福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2012年1月13日

会長日記

平成23年度福岡県弁護士会 会 長 吉 村 敏 幸(27期)

1.1か月毎に会長日記の原稿の催促が来ます。
会長日記だから多少の私事は許されるものと思って冒頭記述しますが、さりとて、当然ながら中心は会務報告となります。
ということで、改めて私事です。
東京からの帰りの読み物は、思想・評論的なものよりも、軽い物語が多くなります。
当会のホームページには「弁護士会の読書」コーナーが開設され「霧山昴」氏の多彩な読書感想文がほとんど毎日のように更新されています。驚くべき速読です。
私は遅読派です。どんな本が好きかと思い返してみると、ファンタジー系でした。最近ではやはりハリー・ポッターシリーズ。上橋奈緒子の「守り人」シリーズ、「獣の奏者」。早逝した景山民夫が20年ほど前に出した「遠い海から来たcoo」も好きな小説でした。ですから、映画も「スターウォーズ」シリーズが最高でした。ファンタジーは子どものころの夢がふくらんで来るような気がします。

2.1)弁護士・弁護士会の夢と希望−新会館に託して
新会館用地取得の臨時総会で、新しい弁護士会館は会員に対してどのような夢を与えてくれますか、との質問が提起されました。夢と希望は抱き続けなければ将来への期待はあり得ません。私は会員だけではなく色々な人々が集う求心力としての広場(フォーラム)、交流空間が新会館に具わると期待しています。
今日のように文化が成熟し、価値観が多様化すると、多くの人が多様な意見をもち、個人主義的傾向が強くなります。しかし、同時に人間として現実社会において寄り添い、集合を求める面も多く期待されます。それを実現する場所が必要です。臨時総会の意見の中には、極論すると、会館のような建物はいらない、インターネット上の会議で充分こなせる、との趣旨の発言もありました。確かに、インターネットによって創造された社会が既に仮想社会という表現を超越するものであることはジャスミン革命の成功によって証明されましたが、ジャスミン革命の成功の可否は、最後は人々が現実に集合し得たか否かにかかっていたと思われます。やはり、現実の社会において何かしらを実現するためには、多様な人々を糾合し、力を溜める場所が大事だと思います。
2)弁護士会の執行部に入り、当会や日弁連の活動を知ると、その活動の多彩さと一般市民から寄せられる期待の大きさと拡がりを知ります。新会館は一般市民のたくさんのNPO活動の情報を集約し、かつ、これを充実拡大させる中心基地としての機能を持たせることも可能とすることが考えられます。私たちが人権に関する交流の空間を創造することも可能となります。福岡県弁護士会にはそれを成し遂げるだけの魅力ある人材が揃っています。
3)私たち弁護士と弁護士会は過去、無人の荒野に残されていた多くの障害を人権・公害環境課題として取り組み、克服してき、またこれらを自らの業務分野として取り組んできました。かつては弁護士の独自の業務分野と認めるには希薄であった数々の依頼事件が、今や弁護士業務として定着しつつあります。多くの消費者事件、中小企業の事業承継、個人の債務整理事件、高齢者等の後見介護事件、家族を巡る様々な事件なども、増加と減少を繰り返しながらも、固有の弁護士業務との認識が定着しつつあります。これからは、海外取引をめぐるコンサル業務、知財、行政にかかる事件、都市問題、個別労働事件、税務・法人設立等も、新規開拓やこれからの需要が見込まれる分野と期待されます。なお、法的需要に関しては、弁護士会という信用力を背景としてアクセスルート(依頼者が弁護士へ辿り着く道筋)を策定し、広報していくことによって産みだされる事柄も多いと考えられますので、これから具体的に協議のうえ、その方策を探っていきたいと思います。前記例示の中には、既にPTとして活動している企画もあり、当会会員の頑張りに期待しています。
4)この月報が出るころには、新会館用地取得の問題については一応の結論が出ていることを期待しています。六本松の旧九大教養部跡地は南側エリアが裁判所、弁護士会、検察(法務)の法曹三者の司法(法曹)ゾーンとして予定されているところです。この弁護士会のエリアは、今購入しなければ、今後の購入や買い増し等は不可能な場所と言われています。私は、六本松は今後劇的に変わるエリアだと思っています。これまでのURとの話し合いで購入可能と考えられる1,000坪を購入し、将来100年先においても、弁護士と一般市民の期待に応えられる広場(フォーラム)としての会館が可能な用地として、今取得すべきと考えています。弁護士会は国民から「基本的人権の擁護と社会正義の実現」の負託を受けて自治権を有しています。この負託に応える機能を新会館に託します。

3.弁護士不祥事
今年度執行部がスタートする直前は、北九州部会の会員が逮捕される事件が発生し、そのために多大の信用が失墜しました。私たち執行部はこれら弁護士の不祥事を未然に防ぐことを最大の課題として取り組んできました。
しかし、とうとう福岡部会のA会員について、会長自ら綱紀委員会に対する懲戒請求(調査開始の申立)せざるを得なくなりました。A会員については、早い時期から色々と接触を図り、市民窓口に対する苦情問題の把握と解決策を探ってきていただけに、大変残念な結果に終わり、慙愧に堪えません。
多くの会員の皆様方は預かり金の分別管理は厳しく励行していただいていることと思いますが、依頼者に対するこまめな報告についても励行をお願いし、依頼者の不安が生じないような努力についても、日々怠ることのないようにお願いします。

4.1年の終わりに
今年も早12月に入り、1年の締めくくりの月がやって来ました。私たち執行部は、あと3か月強の任期となりました。
これからは、今までにやり残した課題を整理して、各委員の皆様とともに実現を目指していきたいと思います。

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会長日記

会長日記

平成23年度福岡県弁護士会 会 長 吉 村 敏 幸(27期)

1.新年あけましておめでとうございます。
昨年の私たち執行部活動の中心課題は、何といっても、給費制実現の運動と、発足直前に発生した3.11東日本大震災と原発事故の復興支援対策です。この二つが一番大きく心にのしかかっていました。震災問題は、被災者復興支援対策本部において何度も法律問題の研修を繰り返し、相談と応援の体制づくりを行ない、また義捐金を募集しました。金額は早い期間で1,000万円を超えました。このうち東北三県(岩手、宮城、福島)の各単位会に各200万円ずつ送金し、残422万円余を震災で父親や母親を亡くした高校生140名の学資として一人当たり毎月15,000円を送ることにしました。これは、東京弁護士会が当初40名程度を考えて高校生の選定にあたったものの140名もの応募があったため、全員を救済することとし、改めて会員に追加の募金をお願いしていたものです。当会は東弁の企画に共催の形で支援することになりました。これにより、高校1年生、2年生の学資金の支給期間が当初予定されていた平成24年8月から大幅に延長可能となったとのことでした。子ども達のお礼の言葉を次に記します。
☆(ご本人からの手紙)
私は今回の特別義援金支給決定をうけ本当に感謝しています。これから高校生活を始めるにあたり一生懸命に勉強、部活に打ち込み、高校生活を有意義なものにしていきたいと思っています。今回の義援金支給の決定ありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給していただくことになり、誠にありがとうございます。今はとても大変な時ですが、日々勉強に励んでいきたいと思います。本当にありがとうございます。
☆(ご本人からの手紙)
特別義援金の支給、ありがとうございます。今回の震災で家族4人が津波に流され亡くなりました。父、姉、祖父、祖母です。家族が一度にいなくなり、悲しい、寂しい毎日ですが、母と妹と3人で仲よく暮らしています。将来、看護師を目指して勉強中です。家計の不安もあり、少しでも母の助けになればとアルバイトを始めました。今回、義援金を給付いただけることになり、うれしく思っています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給いただきまして、ありがとうございました。私は母親と二人暮らしで生活していました。この震災で母親が亡くなり、一人になってしまいました。でも今は、祖父母の家で叔母と一緒に暮らしています。叔母は会社から解雇になってしまい、生活面で困っていました。このような支援をして頂きまして、すごく助かり感謝しています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人の叔母様からの手紙)
このたびは色々とご配慮いただき、大変ありがとうございました。○○(本人・姪)になり代わりまして、お礼申し上げます。震災後は体調を崩すこともありましたが、現在は毎日、部活動の吹奏楽にいっしょけんめい取り組んでおります。家庭環境も変わり心理的にも困難な状況の中でも、前向きに努力する姿に、私どもも微力ながら協力していこうと考えております。
東弁でも引き続き募金を継続して、できるだけ期間の延長をはかろうとしています。福岡県弁としてもこれを機会に改めて募金のお願いをし、親を亡くした東北の子ども達を支援していきたいと考えています。皆様の募金をよろしくお願いします。
被災者を中心とする法律相談については、会内の相談センターでの体制づくりをしてきましたが、平成23年4月以降、12月18日の集中相談研修までに22件となっています。他方、被災地への応援については現地からの要請はありませんが、東京三会が中心となって行なっている原発問題支援機構が福島県等における訪問相談チームを編成して被災地に出向いています。しかしながら到底弁護士の人手が足りないことから、西日本地区からの応援を求めているとのことでした。現在、対策本部に検討をお願いしているところです。

2.残り3か月の課題
私たちに残された課題はたくさんありますが、とりあえず次の諸事項を掲げます。人権、司法制度、会内問題、業務問題です。
①給費制実現へ向けた運動の拡大
②法曹人口問題についての当会の方針の策定
③少年身柄事件全件国選化へ向けた運動の展開
④被疑者国選拡大(全件化)の運動
⑤原発賠償問題へのバックアップ出張体制の実現
⑥自死問題についてのネットワークの構築
⑦共済制度の具体化
⑧リーガルサービス基金の期間延長
⑨県弁会計システムの変更
⑩消費者事件のアクセスルート構築
⑪国際取引PTの今年度のまとめ
⑫福岡・釜山フォーラムの日韓海峡圏における取引障害事例の研究着手
⑬福岡市医師会とのパートナーシップ活動の具体化
⑭法律相談センターの充実のために(チケット制等の一層の拡大へ向けて)
もちろん、上記以外にもたくさんの課題があることは承知していますが、各委員会の皆様とともに網羅的に取り組みたいと思っています。

3.矛盾のなかの合意
日弁連の法曹人口政策会議は先鋭な意見の対立する場です。私たち各単位会の会長は当然委員になっており、各単位会の意見を反映できるような建付けになっています。現状は約2000人の司法試験合格者のところ、裁判官、検事の任官者採用者数は全く伸びておらず、当初の司法制度改革審議会意見書は前提事項(司法基盤の整備、法的需要など)が達成されないまま、弁護士数のみが増加する最悪の事態となっています。そのような中で、司法試験受験者の質の低下、弁護士登録しても就職できない新人の激増、法科大学院を目指す若者の激減などから、新人弁護士の逼迫感も高まっています。ここで、日弁連の法曹人口政策会議では、司法試験合格者の数を1500人や1000人へと減少させるべきとする意見が表明され、また、これまでに各単位会や日弁連の決議・声明が相次いで出されました。私は、現状の2000人合格者を段階的に1500人減員とする案を「已む無し」論として、個人的に意見表明しました。しかし、合格者1000人説の人たちの強い反発もあり、今後の行方は予断を許しません。私としては、現状2000人合格者を1000人あるいは1500人のいずれかとして打ち出すのは、数の面において両立し得ない質的相違であると考えます。しかし、減少する方向は一致しているのですから、このような矛盾的見解においてこれを許容する論理を承認したうえで、まずは1500人説を採用して、ここからの運動を創造することが大事だと思いました。しかし、1000人説の方々の舌鋒は鋭く、困難を極める状況です。それでも、3月末までにはきちんと日弁連の意見集約、すなわち矛盾のなかの合意をはかることができるように努力したいと思います。

4.大いなる夢と希望を抱いて
今年一年、辰歳がスタートしました。
弁護士の将来には魅力を感じないとする声もあります。しかし、弁護士とは本来、職人的なものであると思います。労を惜しまず、現場に出て活動すると、必ず何かが見つかります。そして、自分を必要とする人たちの力になることができますし、引いてはその活動の延長で制度や法律を変えることができます。弁護士の公益性・公共性です。
これらの信念を固く信じ、大いなる夢と希望を抱いて、この一年も努力していきたいと思います。

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