福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2011年8月29日
福岡拘置所小倉拘置支所の現地立替え等を求める要望書
要望書
平成23年8月26日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
法 務 大 臣 江田 五月 殿
法務省矯正局長 三浦 守 殿
法務省福岡矯正管区長 十川 学 殿
法 務 大 臣 江田 五月 殿
法務省矯正局長 三浦 守 殿
法務省福岡矯正管区長 十川 学 殿
福岡県弁護士会
会 長 吉 村 敏 幸
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 近 藤 正 隆
会 長 吉 村 敏 幸
福岡県弁護士会北九州部会
部会長 近 藤 正 隆
福岡拘置所小倉拘置支所現地建替え等を求める要望書
第1 要望の趣旨 福岡拘置所小倉拘置支所(以下,「小倉拘置支所」という。)を現地にて建替えすべく早急に予算措置を講じること,及び,新小倉拘置支所を建築するにあたっては,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した設計にすることを強く要望する。 第2 要望の理由
1.当会は、平成7年2月に小倉刑務所跡地に医療刑務所・小倉少年鑑別所(現福岡少年鑑別所小倉支所)・小倉拘置支所の3施設を移転させるという「北九州矯正センター構想」(以下、「本構想」という)が発表されて以来、本構想に一貫して反対し、本構想の撤回および小倉拘置支所の現地建替えを強く求めてきた。
その結果,平成21年6月に,当会の主張の通り,本構想に基づく小倉拘置支所の小倉刑務所跡地への移転が断念されたことにより,小倉拘置支所の建替えの方法としては,現地での建替えの方法に絞られた。
2.かかる状況を踏まえて,当会としては,以下に述べる通り,他の拘置所よりも優先して,小倉拘置支所を早急に建替える必要性が存することを強く主張するものである。
3.すなわち,小倉拘置支所は1960(昭和35年)に築造された建物で,既に築後50年を経過している。この建物は,旧耐震基準のもと建築されている上,これまで補修・改修工事もほとんど行われておらず,外壁の落下に備えて建物のほぼ全体にネットが張られていることなど,建物外部の老朽化が相当に進んでいることは明らかである。
4.また,小倉拘置支所の建物内部においても老朽化は顕著である。
昨年度の夏・冬に,当会で小倉拘置支所の被収容者に対するアンケート調査を行った(別添の資料ご参照)。同アンケート調査結果によれば,被収容者のうち65%が収容部屋の壁・床・天井に,ひびや,コンクリートが欠けたりはがれたりしている箇所がある,という回答をしている。収容部屋以外の箇所でも,全体の50%近くの被収容者がひび・コンクリートが欠けたりはがれたりしている部分があると回答している。
実際,小倉拘置支所の見学を行った際には,雨漏りのため天井が腐ってしまった部分が多く見られ,使用不能となっている部屋も存在した。
また,蛇口から赤水が出るなどの給水設備の老朽化,収容部屋でダニが出たり,トイレの水の流れが弱いため排泄物がなかなか流れないなどの衛生面で問題があるとの回答もあった。さらに,収容部屋の廊下側にトイレがあり,職員や他の被収容者に見られているというプライバシー権の侵害を訴える回答もあった。そして,夏の暑さや冬の寒さの厳しさを訴える回答も多数あり,冷暖房施設がないことにより被収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることが判明した。
このように,現在の小倉拘置支所の建物は外部・内部とも老朽化が顕著であり,未決収容者の生活環境が著しく劣悪な状況に置かれていることから,建替の必要性は極めて高い状況にある。
5.御承知のとおり,本年3月11日に東日本大震災が起こり,東北地方は未曾有の被害を受けた。小倉拘置支所の建物は,東日本大震災ほどの巨大地震でなくとも,地震による倒壊の危険を常に孕んでいる。被収容者,拘置支所職員及び面会に来た一般市民の生命・身体の安全を守るために,早急に建替えを行うべきである。
6.そこで,当会としては,改めて,小倉拘置支所を早急に現地で建て替えることを要望し,そのために必要な予算措置を早期に講じるよう強く要望する。
7.また,拘置所に収容された未決収容者には,「無罪推定の原則」があり,その基本的人権は最大限尊重されるべきである。
しかし,実際は一般人との面会,通信手段が相当制限されており,テレビの視聴もできないなど,未決収容者の収容状況は,既決収容者と比較しても劣後した扱いとも言えるもので,現在の拘置所では,無罪推定を受ける未決収容者の基本的人権に十分な配慮がなされていない。
8.そこで,小倉拘置支所の現地建替えを行う際には,無罪の推定を受ける未決収容者の基本的人権に最大限配慮した建物を建築することを強く要望するものである。
第3 添付資料 ・小倉拘置支所の現地建替えに関する被疑者・被告人アンケート分析論 文(夏・冬)
以上