福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2010年9月16日

集会アピール~子どもの貧困をなくし、希望を持てる社会にすることを求めるアピール~

アピール

集会アピール

1 1990年代以降相次いだ労働法制の改悪や労働者派遣法の規制緩和により非正規雇用が拡大したことに加え、もともと脆弱な社会保障のさらなる切り崩しによって、社会の中に貧困が広がり、深刻化している。このような社会の中で育たざるを得ない子どもたちもまた、貧困と無縁ではいられない。
  昨年、厚生労働省は、日本の子どもの相対的貧困率が2007年の調査で14.2%であること、すなわち、子どもの7人に1人が貧困状態にあることを初めて明らかにした。これはOECD諸国の中でも最悪に位置づけられる割合である。
2 子どもの貧困は、その親の貧困とあいまって、ときに虐待死など子どもの生命そのものに直結する問題を生じさせる。また、子どもの貧困は、子どもが成長・発達する権利(憲法13条)や、教育を受ける権利(憲法26条)をも脅かしており、子どもが成長した後においても貧困状態から抜け出すことを困難にさせている。
  社会保障制度が脆弱な現在の日本において、貧困状態におかれた子どもたちが貧困を乗り越えることは非常に困難であり、子どもたちは、人生におけるさまざまな選択肢を奪われている。その結果として、親が貧困であればその子どももまた貧困になるという「貧困の連鎖」が延々と続くことになる。
このような現状は、憲法や子どもの権利条約で保障された子どもの生存権、成長発達権、教育を受ける権利の保障の観点から、とうてい見過ごすことはできない。
3 本日のシンポジウムでは、貧困状態におかれた子どもたちがさまざまな権利を奪われ、侵害されている実態や、貧困状態にある子どもを支援する制度の脆弱さ、そして貧困が世代間で連鎖していっていることが明らかとなった。
  過酷な労働条件からもたらされる親の貧困が、子どもを養育する時間的・経済的余裕を親から奪い、医療費助成の不足もあいまって子どもに必要な医療へのアクセスを断念させ、子どもに健康障害をもたらしているという現状。家庭の貧困が、子どもの学ぶ意欲にも影響を及ぼし、子どもを高校中退などに追い込んでいること。本来、子どもの教育を受ける権利を保障するためのものであるはずの就学援助制度が、必要な子どもに行き渡っていないこと。そもそも家庭での養育を受けられない子どもに対しては、何の支援も行われず社会から見過ごされがちな実態があること。
私たちは、このような実態に目を向け、貧困の連鎖を断ち切り、子どもの貧困を根絶するための取り組みを強めなければならないとの思いを共有した。
4 そこで、私たち集会参加者は、貧困の連鎖を断ち切り、子どもの貧困を根絶するため、国及び地方自治体に対し、①子どもの保育・医療・教育にかかる費用の公費負担割合を増加させること、②人間らしい働き方を保障する観点から労働法制・労働政策の見直しを進めること、③あらゆる世帯が健康で文化的な生活を営むことができるように所得保障制度を充実させること、④家庭での養育が困難となった子どもに対する社会的養護を充実させることを求める。
また、福岡県弁護士会は、従来行ってきた生活保護の支援に加え、就学援助や児童福祉法制など子どもに関わる諸制度にもより精通して相談援助に全力で取り組むとともに、関係諸機関・諸団体との連携を深め、今後も貧困の実態把握を続けながら、子どもの貧困をなくすための実践活動に活かしていく決意である。
以上

2010(平成22)年9月12日

福岡県弁護士会「子どもの貧困を考えるシンポジウム」
参加者一同

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