福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2009年11月25日
裁判員裁判における評議のすすめ方
判例時報2052号(2009.11.11)にどのように裁判員裁判における評議をすすめるのか、紹介されています。大変勉強になりました。(な)
ここでは、話し合いルールとして有名な木津川ルールがまず紹介されます。
3つの原則
・ 誰もが自由で平等な発言ができる
・ 創造的な話し合いをする
・ 皆が合意形成に向けた努力をする
7つのルール
1 自由で対等な立場で発言しよう
2 特定個人や団体の批判はしない
3 参加者は立場を越えて議論しよう
(参加者の見解は所属団体の公式見解とみなさない。あくまでも、その人個人の見解とみなす)
4 分かりやすい説明、お互いの心情への理解、基本的なモラルの遵守を心がけよう
5 客観的な事実の認識と、人の心情との理解を区別し、また、その両方に配慮しよう
6 その都度の対話集会でまとめを必ず行い、合意された事項を確認しよう
7 多様な違憲があることを認めた上で、創造的な話し合いを心がけ、違憲の違いを超えて提案の作成を目ざすとともに、合意された文書は全員の責任において確認しよう
(多数決は行わない。両論併記はできるだけ避ける)
なるほどと思うルールですね。
そして、ホワイトボードに付箋紙を貼って議論を見やすく整理する方法が紹介されています。
付箋紙を用いた証言の整理は、証人尋問、被告人質問それぞれの後の中間評議において実施することを想定している。各証言者の証言の内容について、裁判員、裁判官が全員、証言の中の事柄を、一枚の付箋紙に一件ずつ書き出し、ホワイトボードや壁に貼った模造紙などに事件の時間軸にそって貼り並べていく。すべての証言者に対して、付箋紙を貼り終えたら裁判体全員で付箋紙の前に集まり、全員で確認しながら裁判長あるいは陪席裁判官が類似の証言を示す付箋紙を重ねるなどで証言を時系列に整理し、「証言対照表」を作成する。
付箋紙を用いる手法の利点は、各自が同時にアイデアや意見を出すことができるので発言の順番に影響を受けず公平性が保たれること、何度でも並べ替えられること、付箋紙の場合は壁やボードに貼り付けられることである。これらの利点により、たとえば、自分以外の全員が反対の考え方を示していた場合に起こりうる意見の変更や意見を出すときの躊躇を回避することができる。もちろん、納得して意見を変えることは問題ない。周囲に合わせてしまうことが問題なのである。この手法では、納得して意見を変える場合に自分の付箋紙を外したり、新しく書いたりすることもできるため、意見の変更にも対応しやすい。また、付箋紙やカードを並べ全員で整理していく共同作業は、初めて顔を合わせる人々の前で自分の考えを述べるといった緊張をともなう作業に対する緩和剤となり、アイスブレークの機能も備えている。
さらに、これから事実認定を行い、量刑を決定し、判決を出すという一連の評議のプロセスを開始するときには、専門家である裁判官にお任せするという態度でなく、共同体の一員として主体的な参加意識や協力しあう態度が必要であるが、これらを高めることにもつながる。
いろいろ工夫が必要のようです。