福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2007年12月21日
福岡県弁護士会会長日記
会長日記
会 長 福 島 康 夫(30期)
臨時総会(10月2日)
10月2日の臨時総会の主たる議題は被疑者弁護人援助制度、少年保護事件付添人制度等9つの自主事業を法テラスに委託するにあたっての規程の整備であった。9つの自主事業を活発に行っており、当会がトップの利用件数である。少年保護付添人援助事件や精神保健当番弁護士等今後とも活発に活用し、国の制度にする必要がある。
新入会員歓迎会(10月2日)
臨時総会終了後、9月に当会に登録した39名の新入会員(現60期)に対する歓迎会を開催した。さすがに39名という人数は学校の1クラス分であり壮観である。これで現在の当会の会員数は741名となった。福岡部会549名(内女性会員77名)、北九州部会116名(内女性会員12名)、筑後部会59名(内女性会員8名)、飯塚部会17名(内女性会員0)。ちなみに九弁連は総数は1525名となり、佐賀57名、長崎94名、熊本158名、大分92名、宮崎74名、鹿児島97名、沖縄212名となっている。九弁連の他の会も新入会員の増加は著しいようである。この他にも委員会の主催で当番弁護士・当番付添人研修会、精神保健当番弁護士等研修会を催し、その後で懇親会をすることにしている。会の予算は全く使わず先輩が後輩におごるという伝統が受け継がれてきた。新入会員は急激に増加しているため新入会員に対して一部費用負担をお願いする話しもあったようであるが、これまでどおりとなったとのことである。互いに顔のわかる弁護士会であるためにもこの良き伝統だけは続けていければと思う。12月20日には新60期が当会に登録する。現段階で18名程度のようである。新入会員の皆さんは懇親会には特に全員参加して頂きたい。互いの顔のわかる弁護士会であるためにはやはり懇親会に出席することが一番である。紙面を借りてお願いする次第である。
当会の会員数が1000名に届くのは時間の問題である。大単位会には派閥があるが、福岡には派閥がない。それは素晴らしいことであるが、それだけに、今、互いの顔のわかる弁護士会であるための工夫がこれまで以上に必要となる。これまで以上に全部会の茶話会幹事の皆さんにも大いに奮闘をお願いしたい。
弁護士大量増員問題
本年度弁護士登録は2200人に達するとのことである。全国では現60期は1200名、12月に新60期が1000名近くが登録することになるようである。当初、就職できない修習生が現60期で100名程度になるのではないかと心配されたが、最終的には10名程度になるのではないかといわれている。しかし、それでも就職浪人が出るという事態は深刻なものになっている。
ところで、急激な弁護士増員は偏在問題の解消にはつながらないし、現につながっていない。偏在問題を解消することが急務となっている。1年半後の2009年被疑者国選弁護事件の対象事件が10倍に拡大するが、そのためにも偏在問題の解消が急務である。偏在問題解消のための弁護士を養成し、弁護士が帰っていける拠点事務所が必要となる。東北弁連は拠点事務所を設置することが正式に決定されている。聞くところによるとやまびこ基金法律事務所という名称だそうである。九弁連でも拠点事務所を設置すること、特に福岡で拠点事務所を作ることを早急に検討しなければならない。
魅力的なネーミングも必要である。北海道は「すずらん」、東北は「やまびこ」、九州は…?。
昨年、政府の規制改革・民間開放推進会議では合格者を1万2000人程度にすべしという意見が出たそうである。単に弁護士を安上がりに使おうという論に他ならないが、際限のない法曹人口増員論に歯止めをかけるためにも偏在問題の解消は急務である。
2010年には3000名体制になるとのことであるが、今後、本当に就職先があるのか、法曹の質が急激に低下しないか心配である。司法制度改革審議会は2020年に法曹人口を5万人にする計画を立てたが、改革審議会の意見書当時とは状況が一変した。現在の弁護士数は2万4000人を超えており、そればかりか140万円までの訴額の簡裁事件ができる認定司法書士は1万人を超えたということである。合計すれば現在既に3万4000人以上に達している。今後、弁護士と認定司法書士の数だけでも加速度的に増加していくことは確実であり、認定司法書士を加えると5万人に達するのも予想外に早いであろう。法曹の数の急激な増加によって質の急激な低下が心配である。もしそうなれば、利用者である市民が被害を被ることになる。
この問題はあくまでも市民のための司法の実現という観点からの検証であることを忘れてはならないと思う。偏在問題に一定程度のメドをつけて、本当に3000人体制がどうなのか、検証しなければならない。
鳩山法務大臣は週刊誌のインタビューで、合格者が3000人というのは多すぎる、1500人で十分だと話したということである。法曹の質の観点からの発言が出てきたということであろう。歓迎すべき重要な発言である。司法界にとって重大な問題である。
釜山地方弁護士会との交流会(10月19日)
当会は6月22日から24日まで釜山弁護士会を訪問して大歓迎を受けたが今度は釜山地方弁護士会からの訪問である。釜山地方弁護士会から金泰佑会長をはじめとして総勢36名の訪問団をお迎えした。金会長は私よりも若く(確か53歳だったと思う)、物腰が柔らかく紳士である。前回の訪問の際にいっぺんに親しくなった。訪問団は法テラスを見学した後、会館の3階で意見交換をした。今回のテーマはロースクール問題である。韓国では2009年3月からロースクールが開設されることになっており、既に47校の申請があり、その内の15乃至20校が認可される予定であり、初年度は1500名が法曹になることを予定しているとのことである。しかし、韓国の人口は4500万人程度で、日本の3分の1であり、1500人の合格というのは急激な増加という感がある。釜山地方弁護士会からは張俊棟副会長が説明をし、当会の牟田会員が日本のロースクールの現状と課題を説明した。釜山地方弁護士会の先生方は日本の制度にも詳しく、意見交換は予定時間がなければいつまでも続くかのように真剣味を帯びていた。時間が不足したのが残念である。韓国も日本と軌を一にして司法制度改革が進んでいる。相互に情報を交換し意見を交換することの重要性はますます高まっている。実務的な面でも今後の密接な交流の必要性を痛感した。
会議終了後は場所を「稚加栄」に移して懇親会を開催した。今年は当会が6月に訪問したが、その際の懇親会では韓国の伝統芸能である「パンソリ」で歓迎を受けた。当会としては今度は福岡に縁の深い日本の伝統芸能ということで日本舞踊の「黒田武士」に決め、日本舞踊の名手の山田敦生会員にお願いした。当日は乾杯の前に山田会員には花柳流の舞踊をご披露頂き大成功であった。山田会員には会を代表して大いに感謝申し上げたい。その後、当会の木梨吉茂会員と釜山弁護士会の黄会員の楽しい乾杯の挨拶の後、時間を忘れて親しく歓談をした。
来年は釜山弁護士会創立60周年ということである。来年はお祝いのために大挙して訪問する必要があろう。
国会議員要請行動(10月24日)
8月の理事会で国選弁護報酬の大幅アップを要求する件が承認された。ところが、法務省は来年度の国選弁護報酬を昨年100億円だったのを5億円減額して概算要求をしたことが判明した。最近わかったことは国選弁護報酬の法テラスの半年分の予算が30億円だったのが現実に支出した金員が20億円であったため、10億円予算が余ったということである。予算が余った原因は何なのか徹底的に調査をする必要がある。
ところで、国選弁護報酬は法テラスの事業になったことを契機に報酬基準が改定され、その結果基礎的な簡単な事件の報酬が大幅に値下げになってしまった。最大18%値下げになったということである。私も昨年簡裁の国選弁護事件で結構熱心に活動した結果手取り6万円程度でしかなく、余りの安さに腹立たしかった。全国の弁護士が不満を持っている。このままでは国選弁護のモチベーションが下がるばかりである。
10月24日には日弁連の執行部と理事の全員が手分けして各県選出の国会議員に対して国選弁護報酬の大幅増額の要請行動をした。国選弁護はボランテイアではやっていけないこと等現状を説明し、理解を求めた。反応は良かったと思う。何としてでも2009年の被疑者国選実施までに国選弁護報酬の大幅増額が必要である。
この国選弁護報酬問題を始めとして政治家に対して理解を求め、賛同を求めることが年々多くなっている。昨年はゲートキーパー問題や、貸金業者の上限金利引き下げ問題であった、現段階では国選弁護報酬問題、取調べの全過程の可視化問題が代表的であろう。司法書士会、行政書士会等他の会は政治連盟が活発に活動している。日本弁護士政治連盟(弁政連)は超党派で弁護士会の活動を支える組織である。国選弁護報酬問題、取調べの可視化問題その他多くの司法改革問題で特に政治連盟の活動が必要になっている。全国単位では弁政連があるが、これまで九州には支部がなかった。そこで、1月に弁政連の九州支部の創立総会をすることが計画中である。追って会員の皆さんに入会の勧誘がなされる予定ということだが、多数の参加をお願いしたい。