福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2011年9月28日

会長日記

会長日記

平成23年度福岡県弁護士会 会 長吉 村 敏 幸(27期)

1. 今日は、仙台で日記を書いています。8月19日金曜日に日弁理事会が終わった足で、夜、仙台に赴き、8月20日土曜日、仙台からJR仙石線(センセキ線)と石巻線に乗り継いで、被災地石巻市と女川町に行ってきました。今年5月の県弁総会で報告をいただいた石巻市の前田拓馬弁護士が3月11日の講演時、被災した施設(健康センター)はかろうじて残っていましたが、他はすべて瓦礫と化し、女川町の中心部はまさに無人の土地でした。グーグルでも状況を見ることが可能です。JRも寸断され、途中、代行バスに2回乗り換えて、仙台から女川町の避難所(高台の総合体育館。ここには今でも体育館の中で約160人の町民が避難生活をしておられました。他に約15か所の避難所あり)まで片道4時間要します。線路は赤さびて途中のバス道路から見える建物も壁が壊れ、朽ちています。女川町の避難所にはボランティアの医師やNPOの若者たちが数人残っており、運動場で4~5人の若者がトランペットやサックス等で演奏の練習をし、その横で7~8人の若者がダンスのドール踊りなど練習をしています。お年寄りは数人が体育館の玄関に出て、この練習風景を眺めているだけで、多くは施設の中のようです。施設の中は小さくパーテーションされ、たくさんの衣服やタオル等が無造作に掛けられています。町の中心部の廃墟、重機だけが動いている様子とは、対照的でした。思い立ったのは、7月の生存権委員会の合宿のときに井上英夫金沢大学教授から「絶対に被災地に行きなさい」と強く言われたことが心に残っており、やって来ました。もともとは、当会の震災復興本部としても、東北三県の弁護士会と提携して法律相談活動の支援をする必要があるだろうと考えて、震災対応の研修を行なってきたものの、東北三県からは自前の対応のみで手一杯であり、他の多くの単位会の支援要望に応える体制が作れないために、すべて謝絶され、結局、当会は現地の支援に赴く必要性がなくなってしまいました。もっとも、福岡県における被災移住者の集いや交流会には委員会から積極的に出かけて行って、自治体やNPOと連携しての相談活動を始めています。東京を出るときに、福島で震度5弱の地震があり、仙台に来てからも日に数回の地震が続いています。このような中で、石巻線沿線や女川町の瓦礫を取り除いた後、町はどのように再興がなされていくのでしょうか。今までと同じ仕事と安心できる住居の確保がなされることを願っています。仙台駅にはカメラを抱えた若者が多く、ボランティア受付のブースもあります。途中の矢本町はちょうど夏祭りのため若者が多く、浴衣姿の女性たちがたくさん談笑しています。子どもや若者たちの屈託のない笑顔と元気にホッとしました。

2. さて、給費制の問題がまたもや国会の中で活発になっています。政府の「法曹養成に関するフォーラム」は、当初から貸与制の問題についてのみ議論し、8月末までに結論を出すことになっていましたが、8月4日の第4回フォーラムでは貸与制を前提とした佐々木座長の取りまとめがなされました。これについては、直ちに地元の国会議員要請活動を福岡および東京の議員会館でも行ないました。ビギナーズネットは連日国会周辺で給費制存続を求めた朝のビラ配りを行なっています。全国的に国会議員の給費制に対する理解も進んでおり、8月2日、18日と、相次ぐ私たちの訪問についても快く応じていただき、また、院内集会への参加者も多く、積極的な発言がなされています。昨年と同じような時間切れにならないよう、また、仮に時間切れになったとしても、給費制が存続されるまで戦い続けるとの強い覚悟でいることをお伝えします。

3. 法曹人口問題政府のフォーラムは給費制だけではなく、法曹養成にかかる問題全体について議論する場です。この期間としては概ね2~3年くらいではないかと予想されています(ただし正確な情報ではありません)。したがって、日弁連としても、それ以前に一定の方向性を打ち出す必要があります。当会としてもこの問題について広く会員の意見を取りまとめる必要から、11月上旬に法曹人口問題シンポジウムを開催予定です。現在、シンポ準備会の中で連続勉強会を開いています。最終的に重要な事柄は「市民にとって適正な法曹人口」は如何にあるべきか、その判断要素は何か、ということだと思います。これが大変に難物です。かつて司法改革審議会において法曹人口5万人、毎年3000人合格説が主張された根拠は、フランス並みにということだったと聞いています。しかし、この根拠は、・法律関連の隣接職種を加算していないことの誤り、・法曹需要-事件数比較がなされていないことの誤り、があります。隣接関連職種は、司法書士(2万人)、行政書士(4万人)、税理士(7万人)があります。対象の諸外国には、これらの隣接関連職はありません。米英独仏日弁護士人口(2010年)110万人12万人15万人5万人2.8万人関連職司法書士2万人行政書士4万人税理士7万人事件数比較(2009年)1837万件194万件163万件155万件90万件人口10万人あたりの事件数5,8383,1601,9932,500708日本を1とした場合8.24倍4.46倍2.81倍3.53倍1以上から明らかなように、我国では事件数から見て諸外国のように法曹需要は存在しないということがいえます。また、我国の隣接法律関連職業人口を加算すると、司法書士を加えて、フランス並みのおよそ5万人となります。

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