福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2011年6月 7日
最高裁は変わりつつあるのか?
西川伸一・明治大学教授が表記のタイトルで『プランB』(2011年6月。33号)で書いています。先の浦部教授の論文と対比させて読んでいただければ面白いと思いますので紹介します。(な)
「官僚的人事システムが生み出すがゆえに、裁判官出身の最高裁判官は、相変わらず保守的で行政よりだといえるのでしょうか。
今年3月23日の1票の格差をめぐる最高裁大法延判決は、2009年の総選挙で生じていた最大格差2.30倍について、12人の多数意見で『違憲状態』としました。裁判官出身の最高裁判官6人はすべてこの多数意見をとっています。また、2010年1月20日の砂川空知太神社訴訟における政教分離違憲判決も画期的でした。北海道砂川市が神社に土地を無償提供していることは、政教分離に反するとして提訴された事件です。最高裁大法廷は高裁の合憲判決をくつがえしたのです。この違憲判断にも6人の裁判官出身の最高裁裁判官のうち、竹崎長官を含む4人が加わっています。
弁護士出身の最高裁裁判官はリベラルで、裁判官出身と検察官出身は保守的だというステレオタイプの色分けは、もはや変わりつつあります。最高裁裁判官全員がいまや戦後教育を受けた世代となったことが大きいのではないでしょうか。もちろん、それ以前に、出身が行動を決めるわけではありません。
最後に申し添えたいのは、裁判官は世間知らずといわれますが、国民も裁判官を知らなさすぎます。その機会もありません。最高裁裁判官の人選は実質的には最高裁長官と事務総局人事局が行っています。国民はその名前を突然知らされるだけで、どのような人物でいかなる選考過程を経て任命されたのかはうかがい知ることができません。
最高裁の初代裁判官15人を選んだのは、片山哲内閣です。このときは、裁判官任命諮問委員会が設けられて、オープンなかたちで人選がすすめられました。諮問委の提案を内閣が受け入れたのです。ところが、これは内閣のもつ任命権をしばるもので違憲の疑いがあるとして、このとき限りで廃止されてしまいました。
内閣のもつ任命権を侵害しない前提で、これに準じる委員会を設置する。そして、国民に開かれたかたちで最高裁裁判官の人選を行うべきだと考えます。こうすれば、国民の日を意識して、経歴的資源にとらわれない、より多様な人選がなされているのではないかと期待します。
裁判所に限らず、組織は基本的には外部からの圧力によってしか変わらないように思います。司法官僚制もこれを外部の目にさらすことが重要に違いありません」