福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2006年7月18日
会 務 報 告
副会長日記
副会長 小 宮 和 彦
詳しい会務内容は会長日記にゆずることにして、ここでは私の担当の一つである刑事弁護関係のことを報告します。現在刑事弁護関係の委員会としては、刑事弁護等委員会、刑事弁護センター運営委員会、国選シンポ実行委員会、公的弁護態勢確立PTがあります。公判前整理手続、裁判員制度、9月8日に福岡で開催される日弁連国選シンポジウムの準備など様々な課題がありますが、喫緊の重要課題は今年10月からスタートする新しい国選弁護制度への対応問題です。そこでこの新しい国選弁護制度の概要について報告するとともに会員の皆様に国選弁護を担っていただくようお願い申し上げます。
○被疑者国選のスタート
10月にスタートする新しい国選弁護制度の目玉は何と言っても被疑者国選です。短期1年以上の重罪事件について、被疑者の請求があり、国選弁護人の選任要件(資力のある被疑者については弁護士会への私選弁護人紹介手続を経ることが必要)を満たせば、起訴前であっても勾留決定後からの国選弁護人が選任されることになります(刑訴法37条の2)。いわゆる被疑者国選のスタートです。被疑者国選は平成21年5月までには現在の必要的弁護事件にまで拡大されます。選任要件である資力チェックのために被疑者は資力申告書(簡単な1枚の書面となる予定)を提出しなければなりませんが、資力の基準は現金・預貯金などの合計額が50万円以上かどうかになると言われています。
○支援センターによる国選指名
また被疑者・被告人の国選弁護人の指名等は4月に発足した日本司法支援センターの所管となります(総合法律支援法38条)。したがって裁判所は支援センターに国選弁護人の候補者を指名して通知するように求め、これを受けた支援センターは遅滞なく国選弁護人となることを契約した弁護士の中から国選弁護人候補者を指名し、裁判所に通知することとなります。このため国選弁護人として選任されるためには支援センターとの間で予め契約を締結することが必要です。
被疑者段階の弁護人ですから、国選に選任されたらできるだけ速やかに接見することが求められますが、支援センターに名簿を備えおいて、現在の「当番弁護士+被疑者弁護人援助制度」に似た運用をすることになると思われます。
○私選弁護人選任紹介手続
さらに私選弁護人を依頼したい被疑者・被告人に対して弁護士会が速やかに私選弁護人を紹介する私選弁護人紹介手続もスタートします(刑訴法31条の2)。
○即決裁判制度
それだけではありません。まったく新しい手続である即決裁判制度がスタートします(刑訴法350条の2〜350条の14)。即日判決が原則で、判決では必ず執行猶予の言い渡しをしなければならない裁判です。短期1年以上の重罪事件を除く事件で、事案が明白かつ軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれること、被疑者の書面による同意があること、その他の事情を考慮し、検察官が相当と認めるときに、公訴提起と同時に書面によって申し立てることとされています。必要的弁護事件とされているため国選弁護になることが多いと考えらます。
○国選契約締結のお願い
このように10月から国選制度を中心とした刑事手続が大きく変わります。このため、これに対応できるように準備をしなければなりません。現在最高裁判所規則の整備や支援センターの諸規則の制定などが進められていますので決まり次第会員の皆さんにお知らせする予定です。
被疑者国選制度を成功させ、被疑者・被告人に対する適正手続を保障するためには、多くの会員が国選弁護制度を担う必要があると思います。そのためには1人でも多くの会員が支援センターとの間で国選弁護人契約を締結することが必要です。今年6月より契約締結が開始しますが、弁護士会でとりまとめる方向で検討していますので、是非国選弁護を担っていただくようお願い申し上げます。