福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2012年9月27日
死刑執行に関する会長声明
声明
死刑執行に関する会長声明
1 本日,福岡及び仙台の各拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
本年8月3日に2名の死刑執行がなされたばかりであり、2ヶ月連続での死刑執行が強行されたことになる。
2 我が国では,過去において,4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。また,2010年(平成22年)3月には足利事件について,2011年(平成23年)5月には布川事件について,いずれも無期懲役刑が確定した受刑者に対する再審無罪判決が言い渡されている。これらの過去の実例が示すとおり,死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
そして、今回死刑が執行された内、福岡拘置所の死刑確定者は、一審・控訴審では強盗殺人罪の成立を争っていたのであり、39歳という年齢や2009年(平成21年)4月の死刑確定から3年半も経っていないことを考慮すれば、冤罪・誤判の観点からも極めて問題のある死刑執行であると言わざるを得ない。
3 しかも,我が国の死刑確定者は,国際人権(自由権)規約,国連決議に違反した状態におかれているというべきであり,特に,過酷な面会・通信の制限は,死刑確定者の再審請求,恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなっている。この間,2007年(平成19年),刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが,未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど,死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く,このような状況の下で死刑が執行されることには大きな問題があるといわなければならない。
4 日本弁護士連合会は,本年6月18日、滝実法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して、国に対し、直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止することを改めて求めたところであった。
そして、本年8月3日に死刑執行がなされた際も、日弁連及び当会は、死刑執行に強く抗議するとともに、一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり、この要請を無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに,今後,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ,それに基づいた施策が実施されるまで,一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。
2012年(平成24年)9月27日
福岡県弁護士会会長 古 賀 和 孝