福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2008年5月27日

九弁連あさかぜ基金法律事務所を成功させ、九州内の弁護士過疎・偏在を解消しよう

宣言

九州弁護士会連合会は、九州内の弁護士過疎・偏在を解消するために弁護士法人あさかぜ基金法律事務所を開設し、その充実・発展を本年度の最重点課題としている。当会は、このあさかぜ基金法律事務所に対して技術的支援を尽くすことにより、その維持・運営に責任を負うものである。
 当会は、これまで福岡県内における市民に対する司法サービスの充実のために法律相談センターの積極的展開を図り、会員に対しても普段の働きかけを行ってきた。その成果として目下20箇所に及ぶ法律相談センターを開設し、その利用者は年々増大し、弁護士にとっても若手会員の生活基盤の確立に大きく寄与しているところとなっている。
 ところが、県外の九州内に目を転じるならば、まだまだ弁護士の少ない地域が目につく。たとえば、日弁連ひまわり基金法律事務所については、これまで東京などから若手弁護士が派遣されてきたが、九州内の弁護士過疎・偏在の解消のためには、やはり地元である九州・沖縄の弁護士会が起ちあがる必要がある。
 当会は、これまでも日弁連や九弁連とともに司法過疎の解消に取り組んできたところであるが、法曹人口が増大するという条件のなかで、さらに取り組みを強化することが求められている。
 あさかぜ基金法律事務所は当会が日常的に支えることになっており、毎年4人の弁護士を受け入れ、指導担当弁護士のもとで弁護士として必要な専門的技量および弁護士倫理を実践的に体得し、原則として1年6ヶ月後には九州各地の弁護士過疎・偏在地域へ送り出すことを目ざしている。
 当会は、全力をあげてその成功に責任をもち、取り組むものである。

2008年(平成20年)5月22日

               福岡県弁護士会  会長 田邉 宜克

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より良い刑事裁判の実現を目指して

宣言

2009年(平成21年)5月21日には、裁判員裁判が開始され、被疑者国選制度が大幅に拡大されます。この大きな変わり目を間近に控え、当会は、誤判を防ぐ、より良い刑事裁判の実現をめざして5つの決意を宣言します。


1 刑事裁判の基本的なルールの普及に努めます。
 刑事裁判は、無実の市民を罰しないために、無罪の推定、証明責任の原則(検察官に犯罪事実の証明責任があること)、合理的な疑いを残さない程度の証明、証拠裁判主義など基本的なルールに基づいて行われます。刑事裁判の判断の基準は、証拠に基づき良識に照らして考えたとき、検察官の言い分が合理的な疑いを挟まない程度に信用できるか否かにつきるのです。
市民のみなさんが、裁判員として参加されることで、これらの基本的なルールに忠実なより良い裁判が実現することが期待されています。
そのため、当会は、刑事裁判の基本的なルールを市民のみなさんに広くご理解いただけるよう、その普及に努めます。


2 「人質司法」を解消するため勾留および保釈について運用や制度の改革を求めていきます。
 わが国では、志布志事件(鹿児島県議会議員公職選挙法違反事件)など否認を貫いた被告人は、保釈も認められず長期にわたる身体拘束を受けることが一般ですし、起訴事実を認めていても、第1回公判前の保釈は極めて困難な実情にあります。このような取扱は無罪推定の原則にも反するものです。
 このような「人質司法」は被疑者・被告人に虚偽の自白をさせる元凶で、冤罪、誤判を招く温床になっており、その改善は今後も極めて重要かつ緊急な課題です。
殊に、公判前に争点を整理してから集中した審理を行うという裁判員裁判を実施するにあたっては、誤判を防ぎ、充実した審理が行えるようにするために、被告人と弁護人が十分に打ち合わせをする機会をよりいっそう保障されることが必要となります。
そこで当会は、この「人質司法」を解消するために、勾留および保釈について運用や制度の改革を求めていきます。


3 違法不当な取調べをなくすため取調べの全面的な可視化(取調べの全過程の録画)を求める運動を実行します。
 現在、捜査機関の取調べは密室(取調室)で行われています。これまでの裁判では被告人の自白調書が重要な証拠にされていたため、捜査機関の長時間の身体拘束状態での取調べや、脅迫・利益誘導・暴力を用いた取調べが行われるなど違法・不当な取調べを助長する結果ともなっていました。そしてこのような取調べによって虚偽の自白による冤罪も数多く生じています。
 このような違法な取調べをなくすためには、取調べの全過程を録画するという「取調べの可視化」の実現が必要です。
 取調べ可視化によって違法な取調べを防ぎ、虚偽の自白を防止する制度を作ることは、自白の任意性や信用性をめぐって審理が長期化することを防ぎ、裁判員に過重な負担をかけることを防ぐことにもなり、裁判員裁判の実施にとっても不可欠となります。
 現在、検察庁などで行われている取調べの一部の録画では、録画時以外になされた違法な取調べを明らかにできないばかりか、捜査官に都合のよい部分のみが録画されるおそれがあり、かえって嘘の自白の信用性を高めてしまう結果となりかねません。
 当会は、取調べの全面的可視化実現に向けて精力的に取り組んでいきます。


4 裁判員裁判の課題を検討し、その適切な制度運用を求める活動に努めます。
 裁判員裁判は、市民の良識を刑事裁判に反映させるものであり、また公判中心主義の裁判(見て聞いて分かる裁判)を実現する重要な契機となります。このことから、誤判の防止に役立つ可能性をもっている制度ですが、裁判員の負担を減らすことを過度に強調するならば、本来必要な被告人・弁護人の立証活動までが制約され、かえって誤判を招く事態にもつながりかねない制度になってしまいます。
 現在、準備が進められている裁判員裁判には、弁護人の選任のあり方、公判前整理手続のあり方、裁判員選任のあり方、裁判員に対する説示のあり方、審理のあり方、評議のあり方、事後検証のあり方など、検討されなければならない基本的な課題があります。
 当会は、これらの課題を検討し、その課題を克服して裁判員裁判の適切な制度運用がなされるように求める活動に努めます。


5 制度改革に対応する弁護態勢を確立します。
 裁判員裁判では、公判前整理手続、連日開廷での集中した審理が予定され、弁護人には、短期間に集中的に充実した弁護活動をすることが求められています。その責任を全うするためには、一部の弁護士に負担が偏ることなく多くの弁護士が、この裁判員裁判の刑事弁護を担う必要があります。
 この裁判員裁判や被疑者国選弁護事件の拡大に対応するために、是非とも被疑者国選弁護登録者を拡大する必要があります。
 そこで、当会は、多くの弁護士が国選弁護登録をするように会員に働きかけをするとともに、現行の国選弁護制度が抱える課題の改善を、最高裁や法務省、政府に求めていきます。
 また、裁判員裁判を真に「刑事裁判に市民の健全な良識を反映させるための制度」にするためには、その手続内容が、市民にわかりやすいものでなければなりません。われわれ弁護士も、わかりやすい裁判を実現するための提言や弁護活動のあり方についての研究、研修、実践に励みます。


2008年(平成20年)5月22日

              福岡県弁護士会 会長 田邉 宜克

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2008年5月29日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                      会 長 田 邉 宜 克(31期)


はじめに
当会の抱えている課題や活動内容を会員の皆さんにお知らせするため、本年度も会長日記を毎月執筆掲載することにしました。
本年度1年間、宜しくお願いいたします。


就任挨拶回り−どこを
正副会長及び事務局長4、5名で、3月24日から4月11日まで、3週間にわたって福岡県内160か所を「弁護士会役員就任挨拶」で回りました。訪問先は、県内の裁判所・検察庁・法務省連施設、関連専門職団体、県や福岡市・北九州市はもとより、西は二丈町、東は豊前市、南は大牟田市まで当会と関連のある自治体、マスコミ各社、九州電力その他の地域企業や商工会議所、連合等々の労働組合、福祉関連団体、各政党、大学・ロースクール、各地域の医師会等々です。また、折角訪問するのですから、自治体の首長・社長・総長等のトップの方とお話しすることを原則としました。


就任挨拶回り−何を
挨拶回りの目的は、各界の方々に弁護士会が多様な公益活動を行っていることを知っていただくことです。特に、弁護士会の市民サービス部門(法律相談センター・多重債務・交通事故・高齢者「あいゆう」等々)の活動をお知らせし、チケット制等制度の利用と、内外への広報方をお願いしました。
併せて、裁判員制度への理解を求め、かつ、取調の全過程可視化実現要求署名への協力をお願いしました。ほとんど全ての訪問先で可視化の署名協力を要請し、県警4課出身の方々が陣取っておられる暴追センターでも、びびりつつも趣旨をお話し、チラシと署名用紙を受けとっていただきましたし、自民党県本部でも賛意を表していただき、現在、訪問先からの署名が当会に届けられています。
また、高齢者虐待対応チーム制度についてもお話ししましたが、積極的な反応を得られた自治体もいくつかありました。
毎日続けて多くの方々と面談することは、大いに疲れることは事実ですが、各界のトップに直接お会いすること自体が弁護士会にとって一つの財産になるのだと思いました。


来年5月21日裁判員法施行決定
1年後に裁判員法が施行され、被疑者国選対象事件の範囲が10倍に拡大します。当会は、これまでの刑事弁護等委員会、裁判員制度実施本部の活動をより充実させていくとともに、拡大する被疑者国選の制度を担うに十分な国選弁護人を確保するため、新に国選弁護対応体制確立推進本部を設置し、一人でも多くの会員に被疑者国選名簿への登録をお願いする具体的取り組みを進めて行きます。
また、この制度実施を踏まえて、司法支援センターとの連携も更に深めて行く必要があり、北九州支部のみならず、法テラス福岡事務所本体へのスタッフ弁護士配点についても、会内での議論を深めていく時期に来ています。
更に、取調の全過程の可視化(録画の義務付)を求める署名を5月までに目標の1万名を超えて集める必要があります。無論、執行部や刑事弁護等委員会を中心に活動しますが、会員の皆さんが一人10名ずつ集めていただければ、それだけで7,500名になるのです。是非とも積極的にご協力下さるようお願いいたします。


拠点事務所の説明会&面接実施
4月12日に弁護士法人あさかぜ基金法律事務所の入所希望者に対する説明会を行い、同月19日に面接を行いました。いよいよ今年の秋の開設に向けて第一歩を踏み出したことになります。説明会では、八代ひまわりの長先生と法テラス壱岐の浦崎先生に仕事の実状・過疎地の弁護士のやり甲斐・問題点等を具体的にお話しいただき、地域に弁護士が常駐することの重要性を再認識しました。また、「法テラスのスタッフ弁護士の重要な役割は利用者の為に法テラス本部と戦うことである。」、「都市公設スタッフの役割は、国選や扶助事件の処理に止まらず、収益性を考えずに事件に取り組めることや公の組織であるが故の行政との連携の取りやすさ等、その特性を活かして自ら考え、模索し、作り出して行くことができる。」との浦崎先生のご発言は、とても重要だと思いました。

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