福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2008年6月30日
福岡県弁護士会会長日記
会長日記
会 長 田 邉 宜 克(31期)
【スタッフ弁護士】
北九州部会が「法テラス」北九州支所にスタッフ弁護士の配置を希望することは、昨年度常議員会で、承認されています。被疑者国選弁護人制度の本格実施後の一人当たりの担当件数が、14件+αに上る実情からすれば、強い異論はないところでしょう。
他方、福岡部会では、昨年度中、福岡地方事務所本所のスタッフ弁護士配属については、特段の議論をしていませんでしたが、本年度早々に法テラス福岡から「本年度中に、北九州支所に一人、福岡本所に一人のスタッフ弁護士を配置することについて、法テラス本部から意向打診を受けているので、この点について県弁と協議したい。」との申し入れを受けました。
法テラスとしては、受入会が、スタッフ弁護士は、不要であって受け容れる意思はないと表明すれば、強制的に赴任させることはないものと思われます。
それでは、法テラス福岡は、何故スタッフ弁護士の配属を希望したのでしょうか。県弁執行部として、法テラス福岡との協議を開始していますが、その必要性について、概略以下のとおり説明を受けました。
(1)速やかに被疑者国選弁護人を選任する責務を負う法テラスは、被疑者国選弁護拡大後も、万が一にも穴を開けることは許されない。弁護士会、特に福岡部会の被疑者国選弁護人態勢では未だ十分であるとは考えていない。
(2)これまでの実践例からしても、筑豊地区の休日、特に共犯事案の配点については、現状でも正に綱渡りの感がある。また、被疑者弁護人として登録されている会員でも諸般の事情で受任を回避されたりすることが少なくなく、この1年半で数件担当した会員から20件近く担当した会員まで受任件数に幅があり、一定の会員の過大な負担で凌いでいる実情にある。単純に事件数を登録者数で割り出して「回る」「回らない」の議論をするのは実際的ではない。被疑者国選弁護拡大後に、万が一の事態を惹起しないためには、法テラス福岡本所へのスタッフ弁護士の配置は必須であると考えている。
(3)壱岐・対馬での国選対応についても、本所スタッフ弁護士に遊軍的に活動していただくことを予定している。
(4)所謂「国選扶助対応」のスタッフ弁護士であり、扶助事件以外の一般民事事件を受任することは予定していない(薬害・消費者等の集団訴訟受任の例外はあり得る)。従って、民業圧迫との懸念は杞憂である。
今後、法テラス福岡と協議を重ね、より詳細な内容を適宜会員にご報告し、意見集約の場を設けて、当会の意見を早急に明らかにしたいと思います。
なお、仮にスタッフ弁護士が配置されたとしても、担当しうる国選件数には当然ながら限界があり、より多くの会員の皆さんに被疑者国選名簿登録をしていただく必要性には、何ら変わりがありません。
【刑事贖罪寄付金のお願い】
従来、扶助協会の行っていた自主事業(刑事被疑者・少年付添・精神障害者等・外国人・難民・犯罪被害者等)は、日弁連及び単位会が承継し、法律援助事業として行っていますが(司法支援センターに運営を委託)、弁護士会の事業である以上その資金は、弁護士会が自前で用意しなければなりません。扶助協会時の自主事業資金と同様にその原資は、主として刑事贖罪寄付金です。
当会宛の贖罪寄付は、その半額を日弁連に納付して日弁連の法律援助事業資金に充てられ、残額は、法律援助事業の日弁連負担額に加算して支払う当会の所謂「上積」分(刑事被疑者・1万円、少年・原則2万円等)等の支払いに充てられます。
当会は、昨年度の全国の被疑者事件の11.2%、少年付添人事件の19.4%、これらに難民その他を含めた全事件数の13.7%の法律援助事件を行っています。これは、本当に全国に誇るべき実績です。
他方、この事業を支える贖罪寄付実績を見ると、昨年度全国で4億6,647万円の贖罪寄付がありましたが、当会の贖罪寄付額は253万円に止まり、なんと全国比0.53%に過ぎません。仮に事件数比の分担があるとすれば、当会の贖罪寄付案分額は、2,981万円になります。会の規模の大小があり、この案分額を当会が当然に分担すべきとは言えないでしょうが、扶助協会福岡支部には、平成17年度1,700万円、同18年度1,191万円の贖罪寄付があったことと比較すれば、余りにも少なすぎると言わざるを得ません。
また、現状では刑事被疑者(1万円×1000件)及び少年付添(2万円×800件+α)等の「上積」「横出し」分が、当会会計から支出されています。1年後に被疑者国選の本格実施が始まるとしても、このままでは少年付添の上積み分の負担は依然として残り、贖寄付金額が現状のままでは、その支出に対応する額の収入は確保できないことになります。
会員の皆さんは、扶助協会が解散した後の贖罪寄付は、扶助協会を承継した司法支援センターにと考えられたのかもしれません。
しかし、扶助協会の各種自主事業を引き継いだのは弁護士会であり、弁護士会がその事業遂行につき責任を全うする義務を負っているのは明らかです。
日弁連から最高裁・最高検に自主事業等弁護士会への贖罪寄付の目的・制度設計について説明し、情状面での考慮を依頼しており、当地の裁判所・検察庁もこのような公益的な目的に支出される弁護士会への贖罪寄付を量刑上斟酌すべきことは十分理解されているはずです。
ついては、会員の皆さんに、上述の事情をご理解いただき、贖罪寄付は、是非とも当会宛に納付していただくようお願いいたします。
なお、寄付手続きの詳細については、各部会事務局にお尋ね下さい。