福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2006年9月12日
会務報告〜日本司法支援センターの民事対応態勢について
副会長日記
副会長 作 間 功
平成18年は、長年にわたって議論されてきた司法改革の実行の年であることは言うまでもありません。ここでは私の担当の司法支援センターの民事関係についてご報告します。
1.日本司法支援センターに関する実務担当者会議(民事対応態勢)の開催
これまで刑事弁護対応態勢が主に議論されてきましたが、民事関係について7月11日、日弁連にて全国的な協議会(「実務担当者会議」)が日弁連クレオにて開催されました。しかし、問題はまだ山積です。
第1は、コールセンターに関してです。コールセンターとは、全国からの電話による問い合わせについて司法支援センターが東京にて一括して対応し、相談機関の紹介などの情報の提供業務を実施することをいいます。
「法律相談はしない」というのが建前です。電話のオペレーターは弁護士ではありませんので、当然です。しかし、一言で終わるようなものまで一切相談は駄目だというのでは、市民からのニーズにこたえられないとのことで、「一般的な法制度」の説明はする、そのため弁護士をスーパーバイザーとして配置する、また、「FAQ」とよばれる「良くある質問と答え」をマニュアルとしてオペレーターに配布して対応してもらうとのことでした。しかし、「一般的な法制度」と「法律相談」の区別は困難です。弁護士会としては、さらにこうした司法支援センターの対応が弁護士会・弁護士による相談業務にどのような影響が出るかも気を配る必要があるように思います。
次に、オペレーターはマニュアルに従い、「適切な相談先」を紹介するわけですが、そのマニュアルは適正なものでなければなりません。会議では「『土地収用についての不服申立』について、紹介先を弁護士会とともに司法書士会としているが、この問題は司法書士では無理である」という指摘がなされ、日弁連も関与している司法支援センター作成のFAQについての疑問が呈されました。
さらに、オペレーターは適切な対応をしなければなりませんので、そのための会話マニュアル(「トークスクリプト」と呼んでいます)が用意されるとのことですが、「適切な相談先」を紹介するにいたるまでの会話の流れの中で、弁護士と司法書士との振り分けをどうするかという点で大きな問題を孕んでおり(先に試行された茨城では、司法書士会が「無料」をうたい、相談者の多くが司法書士会に流れたとのことでした)、円滑な運営に向けての調整が重要な課題となります。
10月2日の「法テラス」オープンまで時間がありません。さらに議論を詰めて、より良い制度にしていく必要があります。
2.司法支援センター福岡地方事務所に対する申入れについて
日弁連は、日本司法支援センターに対し、6月15日、日本司法支援センターにおける情報提供業務(上記のコールセンターのことです)に関し、要旨、日本司法支援センターは公的性格をもつことから法に違反する疑いのある運営をしてはならず、また相談者がたらい回しにされるような事態は厳に避けなければならないとの観点から、日本司法支援センターにおける情報提供業務において、利用者に弁護士以外の隣接法律専門職団体を紹介する際、当該隣接法律専門職者が法律上取扱うことのできる職務範囲を明確にした上、その枠内でなされるべきであるという考えに立ち、相談機関を紹介する段階において隣接法律専門職者の職務範囲に入るかどうか明らかでない場合には、当該隣接法律専門職団体を紹介することのないようにされたいという申入れをしました。
上記要請は、情報提供業務に関するものですが、上記要請の趣旨は地方事務所が実施する法律相談業務(いわゆる扶助相談のこと。扶助協会時代は弁護士による相談のみが実施されていました)においても妥当するものと考えられるため、当会は、福岡地方事務所に対し、福岡地方事務所において隣接法律専門職者による法律相談を実施する場合には、当該隣接法律専門職者が法律上取り扱うことができない相談、及び法律上取り扱うことができるかどうか不明確な相談を隣接法律専門職者において実施することがないよう十分配慮し、もって、法律相談業務の適正な運営を行なっていただくよう要請しました。