福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年11月21日

商品先物取引について不招請勧誘禁止を撤廃することに反対する会長声明

声明

 2011年(平成23年)1月1日から施行された現行商品先物取引法は、商品先物取引については、国内公設取引所取引であっても不招請勧誘を禁止する規定を設けた(214条9号)。  これは、商品先物取引業者が、先物取引のような投機に適合せず、希望もしない者に対して、突然の電話や訪問により、大きな利益が得られることのみを強調し、投資金以上の損失が生じる危険性をほとんど認識させないような不公正な勧誘を行って取引に引きずり込み、深刻かつ悲惨な被害を多数生じさせていた実情に鑑み、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望によって、2009年(平成21年)の商品取引所法改正により、ようやく導入されたものであった。  ところが、本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁をした。  この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有する金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものであるが、これは商品先物取引についての不招請勧誘規制が導入された経緯を軽視し、2012年(平成24年)8月に産業構造審議会商品先物取引分科会が取りまとめた報告書の内容にも反するものであり、到底看過できない。  その後、2012年(平成24年)2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会における議論に際しては、不招請勧誘規制を見直すべきとの意見が出されたが、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)4月11日付け「商品先物取引についての不招請勧誘規制の維持を求める意見書」を公表して同規制の維持を主張し、分科会報告書においても、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とされ、商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することが確認されたのである。  このように、商品先物取引についての不招請勧誘規制は、深刻かつ悲惨な被害の多発を受けて導入されたもので、前記分科会においても、有識者らが様々な角度で議論した結果、規制維持の必要性が確認されたにもかかわらず、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、規制を撤廃する方向で検討することは到底容認できない。  事実、商品先物取引についての不招請勧誘規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数が減少する一方で、不招請勧誘規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されており、不招請勧誘禁止を撤廃すれば、商品先物取引被害が再び増加するおそれが極めて高いものである。 前記内閣府副大臣の答弁は、商品取引と証券・金融取引を同じ規制下におくべきとの横並び論から出たものと考えられるが、それぞれの取引が過去どういう営業を行い、どのような紛議を生じていたのかの実情を無視したものであって、それぞれの取引の過去の実情が異なれば、個別の規制の必要性を検討するのが当然である。  当会は、消費者保護の観点から、商品先物取引についての不招請勧誘禁止を撤廃することに強く反対する。

2013年(平成25年)11月20日
福岡弁護士会 会長 橋 本  千 尋

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