福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2011年1月24日

会長日記

会長日記

平成22年度福岡県弁護士会会長 市 丸 信 敏(35期)

師走を迎えました。暑く長かった夏から、一足飛びに冬になってしまったかのようです。会員の皆さまにおかれましては、この1年、いかがお過ごしだったでしょうか。◆司法修習生給費制1年延長!(感謝)残念ながら、10月末のタイムリミットに間に合わず、給費制の存続は叶わず、一旦貸与制が施行されてしまいました。しかし、日弁連執行部の粘りとこれを支えた各会の懸命の運動継続が実って、この臨時国会で1年間の「見直し期間」の限りながら、議員立法によって給費制が延長されることが、民主・公明・自民の3党で合意されました(10/18)。会期末までの残りわずかな時間ですが、ハプニングなど起こらずに無事に法改正までこぎ着けることができることを祈るばかりです。「今年の執行部は給費制しかやっていないじゃないか」との一部批判の声もあるとも聞き及びました。不徳の致す所ですが、足らざる所については、お気付きのことを、どうか遠慮・忌憚なくご指摘を頂ければ幸いです。もっとも、給費制については、執行部として、一所懸命に取り組みをさせて頂いたことは事実です。宇都宮日弁連会長の方針(公約)に即して、一方的に場外から名乗りを上げた敗者復活戦のような7ヶ月の運動でしたが、沢山の会員の皆さまの絶大なるご理解・ご支援と熱意ある運動のおかげによって、満足(給費制のそのままの存続)ではないながらもここまで到達できたことを、会員の皆さま、支えて頂いた多くの方々、そして後輩諸君らと一緒に、素直に喜びあいたいと思います。日弁連の宇都宮会長や川上本部長代行からも「7月31日の福岡の強烈な集会・パレードが、この運動の潮目の変わり目となった」との言葉を頂いています。ただ、与えられたこれからわずか1年の見直し期間内に、法曹養成制度全体を見直しつつ給費制を再検討する等の条件が付されていますので、私たち弁護士会は、引き続き、全力を挙げて、嵐の中にある新法曹養成制度全体の立て直しのため、困難ではありますが、前進を続けなくてはなりません。◆法曹人口問題今年8月にスタートした日弁連「法曹人口政策会議」での議論の進行状況を踏まえて、当会でもこの問題について会内論議を開始すべき時期が来たものと理解しております。司法改革を推進してきた当会として、その更なる推進のためには法曹人口の増員の方向性自体は今後とも維持すべきではあるものの、昨今の弁護士大量増員による就職難(OJTの機会喪失)や司法基盤整備の著しい遅れ、司法ニーズの伸び悩み等々の諸問題状況を踏まえると、その増員のペースを現状(司法試験合格者2000人強)よりもさらにスローダウンさせるべきであるという点では、まず会員の大方の考えは一致できるのではないかと個人的には察しております。ただ、そのペースはどの程度が適切なのか、将来的な安定法曹人口とは奈辺を妥当とするのか、そしてなによりも、この問題を弁護士内輪の論理ではなくて、国民・世論・マスコミ等々からの理解・共感を得るためには、私たちは、何を、どのようにアピールしてゆくべきなのか。「市場原理が法曹人口を決める」のであって、本来は数をあらかじめ決めることもできないとする司法改革審議会意見書ほかの意見を論破できるのか。皆さんから大いに意見や知恵を寄せていただき、前向きの議論ができることを願います。◆刑事裁判の状況裁判員裁判を巡っては、施行3年後の見直しに備えて、日弁連レベルでの論点整理作業が進められ、また、当会では刑事弁護等委員会の熟達の士の指導のもと若手会員による「裁判員裁判専門チーム」が発足し猛研鑽を重ねています。今後の会員の刑事弁護活動のサポート役・牽引役に成長してくれる日が待たれます。他方、裁判所も裁判員裁判への対応に相当の精力がそがれているようで、単独刑事事件の期日が入りにくい等のしわ寄せが生じているとの声もあるようです。会員のうちで日頃お感じになっていること、お困りのことがありましたら、是非、当会(執行部や裁判員本部、刑事弁護等委員会など)に声をお寄せ下さい。◆民事裁判の改革の動き福岡地裁本庁民事部から、労働審判にヒントを得た「迅速トラック」なる審理方法が開始され(11月1日)、また、民事裁判の「新福岡方式(福岡地方裁判所審理方式)」に関する10年振りの改訂作業が進められていること(平成23年1月からの実施目標)も、すでにご案内のとおりです。いずれも、民事裁判の一層の充実・迅速化を目指し、もって司法の利用者である当事者により納得して貰えるように、との理念に出るものです。今回の改訂も、新民事訴訟法(平成8年)の先駆けともなった平成3年度スタートの福岡方式、平成12年度に改訂された新福岡方式と同様に、基本的には、弁護士・裁判官として当たり前のことをキチンとやろうということ、すでに実務的に定着している運用などを再確認しようというものです。有り体に言えば、折角、民事裁判の改革でも全国をリードしてきた福岡にあって、いささか昨今の民事裁判は沈滞気味ではないのか、手続がルーズに流れてはいないだろうか、これを再度活性化させて、真に国民のニーズに応えてゆこうではないか、という思いに基づく今回の改訂作業であると理解しています。充実した手続のもとで迅速な裁判を実現するために、弁護士同士も互いに緊張感をもって個々の裁判に向き合いたいものだと思います。今回の改訂福岡方式についても、これまで同様、検証・見直し・改善を続けてゆくことになります。仮にも裁判官にあって「迅速かつ迅速」な裁判といったような「充実」をお留守にする訴訟指揮、福岡方式の理念に悖るような運用がなされるようなことが起こるとすれば、それも検証・見直しの対象となりますので、大いに関心を払って頂きたいと願います。どうか、ご理解とご協力のほどをお願い申し上げます。◆業務妨害事件への対応今年は極めて残念な事件が続きました。6月の横浜の会員殺害事件、11月の秋田の会員殺害事件です。いずれも代理人として業務を遂行した離婚事件がらみで、相手方当事者からの逆恨みによる一方的な凶行でした。断じて許せることではありません。弁護士は、普段から、こうやって体を張って依頼者の盾や身代わりにもなって活動しているわけですが、残念なことに、過去、当会でも弁護士に対して危害等が加えられた事件は少なくありません。事務所のセキュリティ強化ほかの防犯体制を整えて頂いた上、具体的に心配な案件が生じた場合は、当会(弁護士業務妨害対策員会)にご相談ください。早期の警察との連携その他のサポートに努めます。また、マニュアルもできており、今後、会員研修も強化して参ります。◆嬉しいニュース3題・ 新司法試験考査委員に船木会員任命さる10月、新司法試験考査委員(兼、予備試験考査委員。刑事訴訟法担当)に当会の船木誠一郎会員(福岡部会)が任命されました。地方会からの司法試験考査委員の任命は画期的な出来事です。重責を担われる船木会員のご苦労は大変なことかと思いますが、地方法曹の代表として頑張って頂きたいと思います。・ 福岡市の包括外部監査人に牟田会員を推薦11月、平成23年度(4月~)の福岡市の包括外部監査人として、牟田哲郎会員(福岡部会)を推薦致しました。これも快挙です。福岡市の包括外部監査人には、この制度創始以来もっぱら公認会計士が就任していました(全国的にも圧倒的に公認会計士が主流です)。しかし、当会の弁護士業務委員会による地道な勉強会やサポート態勢構築等の努力の甲斐が実って、この度、福岡市においてははじめて弁護士に白羽の矢が立った次第です。これまた大変なご労苦を伴う任務ですが、いずれ選任される補助者の会員の皆さんともども、弁護士業務のあたらしい道を切り開く先達として、存分なるご活躍を願う次第です。・ 日本公庫との協力覚書に調印11月、当会と日本政策金融公庫福岡支店との間で中小企業支援に関する相互協力・連携に関する覚書を調印しました。全国初の意欲的な取り組みです。4月に発足した当会の中小企業法律支援センターは、川副正敏委員長・池田耕一郎事務局長(副委員長兼務)・北古賀担当副会長らの熱意と各部会の若手・中核の委員らの献身的活動によって、県内各方面の中小企業団体・機関等との間で多様な連携を模索して、パイプ作り・協働化を進めています。また、コールセンターも多数の会員のご協力によって順調に運営されています。この度の覚書によって日本公庫とは連携の太いパイプが敷かれたもので、中小企業センターの活動に大いなる弾みを付けました。このことは中央をも刺激して、日本公庫本部と日弁連との間でも同様の連携を模索する動きが出始めました。中小企業に法律支援をしてゆくことは、法の支配を中小企業分野にも及ぼすことに他なりませんし、会員の皆さまの業務にも資するものと信じております。どうか、今後ともご理解とご支援を頂きますようお願い致します。◆釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典11月5日~7日、釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典(釜山側開催)への訪問行事も、50名ほどの訪問団をもって無事に終了しました。6月の当会開催の同記念式典ともども、ご苦労な準備をして頂いた国際委員会やご協力を頂いた会員・関係者の皆さまに感謝申し上げます。今回の訪問では、釜山地方検察庁(大きな庁舎!)の可視化取調室の視察や法律事務所訪問等もプログラムに組み入れて頂く等、周到かつ豪華に準備された式典や行事からは、釜山弁護士会のおおいなる熱意がひしひしと伝わってきました。また、個々の会員同士が再会を喜びあい、爆弾酒による2次会やゴルフ、トレッキングをごく自然に楽しむ姿に、20年の交流によって醸成された強い相互信頼関係を感じました。私がとりわけ嬉しかったことに、釜山弁護士会による大塚芳典会員(福岡部会)に対する顕彰のことがあります。大塚会員が両会の永年の交流に寄与された功績に対して、釜山の愼_道会長から式典で表彰をして頂いたのです。ご承知の方も少なくないと思いますが、大塚会員は、今日、九弁連の各会がそれぞれに国際交流(外国会との姉妹締結)をするに至る原動力となった人であり(現在も九弁連国際委員会委員長)、また、九州だけではなく全国のいろんな会の国際交流の橋渡し・推進にも尽力しておられます。文字通り、わが国弁護士会の国際交流の恩人と形容するにふさわしい人であり、当会の誇りです。

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