福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2008年10月15日
心神喪失・心神耗弱
『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)
○心神喪失とは
精神の障害により、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが、まったくできない状態。
○心神耗弱とは
精神の障害により、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが、非常に困難な状態。
○たとえば
検察官が最終の論告のとき、「弁護人は、被告人は本件犯行当時、心神喪失の状態にあり、責任能力がなかったなどと主張します。しかし、被告人の精神鑑定を行った○○医師の証言によれば、被告人に責任能力があったことは明白です」と述べます。
また、弁護人が最終弁論のとき、「被告人は本件犯行当時、心神耗弱状態にあり、完全な責任能力がありませんでした。刑を軽減すべきです」と述べます。
○精神の障害として典型的なのは、統合失調症など幻覚や妄想を伴う病気です。しかし統合失調症の場合でも重度であるかどうか、またその他の精神病や知的障害の場合は、その症状や程度がどのようなものか、慎重に検討されることになります。
長期にわたる病気だけでなく、麻薬や向精神薬などの薬物の影響や、飲酒によって異常な酩酊状態になり、意識障害を引き起こしたケースなどでも、心神喪失と認められることがあります。
○心神喪失とは、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが「まったくできない」状態ですが、心神耗弱とは、それが非常に困難な状態のことです。
完全なものではなくとも責任能力があることになりますから、刑罰を科すことはできます。しかし、完全な責任能力がある場合と同じというわけにはいかないので、刑の軽減をしなければならないのです。