際しては,この問題に恒常的に取り組んできた当会の関与を認める必要性は極めて高い。
(2)そして,当会は,2013年(平成25年)11月に小倉拘置支所建て替えに関する具体的な要望書を提出したが,新拘置所の設計や設備が当会の要望を反映し,未決拘禁者の基本的人権に最大限配慮されたものとなっているかを検証するためには,新拘置所の設計図面等の内容を確認することが必要不可欠である。
ところが,当会は,未だ新拘置所の設計図面等の開示を受けておらず,新拘置所の設計や設備が未決拘禁者の基本的人権に十分配慮されたものとなっているかを確認できていない状況にある。
(3)そこで,当会は,早期に新拘置所の設計図面等の開示を要望するとともに,設計図面等の開示を受けた後には,当会の意見を聴取するための協議の場を設けることを強く要望する次第である。
以上