福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年11月21日

商品先物取引について不招請勧誘禁止を撤廃することに反対する会長声明

声明

 2011年(平成23年)1月1日から施行された現行商品先物取引法は、商品先物取引については、国内公設取引所取引であっても不招請勧誘を禁止する規定を設けた(214条9号)。  これは、商品先物取引業者が、先物取引のような投機に適合せず、希望もしない者に対して、突然の電話や訪問により、大きな利益が得られることのみを強調し、投資金以上の損失が生じる危険性をほとんど認識させないような不公正な勧誘を行って取引に引きずり込み、深刻かつ悲惨な被害を多数生じさせていた実情に鑑み、消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望によって、2009年(平成21年)の商品取引所法改正により、ようやく導入されたものであった。  ところが、本年6月19日、衆議院経済産業委員会において、証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で、内閣府副大臣は、委員の質問に対し「商品先物取引についても、金融と同様に、不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁をした。  この答弁は、総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有する金融庁が、総合取引所に関する法規制について、不招請勧誘禁止を撤廃することを検討していることを示すものであるが、これは商品先物取引についての不招請勧誘規制が導入された経緯を軽視し、2012年(平成24年)8月に産業構造審議会商品先物取引分科会が取りまとめた報告書の内容にも反するものであり、到底看過できない。  その後、2012年(平成24年)2月から6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会における議論に際しては、不招請勧誘規制を見直すべきとの意見が出されたが、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)4月11日付け「商品先物取引についての不招請勧誘規制の維持を求める意見書」を公表して同規制の維持を主張し、分科会報告書においても、「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず、これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため、引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」、「将来において、不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として、実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ、不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とされ、商品先物取引についての不招請勧誘規制を維持することが確認されたのである。  このように、商品先物取引についての不招請勧誘規制は、深刻かつ悲惨な被害の多発を受けて導入されたもので、前記分科会においても、有識者らが様々な角度で議論した結果、規制維持の必要性が確認されたにもかかわらず、それから間もない現時点において、何らの検証もなく、規制を撤廃する方向で検討することは到底容認できない。  事実、商品先物取引についての不招請勧誘規制の導入以降、商品先物取引に関する苦情件数が減少する一方で、不招請勧誘規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されており、不招請勧誘禁止を撤廃すれば、商品先物取引被害が再び増加するおそれが極めて高いものである。 前記内閣府副大臣の答弁は、商品取引と証券・金融取引を同じ規制下におくべきとの横並び論から出たものと考えられるが、それぞれの取引が過去どういう営業を行い、どのような紛議を生じていたのかの実情を無視したものであって、それぞれの取引の過去の実情が異なれば、個別の規制の必要性を検討するのが当然である。  当会は、消費者保護の観点から、商品先物取引についての不招請勧誘禁止を撤廃することに強く反対する。

2013年(平成25年)11月20日
福岡弁護士会 会長 橋 本  千 尋

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2013年11月22日

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

声明

平成25年11月21日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 谷垣 禎一 殿
法務省矯正局長 西田  博 殿
法務省福岡矯正管区長 横尾 邦彦 殿

福岡県弁護士会
会 長 橋 本 千 尋
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 荒 牧 啓 一

福岡拘置所小倉拘置支所の建て替えに関する要望書

第1 はじめに

1 現在の福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)は,監獄法(施行日,明治41年10月1日)に基づいて昭和35年に建築された施設であり,既に築後50年以上を経過しているため,建物や施設の老朽化は著しく,未設拘禁者の無罪推定の原則や基本的人権を保障するにふさわしい施設とは言えず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権にも支障をきたすという事態が生じている。

2 小倉拘置支所建て替え後の新拘置所をどのような施設にするかは,未決拘禁者の基本的人権や防御権の保障,弁護人の弁護権の保障と密接に関連する。

すなわち,未決拘禁者は,無罪推定を受ける者であり,刑事手続のために身体拘束される他は,一般市民と同様の立場にあることから,未決拘禁者には,拘置所内においても,できる限り一般市民と同様の生活が保障されなければならない。そのためには,新拘置所においては,未決拘禁者の人格を尊重した待遇を行い,その心情の安定を図る必要があり,十分な人的・物的設備を整える必要がある。

また,新拘置所においては,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権が侵害されることがあってはならず,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権に十分配慮された施設にする必要がある。

3 そして,新拘置所は,憲法及び刑事訴訟法の精神にふさわしい,現在の人権基準を十分に満たすような施設とする必要があることは言うまでもないが,新拘置所は少なくとも半世紀は利用されることから,単に現在の人権水準を満たす施設とするだけでは不十分であり,50年先の人権水準をも見据えた最先端の施設を築く必要がある。

そのためには,現在軽視されている未決拘禁者の基本的人権の保障に配慮することは当然であるが,それにとどまらず,面会に来る一般市民の利便性や,新拘置所の周辺環境との調和,環境問題への配慮等も盛り込んだ施設とすることが必要である。

4 そこで,当会は,新拘置所を建築するにあたって,無罪の推定を受ける未決拘禁者の基本的人権や防御権,弁護人の弁護権に最大限配慮した施設にするともに,一般市民の利便性,地域との調和,環境問題等にも十分配慮された新拘置所を建築することを強く要望する次第であり,そのために必要と考える具体的な要望事項を以下において述べる。

第2 要望事項

1 未決拘禁者の基本的人権保障・生活環境の改善について

(1)未決拘禁者と既決囚の居住スペースの区別

未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,未決と既決を明確に区別する措置を講じることを要望する。

未決拘禁者には無罪推定の原則が及ぶことから,既に有罪判決を受けた既決囚とは明確に区別する必要があるため,未決拘禁者と既決囚の居住スペースを別の階にする等,居住スペースを明確に区別する措置を講じることを求める。

(1)未決拘禁者の居住スペース内の環境について

未決拘禁者の居住スペース内の日当たりと風通しを十分確保するよう配慮し,また,居住スペース内から自然環境等,外の景色が見えるように配慮することを要望する。

未決拘禁者の基本的人権を保障し,その心情の安定を図るためには,居住スペース内の日当たりや風通し等の環境に十分に配慮する必要がある。未決拘禁者は,刑事裁判を控えながら,一日の大半の時間を狭い居住スペース内で過ごすのであり,その環境が未決拘禁者の心情に与える影響は大きい。窓の外に,木々草花等の自然や周囲の風景を見ることができるだけでも,未決拘禁者の社会からの隔絶感・疎外感を和らげることができ,その心情の安定をもたらすことができるのである。

(3)未決拘禁者の居住スペースの広さ等について

決拘禁者は原則として独居房に収容すべきであり,そのために独居房を増設することを要望する。

現在の未決拘禁者の居住スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定の原則の適用を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮されなければならない。未決拘禁者が,他者と同室で生活をする場合には,著しいストレスを強いることとなるため,原則として独居房に収容すべきであり,そのためには,独居房の増設が必要である。

また,現在の居住スペースは,未決拘禁者の生活環境として十分な広さが確保されているとは言えないため,無罪推定を受ける未決拘禁者の地位にふさわしい一定の広さを確保することを求める。

(4)未決拘禁者の居住スペース内の設備(冷暖房設備・トイレ)について

冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理  ができるようにすることを要望する。

居住スペース内のトイレについて,看守から見えない位置に個室のトイレを設置するとともに,洋式(ウォシュレット付)にすることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきであるから,冷暖房設備を設置し,個々の居住スペース内において温度管理ができるようにすべきである。

また,現在の居住スペース内のトイレは,看守から見える位置に壁等で仕切られることなく設置されているため,未決拘禁者のプライバシーや羞恥心が著しく侵害されており,居住スペース内に個室のトイレを設置することを要望する。個室であっても,壁上部を透明にするなどして,看守から上半身が確認できるようにすれば,未決拘禁者の監視においても特に問題が生じることはないはずである

さらに,衛生上の観点からは,トイレは,和式でなく洋式(ウォシュレット付)の方が望ましい。

(5)未決拘禁者の心情の安定を図るための各種施設について

未決拘禁者が一定の範囲内を自由に行動して,他者とのコミュニケーションを図ることができるよう,テレビ等の設備を設けた談話室を設置することを要望する。

未決拘禁者が自由に読書ができるための図書館を設置するとともに,未決拘禁者が他者と一緒に食事するための食堂を設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

我々一般市民は,昼夜とも一人で生活をするのではなく,昼間は外で活動して他者とのコミュニケーションを図り,夜には帰宅して就寝するという生活を送っているところ,未決拘禁者は,ほぼ終日居住スペース内に収容され,誰ともコミュニケーションをとれない状態にあるというのは,未決拘禁者に大きな精神的ストレスを与える。

そこで,新拘置所においては,未決拘禁者が他者とのコミュニケーションを図ることを可能にするためのテレビ等がある談話室を設置することを求める。また,未決拘禁者が本を自由に探せる図書館を設置して,一般市民と同様の権利を保障する必要がある。

さらに,現在,未決拘禁者は狭い居室内で食事をとらざるを得ない状況であるが,広い場所で他者と会話しながら食事をとる方が未決拘禁者の心情の安定に資することから,食堂を設置し,そこで食事をとることを可能にすべきである。

(6)運動スペースについて

現在の運動スペースは狭すぎるため,現状よりも広くすることを要望する。雨天時でも運動を可能とすべく,屋上運動スペースには手動の開閉式の屋根を設置するとともに,複数の未決拘禁者が同時に運動できる十分な広さを持った体育館のような屋内運動スペースを設置することを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の小倉拘置支所の運動スペースはあまりに狭く,可能な運動も限られている状況であり,未決拘禁者にとって十分な運動環境が整っているとは言えない。

また,現在は屋上に設置された運動スペースしかないため,雨天時には運動することができず,雨天が続けば,事実上運動が不可能となるため,未決拘禁者の運動する機会が十分に確保されていない。

そこで,現在の運動スペースをより広くするとともに,運動スペースに手動で開閉可能な屋根を設置することで,多少の風雨であっても運動をすることが可能にすべきである。

また,雨天でも運動をすることが可能な十分な広さのある体育館のような多目的な屋内スペースを設置するよう求める。そうすることで雨天でも運動を行うことが可能となるとともに,レクリエーション等を行うことにより,未決拘禁者の心情の安定を図ることが可能となる。

(7)浴室について

現在の共同浴槽では,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり不衛生なため,浴槽に自動濾過装置を設けることを要望する。

個別の浴室・浴槽を設けるとともに,シャワー室を現状より増設し,未決拘禁者の入浴の機会を増やすことを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の生活ができるように配慮すべきである。

現在の共同浴槽は,複数の者が同じ浴槽に入ることとなり,入浴の順番が後になるにつれ,浴槽内のお湯が汚れ,未決拘禁者は不衛生な入浴環境を強いられている。そのため,共同浴室については,浴槽に自動濾過装置を設け,浴槽内のお湯を常に衛生的に保つ必要がある。

また,個別浴室・浴槽を設け,未決拘禁者は個別の浴室・浴槽を原則とするとともに,シャワー室を現状よりも増設することにより,未決拘禁者の入浴の機会を増やす必要がある。

(8)施設内の設備・備品について

拘置所内にエレベーターを設置することを要望する。

高齢の未決拘禁者や身体に障害のある未決拘禁者の拘置所内における移動にも十分に配慮する必要があり,そのためには拘置所内にエレベーターを設置することが必要不可欠である。

(9)拘置所内の医療設備の充実について

診察室,検査設備,手術室等の拘置所における内部医療設備を整えるとともに,常勤の医師又は非常勤の派遣医師を配置することによって,内部診療の充実を図ることを要望する。

未決拘禁者は無罪推定を受ける者であり,できる限り一般市民と同様の医療サービスを受けることができるように配慮すべきである。

未決拘禁者が拘置所に収容されているために,必要な治療を受けることができず,病状の悪化を招く等の事態は絶対にあってはならない。

健康の保持は,未決拘禁者の基本的人権の保障において最も基本となる事柄であるため,早急に,拘置所内の医療設備の充実及び医師等の医療スタッフの十分な人員配置を行う必要がある。

2 弁護人の弁護権の保障について
(1)接見室の数について

接見室を現状の3室から5室に増設することを要望する。

弁護人4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

現在,弁護士数の増加に伴い,接見室が全て使用中となっていることも少なくなく,待ち時間が長時間に及ぶことがある。

弁護士は時間に制約のある中で接見に赴いており,待ち時間が長くなると,その後の予定のために接見時間を短縮せざるを得なかったり,接見自体を断念せざるを得ないという事態も生じている。

このような状況は,弁護人の弁護権の保障に著しい支障をきたすものであり,早急に改善する必要がある。

また,今後も弁護士数の増加が見込まれることからすると,現状の接見室数では,数十年後には接見室不足の問題はさらに深刻化し,円滑かつ迅速な接見を実現することが困難となることが予想される。

そのため,弁護人接見室の数を,現状の3室から5室へと増設することを要望する。

また,弁護人が3名以上の事件の場合には,現在の接見室では同時に接見することが困難であるため,4~5名程度が着席できる広さの接見室を2室設置することを要望する。

(2)接見室の遮音性確保及びアクリル板の通音性改善のための措置

接見室における会話の内容が他に漏れることのないよう遮蔽のための措置を講じることを要望する。

現在の接見室では,被疑者・被告人と弁護人との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

被疑者・被告人と弁護人との間のアクリル板の壁がない接見室を1室設置することを要望する。

弁護人の秘密交通権が十分に保障されるためには,接見内容が外部に漏れることのない接見環境は必要不可欠であるところ,現在の接見室は遮音構造となっていないため,接見室内での会話内容が外部に漏れ,外部から容易に聞き取ることができる状況になっている。そのため,接見室内の会話が外部に漏れることのないように遮音のための措置を講じる必要がある。

また,現在の接見室に設置されているアクリル板の壁は通音性に問題があるため,被疑者・被告人や弁護人の会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,通音性のよい無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じる必要がある。

さらに,現在の接見室には,全ての接見室にアクリル板の壁が設置されているため,被疑者・被告人に直接裁判資料を示して打ち合わせをすることが非常に難しい状況にある。そこで,未決拘禁者の防御権及び弁護人の弁護権の保障の観点から,アクリル板の壁のない接見室を設置することを要望する。

(3)パソコン等使用のための電源設備の設置

接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設けることを要望する。

現在の接見室内には,パソコン等使用のための電源設備はない。

被疑者・被告人と接見する際にパソコン等のIT機器を使用する必要性もあることから,接見室内にパソコン等使用のための電源設備を設ける必要がある。

(4)拘置所外での連絡設備について

弁護人から未決拘禁者に対して拘置所外からの連絡を可能とするために,電話,テレビ電話,ファックス,メール等の通信設備の設置を要望する。

現在,未決拘禁者との連絡方法については,弁護人が直接拘置所に出向く他は,手紙・電報に頼る以外に方法がない。しかし,未決拘禁者の防御権や弁護人の弁護権の保障という見地からは,弁護人と未決拘禁者との間の密なる連絡・打合せが非常に重要である。電話,テレビ電話,ファックス,メール等の簡易迅速な連絡方法があることから,新拘置所ではこれらの通信手段を可能とするための通信設備を設置すべきである。

(5)弁護人待合室・接見室内の設備について

弁護人待合室及び接見室に冷暖房設備を設置することを要望する。

また,接見室の机を,裁判資料等を広げるのに適した奥行きのあるものにするとともに,接見室内の椅子を長時間座っても疲れないものにすることを要望する。

弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

現在の弁護人待合室及び接見室には,冷暖房設備がないため,冷暖房設備を整えて,弁護人接見の際の環境を改善する必要がある。

また,弁護人接見室の机には奥行きがなく,裁判資料を広げることもままならないため,十分な奥行きのある机を設置する必要がある。

さらに,現在の接見室内の椅子は簡素なパイプ椅子であり,かつ,接見室の机との高さのバランスが悪いため,腰や背中に負担がかかり,長時間の接見に支障が生じる状況となっている。そこで,接見が長時間となった場合にも疲れにくい椅子を設置する必要がある。

現在の弁護人待合室にはトイレがなく,一般面会者用のトイレまで行くしかないため,極めて不便であり,弁護人待合室にトイレを設置することを要望する。

3 拘置所に面会に来る一般市民の利便性の向上について
(1)一般面会室の広さについて

現在の一般面会室は狭いため,現状よりも広くすることを要望する。

また,4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を設置することを要望する。

現在の一般面会室は十分な広さが確保されていないため,面会者は,非常に窮屈な状態での面会を強いられており,新拘置所では,一般面会室を現状よりも広くする必要がある。

また,家族等の複数の者が同時に面会する場合に備えて4~5名程度の面会者が着席できる広さの面会室を1室設置する必要がある。

(2)面会室のアクリル板の通音性について

現在の一般面会室では,被疑者・被告人と面会者との間にアクリル板の壁が設置されているが,通音性に問題があるため,通音性に配慮した措置を講じることを要望する。

現在の一般面会室に設置されているアクリル板の壁は,通音性に問題があり,未決拘禁者と面会者との会話内容が相互に聞き取りにくいという問題が生じている。

そこで,アクリル板に穴を開ける方法ではなく,より音を伝えやすいよう無数の細かい穴をあけた金属板をアクリル板の下に取り付ける等,通音性に配慮した措置を講じることを求める。

(3)面会スペースの設備について

一般面会室内に冷暖房設備を設置するよう要望します。

現在の一般面会室内には冷暖房設備が設置されていないため,特に夏場や冬場の面会において十分な面会環境が整備されておらず,面会にも支障が生じている。

そこで,一般面会室内に冷暖房設備を設置し,面会に支障が生じることがないよう配慮することを求める。

4 その他の要望事項
(1)新拘置所の外観を周囲と調和したものとすること

新拘置所には,外塀を設けず,周囲の環境と調和した外観とすることを要望する。

現在の小倉拘置支所は,高い塀に囲まれた物々しい雰囲気の建物となっており,住宅地である周囲の環境からかけ離れた異様な外観となっているため,新拘置所では,外壁をなくすとともに,周囲の環境と調和した外観にする必要がある。

(2)新拘置所の職員数の増員

未決拘禁者の待遇改善のために,拘置所の職員数を増員することを要望する。

未決拘禁者の待遇改善のためには,現状よりも拘置所の職員数の増員が必要である。

(3)太陽光パネル設置等の再生可能エネルギーの積極的導入

新拘置所の屋上に太陽光パネルを設置する,太陽光及び風力をエネルギー源とする街灯を設置する等,再生可能エネルギーを積極的に導入することを要望する。

現在,日本全体において,持続可能な社会の構築を目指すべく,再生可能エネルギーの積極的導入が求められており,新拘置所においても例外ではなく,再生可能エネルギーを積極的に導入するための措置を講じることを求める。

なお,平成21年3月に完成した立川拘置所では,屋上に太陽光パネルが設置され,太陽光と風力を利用した街灯も設置されていたことからすれば,新拘置所においてもこれらの設備を設置することは十分可能なはずである。

(4)建替期間中の問題について

建替期間中においても,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障がないように配慮することを要望する。

拘置所の建て替えにあたっては,代替収容施設の確保等の様々な問題が予想され,新拘置所の建築期間も長期にわたることが予想される。

そこで,建替期間中の代替収容施設において,未決拘禁者の基本的人権・防御権の保障,弁護人の弁護権の保障に支障が生じることがないよう配慮することを要望する。

以上

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2013年11月26日

衆議院選挙無効訴訟に関する最高裁判決についての会長声明

声明

2013年(平成25年)11月20日、最高裁判所は、昨年12月16日に施行された衆議院議員総選挙についての選挙無効訴訟において、「本件選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」としながら、「憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえ」ないとして、「本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない」とする判決を言い渡した。 この最高裁判決の原審は、全国14の高等裁判所と支部に提訴されていた16件の訴訟である。16件のうち14件の高裁判決が違憲とし、うち2件は選挙無効をも言い渡した。本年3月18日の福岡高裁判決は、議員定数のいわゆる「0増5減」について、「十分なものといえないことは明らかである」としていた。 これに先立ち、最高裁判所は、2011年(平成23年)3月23日、2009年(平成21年)の衆議院総選挙について、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた」、「投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要がある」と判決していた。   この2011年(平成23年)の判決から2012年(平成24年)の衆議院総選挙までには1年9か月が経過しており、国会が是正措置を講ずるための時間は十分にあった。ところが、国会は、議員定数を「0増5減」し、その適用は次回の総選挙からとすることを定めたにとどまった。人口比例部分とは別に各都道府県に議員定数1を配分する1人別枠方式については、根拠規定こそ廃止されたものの、同方式を前提とする定数配分は抜本的に見直されることもなく、 2012年(平成24年)の総選挙時はもとより、現在もまだ維持されている。 そのため、2012年(平成24年)総選挙は2009年(平成21年)の総選挙と同様の選挙区割りで施行され、投票価値の最大格差が拡大し、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態」がより深刻化していた。 このような国会の怠慢ともいうべき事実経過を踏まえれば、最高裁判所は今回の判決において、2011年(平成23年)3月23日の判決よりも踏み込んだ違憲判断を示すべきであったにもかかわらず、立法裁量を過度に尊重した不十分な判断にとどまった。 そもそも、議員1人あたりの選挙人の人数が均等であるべきという投票価値の平等は、法の下の平等(憲法14条1項)、選挙人資格の平等(憲法44条)を定める憲法の要請である。このような投票価値の平等が侵害されたときには、「国権の最高機関」(憲法41条)である国会は国民の意思を的確に反映することができず、議会制民主主義ひいては国民主権がゆがめられてしまう。   これを正すことは、唯一、違憲立法審査権(憲法81条)を有する裁判所にしかなし得ない。今回の最高裁判決は、このような裁判所の職責を果たしたものとは認められない。   今回の最高裁判決によって、投票価値の平等を実現すべき国会の取組の停滞が許されるはずもない。 当会は、裁判所に対して積極的に憲法保障の機関としての職責を果たすことを求めるとともに、国会に対し速やかに衆議院議員総選挙における投票価値の平等を実現するための抜本的措置をとることを改めて強く求める。

2013年(平成25年)11月26日
福岡県弁護士会
     会長  橋 本 千 尋

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2013年11月22日

改めて生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明

声明

2013年(平成25年)11月13日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)が参議院本会議で可決された。

当会は、2013年(平成25年)6月7日、5月17日に閣議決定された「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について、「生活保護法改正法案の廃案を求める会長声明」を公表し、厳格な要式行為の追及による生活保護申請の事実上の拒否(いわゆる「水際作戦」)を合法化し、単なる優先関係に過ぎない扶養義務の履行を迫ることによる保護申請への萎縮化を招来するという看過しがたい重大な問題があることから、その廃案を求め、旧改正案については、批判の高まりの中2013年(平成25年)6月26日の第183回通常国会の閉会に伴い廃案となったが、今国会において、再度審議されているところである。

審議の過程において政府は、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める改正法24条については、(1)従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない、(2)福祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する、(3)給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた改正法24条8項、28条及び29条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である旨答弁し、以上両趣旨を厚生労働省令等に明記し、保護行政の現場に周知する旨繰り返し答弁してきた。

しかし、改正法の法文が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこれまで以上に、助長、誘発される危険性が払拭されたとは到底言い難い。当会では、2006年(平成18年)、北九州市で孤独死していた56歳の独居男性が、生前二度にわたって申請意思を明確に表示していたにもかかわらず、福祉事務所から、子どもに援助してもらうようにと言われて申請を違法に拒まれていた事件も起きている。このような改正法の施行によって、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事態が強く懸念される。

当会は、憲法上保障された生存権が現実に市民に保障される社会となることをめざし、平成21年度から生存権の擁護と支援のための緊急対策本部を設け、多数の会員が登録する「生活保護支援システム」によって生活保護申請同行など生活保護法の適法な運用を求める活動を行ってきた。当会の立場からは、保護申請権ひいては生存権を侵害するおそれの大きい改正法案は到底容認することができない。

よって、当会は、改正法案について即時の廃案を改めて求めるものである。

2013年(平成25年)11月22日

福岡県弁護士会
会長 橋本 千尋

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