福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2009年2月23日
自白・自白の任意性
『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)
○ 自白とは、自分が犯したことについて、自ら話すことです。
○ 自白の任意性とは、脅かされたり、だまされたり任意性のない自白は、証拠とすることができまないということです。
○ たとえば、検察官は最終弁論(論告)のとき、「被告人は捜査段階で、被告人自身が被害者をナイフで刺したことを自白しています」と言います。
また、弁護人は最終弁論のとき、「被告人は被害者をナイフで刺したことは認めていますが、刺そうという意思はありませんでした。捜査段階の自白は『殺人』の自白ではなく、刺した事実を認めたにすぎません。被告人は傷害罪です」と言います。
○ 自白調書
被告人が捜査段階で取調べを受けたときに作成される供述調書のなかには、被告人が自分が犯した行為について自ら話した内容のものがあります。これを自白といい、それが記載された調書を自白調書といいます。
○ 自白調書の証拠能力
自白調書が証拠として認められるためには、自白が本人の意思にもとづいて任意になされたことが必要です。脅かされたり、だまされたりすることなく、自らの意思で自白したと認められる場合は、自白が任意になされたとされます。逆に、任意性の認められない自白は証拠とすることはできません。
刑事裁判で用いられる証拠は、証拠能力が認められるものでなければなりません。任意性のない自白には、この証拠能力が認められないのです。
○ 自白が証拠として制限される理由
憲法38条1項は、「何人も、自己に不利益な供述を強制されない」と定め、同条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない」と定めています。
刑事訴訟法319条1項でも、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない」と定めています。
このように、刑事訴訟法だけでなく、国の最高規範である憲法にも自白についての厳格な規定があるのは、不当にさせられた自白にもとづく誤判を防ぐこと、自白の強要にともなう人権侵害を防止することが、刑事裁判手続において欠くことのできない重要なことだからです。