福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2013年11月22日
改めて生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明
声明
2013年(平成25年)11月13日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)が参議院本会議で可決された。
当会は、2013年(平成25年)6月7日、5月17日に閣議決定された「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について、「生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明」を公表し、厳格な要式行為の追及による生活保護申請の事実上の拒否(いわゆる「水際作戦」)を合法化し、単なる優先関係に過ぎない扶養義務の履行を迫ることによる保護申請への萎縮化を招来するという看過しがたい重大な問題があることから、その廃案を求め、旧改正案については、批判の高まりの中2013年(平成25年)6月26日の第183回通常国会の閉会に伴い廃案となったが、今国会において、再度審議されているところである。
審議の過程において政府は、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める改正法24条については、(1)従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない、(2)福祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する、(3)給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた改正法24条8項、28条及び29条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である旨答弁し、以上両趣旨を厚生労働省令等に明記し、保護行政の現場に周知する旨繰り返し答弁してきた。
しかし、改正法の法文が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこれまで以上に、助長、誘発される危険性が払拭されたとは到底言い難い。当会では、2006年(平成18年)、北九州市で孤独死していた56歳の独居男性が、生前二度にわたって申請意思を明確に表示していたにもかかわらず、福祉事務所から、子どもに援助してもらうようにと言われて申請を違法に拒まれていた事件も起きている。このような改正法の施行によって、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事態が強く懸念される。
当会は、憲法上保障された生存権が現実に市民に保障される社会となることをめざし、平成21年度から生存権の擁護と支援のための緊急対策本部を設け、多数の会員が登録する「生活保護支援システム」によって生活保護申請同行など生活保護法の適法な運用を求める活動を行ってきた。当会の立場からは、保護申請権ひいては生存権を侵害するおそれの大きい改正法案は到底容認することができない。
よって、当会は、改正法案について即時の廃案を改めて求めるものである。
2013年(平成25年)11月22日
福岡県弁護士会
会長 橋本 千尋