福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2011年5月10日

会長日記

会長日記

平成22年度福岡県弁護士 会 長市 丸 信 敏(35期)


自宅から県弁会館へ徒歩で向かう際、六本松の九大教養部跡地の脇を通り抜けます。そこに数あった建物は今や全部解体撤去され、目下、跡地整備作業が進められています。いよいよ当会の新会館に向けた夢が膨らみます。…そんな気持ちで任期末の3月を迎えたところ、思いもかけない激震に相次いで見舞われることとなりました。◆弁護士・弁護士会の真価が問われている3月11日に発生した東日本大震災や巨大津波による被害の惨状には、ただただ呆然と立ちつくすしかない思いでした。被災地の皆さまに心からのお見舞いを申し上げますとともに、犠牲になられた多数の方のご冥福をお祈り申し上げます。われわれは、弁護士として、基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を国民から負託され、日頃、その本分を全うすべく力を合わせて懸命に努めて参りました。今、未曾有の大災害、空前の被害(人権侵害)を前にして、弁護士・弁護士会としての真価が問われています。西日本の雄会としての当会は、率先して、なすべきこと、できることに心を砕き、被災者の救済、被災地の復興、日本の再起に向けて、一丸となって支援のための努力を払って参りましょう。なお、日弁連や全国弁護士会、一部ブロック会では、阪神淡路大震災以降の経験を教訓にして、災害対策や復興支援のための委員会組織を設け、連絡会議などを重ね、災害相談マニュアル等も作成・改善を重ねる等、災害時の対応や災害被害からの復興に向けて、被災地弁護士会を日弁連・他の弁護士会(支援弁護士会)が連携して支援する体制ができております。当会でも、災害対策委員会を中心にしかるべき体制で適時・適切な対応をもって臨むことになります。会員の皆さまのご支援方をよろしくお願いします。なお、3月15日に、当会会員の皆さまからの震災復興支援の義援金の受け付け口座を開設してご案内致しましたところ、最初の2日間で47口、266万円もの善意をお寄せ頂いたことには、執行部一同、感嘆と感激の思いで包まれました。なるべく早期に、被災地弁護士会を介しての被災地支援に役立たせて頂きます。ご協力に感謝申し上げます。◆信頼の回復にむけて3月3日夕刻、執行部に衝撃が走りました。当会会員(北九州部会、30期)が福岡地検に業務上横領罪容疑(平成18~21年頃の事件)で逮捕されたとの報が飛び込んできました。執行部は、当夜直ちに、拘置所にて当該会員との面会をして、逮捕容疑に間違いないことの確認が得られましたので、引き続き、緊急の執行部会議を開き、当会として綱紀委員会に対する調査請求をすることを決定しました。翌4日午前には、その手続を了したうえ、記者会見に臨み、国民の皆さまに向かっての謝罪を致すとともに、綱紀委員会に調査請求をしたことを公表しました。調査請求やその公表は、当会の規定に基づく処置です。当年度は、とりわけ修習生の給費制の問題に会員の皆さまと一緒になって懸命に取り組んで参りました。その運動を通じて、私たちは、法曹そして弁護士は一体誰のものであるのかを強く自問しつづけ、そして、弁護士はこれまでも司法を担う公共財であったし、これからも公共財であり続ける、との決意を新たにしたばかりでした。そのようなさ中のベテラン会員によるよもやの事件は、まことに無念の一語に尽きます。全国のほとんど全てに近い会員は、誠実に職務を遂行し、自己犠牲を厭わずにボランティアでの公益活動にも邁進しています。にも関わらず、ごく一部の例外的な不祥事であってもそれが起こってしまえば、弁護士全体に対する信頼が揺らいでしまうことになります。その信頼を取り戻すためには、再び、会員ひとりひとりが、地道にコツコツと弁護士の本分を全うする日々を積み重ねて参るほかありません。同時に、同じ過ちを決して繰り返さないための会を挙げての取り組みも欠かせません。今回の事件は、弁護士倫理(弁護士職務規程)以前の論外の問題ながら、事件の概要がつまびらかになったところで、今回の事件を検証して、会としてあるいは周囲の仲間として、このような事態を招かないで済むにはどうすればよかったのかをキチンと振り返ってみて、今後の有り様を皆で考えてみるべきはないかと感じております。◆法曹養成制度の改善に向けての正念場今次の司法制度改革の中で、もっとも困難な状況に陥っているのが、法科大学院を中核として制度設計された新しい法曹養成制度と理解します。司法を支える人材をいかに確保し養成して行くかは、極めて重要な国家的課題です。給費制の問題も、適切な法曹人口・弁護士人口の在り方も、養成制度と深く関係します。法科大学院、司法試験などを含む法曹養成制度の改善に向けて、政府のもとにその改善施策の検討・策定に向けたフォーラム(検討会議)が近々発足する予定です。極めて重要な会議になりますので、日弁連は、これに向けて緊急提言や昨夏以降激しく会内論議を重ねてきた法曹人口問題に関する提言をなす予定です。これらについては、当会でも鋭意検討や議論を致して参りましたが、非常にタイトなスケジュールの中で広く十分な会内論議を尽くすことができなかったことを申し訳なく思っております。ただ、内外に向けての運動の本番は、いずれもこれからです。吉村執行部には大変な重要課題が数多控えておりますが、会員の皆さまのご支援のほどをよろしくお願い致します。◆嬉しいお知らせ昨年5月号から続けさせて頂いた私からの会長日記も今回が最後です。最後にうれしいご報告で締めさせて頂きます。1) 福岡市こども総合相談センターの任期付公務員に当会会員報道でご承知の方も多いと思いますが、久保健二会員(福岡部会、62期)が、福岡市こども総合相談センター(児童相談所)のこども緊急支援課長に任期付公務員(任期2年)として採用され、この4月から常勤します。当会の子どもの権利委員会は児童虐待防止活動にもかねて熱心に取り組んできており、福岡市とも連携を強めてきたところ、昨秋、福岡市から推薦依頼が当会になされ、久保会員に白羽の矢が立った次第です。もちろん、全国初のケースであり、弁護士の活動領域の拡大、そしてなにより、弁護士会が取り組んできた子どもの権利の擁護活動が一歩前に踏み出した新たな形として、まことに画期的なことで、全国への波及効果も期待されます。会を挙げて支援すべきです。久保会員におかれては、常に緊急かつ緊張の現場対応が求められるハードな仕事だと察しますが、どうか身体に気をつけて頑張って頂きたいと願います。2) 法教育懸賞論文優秀賞の受賞法教育は、弁護士会が取り組むだけではなく、国(法務省・文科省)もまた日弁連との連携において強力に推進しています。法務省では昨年、法教育懸賞論文を募集したところ(テーマは「学校現場において法教育を普及させるための方策について」)、当会の春田久美子会員(福岡部会、48期)がこれに応募され、この度見事に優秀賞を受賞されました。もちろん春田会員は当会の法教育委員としても熱心に活動されています。近々、法務省のホームページに論文全文が掲載されるとのことですので、是非ご覧ください。そして、当会でこのほど発足した法教育センターにご理解とご支援をお願い申し上げます。3) 委員会活動活性化若手会員が急増するとともに、委員会活動に参画して頂いている会員もまた増えている状況を伺い見て、また各委員会から上がってくる毎月の議事録も拝見致しながら、当会の委員会活動が全体的にかなり活性化しているとの手応えを感じながらこの1年を過ごして参りました。実際、本年度第2回目の委員長会議(2月25日)の報告資料によれば、委員会の本年度の出席者数が前年比で増えた委員会が過半を超え(28委員会)、その余も多くは横ばい傾向であり、執行部一同とても嬉しく思いました。会員数が増えることで、従来は手を回し切れていなかった活動分野にも取り組むことができるようになりつつあります。数は力なりです。地域司法も充実して参ります。(退任のご挨拶は、あらためて次号になるそうですが、1年間、会長日記をお読み頂き、また、会務をお支え頂きまして、会員の皆さま、まことに有り難うございました。)

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