福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2004年5月25日

公的付添人制度の実現を求める決議

決議

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 現在司法制度改革推進本部において、公的刑事弁護制度の導入及び整備について検討がなされ、同時に、少年審判手続における国費による少年の付添人制度(公的付添人制度)の導入についても検討がなされている。

 福岡県弁護士会は、当番弁護士制度発足以来、逮捕された少年にはできるだけ当番弁護士を派遣し援助を行ってきたが、さらに、2001年2月1日、日弁連及び法律扶助協会からの資金援助に加えて、会員から特別会費を徴収するなどの自助努力により、付添人の選任を希望する少年全員に対して付添人を選任するという「全件付添人制度」を発足させ、今日まで実施してきた。
 そして、福岡家庭裁判所の理解と協力を得て、2002年には、観護措置を受けた少年の54%(家裁送致時に弁護人がいたケースを含む)の少年に付添人が選任された。この割合は、福岡家庭裁判所本庁に限れば84%に及ぶ。
 付添人に選任された弁護士は、非行事実の存否に争いがある場合には非行事実が存在しないことを証明するための活動を行い、非行事実の存在に争いがない場合においては少年の立ち直りのために必要な様々な活動をしてきた。
 後者の場合、付添人は、少年に被害者の気持ちや被害者の現状を知らせ、少年が行った非行による重大な結果を認識させ、被害弁償を試み、親子の関係の修復を試み、少年が学校や職場に復帰できる環境を整えるなどして、少年が自らの力により立ち直るためのあらゆる援助、努力をしてきた。そして、多くの事件において、付添人がいたからこそ少年が更生できたり、あるいは
被害弁償ができて被害者の感情も宥和されるなどの実績をあげてきた。
 福岡県弁護士会は、これまでの実績を踏まえて、今後もこの全件付添人制度を継続して実施し、さらに充実させる所存である。

 しかし、全国のすべての少年に対し、付添人の選任を希望すれば付添人を選任することができるという制度を実施するためには、公的付添人制度が不可欠である。
 非行を犯した少年が一人でも多く立ち直ることは、当該少年にとって必要であるだけでなく、非行及び犯罪をこの国から減少させ、国民の安全を図るうえでも極めて有益であり、ここに国費を投入することは、われわれ大人の責務であると考える。
 よって、早急に公的付添人制度を発足させ、充実させることを求める。

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法科大学院における経済支援に関する決議

決議

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 「法科大学院の教育と司法試験法との連携等に関する法律」は、質・量ともに豊かな法曹があらゆる場所で活躍し、社会の隅々にまで法の支配を行きわたらせるため、法科大学院を法曹の養成のための中核的な教育機関と位置付け、そのための施策実施に必要な財政的措置を取るべきことを国の責務として明記した。
 ところで、日弁連が本年1月10日から24日に行った法曹志望者に対するアンケートの結果、奨学金等の貸与制度がない場合には、法科大学院の授業料が年間100万円を超えると志望者の5割が法科大学院進学を断念すること、そのような制度があっても年間授業料が200万円とした場合には、奨学金貸与額が年間200万円であったとしても3分の1の志望者が進学を断念することがわかった。
 法科大学院進学希望者が経済的な理由で進学を断念することがないようにするために、また法科大学院に様々なバックグランドを持った学生が入学して法科大学院ひいては法曹の多様性を保持するために、法科大学院に関する財政支援が不可欠である。
 よって、政府ならびに文科省、法務省及び各政党に対し以下の事項を要望する。

 法科大学院に対し、その年間授業料を100万円以下にできるように運営 助成金・交付金を充実すること。

 公的奨学金制度の充実、及び政府保証ローン創設などによる民間金融機関 による教育ローンの充実を図ること。

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在監者の人権保障のために刑務所・拘置所の抜本的改革を求める決議

決議

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 名古屋刑務所において発生した複数の刑務官による在監者に対する特別公務員暴行陵虐致死傷事件を契機に、同種の事件が他の複数の刑務所・拘置所に及んでいることが明らかになってきた。日本弁護士連合会が本年3月に実施した「刑務所・拘置所110番」によっても、革手錠・保護房を使用した在監者に対する人権侵害が全国的に広がっていることが明らかになった。

 当会にも、近年、刑務所・拘置所を人権侵害者とする在監者からの人権救済申立が急増している。ちなみに、2002年度(2002年4月1日〜2003年3月31日)の当会に対する人権救済申立件数は46件であったが、そのうち31件(67%)が刑務所・拘置所を侵害者とする申\立であった。
 当会に対する申立の内容は、医療、懲罰、信書発信、昼夜間独居拘禁、刑務官による暴\行・拷問に関するものなど多岐にわたっている。なかには、必要性がないにもかかわらず在監者を革手錠で緊縛し保護房に23時間以上拘禁したという事案もあった。
 刑務所・拘置所における人権侵害は、いわば密室で行われ、客観性のある目撃証人なども得難いため、人権救済申立事件の調査は事実認定で困難を極めることがほとんどである。このような困難な条件の中で、当会はこれまで問題のある事案について、刑務所・拘置所に警告・勧告・要望を発してきた。\n ちなみに、その数は2000年はじめから今日まで7件になっている。
 しかし、残念ながら、当会のそうした処置に対し、刑務所・拘置所側からの改善されたとの報告を受けたことはなく、相変わらず同種の人権侵害を受けたとの申立が当会になされている。\n
 こうした状況は、根本的には、在監者の人権を保障するための法や制度が確立されていないことに加え、全国の拘禁施設が不十分な施設と人員で過剰な在監者への対応を強いられていることによって起きていると思われる。\n また、拘置所に医師が常駐せず、医療刑務所における医療費の額が極めて貧弱であることも、在監者の生命と健康を危うくする原因となっている。

 日本弁護士連合会は、1982年、「刑事被拘禁者のための処遇に関する法律案」を示し、国際人権基準に合致した監獄法の全面改正を求めてきた。又、当会は、かねてより、警告・勧告等を通して行刑の改善を申し入れてきた。\n
 以上をふまえて当会は、政府が在監者の人権を守るための法と制度を確立する施策に積極的に取り組むとともに、必要かつ十分な予\算的措置をとって、拘禁施設における施設の充実と刑務官の抜本的増員を図って現場で働く刑務官の負担を軽減すること、拘置所・刑務所・医療刑務所における医療体制の充実並びに医療部門の所管を法務省から厚生労働省に移管することが必要不可欠と考え、政府に対し、一刻も早くそのような積極的措置をとるよう求める。
 また当会は、各拘禁施設が、在監者の外部交通権を保障し、懲罰対象者の権利行使を保障し、革手錠の廃止と保護房の濫用抑制、在監者の裁判を受ける権利の保障、在監者の不服申立に関する相談・調査に来た面会者との面会においては立会いをせず、また両者のやりとりに関する信書の検閲をしないことなどの改善を求める。\n

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個人情報保護条例案のご案内

意見

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 平成14年8月5日に住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」と略。)が稼働を開始しました。この住基ネットに関しては,関係各方面から個人情報保護についての懸念が表明されていたことから,所要の措置として万全の個人情報保護法が整備されることが稼働の前提とされていました。しかし,現実にはその整備がなされないまま稼働されている状況です。\n ところで,住基ネット問題はもとより,今日的な情報化社会における個人情報を巡る様々な問題に鑑みるなら,地方自治体レベルでも個人情報保護条例の整備が問われることは言うまでもありません。
 そこで,平成14年10月,人権擁護委員会住基ネット小委員会では,福岡県下の市町村に対して個人情報保護条例の整備状況に関するアンケート調査を実施しました。その結果,個人情報保護条例を整備していない自治体が約3割存在していることが判明しました。また同条例は存在しているけれども,その内容は不十分といわざるを得ないという自治体もありました。\n その結果を踏まえて,当小委員会で個人情報保護条例案及び住基ネットに係る個人情報保護の条例案を作成し,各自治体の制定作業ないし改正作業の参考にして頂きたいと考えた次第です。
 なお,これらの条例案は平成15年2月14日に福岡県下の全自治体に送付しています。

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個人情報保護条例モデル条文案

意見

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

(目的)
第1条 この条例は、行政機関その他が保有する個人情報を保護することについて必要な事項を定めるとともに、当該地方公共団体が保有する個人情報について、その開示及び訂正を請求する権利を保障することにより、個人情報の収集、保管、利用及び提供の適正化を図り、市民(町民・村民)等の基本的人権を擁護することを目的とする。

(収集に関する制限)
第2条 実施機関は、個人情報を収集するときは、個人情報を取り扱う事務の目的を明確にし、当該事務の目的を達成するために必要最小限の範囲内で、適法かつ公正な手段により収集しなければならない。
2 実施機関は、個人情報を収集するときは、本人から直接収集しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、本人以外のものから個人情報を収集することができる。
(1) 法令又は条例に定めがあるとき
(2) 本人の同意があるとき
(3) 個人の生命、身体の安全又は財産の保護等のため、緊急かつやむを得ないと認められるとき
(4) 出版、報道等により公にされたものから当該個人情報を収集するとき
(5) 国若しくは地方公共団体から収集することが事務の執行上やむを得ないと認められる場合
(6) 前各号に掲げるもののほか、実施機関が個人情報保護審議会(以下「審議会」という)の意見を聴いて、公益上の必要があると認めたとき
3 実施機関は、前項第3号又は第5号に規定する場合において、個人情報を収集したときは、審議会にその事実を報告しなければならない。
4 実施機関は、第2項第3号、第5号及び第6号に規定する場合において、個人情報を収集したときは、速やかに収集目的を明示した書面によりその事実を本人に通知しなければならない。
(収集禁止事項)
第3条 実施機関は、次の各号に掲げる事項に関する個人情報を収集してはならない。
(1) 人種、民族、門地、出生、病歴その他社会的差別の原因となる事実に関する事項
(2) 思想、信条、支持する政党及び信仰する宗教に関する個人情報
(3) 犯罪に関する事項
(業務の登録)
第4条 実施機関は、個人情報の保管等に係る業務を新たに開始しようとするときは、あらかじめ、次に掲げる事項を個人情報登録業務登録簿に登録しなければならない。
(1) 業務の名称
(2) 業務の目的
(3) 個人情報の記録の内容
(4) 個人情報の記録の対象者の範囲
(5) 個人情報の収集の方法
(6) 個人情報の記録の保護管理責任者
(7) 個人情報の電子計算システムの記録の有無
(8) 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 実施機関は、前項の登録に係る業務を変更し、又は廃止するときは、速やかに当該登録を修正し、または抹消しなければならない。
3 前2項の規定にかかわらず、実施機関は、緊急かつやむを得ない理由により、あらかじめこの規定による登録をすることができないときは、業務を開始し、又は変更等した日以後において、第1項の規定による登録又は前項の規定による登録の修正等をすることができる。
4 実施機関は、前3項に規定する業務を登録、変更又は廃止したときは、規則で定めるところにより、速やかに審議会に報告するとともに、市民等の閲覧に供しなければならない。
(適正管理)
第5条 実施機関は、個人情報の保管をするときは、個人情報の正確性及び安全性を確保するため、次の各号の定める事項について必要な措置を講じ、適正な維持管理を行わなければならない。
(1) 個人情報を正確かつ最新の状態に保つこと
(2) 個人情報の改ざん、紛失、滅失及びき損その他の事故を防止すること
(3) 個人情報の漏洩の防止を図ること
2 実施機関は、保有する必要のなくなった個人情報については、確実かつ速やかに廃棄し、又は消去しなければならない。ただし、歴史的文化的価値が生じると認められるものについては、この限りでない。
(職員の責務)
第6条 実施機関の職員は、職務上知り得た個人の秘密を漏らし、又は不当な目的に使用してはならない。その職を退いた後も同様とする。
(罰則)
第7条 前条の規定に違反して、個人の秘密を漏らし、または不当な目的に使用した者は、○万円以下の罰金に処する。
(利用及び提供に関する制限)
第8条 実施機関は、個人情報を取り扱う事務の目的の範囲を超えて、個人情報を当該実施機関内において利用し(以下「目的外利用」という)、又は当該実施機関以外のものへ提供(以下「外部提供」という)してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、実施機関は、次の各号のいずれかに該当する場合は、目的外利用もしくは外部提供をすることができる。
(1) 法令又は条例に定めがあるとき
(2) 本人の同意があるとき又は本人に提供するとき
(3) 個人の生命、身体の安全又は財産の保護等のため、緊急かつやむを得ない理由のあるとき
(4) 前各号に掲げるほか、あらかじめめ実施機関が審議会の意見を聴いて、公益上の必要があると認めたとき
3 実施機関は、前項の規定により外部提供をする場合は、外部提供を受けるものに対し、個人情報の使用目的若しくは使用方法の制限その他の必要な制限を付し、又はその適切な取扱いについて必要な措置を講じることを求めなければならない。
4 実施機関は、第2項の規定により目的外利用又は外部提供したときは、規則で定める事項を記録しておかなければならない。
5 実施機関は、第2項第3号の規定する場合において、目的外利用または外部提供したときは、審議会にその事実を報告しなければならない。
6 実施機関は、第2項第3号及び第4号に規定する場合において、目的外利用又は外部提供したときは、速やかにその事実を本人に通知しなければならない。
(開示の請求)
第9条 何人も、実施機関の保有する自己の個人情報の開示の請求をすることができる。
2 死者の個人情報は、次の各号に掲げる場合に開示することができる。
(1) 相続人が、被相続人である死者から相続した財産に関する情報の開示を請求するとき
(2) 相続人が、被相続人である死者から相続した不法行為による損害賠償請求権等に関する情報の開示を請求するとき
(3) 死者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、当該死者の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)、子又は父母が、慰謝料請求や遺贈等、当該死者の死に起因して相続以外の原因により取得した権利義務に関する情報の開示を請求するとき
(4) 親権者が、死亡時において未成年であった当該親権者の子に関する情報について開示を請求するとき
(5) 前各号に掲げる場合のほか、審議会の意見を聴いた上で、実施機関が開示の請求を認めるとき
3 未成年者又は成年被後見人の法定代理人(以下「法定代理人」という)は、本人に代わって前2項の開示の請求(以下「開示請求」という。)をすることができる。
4 実施機関は、開示請求があったときは、当該開示請求に係る個人情報を公開しなければならない。
5 実施機関は、開示請求に係る個人情報が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、当該個人情報を開示しないことができる。
(1) 法令又は条例の規定により、開示することができないと認められる個人情報
(2) 開示請求者以外のものに関する情報を含む個人情報であって、開示することにより、当該開示請求者以外のものの正当な利益を害することになると明らかに認められるもの
(3) 個人の評価、判定、診断、指導、選考、相談等に関する個人情報であって、開示をしないことが正当であると明らかに認められるもの
(4) 開示することにより、個人の生命、身体、財産又は社会的地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障が生じるおそれがあると明らかに認められるもの\n(5) 国、地方公共団体又は他の実施機関等との間における協力、依頼等に基づいて作成し、又は取得した個人情報であって、開示することにより、これらのものとの協力関係又は信頼関係を著しく損なうおそれがあると明らかに認められるもの
(6) 市(町・村)、国又は他の地方公共団体の機関が行う調査、争訟、交渉、取締り、監督、検査、許認可等の事務業務に関する個人情報であって、開示することにより、事務の公正かつ適正な執行に著しい支障が生じると明らかに認められるもの
6 実施機関は、開示請求に係る個人情報に、前項各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分が含まれている場合において、当該部分を容易に、かつ、開示請求の趣旨を損なわない程度に分離することができるときは、当該部分を除いて、開示しなければならない。
7 実施機関は、第5項各号のいずれかに該当する個人情報につき、一定期間の経過により開示を拒む理由が消滅したときは、これを開示しなければならない。
(訂正の請求)
第10条 実施機関等が保管等している自己の個人情報について、事実の記載に誤りがあると認める者は、実施機関に対し、当該個人情報の訂正の請求をすることができる。
(削除の請求)
第11条 実施機関が本条例の趣旨に反して自己の個人情報を収集又は保管していると認める者は、実施機関に対し、当該個人情報の削除の請求をすることができる。
(中止の請求)
第12条 実施機関が保管する個人情報の記録について、当該条例の趣旨に反して個人情報の目的外利用又は外部提供しているとき、又は、しようとしているときは、何人も、その中止の請求をすることができる。
(請求の手続)
第13条 第9条第1項もしくは第2項の規定による開示請求、第10条の規定による訂正の請求、第11条の規定による削除の請求又は前条の規定による中止の請求をしようとする者は、実施機関に対して、本人又はその親権者等の法定代理人もしくは保佐人等であること(保佐人等にあっては、当該請求がされている代理権の範囲内であること)を明らかにして、次に掲げる事項を記載した開示請求書を提出しなければならない。
(1) 請求者の氏名及び住所
(2) 請求に係る個人情報の記録の内容
(3) 訂正、削除又は目的外利用若しくは外部提供の中止の請求の場合は、その内容及び理由
(4) 前3号に掲げるもののほか、規則で定める事項
第14条 実施機関は、前条の開示請求書を受理したときは、受理した日の翌日から起算して14日以内に、開示請求に係る個人情報を開示する旨又は開示しない旨の決定をしなければならない。
2 実施機関は、前条の請求に係る情報が大量であるため、又は大規模な災害等の発生のため事務の執行に著しい支障を生じるおそれがある等やむを得ない理由により、第1項に規定する期間内に同項の決定をすることができないときは、開示請求書を受理した日の翌日から起算して30日を限度として、その期間を延長することができる。この場合において、実施機関は、開示請求者に対して、速やかに当該延長の期間及び理由を書面により通知しなければならない。
3 実施機関は、第1項の決定をしたときは、又は開示請求をした者(以下「開示請求者」という。)に対して、速やかに当該決定の内容(個人情報の開示を行う場合には、その日時及び場所を含む)又は不存在の旨をを書面により通知しなければならない。
4 前項の場合において、実施機関は、開示請求に係る個人情報の全部又は一部を開示、訂正、削除又は目的外利用若しくは外部提供の中止をしない旨の通知をするときは、その具体的な理由及び当該決定に対して異議申立てができる旨を明示しなければならない。\n

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モデル条例の要件について

意見

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

 市町村において制定されるべき個人情報保護条例において、必要不可欠な条項は以下の通りです。モデル条例案をご参照の上、ご検討ください。
1 条例の目的  条例の目的として、「個人情報保護」すなわち、住民の人権を保護することを明記すべきです(1条)。
2 行政機関による個人情報の収集を制限する規定
行政機関が、正当な理由もなく、個人の情報を取得することは憲法13条に違反し、許されません。
 ?収集目的を明確にし、当該目的達成に必要な範囲内で、?適法かつ公正な手段で、?原則として本人から直接、取得するという明確な収集制限規定(2条)をおくべきです。
思想、信条及び宗教に関する個人情報、社会的差別の原因となる個人情報等のセンシティブ情報の収集の原則禁止規定(3条)を定めるべきです。
違法な個人情報の取得がなされないためには、このような個人情報の収集を制限する規定が不可欠です。
3 管理規定
個人情報の保管にかかる業務について、登録の制度を設け(4条)、保管が必要でなくなった場合の廃棄、消去義務を明記し(5条)、適切な管理を行う条項を定めるべきです。
4 行政機関による個人情報の目的外利用を禁止する規定情報の利用目的を明確にするとともに、その利用目的の変更を認めないこと、目的外利用を禁止することが、行政機関による個人情報の乱用を防止するために必要です。
条例では、目的の変更を認める規定はなく、許されない形態にしています。
さらに、単なる秘密漏泄だけでなく、個人情報の不正使用を禁じ(6条)、その罰則を定める(7条)など目的外利用を禁止を徹底すべきです。また、目的外利用や外部提供に際しては、記録を残し、審議会への報告を行い、本人へ通知することを義務づけるべきです(8条)。
5 実効性のある情報開示、訂正、抹消請求権規定個人情報を、公的機関からみだりに把握されないという消極的なプライバシー権の考え方は、行政の肥大化に伴って、すでに大量の個人情報が集積している公的機関に対し、自己の情報がどのように把握されているのかの開示を求め、それが誤っている場合には、訂正を求め、さらには、違法に保有されている自己情報を抹消する権利が確保されなければならないという積極的な自己情報コントロール権(憲法13条)の考え方に発展しています。
従って、情報の開示、訂正、利用停止請求権が明確に規定されていなければなりません(9〜12条)。
情報が誤っている場合に、訂正・削除を行うか否かが実施機関の決定にゆだねられるのではなく、原則として当然訂正・削除がなされるべきです。
モデル条例では、死者の個人情報に対する開示請求を定めています。非開示の理由も、単なる「おそれ」では足りず、「明らかなおそれ」を課し、制限的にすべきです。部分開示についても明言し、これを制限的にすべきです。開示の可否の決定期間も短期にすべきです(14条)。

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住民基本台帳ネットワークにかかる個人情報保護の条例案

意見

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

(目的)
第1条 この条例は、全ての国民に対して基本的人権の享有を保障し、個人として尊重されることを保障する日本国憲法の崇高な理念に則り、市〔町・村〕又は市長〔町長・村長〕が住民基本台帳法(以下、「法」という。)に規定する事務を管理し、又は執行するにあたって、個人の住民票に記載されている事項(以下、「住民票記載事項」という。)を適正に管理するために構ずべき事項を定め、及びこれを明らかにすることにより、市民の個人情報の保護を図ることを目的とする。\n(用語)
第2条 この条例で使用する用語の意義は、法で使用する用語の例による。
(市長の一般的責務)
第3条 市長〔町長・村長〕は、住民基本台帳事務の処理にあたり、市民〔町民・村民〕に関する住民票記載事項につき正確な記録が行なわれるよう事務処理の適正化を図るとともに、住民票記載事項の漏えい、滅失又はき損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
(電気通信回線による福岡県知事への通知)
第4条 法第30条の5第2項及び住民基本台帳法施行令(以下、「令」という。)第13条第4項の規定に基づき市長〔町長・村長〕の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて福岡県知事の使用に係る電子計算機に送信する事項は、次の各号に規定するものに限る。
   一 氏名
   二 出生の年月日
   三 男女の別
   四 住所
   五 住民票コード
   六 法第30条の5第1項に規定する住民票の記載等に関する事項で政令で定めるもの
   七 令第13条第3項に規定する法第9条第1項に規定する通知を受けた旨
  2 法第30条の5第1項に規定する住民票の記載等に関する事項につき定める政令に改正が行なわれた場合には、当該事項の送信にあたり、市長〔町長・村長〕は、○○市〔○○町・○○村〕個人情報保護審議会(以下、「審議会」という。)の意見を聴取し、その意見を市民〔町民・村民〕に公表しなければならない。\n(処理状況等の審議会への報告等)
第5条 市長〔町長・村長〕は、その使用に係る電子計算機とそれ以外のものの使用に係る電子計算機との間で電気通信回線を通じて送受信を行なった住民票記載事項の処理状況並びに当該処理により発生した苦情(住民票記載事項に係るものに限る。)及びその処理の内容について、毎年1回以上、審議会に報告しなければならない。
  2 前項で報告しなければならない処理の状況には、少なくとも次に掲げる事項を含むものとする。
   一 法第9条第1項の規定による他の市町村から市〔町・村〕の区域内に住所を変更した者に係る当該他の市町村長への通知
   二 法第9条第1項の規定による市〔町・村〕の区域内から他の市町村の区域内に住所を変更した者に係る市長への通知
   三 法第12条の2第2項の規定により政令で定める事項を住所地市町村長へした通知
   四 法第12条の2第2項の規定により政令で定める事項を交付地市町村長から受けた通知
   五 法第12条の2第3項の規定により政令で定める事項を住所地市町村長から受けた通知
   六 法第12条の2第3項の規定により政令で定める事項を交付地市町村長へした通知
   七 法第24条の2第3項の規定による最初の転入届又は最初の世帯員に関する転入届を受けて行なう転出地市町村への通知
   八 法第24条の2第4項の規定による政令で定める事項の転入地市町村長への通知
   九 法第30条の5第1項及び令第13条第3項の規定による前条第1項各号に掲げる事項の福岡県知事への通知
  3 第1項の報告を実施するにあたっては、住民基本台帳法施行規則第25条の規定を参考にしなければならない。
  4 市長〔町長・村長〕は、第1項に掲げる事項について、審議会に報告後、市民〔町民・村民〕に公表するものとする。\n(送信先の利用状況の審議会への報告等)
第6条 市長〔町長・村長〕は、第4条第1項の規定により市民〔町民・村民〕に関する事項を市長〔町長・村長〕の使用に係る電子計算機から福岡県知事の使用に係る電子計算機に送信したときは、送信した個人情報の利用状況について、福岡県知事に対して毎年定期的に報告を求め、その状況を審議会に報告し、並びに規則で定める事項につき議会に報告し及び記録して一般の閲覧に供しなければならない。
  2 市長〔町長・村長〕は、前項の報告を福岡県知事が怠る場合には、福岡県知事に対して速やかに報告を行うよう勧告しなければならない。
(不適切利用に対する措置)
第7条 市長〔町長・村長〕は、住民票記載事項の漏えい又は不適切な利用により、市民〔町民・村民〕の基本的人権が侵害されるおそれがあると認めるときは、国、他の地方公共団体、指定情報処理機関その他の関係者(以下、この条において「国等」という。)に対して報告を求める等必要な調査を行ない、又は必要に応じて国等に対し基本的人権の侵害のおそれが無いように是正措置をとるよう勧告をしなければならない。
  2 市長〔町長・村長〕は、国等が前項の調査に応じないとき、前項の調査により市民〔町民・村民〕の基本的人権が侵害されると判断したとき、又は前項の是正措置の勧告に国等が応じないときは、送信の停止、送信先が保有する情報の削除の要求等市民〔町民・村民〕の個人情報の保護に関し、必要な措置を講じなければならない。
  3 市長〔町長・村長〕は、前項に規定する必要な措置を講ずるにあたっては、あらかじめ審議会の意見を聴かなければならないとともに、広く市民〔町民・村民〕の意見を求めるよう努めるものとする。
  4 市長〔町長・村長〕は、市民〔町民・村民〕の基本的人権の侵害に関し、明白かつ差し迫った危険があると認めるときは、第1項ないし前項の規定にかかわらず、調査、勧告又は意見の聴取を行なわずに必要な措置を講ずることができる。この場合においては、必要な措置を講じた後、明白かつ差し迫った危険があると判断した根拠及び講じた措置の内容について速やかに審議会及び議会に報告するものとする。
(不当な目的による取得等の禁止)
第8条 何人も市〔町・村〕が保有する住民票記載事項について、他への有償での譲り渡し等不当な目的をもって取得若しくは保有し、又は法により認められている場合を除き、目的の如何にかかわらず第三者に譲り渡してはならない。
  2 法により認められているものを除き、何人も、業として住民票コードを含む住民票記載事項が記録されたデータベースであって、当該住民票コードを含む住民票記載事項が記録されたデータベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構\成してはならない。
  3 市長〔町長・村長〕は、前2条の規定に違反する行為をしたと認める者に対し、当該住民票記載事項の消去、記録された媒体の回収及び廃棄その他個人情報の保護のために必要な措置をとるよう命ずることができる。
(関係人に対する調査等)
第9条 市長〔町長・村長〕は、前条第3項の規定による措置に関し、必要な調査をすることができる。
  2 市長〔町長・村長〕は、前条第3項に規定する調査を行なうため必要があると認めるときは、その職員に関係人に対し質問をさせ、又は文書その他の物件の提出を求めさせることができる。
  3 前項の規定により質問をし、又は文書その他の物件の提出を求める職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
(委任)
第10条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長〔町長・村長〕が定める。
(罰則)
第11条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
   一 第8条第3項の規定による命令を受け、当該命令に従わないとき。
   二 第9条第2項の規定による質問に対し、回答をせず、若しくは虚偽の回答をしたとき、又は文書その他の物件の提出を拒み、妨げ、若しくは虚偽又は偽造の文書その他の物件を提出したとき。

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『住民基本台帳ネットワークにかかる個人情報保護の条例』案の条項についてモデル条例の要件について

意見

 2004年5月25日   福岡県弁護士会 会長 前田 豊

1 目的(第1条) 
  憲法の理念を明文で入れることにより、個人情報の保護が憲法上の要請であることを明らかにし、その重要性を強調することを意図している。
2 用語(第2条)
  別になし。
3 市長(町長・村長)の一般的責務(第3条)
 (1) 本条は,市長(町長・村長)の義務の総論的な規定であるから、「一般的」と明記したものである。
 (2) 「住民票記載事項につき」と規定し「正確な記録」の対象を明白にしたのは、市長(町長・村長)の責務を明確にする趣旨である。
4 電気通信回線による福岡県知事への通知(第4条)
  政令で通知事項が追加された場合に,審議会の意見を聴取するという手続を経、更に、その聴取した意見を市民(町民・村民)に公表することを義務づけることで、政令による追加の事実を公に明らかにし、この是非についての世論を喚起する趣旨である。\n5 処理状況等の審議会への報告等(第5条)
  本条は、市長(町長・村長)とそれ以外の市町村長間で電気通信回線を使って市民(町民・村民)の情報の送受信を行った状況並びに苦情の内容及びその処理の状況を、審議会に報告することによって、情報の送受信の適正さを担保することを目的とするものである。
  本条第2項の1号と2号、3号と4号、及び5号と6号はそれぞれ対比されるもので、相互の関係を比較することによって、不正な情報の請求、もしくは不正な情報の提供(流出)がないかを確認することも可能となる。\n  また、本条第3項については、プライバシーの公開との関係で報告事項の範囲が問題となるが、総務省令の規定を参考に「本人確認情報の提供先、提供を行った年月日、提供した情報の件数及び情報の提供方法」までは許されると考え設けたものである。
本条第4項は、審議会に報告した後、市民(町民・村民)に公表することによって、より一層の不正もしくは不適切な情報の送受信を防ぐとともに、市民(町民・村民)の自己情報のコントロール権の確保に資することを目的とするものである。\n6 送信先の利用状況の審議会への報告等(第6条)
  前条が、市町村間における個人情報の送受信に関する報告に関する規定であるのに対し、本条は、市長(町長・村長)が福岡県知事に送信した個人情報が福岡県知事から先でどのように使われたか(流されたか)を市長(町長・村長)が把握した上で市民(町民・村民)に明らかにすることを目的とするものである。
  本規定によって、福岡県知事が市長(町長・村長)からの報告要求に対して回答義務を負う法的効果を生ぜしめることはできないが、福岡県知事が報告を行わない場合に、勧告をおこない、それでも報告を拒否し続ける場合は、次条の「市民(町民・村民)の基本的人権が侵害されるおそれがある場合」に該当することも考えられるので、その時は「必要な措置」を講じうることになる。
7 不適切利用に対する措置(第7条)  住民票記載事項の漏えい又は不適切な利用により、市民(町民・村民)の基本的人権が侵害されるおそれがあるときは、国等に対し報告を求める等必要な調査を行い、基本的人権が侵害されるおそれが内容に是正措置をとるよう勧告を求めることを、市(町・村)の責務とすることを定めたのが第1項である。
  市(町・村)が個人情報保護のために必要な措置を講じるべき場面を規定したのが第2項である。調査の結果、基本的人権が侵害されると判断された場合はもとより、国等が調査に応じない場合、それ自体が不適切利用を疑わせるものであるし、国等が市(町・村)が必要と思われる是正勧告に応じない場合には、人権侵害を防ぐことをもはや期待し得ない場面であるので、固有の事務として住民票事務を扱う市(町・村)の責務として送信停止等を含めた必要な措置を講じるべきものとしたものである。
  第2項の必要な措置を行う場合には、民主的手続をふみ、市民(町民・村民)にいかなるおそれがあるかという点を広く周知させることを定めたのが第3項の規定である。
  基本的人権が侵害されるおそれが明白かつ差し迫った危険があると認められる場合には、迅速な対応が求められるため、市民(町民・村民)の基本的人権を保護すべき責務を負っている市(町・村)が、審議会への意見徴収等の手続を踏むことなく、必要な措置を講じることとし、他方で、明白かつ差し迫った危険があると判断した根拠及び内容を事後的に審議会に報告することを義務付け、責任のある措置をとるべきことを定めたのが第4項である。
8 不当な目的による取得等の禁止(第8条)  本条は個人情報の取得・保有・譲渡に一定の制限を設け、市民(町民・村民)の個人情報の保護を図ることを目的とする規定である。
  住民票記載事項の取得を無制限に認めることは、当該情報の犯罪への利用等個人の人権侵害を招くおそれがあることから、不当な目的による取得を禁止し、個人の情報の保護を図ることを目的とする。
  第1項においては、取得した住民票記載事項を法により認められている場合を除き第三者へ譲り渡すことは、いかなる目的があろうと正当化されるものではないので、一律に禁止する。
  第2項は、住民票コードの各人への交付により各機関が保有する個人情報の一元化の危険が増大しているため、個人情報の一元化を可及的に防止すべく住民票コードを含む住民票記載事項が記載されたデータベースの構築を禁ずることとしたが、あらゆるデータベースの構\築を一律に禁ずることは市民(町民・村民)の私的領域への過度の介入、営業活動の自由の不当な制限につながりかねないので、業として、かつ当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定される場合にのみ禁止することとした。\n  以上の禁止行為がなされた場合に当該情報の抹消・回収がなされなければ市民(町民・村民)の人権に対する脅威を払拭されないので、当該禁止行為に該当する事実があったと認めるときは、当該住民票記載事項が記録されている媒体の回収、消去等を命ずることができるとして、第3項で事後的な個人情報保護の措置を定めた。
9 関係人に対する調査等(第9条) 本条は前条の措置命令の実効性を確保し、あわせて適正手続の保障を目的とするものである。
  前条の措置命令を発する前提として正確な事実の把握が不可欠であるが、任意の協力を求める形での事実調査しか行えないとすれば事実の把握は極めて困難である。そこで、関係人に対する質問、物件の提出を求めるなどの調査権を付与する。調査に際しては、適正手続を保障するため、関係人の請求があった場合は、身分証明書を提示しなければならないこととする。
10 委任(第10条)
  この条例の施行に関し、必要な事項(細則)は市長(町長・村長)が定めることとする。
11 罰則(第11条)  第8条の規定による不当な目的で取得した住民票記載事項のデータの消去命令に対し従わなかったときや、第9条の質問に対し正当な理由なく拒んだ者に対しては、罰則を規定することにより、調査、命令権限を実質化させる必要があるための規定である。また、罰則については、住民の基本的人権を侵害するおそれがあるという被害の重大性に鑑み、単な過料ではなく、懲役刑及び罰金刑を定めるものとする。住民基本台帳法第44条(住民基本台帳法第30条の43第5項違反)の定める罰則の規定の趣旨からすると、かかる程度の罰則規定を定めることも十分に可能\と思われる。

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破産者狙いの詐欺に注意!!

意見

 近時、破産者をターゲットとした悪質な詐欺行為が横行しています。現時点では大別して、次の2種類があるようです。\n
 1:金銭詐取型
 破産者に対し「官署普及協会」と称し、官報掲載のための費用の支払いが必要であり、指定口座に費用3千円あまりを送金しなければ、破産手続きが無効となるとする文書を送りつける例のように、破産者から若干の費用相当額を騙取しようとするもの。

 2:取立端緒型
 破産者に対し、日本共同債権・高田総合法律事務所、四葉債権機工・柴田伸彦弁護士事務所、全国共立債権弁護協会・小谷和夫弁護士事務所名(当然ながら実在しません。)で、「貸金業協会による通知に代わるものとし、連絡なき場合当組合による独自の手続きを行わせていただきます」といった内容の電報を打ち、反応して連絡を入れた破産者に対し、威迫もしくは欺罔して金銭を支払わせようとするもの。\n
 今後も、新種の手法が現れることが予想されますが、破産手続をしている場合、裁判所ないし委任している弁護士以外から、手続費用の請求があることはありません。全く支払いの必要はありませんのでご注意下さい。

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2004年5月26日

「北九州矯正センター構想に反対し、少年鑑別所の適地への移転を求める決議」

決議

平成16年5月26日  福岡県弁護士会  会長 松? 隆

 平成7年2月に発表された北九州矯正センター構\想は、小倉刑務所敷地内に医療刑務所、小倉拘置所及び少年鑑別所を移転する計画であった。当弁護士会は、この構想に対し会を上げて反対運動を展開したところであり、一旦は、小倉刑務所と医療刑務所のみが統合されて「北九州医療刑務所」となるにとどまった。
 しかるに、今般、少年鑑別所を北九州医療刑務所と同一敷地内若しくは隣接地(以下「同一敷地内等」という)に移転する計画の調査費用が予算化され、再び、上記構\想が実行されようとしている。
 ところで、少年の健全な育成を理念とする少年法の趣旨に鑑みれば、少年鑑別所などの少年に関する施設と刑務所などの成人に関する施設とは、別個独立のものでなければならない。また、少年鑑別所は、少年に対する処遇決定のためにその資質等を調査鑑別する施設である。教育的な更正を目的とする少年院とも明らかにその性格を異にするものであり、ましてや、刑に処せられた者を拘禁する施設である刑務所とは画然と区別すべきものである。
 我々は、少年鑑別所を刑務所と同一敷地内等に設置することにより、少年鑑別所に収容される少年に多大な悪影響を及ぼし、少年の健全な育成が阻害される事態や、少年鑑別所が刑務所と類似した矯正施設であるかのような誤解を世間に与え、あるいはそのような偏見を助長する事態が生じることを恐れるものである。
 当弁護士会は、このような理由から、少年鑑別所を刑務所と同一敷地内等に移転させる構想に断固として反対するものである。\n 他方において、現在の少年鑑別所が老朽化しており、かつ、近隣高層住宅から俯瞰されるなど少年の人権上問題があるために、移転建替えの必要があることは理解できるところである。しかし、その必要性の故をもって刑務所と同一敷地内等に移転することは、上記の理由から決して容認しえない。
 よって、当弁護士会は、少年鑑別所を北九州医療刑務所と同一敷地内等に移転しようとする北九州矯正センター構想に反対するとともに、少年の更正と健全な育成にかなった適地への移転を求めるものである。
 以上決議する。

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