福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2009年9月 7日
裁判員裁判第1号についての感想
NBL912号(9月1日)に、前検事総長の但木敬一弁護士と山田秀雄弁護士(東京二弁)の対談がのっていますので少し紹介します。ぜひ原文をお読みください。(な)
但木 本当に選ばれた人たちがどれくらい裁判所に来てくれるのか、それが、裁判員制度が上手くいくかいかないのかの分水嶺になると思っておりました。実際には100人に通知が出されました。これは裁判官や検事といった無資格の人たちも含めてまったく無差別に総選挙の名簿から選出するわけですから、100人に通知が届いて、そのうち33人が欠格者でした。加えて18人が辞退を申し出て、その辞退の申し出にはいずれも合理性がありました。ですから、裁判所に出頭すべき人は100人のうちの49人でした。そして49人の中から47人が出頭しました。この事実は驚くべきことです。やはり日本人の国民性として、やらねばならぬと決まったものについては、すごく真摯に、真面目に、真正面から受け止めた、出頭した人の数字をみて、非常に大きなハードルを越えたと感じました。
山田 弁護人となった弁護士は今回の裁判のためにおおむね300時間以上をつぎ込んだと言っていました。本当に頭の下がる労力をかけています。裁判中は、満足に睡眠時間も確保できないような状況で弁護活動を続けていました。
山田 弁護活動を行う人が経済的なことなどを考えたときに、限られた短い期間において想像を絶する忙しさが待ち受けていて、膨大な時間をかけて弁護を行わなければならないとなると、ちゃんと手を挙げてくれる弁護士がどれだけいるのだろうかという点は非常に懸念します。
山田 検察官に対抗し得るようなある種のプレゼンテーション能力を持った弁護士が対峙しないと、どうしても法廷の構造が2対1という図式になってきている印象が若干あります。そのような構造があるところに、有能な被害者弁護の弁護士が付いたりすると被告人は劣勢に回ってしまう。
但木 いま一番心配なのは正直にいって弁護士です。検察ならば組織的な研修ができますし、その事件について庁を挙げて応援します。いろいろなことを相談でき、バックアップ体制が整っています。これに対して弁護士は必ずしもそのような組織的な動きをしないので、すごく大変だと思います。
私の在籍する森・濱田松本法律事務所では、もし若手弁護士が裁判員裁判に当たった場合は事務所を挙げて応援しようということにしています。すでにコミッティーを作っておりまして、私も入っています。
山田 いまCSR・企業の社会的責任の重要性が叫ばれていますよね。やはり裁判員裁判に出頭する裁判員に対しては、「お前、これは義務でいくのではなくて権利でいくくらいの気持ちでがんばってこい!」と、むしろ後ろから背中を押してやることが企業として必要だと考えます。