福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2010年9月 6日
会長日記
会長日記
平成22年度会 長市 丸 信 敏(35期)
雨明けとともに猛暑となりましたが、会員の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。司法修習生の給費制維持に向けた運動については大変なご協力を頂きまして誠にありがとうございます。署名は、なお8月末までは受付をさせて頂きますので、どうか、最後までご協力のほどをよろしくお願いいたします。今月は少々長くなりましたが、重要なご報告をさせて頂きます。最後までお目通しを頂ければ幸いです。中小企業の力になる現執行部として今年度の最重点課題にも掲げた中小企業に対する法律支援活動が徐々に本格化しつつあります。この4月1日に発足した中小企業法律支援センター委員会では、川副正敏委員長、池田耕一郎副委員長兼事務局長を中心に、多くの若手委員が奮闘中です。日弁連は、本年4月1日、全国一斉の中小企業向けコールセンター事業をはじめましたが、当会もこれを契機に、本腰を入れて中小企業支援活動に取り組み始めたものです。従来の弁護士業務委員会での活動の到達点を踏まえつつ、中小企業諸団体や金融機関などとの連携を一気に拡大・強化しています。5月25日の定期総会において全会一致で採択頂いた「中小企業への積極的な法的を行う宣言」の理念に即して、中小企業に法の支配を及ぼすため、中小企業諸団体等との連携のもと、これから、研修会、共同研究会、セミナー、相談会など、次々と繰り出されてくる予定です。ご期待ください。この取り組みを通じて、中小企業問題に精通した弁護士が多数育って頂くことを願うものですが、研修会等を通じて、相談担当をお願いするメンバーは今後とも適宜増強を重ねてゆきますので、会員の皆さまのご理解とご支援をお願いします。ちなみに、コールセンター業務での当会の実績はめざましいものがあります。たとえば、6月の実績では、受電して対応できた通話件数では、東京(3会合計で114件)、神奈川(58件)に続いて、堂々の全国第3位(54件)です。このなかには継続相談の案件も少なくありません。これも、委員会の皆さんが、懸命に、関係先との連携強化や絶え間ない広報に努めて頂いていること、そして、一つ一つの相談案件に対して、目下完全なボランティアながらも、きちんと対応に努めて頂いている相談担当の会員の皆さまのおかげです。厚く感謝申し上げます。なお、日弁連では、コールセンター業務が中小企業にとって高い社会的意義があること、そして、この業務が定着するまでにはもうしばらくの時間を要する状況にあることに鑑み、無料相談のキャンペーン期間を半年間延長すべく単位会に検討を要請しました(7月理事会)。当会でも、キャンペーン(初回無料相談)の期間を一応9月末までとの設定で参りましたが、県内でもコールセンター事業は未だ十分には浸透しておらず、なおしばらくの周知徹底のための時間が必要であると判断される状況に鑑み、無料キャンペーンの延長を致したいと考えております。どうか、ご理解とご支援をよろしくお願い申し上げる次第です。法曹人口問題のこれから適正な法曹人口とはいかなるものか、どのようなスピードで、いかほどの人数に到達するのが適切か、そのための施策はいかにあるべきか、この答えを見いだすのはなかなか容易ではありません。本年3月、日弁連「法曹人口問題検討会議」は、日弁連としての法曹人口に対する取り組み方に関して2年間に及ぶ検討結果を宮崎(前)会長あてに答申しました。その意味するところは、法曹人口は、あるべき法化社会、あるべき弁護士像をよるべき基準として策定すべし、というものです。(→詳しくは、当会ホームページ(会員専用ページ)に答申書の全文をアップしておりますので、ご覧ください。)そこで、宇都宮健児会長の現日弁連執行部としては、本年6月、新たに「法曹人口政策会議」を設け、上記の答申書が示した基準を踏まえて、これからの2年間で会内論議を尽くし、世論の理解と支持を得られる内容の、あるべき人口論についての日弁連としての基本施策を立案するというものです。この会議のメンバーは、全ての日弁連理事(単位会の会長など)と各ブロック会から4名ずつ選出する委員(なお、九弁連の4名の委員中、当会からは石渡一史会員が就任)など、合計140名以内で構成されます。今後、会議は毎月1回のペースで開かれ、うち3回に1回は全理事も加わったうえで、ほぼ1日をかけて討議する「集中検討会議」とされる予定です。早速、第1回の集中検討会議が8月21日に開催予定です。今後の日弁連の動向をご報告申し上げつつ、会員の皆さまのご意向を踏まえつつ、当会としてこれを日弁連の論議に反映できるよう努めてゆきたいと思います。急増する弁護士人口のもと、この数年、司法修習生は厳しい就職難に遭遇しており、法的ニーズの開拓や社内弁護士、任期付公務員等への進出も思うようには進捗しない苦しい状況のなか、法曹人口の問題は、今後のあるべき法化社会をどのように描き実現し、またそれに応えるべき弁護士像をどのようなものとしてイメージしてゆくか、わが弁護士制度のアイデンティティを再確認する作業に他なりません。特別会費で支えられる法律援助事業毎月払っている弁護士会費のうち、実はかなりの金額が、弁護士会自身の公益活動(法律援助事業等)を維持するための資金として使用されていることをご存じでしょうか。日弁連は、特別会費を徴収して刑事・少年やその他の法律援助活動の資金に宛てています。当会でも、各種のリーガルサービス活動を支えるための特別会費を頂いています(毎月5,000円の臨時の特別負担金や管財人報酬からの特別負担金)。平成18年4月、法テラスが発足し、法律扶助事業が国費で担われることになりました。弁護士会の永年の念願が叶った瞬間です。そこで、財団法人法律扶助協会は目的を達したとして平成18年度末に解散しました。ただ、法テラスの発足によっても国費での事業とはならなかった従前からの法律援助事業、すなわち、刑事・少年援助事業(被疑者弁護援助、少年保護事件付添援助)やその他の7援助事業(犯罪被害者援助、難民認定援助、外国人援助、子ども援助、精神障害者援助、心神喪失者医療観察援助、高齢者・障害者・ホームレス援助)は、高度の公益性があり、これを継続すべきものとして、日弁連が法律扶助協会から引き継ぎました。現在、日弁連はこれを法テラスに事業委託して実施しています。つまり、これらの援助事業は、日弁連が、全国の会員から集めた特別会費やしょく罪寄付金を原資として特別の基金を設けて維持している公益事業なのです。ところが、当初の想定を上回る援助件数の実績となっている反面、しょく罪寄付金が減少傾向をたどる等して、日弁連のこの基金は枯渇の危機に瀕しています。そこで、日弁連は、昨年度、全国単位会に向けて行った意見調査の結果を踏まえて、ひとまず今年度の応急の対応としては一般会計(予算規模約49億円)から資金(約6億円)を基金に繰り入れて凌ぐこととしました。そして、今後の抜本的な対応としては、被疑者・少年の資金捻出策として、現在の月額3,100円の特別会費(臨時)を4,200円に値上げして徴収すること(徴収期間は2011年4月から3年間)、上記の犯罪被害者支援など7事業の資金源として新たに月額1,300円の特別会費を創設して徴収すること(徴収期間は同上の3年間)の提案(日弁連からの意見照会)がなされています。これら合計で、毎月2,400円の会費値上げです。いずれ正式には臨時総会で諮られます。(なお、この問題の詳しい内容については、7月15日に全会員向けメールallfben:1085「Fニュース ・18」にて日弁連からの照会文書の全文を添付して配布致しておりますので、ご覧頂ければ幸いです。)ところで、当番弁護士発祥の会であり、少年全件付添人活動の提唱・実践者である当会は、これら刑事・少年援助や上記のその他7援助事業への取り組みが極めて活発で、全国単位会の範となっています。昨年度、被疑者弁護援助の実績件数では、東京(3会合計。以下、同じ)、大阪に次いで全国第3位、少年付添人援助では、東京にわずかに後れて第2位、精神障害者援助ではダントツの1位(というよりも、他会が続いていない!)、高齢者等では第4位など。そして、これら各援助事業の総合計件数では、東京についで全国第2位です。これら援助事業の全国での1年間の総件数のうち、ほぼ1割を福岡が占めています。つまり、当会にとっては、負担している特別会費よりも遙かにそれ以上のものが、各援助活動を通じて還元されている実情にもあります。被疑者国選弁護制度の全面的実現まで、また、少年付添人の全面的な国選実現まで、その他の法律援助事業ともども、弁護士会の「手弁当」での粘り強い頑張りが欠かせません。どうぞ、この特別会費問題についてのご理解を頂きたく、また、併せて、刑事しょく罪寄付への更なるご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。体罰のない教育を6月26日、福岡市の博多市民センターで、「体罰を考えるシンポジウム」が開かれました。当会の子どもの権利委員会が3教育委員会(県と福岡・北九州の両政令市)との協働の下、生徒たちに直接アンケート調査をするなど1年がかりで準備してきたものです。当日は、あいにくの大雨に見舞われながらも、会場は、多数の教員、教育委員会関係者、保護者、弁護士らの熱気に包まれました。このようなテーマで、弁護士会と教育委員会が協働したのは、前例がなく画期的なことです。私は、あいにく別の会合に移動する必要から残念ながら前半しか参観できませんでしたが、当日の参加者のアンケートでも建設的な意見が沢山寄せられ、また、教育委員会関係者からも弁護士会との協働を高く評価する声がありました。体罰のない教育を実現するためには、普段から教育関係者の地道でねばり強い取り組みが欠かせませんが、体罰を法的側面から分析・指摘し、今後の教育現場での取り組みのよりどころを提示したこの日のシンポは大きな意義のあった企画でした。地域の法曹は、地域の法曹の手で育てる7月17日、九弁連は「地方・地域から法科大学院を考える~地方法科大学院の存在意義と弁護士会に期待される法曹養成の役割~」として、九州大学法科大学院(以下、法科大学院をLSと略記します)を主会場にして、熊本大、鹿児島大、琉球大の各LSを衛生テレビ回線でつないで、シンポジウム(第24回司法シンポジウムのプレシンポ)を開催しました。福岡県内の4校を含む九州・沖縄の7校のLSにおける個性や特色のある教育内容などの取り組みが次々と紹介され、弁護士教官を含む関係の皆さんの熱意とご奮闘ぶり、創意工夫ぶりに感銘しました。そして、九州各地にあっても、LSがその地方在住者にとってかけがえのない法曹になる機会の保障になっている事実や、弁護士会や実務家教官が、地域における法曹は地域の法曹自身の手で養成するのだとの熱い理想のもと、これまでねばり強く取り組んでこられたことが着実に実を結びつつあることが、紹介された統計やアンケート、生の声(会場発言)などから実証された状況でした。LSの存在意義を司法試験合格者数に偏って捉えることは決して正しくないことも再認識できました。もっとも、はやくも「ロースクール淘汰の時代」とも言われ、文科省が一部のLSに対して「重点校」として締め付けを強化している事実もあります。法曹養成を巡っては、LSの定員・適正配置問題、司法試験全体の合格率の問題、LS生の経済的負担過重の問題、修習生の給費制廃止問題や就職難の問題等々、いわば個々のLSの努力だけではいかんともしがたい課題も山積しています。また、個人的には、合格者の一方で大量の不合格者の(再)就職支援のあり方も気掛かりです(多額の奨学金等の債務を抱えている点では合格者以上に深刻であることでしょう)。LSが法曹以外でも人材の供給源になるとの当初構想が実現できているようには窺えません。このような状況下、修習生の給費制が廃止されると、新しい法曹養成制度は決定的なダメージを受けるおそれを感じます。前途は多難ですが、私たちは、地域の法曹は地域の弁護士会こそが育てるのだという理想を堅守して、あるべき法曹養成のあり方を追求して、これからも能う限りの支援を継続しましょう。楽しみなこれからの行事当会や当会が中心となって取り組む各種シンポジウムや行事も、これより佳境に入ります。行政事件訴訟改革シンポジウム(7/24)、給費制維持の市民集会(7/31)、高校生模擬裁判選手権(8/7)、ジュニアロースクール(8/21)、子どもの貧困プレシンポジウム(9/12)、情報問題プレシンポジウム(9/18)、全件付添人10周年シンポジウム(9/25)、精神保健シンポジウム(10/16)、九弁連大会(10/22於・沖縄)、釜山地方弁護士会訪問(11/5)、九弁連支部交流会(11/1於・福岡3)など、目白押しです。これらの企画・準備に取り組んで頂いております会員各位に深甚の敬意を表させて頂きますとともに、会員の皆さまからの積極的ご参加やご支援を、よろしくお願い申し上げます。とりわけ、昨年の九弁連大会は当会での開催でしたが、沖縄弁護士会から沢山の参加者がありました。今年は当会が答礼をすべき番です。多くの方のお申し込みをよろしくお願い致します