福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2005年12月 6日

イラクへの自衛隊の派遣継続に反対する会長声明

声明

2005(平成17)年12月6日

福岡県弁護士会 会長 川副正敏


1 当会は、2003年12月2日、常議員会決議に基づき、会長声明で自衛隊のイラク派遣に強く反対する意見を表明し、その後、2004年4月20日に「イラクからの即時撤退を求める会長声明」、同年12月8日に「イラクへの自衛隊派遣継続に反対する会長声明」をそれぞれ発表した。
  当会がかかる会長声明を発表した理由は、?イラク特措法は憲法に違反するおそれが極めて大きいものであること、?自衛隊のイラク派遣は、戦争を違法とし、国連憲章が容認しない武力行使は承認しないという国際社会の原則に違反する疑いが極めて大きいこと、?イラクはまだ戦争状態にあり、かつその全土が戦闘地域であることから、人道復興支援活動又は安全確保支援活動については、我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行なわれることがないと認められる地域において実施するものとすると定めたイラク特措法第2条3項の要件を満たしてないこと、?これまで、米軍に限らず、市民や子どもを含むイラク国民の死傷者が多数生じたことのほか、サマワの自衛隊駐屯地近くに迫撃砲が着弾したり、邦人をはじめとする各国の民間人等が拘束される事件が続くなど、イラク全土が戦闘地域であって、イラクに安全な非戦闘地域が存在しないことが明らかになったことなど、憲法が掲げる平和主義および基本的人権の尊重という観点から、看過しがたい問題があるとの判断によるものであった。
2 しかるに、現在に至るまでイラク特措法の問題は何ら払拭されていないばかりか、イラク国内は不安定な情勢が今なお続いている。すなわち、米英軍による攻撃はいまだ継続し、爆弾テロにより多くの市民の犠牲者を出す事件や、要人等をねらった襲撃事件が後を絶たないという状況にある。また陸上自衛隊が駐屯するサマワにおいてもロケット弾や迫撃砲による攻撃があるなど、イラクはまだその全土が戦闘地域であると言わざるをえない。
他方、イラクに駐屯していた外国の軍隊は次第に撤退しつつあり、すでにオランダが4月に撤退した。また、ポーランド、ウクライナ、ブルガリアおよびイタリア等が撤退を表明したほか、陸上自衛隊が駐留する南部サモワ周辺の治安維持を担っていた英国軍とオーストラリア軍は来年撤収する方向で検討を行っている。さらに、イラク駐留軍隊を撤退すべきであるとの世論は、日本国内はもとより、アメリカ、イギリスを含めた世界各国で高まりつつある。
こうした状況において、自衛隊がイラクへの駐屯を続けた場合、自衛隊を敵視する勢力からの攻撃が強まる可能性があり、派遣された自衛隊員の生命・身体の安全はいっそう危険にさらされることになりかねない。
3 ところが、政府は、イラク南部のサマワで活動している陸上自衛隊については来年前半に撤収する方向で検討しつつも、本年12月14日の延長期間満了を前にして、国会で十分な議論も行わないまま、再度の自衛隊派遣延長を行おうとしている。また、政府は、仮に陸上自衛隊が撤退しても、クウェートからイラクへ米軍の物資を輸送する航空自衛隊の支援活動は続ける方針をとっている。
  しかし、かかる方針は憲法の平和原則及び国連憲章の原則に違反し、かつイラク特措法第2条3項にも違反するなど、とうてい容認できるものではない。
  そこで、当会は、自衛隊のイラク派遣継続に強く反対し、自衛隊がイラクから速やかに撤退することを強く求める。

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