福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2006年7月18日

会務報告〜4つの会長声明〜

副会長日記

副会長  小 宮 和 彦

 現在の国会(会期延長がない場合6月18日まで)では重要な法案が目白押しで審議されています。弁護士会として放置できない重大な問題を含んだ法案も多いため、これらの法案に反対する会長声明を連続的に出しました。声明自体は県弁のホームページにアップしています。ここでは声明の概要を紹介します。いずれの声明についても衆参両議院議長、内閣総理大臣、衆参両議院の関係委員会、関係諸機関に送付するとともに記者会見をして執行しました。なお、情勢についての記載は本原稿を執筆している5月22日現在のものです。

【4月10日・未決拘禁法案の廃案を求める会長声明】
 法案の正式名称は「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」で、未決拘禁者に関する処遇を定めています。法案は、代用監獄を存続させながら、その廃止の方向性すら明示していない等の多くの問題点を含んでいます。代用監獄は長年にわたって弁護士会が廃止を求めて運動を展開してきたものです。また、国際的にも、国連の規約人権委員会が2度にわたり廃止に向けた勧告を行い、「ダイヨーカンゴク」という言葉が外国でも通用するほどに問題のある制度として認識されています。声明では、自白の温床となってきた代用監獄を存続させていることを中心に批判をし、同法案を廃案として抜本的な見直しをするよう求めました。
 しかし、同法案は、衆議院法務委員会及び衆議院本会議で可決され、5月22日現在参議院で審議されています。ただ、衆議院法務委員会で、刑事施設の収容能力の増強に努めて被勾留者を刑事留置場(代用監獄)に収容する例を漸次少なくするよう努めることや、取調べの可視化を含めた代用刑事施設制度のあり方について刑事手続全体との関連の中で検討すべきことなどの附帯決議がなされました。

【5月8日・共謀罪の新設に反対する会長声明】
 法案の正式名称は「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高速化に対処するために刑法等の一部を改正する法律案」です。一旦廃案となった法案を修正して提案したもので、当会は以前の法案に対して昨年8月31日に反対の会長声明を出しています。法案の修正内容は、適用対象団体や「共謀」の構成要件を絞り、思想良心の自由侵害や団体の正当な活動の制限をしてはならないと注意規程を設けたことです。しかし、意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象にしていることには変わりはなく、対象とされる犯罪の種類も膨大なものです。人の内心を取り締まろうとするものであり、政府に反対する市民団体や労働組合を警察が事前に弾圧することを可能にするものです。また、共謀を立証するものは人と人とのコミュニケーションしかありませんので、盗聴、密告、スパイ強要などが横行するおそれがあります。そこで、このような共謀罪を新設しようとする法案は廃案にすべきであるとの声明を出しました。法案は5月22日現在衆議院法務委員会で審議中です。

【5月11日・少年法等「改正」法案に反対する会長声明】
 この法案は、以前国会に上程して廃案とされたものをそのままの内容で再上程したものです。当会は昨年6月23日に反対の会長声明を出していましたが、再度反対の会長声明を出しました。反対している法案の主要な問題点は、? 14歳未満の低年齢非行少年に対する少年院送致を可能とすること、? 触法少年・ぐ犯少年に対する警察官の調査権限を付与すること、? 保護観察中の遵守事項を守らない少年に対する少年院収容処分を導入すること等です。いずれも可塑性に富んだ少年の特性を無視し、福祉的対応を後退させて、いたずらに厳罰化を図ろうとするもので容認できません。ただ同法案が国選付添人制度を導入している点については一定評価できますが、これもかなり限定的な場合にしか適用されません。そこで、当会としては同法案に反対する声明を出しました。同法案は5月22日現在衆議院法務委員会で審議中です。

【5月11日・教育基本法改正法案を廃案とし、あらためて十分かつ慎重な調査と検討を求める会長声明】
 今回上程された教育基本法改正法案は現行の教育基本法を大幅に改正するもので、新しく制定するに等しい内容となっています。「愛国心」問題については、教育の目標のひとつとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と規定されています。また、現行法では「教育は…国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」(10条1項)と定められていましたが、改正案ではこのような規定は削除され、教育は法律の定めるところにより行われるとだけなっています。さらに現在の9年の義務教育制度も廃止されています。このように大きな改正でありながら、国民に開かれた議論はほとんどなされておらず、与党内の非公開の審議機関で議論され作成された法案が国会に上程されて審議されようとしています。教育基本法は憲法とともに制定され、教育の憲法と言われるほど重要なもので、準憲法的性格を有しています。そこで、拙速な審議をやめて国民に開かれた議論を尽くすために、今回の法案を一旦廃案とした上で、あらためて衆参両議院に「教育基本法調査会」を設置して、改正の要否を含めた十分かつ慎重な調査と討議を求める声明を出しました。同法案は5月22日現在衆議院の特別委員会で審議中です。

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