福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2004年5月25日

在監者の人権保障のために刑務所・拘置所の抜本的改革を求める決議

決議

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 名古屋刑務所において発生した複数の刑務官による在監者に対する特別公務員暴行陵虐致死傷事件を契機に、同種の事件が他の複数の刑務所・拘置所に及んでいることが明らかになってきた。日本弁護士連合会が本年3月に実施した「刑務所・拘置所110番」によっても、革手錠・保護房を使用した在監者に対する人権侵害が全国的に広がっていることが明らかになった。

 当会にも、近年、刑務所・拘置所を人権侵害者とする在監者からの人権救済申立が急増している。ちなみに、2002年度(2002年4月1日〜2003年3月31日)の当会に対する人権救済申立件数は46件であったが、そのうち31件(67%)が刑務所・拘置所を侵害者とする申\立であった。
 当会に対する申立の内容は、医療、懲罰、信書発信、昼夜間独居拘禁、刑務官による暴\行・拷問に関するものなど多岐にわたっている。なかには、必要性がないにもかかわらず在監者を革手錠で緊縛し保護房に23時間以上拘禁したという事案もあった。
 刑務所・拘置所における人権侵害は、いわば密室で行われ、客観性のある目撃証人なども得難いため、人権救済申立事件の調査は事実認定で困難を極めることがほとんどである。このような困難な条件の中で、当会はこれまで問題のある事案について、刑務所・拘置所に警告・勧告・要望を発してきた。\n ちなみに、その数は2000年はじめから今日まで7件になっている。
 しかし、残念ながら、当会のそうした処置に対し、刑務所・拘置所側からの改善されたとの報告を受けたことはなく、相変わらず同種の人権侵害を受けたとの申立が当会になされている。\n
 こうした状況は、根本的には、在監者の人権を保障するための法や制度が確立されていないことに加え、全国の拘禁施設が不十分な施設と人員で過剰な在監者への対応を強いられていることによって起きていると思われる。\n また、拘置所に医師が常駐せず、医療刑務所における医療費の額が極めて貧弱であることも、在監者の生命と健康を危うくする原因となっている。

 日本弁護士連合会は、1982年、「刑事被拘禁者のための処遇に関する法律案」を示し、国際人権基準に合致した監獄法の全面改正を求めてきた。又、当会は、かねてより、警告・勧告等を通して行刑の改善を申し入れてきた。\n
 以上をふまえて当会は、政府が在監者の人権を守るための法と制度を確立する施策に積極的に取り組むとともに、必要かつ十分な予\算的措置をとって、拘禁施設における施設の充実と刑務官の抜本的増員を図って現場で働く刑務官の負担を軽減すること、拘置所・刑務所・医療刑務所における医療体制の充実並びに医療部門の所管を法務省から厚生労働省に移管することが必要不可欠と考え、政府に対し、一刻も早くそのような積極的措置をとるよう求める。
 また当会は、各拘禁施設が、在監者の外部交通権を保障し、懲罰対象者の権利行使を保障し、革手錠の廃止と保護房の濫用抑制、在監者の裁判を受ける権利の保障、在監者の不服申立に関する相談・調査に来た面会者との面会においては立会いをせず、また両者のやりとりに関する信書の検閲をしないことなどの改善を求める。\n

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー