福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2010年3月26日
裁判員選任手続の実情
『法の支配』156号(2010年1月号)に最高裁事務総局の斉藤啓昭刑事局第一課長が「裁判員裁判の実施状況について」として、裁判員選任手続の実情を紹介しています。(な)
10月31日までの判決46件について、選任手続の実施状況をみると、事件ごとに選定された候補者は合計4200人。同封した調査票の回答にもとづいて、70歳以上、学生といったいわゆる定型的辞退事由に当たるとして辞退等が認められた候補者が764人。重い病気やけがによる辞退等が認められた候補者を加えて、呼び出さない措置がされた候補者は1176人だった。呼出状を送付した候補者は3024人。選定された候補者に占める割合は72%。
次に、質問票により辞退を申し出るなどして呼出しの取消しが認められた候補者が944人だったので、選任手続期日に出席が求められた候補者の数は 2080人。最初に選定された候補者に占める割合は49.5%。
出席者の中には、呼出状が不送達となり現実には出席が期待できない候補者が含まれているので、これを除くと出席率は91.5%。
選任手続期日で辞退が認められた候補者が204人、理由のある不選任となった候補者が7人、理由を示さない不選任となった候補者が229人、くじにより不選任となった候補者が937人であった。最終的に選任された裁判員の数は278人、補充裁判員の数は116人だった。
選定された候補者のうち、最終的に辞退が認められたのは合計2218人 (52.8%)であるが、このうち90.8%に当たる候補者は、選任手続期日前に、すなわち裁判所に出向くことなく辞退が認められた。
そこで、審理期間が3日程度の事件の選任手続をイメージすると、当初70人から100人程度の候補者が選定され、このうち20人から30人が調査票の回答にもとづく辞退等が認められる。50人から70人前後の候補者に選任手続期日のお知らせ(呼出状)及び質問票が送付され、その回答にもとづいて、さらに20人から30人の候補者が辞退(呼出取消し)を認められる。残った30人から40人程度の候補者のうち、9割近い候補者が選任手続期日に出席し、当日の辞退申し出や不選任請求を経て、最終的にくじで裁判員及び補充裁判員が決まる。
9割という候補者の出席率は、無作為抽出を基本とした、国民の刑事裁判への参加制度をとっている諸外国と比較しても、きわめて高い数字である。