福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2010年9月 6日
会長日記
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平成22年度会 長市 丸 信 敏(35期)
はじめに6月12日、九州地方の梅雨入りが発表されました。宮崎県での口蹄疫被害は容易に治まらず、梅雨との困難な闘いを余儀なくされることが案じられています。来る8月7日に福岡市(福岡地裁)で開催される高校生模擬裁判選手権九州大会には、宮崎県から宮崎西高校が初参加する予定です。この月報が会員の皆さまのお手元に届く頃には、口蹄疫問題が沈静化していることを、そして、宮崎県の関係者の一日も早い再起を願う次第です。先にご案内のとおり、宮崎県弁護士会(松岡茂行会長、福岡県出身)は口蹄疫被害に関するボランティアの活動を支援するため、自らも多額の義捐金を拠出したうえ、各会にも協力を呼びかけています。重ねて会員の皆さまのご協力をよろしくお願い致します。(義捐金送金口座;宮崎銀行宮崎支店(普通預金)96325「宮崎県弁護士会緊急ボランティア支援基金 会長 松岡茂行」)司法修習生の給費制維持への運動今月もまた、修習生の給費制維持運動の報告とご協力願いからです。執行部がこの取り組みを始めて分かってきたことの一つに、身近なところにいる若手弁護士のうちにも、法科大学院当時の授業料等で多額の奨学金等の負債を抱えているひとが少なくないという厳しい事実があります。でも、そういった人たちが、続くべき後輩のために先頭に立ってこの運動に取り組んでくれています。・ 天神での街頭行動(6月7日~11日)上記の5日間、毎日、昼休みの1時間、天神交差点(パルコ前)で街頭行動を行いました。連日入れ替わりで駆けつけてくれた10数名から20名ほどもの多くの会員が、梅雨入り前の強い紫外線をものともせずにビラ配り・署名集めに汗を流しました。新人・若手の会員を含めて、多くの会員が交代で次々とハンドマイクを手にして、切々と市民に訴え、理解と署名への協力を求めました。とりわけ自身や仲間の実情を訴える若手の会員の声には説得力がありました。(写真1・2)街頭行動を始める前には、この問題は、なかなか市民の皆さんにはわかりにくい問題で、容易には共感が得られないのではないかと覚悟していましたが、意外にも沢山の人に関心を払って頂き、期待以上の署名が得られました。初日の模様をTV、新聞それぞれで報じてくれた効果もあったと思いますが、それ以上に、「頑張ってください」と声をかけて署名に応じてくださる市民が少なくなかったことに表れているように、弁護士や弁護士会がこれまで努めてきた幅広い公益的な活動に対して市民の皆さんの理解や支持があったからこそだと実感しました。これからの取り組みに向けて大いに勇気が得られた思いです。ご協力頂いた会員の皆さまに、あつく感謝申し上げます。次回の街頭行動は、7月12日~16日、今回と同様に、天神交差点で昼休み(11:45~13:00)に挙行します。今回にもまして沢山の会員で辺りを埋め尽くしたいと思います。どうか、短い時間で結構ですので、ご協力をよろしくお願いします。・ 市民集会(7月31日)への参加ご協力を!給費制維持に向けて、下記の通り、市民集会を開きます。この運動のピークをこの大会に持ってきて、市民・マスコミ・国会議員に向けて最大のアピールの機会にしたいと思います。どうか、一人でも多くの会員の皆さまに、一人でも多くの連れをお誘い頂いて参加して頂きますよう、よろしくお願いします。 日時 7月31日(土) 午後3時~5時 場所 福岡市「中央市民センター」 (高等裁判所ま裏) 終了後、天神までデモ行進・ 署名協力のお願い会員の皆さまには、6月10日付で、署名用紙をお届け致しております。当会としての署名集めの目標は5万人です。お配り致した用紙は会員お一人に10枚。1枚で10人まで署名できますので、お一人で100人。会員数は870名(6/11現在)ですので、5万人の署名は決して達成困難な数字ではありません。どうか、ご家族・事務員さん・友人・知人・お客様・顧問先等々から、沢山の署名を集めて頂きますよう、よろしくお願い致します。用紙が足りない分は、コピーして頂いた用紙でも大丈夫です。定期総会・役員就任披露宴等(5月25日)5月25日には、新執行部にとっての重要行事である定期総会、役員就任披露、記念講演会が、会員の皆さまのご協力のおかげで、いずれも盛会のうちに無事終えられました。定期総会には、100名を超える会員の皆さまにご出席(本人出席)を頂き、決算・予算案はじめ、すべての議題を無事にご承認頂きました。なかでも、中小企業への積極的な法的支援を行う宣言、国選付添人制度の拡大を求める決議、司法修習費用給費制の維持を求める緊急決議という、いずれも重要な宣言・決議案は、執行部として期待していた以上の力強い賛成意見の数々に支えられて、いずれも満場一致で採択されました。これら宣言・決議については、総会終了後に直ちに会場のホテル内で開いた記者会見を経て翌朝の日刊紙数紙に報道され、当会からのメッセージの発信がいささかできたものと思っております。 総会についで開催致しました役員就任披露宴にも、210名ほどのお客様(内、一般来賓140名余)に出席を頂きました。一般来賓には、弁護士会が取り組んできている社会的活動、公益的活動の一端や、弁護士(会)の人権擁護・社会正義の実現に向けた諸活動の姿やその心意気を少しでも理解して頂きたい、司法修習生に対する給費制の維持が重要であることをご理解・ご支持頂きたいとの一念で企画し、新しい試みとして会場内でのパネル展示などの準備をさせて頂きました(写真3)。準備・運営をお手伝い頂き、また、ご出席を頂きました沢山の会員の皆さまに、心から感謝申し上げます。(なお、これらのパネルは、現在、県弁護士会館内に展示しておりますので、来館の折りにご覧下さい。)総会に先立ち開催しました記念講演会「どん底の会社よ、よみがえれ!」には、181名もの聴講者に来場頂きました。講演会では、中小企業を支援することは命を守ることに他ならないと、みずからの経験を踏まえて静かに語る講師・村松謙一弁護士(東京弁護士会)のメッセージは、感動的で、弁護士としての原点(魂)を呼び覚まされた思いでした。中小企業支援活動は、当年度執行部が掲げた最重点課題です。釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典・祝賀会(6月11日)6月11日、当会と釜山地方弁護士会との交流20周年記念式典・祝賀会が福岡市内のホテルで盛大に挙行されました。式典で基調講演を頂いた九州経済調査協会の森本廣理事長の話にもその趣旨がありましたが、一口に20年と言っても、一世代が入れ替わるにも相当する年月です。この20年間の交流で取りあげられた実務協議のテーマは数え切れないほどあります。会場に参席頂いた両会の歴代の会長や執行部、国際委員会などの皆さんが釜山の旧友と親しく韓国語を交えながら会話を交わしておられる姿を拝見しますと、自分などヒヨコ同然であることを痛感しました。偶然の巡りあわせとはいえ、このような大きな節目に大事な役を任されて、光栄かつ恐縮の思いを致すとともに、この隣人との国際交流を、今後に向けて持続させ、受け継いでゆかなければと強く感じた次第です。未来を担って頂ける当会の若手会員も多数参加して頂いた2次会で、釜山のメンバーと腹蔵無く爆弾酒・カラオケに興じ得たことも有意義なひとときでした。なお、今回、釜山地方弁護士会(会員数404名)からは、実に110名(家族を含む)もの大訪問団の来訪を受けました。(当日の祝賀会は、総勢で220名もの参加者でにぎわいました。)この20周年の記念式典は、本年11月5日、釜山市においても開催予定です。このときは、当会が大訪問団をもって答礼を致す番です。国際委員会において11月5日~7日の充実した楽しい旅程を組んで頂いたうえで会員の皆さまに正式案内を差し上げる予定ですが、会員の皆さまにおかれては、あらかじめ上記日程を空けておいて頂きますよう、よろしくお願いします。国際委員会の伊達健太郎委員長、大塚芳典実行委員長ほかの皆さまには、今年2月の大連市律師協会との交流調印式・祝賀会に引き続きの大イベントのご準備、誠にお疲れ様でした。広報関連委員会等集中連絡会議(6月6日)わかりにくい会議名ですが、要は、広報関係の3委員会(広報、ホームページ、対外広報PT)と業務関係の3委員会(弁護士業務、法律相談センター運営委員会、中小企業法律支援センター)と執行部とで「半日合宿」を行ったものです。日曜日の午後!というはた迷惑な会議招集にもかかわらず、各委員会や各部会からもれなく集まって頂き、相談センターはじめ相談件数等の減少が続いている現状の認識や原因の分析、対策の協議、とりわけ対外広報の有効な在り方、これら関連委員会の連携など、熱心に意見交換しました。当会では、数年来、積極的なTV・ラジオによる業務広報を手がけてきておりますが、目下、それに留まらず、その取り組みで獲得できたパブリシティ(無料出演)枠や、新たに西日本新聞社のコラム欄(「ほう(法)!な話し」。6月4日連載開始、毎週金曜の朝刊)を沢山の委員会が手分けして執筆することとするなど、あの手この手で、弁護士会の公益活動や業務広報に努めている状況にあります。法律相談センターは、県民の皆さんが、いつでも、どこでも、だれでも、容易に司法にアクセスできるようにという、「市民の司法」を掲げて取り組んできた当会の司法改革運動のベースをなすものです。当会が県下20箇所に相談センターを展開していることは、多くの県民の方の権利擁護に大きな貢献をしてきています。私たちは、今後とも、法律相談センターの充実に努め、リーガルサービスの質を向上させる努力を不断に継続すべきと考えます。会員の皆さまの一層のご理解・ご協力を頂きたいと願う次第です。
会長日記
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平成22年度会 長市 丸 信 敏(35期)
雨明けとともに猛暑となりましたが、会員の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。司法修習生の給費制維持に向けた運動については大変なご協力を頂きまして誠にありがとうございます。署名は、なお8月末までは受付をさせて頂きますので、どうか、最後までご協力のほどをよろしくお願いいたします。今月は少々長くなりましたが、重要なご報告をさせて頂きます。最後までお目通しを頂ければ幸いです。中小企業の力になる現執行部として今年度の最重点課題にも掲げた中小企業に対する法律支援活動が徐々に本格化しつつあります。この4月1日に発足した中小企業法律支援センター委員会では、川副正敏委員長、池田耕一郎副委員長兼事務局長を中心に、多くの若手委員が奮闘中です。日弁連は、本年4月1日、全国一斉の中小企業向けコールセンター事業をはじめましたが、当会もこれを契機に、本腰を入れて中小企業支援活動に取り組み始めたものです。従来の弁護士業務委員会での活動の到達点を踏まえつつ、中小企業諸団体や金融機関などとの連携を一気に拡大・強化しています。5月25日の定期総会において全会一致で採択頂いた「中小企業への積極的な法的を行う宣言」の理念に即して、中小企業に法の支配を及ぼすため、中小企業諸団体等との連携のもと、これから、研修会、共同研究会、セミナー、相談会など、次々と繰り出されてくる予定です。ご期待ください。この取り組みを通じて、中小企業問題に精通した弁護士が多数育って頂くことを願うものですが、研修会等を通じて、相談担当をお願いするメンバーは今後とも適宜増強を重ねてゆきますので、会員の皆さまのご理解とご支援をお願いします。ちなみに、コールセンター業務での当会の実績はめざましいものがあります。たとえば、6月の実績では、受電して対応できた通話件数では、東京(3会合計で114件)、神奈川(58件)に続いて、堂々の全国第3位(54件)です。このなかには継続相談の案件も少なくありません。これも、委員会の皆さんが、懸命に、関係先との連携強化や絶え間ない広報に努めて頂いていること、そして、一つ一つの相談案件に対して、目下完全なボランティアながらも、きちんと対応に努めて頂いている相談担当の会員の皆さまのおかげです。厚く感謝申し上げます。なお、日弁連では、コールセンター業務が中小企業にとって高い社会的意義があること、そして、この業務が定着するまでにはもうしばらくの時間を要する状況にあることに鑑み、無料相談のキャンペーン期間を半年間延長すべく単位会に検討を要請しました(7月理事会)。当会でも、キャンペーン(初回無料相談)の期間を一応9月末までとの設定で参りましたが、県内でもコールセンター事業は未だ十分には浸透しておらず、なおしばらくの周知徹底のための時間が必要であると判断される状況に鑑み、無料キャンペーンの延長を致したいと考えております。どうか、ご理解とご支援をよろしくお願い申し上げる次第です。法曹人口問題のこれから適正な法曹人口とはいかなるものか、どのようなスピードで、いかほどの人数に到達するのが適切か、そのための施策はいかにあるべきか、この答えを見いだすのはなかなか容易ではありません。本年3月、日弁連「法曹人口問題検討会議」は、日弁連としての法曹人口に対する取り組み方に関して2年間に及ぶ検討結果を宮崎(前)会長あてに答申しました。その意味するところは、法曹人口は、あるべき法化社会、あるべき弁護士像をよるべき基準として策定すべし、というものです。(→詳しくは、当会ホームページ(会員専用ページ)に答申書の全文をアップしておりますので、ご覧ください。)そこで、宇都宮健児会長の現日弁連執行部としては、本年6月、新たに「法曹人口政策会議」を設け、上記の答申書が示した基準を踏まえて、これからの2年間で会内論議を尽くし、世論の理解と支持を得られる内容の、あるべき人口論についての日弁連としての基本施策を立案するというものです。この会議のメンバーは、全ての日弁連理事(単位会の会長など)と各ブロック会から4名ずつ選出する委員(なお、九弁連の4名の委員中、当会からは石渡一史会員が就任)など、合計140名以内で構成されます。今後、会議は毎月1回のペースで開かれ、うち3回に1回は全理事も加わったうえで、ほぼ1日をかけて討議する「集中検討会議」とされる予定です。早速、第1回の集中検討会議が8月21日に開催予定です。今後の日弁連の動向をご報告申し上げつつ、会員の皆さまのご意向を踏まえつつ、当会としてこれを日弁連の論議に反映できるよう努めてゆきたいと思います。急増する弁護士人口のもと、この数年、司法修習生は厳しい就職難に遭遇しており、法的ニーズの開拓や社内弁護士、任期付公務員等への進出も思うようには進捗しない苦しい状況のなか、法曹人口の問題は、今後のあるべき法化社会をどのように描き実現し、またそれに応えるべき弁護士像をどのようなものとしてイメージしてゆくか、わが弁護士制度のアイデンティティを再確認する作業に他なりません。特別会費で支えられる法律援助事業毎月払っている弁護士会費のうち、実はかなりの金額が、弁護士会自身の公益活動(法律援助事業等)を維持するための資金として使用されていることをご存じでしょうか。日弁連は、特別会費を徴収して刑事・少年やその他の法律援助活動の資金に宛てています。当会でも、各種のリーガルサービス活動を支えるための特別会費を頂いています(毎月5,000円の臨時の特別負担金や管財人報酬からの特別負担金)。平成18年4月、法テラスが発足し、法律扶助事業が国費で担われることになりました。弁護士会の永年の念願が叶った瞬間です。そこで、財団法人法律扶助協会は目的を達したとして平成18年度末に解散しました。ただ、法テラスの発足によっても国費での事業とはならなかった従前からの法律援助事業、すなわち、刑事・少年援助事業(被疑者弁護援助、少年保護事件付添援助)やその他の7援助事業(犯罪被害者援助、難民認定援助、外国人援助、子ども援助、精神障害者援助、心神喪失者医療観察援助、高齢者・障害者・ホームレス援助)は、高度の公益性があり、これを継続すべきものとして、日弁連が法律扶助協会から引き継ぎました。現在、日弁連はこれを法テラスに事業委託して実施しています。つまり、これらの援助事業は、日弁連が、全国の会員から集めた特別会費やしょく罪寄付金を原資として特別の基金を設けて維持している公益事業なのです。ところが、当初の想定を上回る援助件数の実績となっている反面、しょく罪寄付金が減少傾向をたどる等して、日弁連のこの基金は枯渇の危機に瀕しています。そこで、日弁連は、昨年度、全国単位会に向けて行った意見調査の結果を踏まえて、ひとまず今年度の応急の対応としては一般会計(予算規模約49億円)から資金(約6億円)を基金に繰り入れて凌ぐこととしました。そして、今後の抜本的な対応としては、被疑者・少年の資金捻出策として、現在の月額3,100円の特別会費(臨時)を4,200円に値上げして徴収すること(徴収期間は2011年4月から3年間)、上記の犯罪被害者支援など7事業の資金源として新たに月額1,300円の特別会費を創設して徴収すること(徴収期間は同上の3年間)の提案(日弁連からの意見照会)がなされています。これら合計で、毎月2,400円の会費値上げです。いずれ正式には臨時総会で諮られます。(なお、この問題の詳しい内容については、7月15日に全会員向けメールallfben:1085「Fニュース ・18」にて日弁連からの照会文書の全文を添付して配布致しておりますので、ご覧頂ければ幸いです。)ところで、当番弁護士発祥の会であり、少年全件付添人活動の提唱・実践者である当会は、これら刑事・少年援助や上記のその他7援助事業への取り組みが極めて活発で、全国単位会の範となっています。昨年度、被疑者弁護援助の実績件数では、東京(3会合計。以下、同じ)、大阪に次いで全国第3位、少年付添人援助では、東京にわずかに後れて第2位、精神障害者援助ではダントツの1位(というよりも、他会が続いていない!)、高齢者等では第4位など。そして、これら各援助事業の総合計件数では、東京についで全国第2位です。これら援助事業の全国での1年間の総件数のうち、ほぼ1割を福岡が占めています。つまり、当会にとっては、負担している特別会費よりも遙かにそれ以上のものが、各援助活動を通じて還元されている実情にもあります。被疑者国選弁護制度の全面的実現まで、また、少年付添人の全面的な国選実現まで、その他の法律援助事業ともども、弁護士会の「手弁当」での粘り強い頑張りが欠かせません。どうぞ、この特別会費問題についてのご理解を頂きたく、また、併せて、刑事しょく罪寄付への更なるご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。体罰のない教育を6月26日、福岡市の博多市民センターで、「体罰を考えるシンポジウム」が開かれました。当会の子どもの権利委員会が3教育委員会(県と福岡・北九州の両政令市)との協働の下、生徒たちに直接アンケート調査をするなど1年がかりで準備してきたものです。当日は、あいにくの大雨に見舞われながらも、会場は、多数の教員、教育委員会関係者、保護者、弁護士らの熱気に包まれました。このようなテーマで、弁護士会と教育委員会が協働したのは、前例がなく画期的なことです。私は、あいにく別の会合に移動する必要から残念ながら前半しか参観できませんでしたが、当日の参加者のアンケートでも建設的な意見が沢山寄せられ、また、教育委員会関係者からも弁護士会との協働を高く評価する声がありました。体罰のない教育を実現するためには、普段から教育関係者の地道でねばり強い取り組みが欠かせませんが、体罰を法的側面から分析・指摘し、今後の教育現場での取り組みのよりどころを提示したこの日のシンポは大きな意義のあった企画でした。地域の法曹は、地域の法曹の手で育てる7月17日、九弁連は「地方・地域から法科大学院を考える~地方法科大学院の存在意義と弁護士会に期待される法曹養成の役割~」として、九州大学法科大学院(以下、法科大学院をLSと略記します)を主会場にして、熊本大、鹿児島大、琉球大の各LSを衛生テレビ回線でつないで、シンポジウム(第24回司法シンポジウムのプレシンポ)を開催しました。福岡県内の4校を含む九州・沖縄の7校のLSにおける個性や特色のある教育内容などの取り組みが次々と紹介され、弁護士教官を含む関係の皆さんの熱意とご奮闘ぶり、創意工夫ぶりに感銘しました。そして、九州各地にあっても、LSがその地方在住者にとってかけがえのない法曹になる機会の保障になっている事実や、弁護士会や実務家教官が、地域における法曹は地域の法曹自身の手で養成するのだとの熱い理想のもと、これまでねばり強く取り組んでこられたことが着実に実を結びつつあることが、紹介された統計やアンケート、生の声(会場発言)などから実証された状況でした。LSの存在意義を司法試験合格者数に偏って捉えることは決して正しくないことも再認識できました。もっとも、はやくも「ロースクール淘汰の時代」とも言われ、文科省が一部のLSに対して「重点校」として締め付けを強化している事実もあります。法曹養成を巡っては、LSの定員・適正配置問題、司法試験全体の合格率の問題、LS生の経済的負担過重の問題、修習生の給費制廃止問題や就職難の問題等々、いわば個々のLSの努力だけではいかんともしがたい課題も山積しています。また、個人的には、合格者の一方で大量の不合格者の(再)就職支援のあり方も気掛かりです(多額の奨学金等の債務を抱えている点では合格者以上に深刻であることでしょう)。LSが法曹以外でも人材の供給源になるとの当初構想が実現できているようには窺えません。このような状況下、修習生の給費制が廃止されると、新しい法曹養成制度は決定的なダメージを受けるおそれを感じます。前途は多難ですが、私たちは、地域の法曹は地域の弁護士会こそが育てるのだという理想を堅守して、あるべき法曹養成のあり方を追求して、これからも能う限りの支援を継続しましょう。楽しみなこれからの行事当会や当会が中心となって取り組む各種シンポジウムや行事も、これより佳境に入ります。行政事件訴訟改革シンポジウム(7/24)、給費制維持の市民集会(7/31)、高校生模擬裁判選手権(8/7)、ジュニアロースクール(8/21)、子どもの貧困プレシンポジウム(9/12)、情報問題プレシンポジウム(9/18)、全件付添人10周年シンポジウム(9/25)、精神保健シンポジウム(10/16)、九弁連大会(10/22於・沖縄)、釜山地方弁護士会訪問(11/5)、九弁連支部交流会(11/1於・福岡3)など、目白押しです。これらの企画・準備に取り組んで頂いております会員各位に深甚の敬意を表させて頂きますとともに、会員の皆さまからの積極的ご参加やご支援を、よろしくお願い申し上げます。とりわけ、昨年の九弁連大会は当会での開催でしたが、沖縄弁護士会から沢山の参加者がありました。今年は当会が答礼をすべき番です。多くの方のお申し込みをよろしくお願い致します
2010年9月16日
集会アピール~子どもの貧困をなくし、希望を持てる社会にすることを求めるアピール~
アピール
集会アピール
1 1990年代以降相次いだ労働法制の改悪や労働者派遣法の規制緩和により非正規雇用が拡大したことに加え、もともと脆弱な社会保障のさらなる切り崩しによって、社会の中に貧困が広がり、深刻化している。このような社会の中で育たざるを得ない子どもたちもまた、貧困と無縁ではいられない。
昨年、厚生労働省は、日本の子どもの相対的貧困率が2007年の調査で14.2%であること、すなわち、子どもの7人に1人が貧困状態にあることを初めて明らかにした。これはOECD諸国の中でも最悪に位置づけられる割合である。
2 子どもの貧困は、その親の貧困とあいまって、ときに虐待死など子どもの生命そのものに直結する問題を生じさせる。また、子どもの貧困は、子どもが成長・発達する権利(憲法13条)や、教育を受ける権利(憲法26条)をも脅かしており、子どもが成長した後においても貧困状態から抜け出すことを困難にさせている。
社会保障制度が脆弱な現在の日本において、貧困状態におかれた子どもたちが貧困を乗り越えることは非常に困難であり、子どもたちは、人生におけるさまざまな選択肢を奪われている。その結果として、親が貧困であればその子どももまた貧困になるという「貧困の連鎖」が延々と続くことになる。
このような現状は、憲法や子どもの権利条約で保障された子どもの生存権、成長発達権、教育を受ける権利の保障の観点から、とうてい見過ごすことはできない。
3 本日のシンポジウムでは、貧困状態におかれた子どもたちがさまざまな権利を奪われ、侵害されている実態や、貧困状態にある子どもを支援する制度の脆弱さ、そして貧困が世代間で連鎖していっていることが明らかとなった。
過酷な労働条件からもたらされる親の貧困が、子どもを養育する時間的・経済的余裕を親から奪い、医療費助成の不足もあいまって子どもに必要な医療へのアクセスを断念させ、子どもに健康障害をもたらしているという現状。家庭の貧困が、子どもの学ぶ意欲にも影響を及ぼし、子どもを高校中退などに追い込んでいること。本来、子どもの教育を受ける権利を保障するためのものであるはずの就学援助制度が、必要な子どもに行き渡っていないこと。そもそも家庭での養育を受けられない子どもに対しては、何の支援も行われず社会から見過ごされがちな実態があること。
私たちは、このような実態に目を向け、貧困の連鎖を断ち切り、子どもの貧困を根絶するための取り組みを強めなければならないとの思いを共有した。
4 そこで、私たち集会参加者は、貧困の連鎖を断ち切り、子どもの貧困を根絶するため、国及び地方自治体に対し、①子どもの保育・医療・教育にかかる費用の公費負担割合を増加させること、②人間らしい働き方を保障する観点から労働法制・労働政策の見直しを進めること、③あらゆる世帯が健康で文化的な生活を営むことができるように所得保障制度を充実させること、④家庭での養育が困難となった子どもに対する社会的養護を充実させることを求める。
また、福岡県弁護士会は、従来行ってきた生活保護の支援に加え、就学援助や児童福祉法制など子どもに関わる諸制度にもより精通して相談援助に全力で取り組むとともに、関係諸機関・諸団体との連携を深め、今後も貧困の実態把握を続けながら、子どもの貧困をなくすための実践活動に活かしていく決意である。
以上
2010(平成22)年9月12日
福岡県弁護士会「子どもの貧困を考えるシンポジウム」
参加者一同