福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年4月26日

死刑執行に関する会長声明

声明


死刑執行に関する会長声明


1 本日,東京拘置所において,2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  本年2月21日に3名の死刑執行がなされたばかりであり,わずか2ヶ月後に死刑執行が強行されたことになる。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,2010年(平成22年)3月には足利事件について,2011年(平成23年)5月には布川事件について,いずれも無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審無罪判決が言い渡されている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
  そして,今回死刑執行されたいずれの死刑確定者も上告審まで事実誤認及び量刑不当を理由に争い,うち1名は2009年(平成21年)6月に,もう1名は2011年(平成23年)12月にそれぞれ死刑確定しているが,死刑確定から短期間で死刑執行している点も冤罪・誤判の観点から極めて問題があると言わざるを得ない。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 日本弁護士連合会は,本年2月12日,谷垣法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して,死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ,調査結果と議論に基づき,今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論が尽くされるまでの間,死刑の執行を停止することを改めて求めたところであった。
  この要請の直後である本年2月21日に死刑執行がなされた際も,日弁連及び当会は,死刑執行に強く抗議するとともに,一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり,この要請を再度無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

                    2013年(平成25年)4月26日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

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