福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2009年9月25日
会長日記
会長日記
福岡県弁護士会会長日記
その3 <峠越えから稜線歩きへ> 5月10日〜6月11日
平成21年度 会 長 池 永 満(29期)
はじめに
5月13日常議員会で定期総会議案が承認され、5月21日裁判員裁判と被疑者国選拡大のスタートと25日定期総会における宣言・決議を含む全議案の採択と役員就任披露宴の開催という、本年度執行部にとって最初の峠をなんとか無事に通過しました。
お力添えをいただいた全ての会員の皆様に深く感謝いたします!
全会一致の会長声明
この数年、当会はもとより日弁連を始めとする全国の弁護士会執行部と裁判員実施本部や被疑者国選対応本部、刑事弁護等委員会など関連委員会と多くの会員が、「裁判革命?その歴史的大改革を乗り切るために〜」(『月刊大阪弁護士会』の表紙見出し)という意気込みで「その日のために」準備がすすめられてきました。
巡り合わせとはいえ、そうした作業に何の寄与もしてこなかった私が、歴史的な刑事司法改革が全面実施される日に弁護士会の代表者として立ち会うことになりました。
裁判員制度については、消極的賛成論から粉砕論まで含め、会の内外で多様な意見が闘わされてきたことは百も承知ですが、弁護士会としては、法制度として実施される以上は、多くの会員が全力でこれに取り組むことを支援しながら、裁判員裁判における審理の長所を発展させるとともに、問題点の改善や制度改革を求めていく以外にありません。
できれば様々な意見の相違を乗り越えて共通認識をつくり、弁護士会として主体的なスタートを切りたい。そんな希望を胸に秘め、4月当初から数度の関連委員会での検討をお願いした後、2回の常議員会における激しい議論をへて会長声明案が練り上げられ(と言うより切りきざまれというべきか)、遂に出席常議員全員一致の賛成により採択された会長声明を、5月21日の裁判所長・検事正・弁護士会長の三者による共同記者会見において発表することができました。今期執行部としても第1号となる会長声明において弁護士会としての裁判員裁判に臨む統一した姿勢を明確にアピールすることが出来たことは本当にうれしいことでした。
なお2番目の会長声明は、消費者庁関連法の成立を歓迎するもので、こちらの方は日弁連としても20年来の悲願を実現したものであるために、6月4日の常議員会で何らの異論もなく満場一致採択されました。
動き出した2つの重点課題
今年度の重点課題に関連して、5月25日の定期総会において『すべての人が尊厳をもって生きる権利の実現を目指す宣言』が採択され、弁護士会における推進部隊として「生存権の擁護と支援のための緊急対策本部」が立ち上がり活動を開始しました。これは、日弁連定期総会(5月29日)が採択した『人間らしい労働と生活を保障するセーフティネットの構築をめざす宣言』と連動するもので、野田部副会長は、役員就任披露パーティでプレゼンテーションを行ったのにひきつづき日弁連定期総会でも当会の取り組みを紹介しつつ積極的に宣言案に賛成する発言をされました。
また総会は『福岡県弁護士会における人権救済機能の抜本的拡充に向けた決議』を採択しました。これを受けて人権擁護委員会は、未処理案件に対する特別調査体制を確立するとともに、国際委員会の協力も得て、多様な分野における人権侵害申立に的確に対応しうる機能を持った「人権救済センター」(仮称)の創設を視野に入れた調査検討作業に着手しています。
日弁連は今秋の人権大会で採択予定の『新しい人権のための行動宣言2009』のとりまとめ作業に入っていますが、当会の動きは「行動宣言」を担うにふさわしい実践的なシステムを創造していく上でも貢献になると思います。
前執行部からの宿題にも着手します
前執行部からの引き継ぎ事項の中に「福岡地域司法計画(第2次)」の取り扱いがあります。当会は2002年11月に第1次計画を公表していますが、第2次計画案は2008年2月に提出されたもので(当会ホームページの会員ページにアップされていますので、是非ダウンロードしてお読みください)、第1次計画から5年間の取り組みを総括するとともに、司法改革の現状と課題を点検しつつ、これからの取り組み方を提起したものです。
「地域司法計画」は言うまでもなく、地域の隅々まで公正かつ透明な法的ルールに基づく紛争解決の仕組みを整備していくうえでの、当会としての社会に対する提案であり、かつ、その一端を担おうとする弁護士・弁護士会としての決意の表明でもあります。
しかしプランを提示するだけでは画餅に終わりますし、かえって弁護士会の社会的評価を損ねる結果にもなりかねません。第2次案自体も「第1次の反省にたち、計画倒れに終わらせることのないよう、これから毎年の当会の活動における羅針盤にしながら、より具体的な年次計画を立て、実行に移すものと位置づけられなければならない」「(そのためには)執行部直属の恒常的な組織を設け、計画の進捗状況を確認し、当会内外の意見を集めてこれを整理し、新たな実行課題を発信し続けていく必要がある」と記しています。
第2次案が示している課題は全面的であり、すべてに着手するのは今期執行部の力に余りますが、その中には既に今年度の重点課題として取り組んでいる事項も少なくありません。
また、今期の執行部は発足直後から、県下20カ所に展開している法律相談所の拡充強化策の検討を進めていますし、さらに被疑者国選対応体制の整備に止まらず民事法律扶助のアクセスポイントの拡充や生存権支援活動における共同など、新たな視点からの日本司法センター(法テラス)との連携強化やスタッフ弁護士の位置づけの見直し等に関して、法テラス福岡事務所との協議を継続していますが、これらの問題も地域司法計画の重要な柱を構成しています。
こうした問題への取り組みを強化することを含めて、この機会に1年以上前に提起されている第2次計画案をたなざらしにすることなく推進していく体制づくりに関して、執行部としての提案を行い、会内における検討を開始したいと思います。
力まずに中盤戦に入ります
5月25日の定期総会を終えた週末の5月30日、31日の両日、NPO法人患者の権利オンブズマンの10周年記念事業<ボランティア全国交流集会、国際シンポ、記念レセプション等>が開催されました。患者の権利オンブズマン理事長として自らが主導的に企画し、1年半くらい前から取り組みを始め、海外から三名のゲストを招くという超ビックな企画に、まるでお客さんのような気分で臨むことになるとは夢にも思いませんでした。
大成功のうちに終わったことについても、うれしいというよりも複雑な気持ちなのです。これだけは自分がいなければと考えてきていたのに、いなければいないで、ちゃんと他のボランティアの方達が力を出してくれるということです。弁護士会だって同じことかも知れません。
いずれにしても総会を終えて、ほっと一息つき気分的にゆとりがでてきた感じです。会館での毎日の文書決済も苦になりません。単に慣れてきただけなのかも知れませんが。また、執行部の面々はもとよりですが、着々と作業を進めておられる職員の横顔や会館に出入りする弁護士の活動ぶりを身近にすると、今更ながら頼もしい限りです。6月に入ってから事務所でも時々事件の打合せに同席して、お客さんと言葉を交わす時間的余裕がでてきました。平常心で中盤戦に歩を進めたいと思うこのごろです。