福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年10月10日

責任能力

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○責任能力とは
犯行当時の精神状態が、自分の行動に責任を負えるようなものであったこと。

○たとえば
 検察官が最終論告のとき、「弁護人は、被告人は本件犯行当時、心神喪失の状態にあり、責任能力がなかったなどと主張します。しかし、被告人の精神鑑定を行った○○医師の証言によれば、被告人に責任能力があったことは明白です」と述べます。
 また、弁護人が最終弁論のとき、「被告人は本件犯行当時、心身衰弱状態にあり、完全な責任能力がありませんでした。刑を軽減すべきです」と述べます。

○責任能力がなければ処罰されないのが刑法の原則
 なぜ、犯罪を行った人が犯罪者として刑罰を科されるかといえば、やってよいことと悪いこととを区別し、悪いことはしないという判断ができるにも関わらず、あえて悪いこと、犯罪を行ったからです。これに対して、やってよいことと悪いことが区別できない人が犯罪行為を行ったとしても、あえて悪いこと、犯罪を行ったとはいえませんから、その人を非難し、刑罰を科すことはできません。善悪を判断できる人が、自らの判断によって罪を犯した場合に処罰するのが、刑法の大原則です。
 国が人に刑罰を科すことは、感情に基づく報復ではありません。精神の障害によって、善悪の区別ができない人がしたことについて刑を科して責任を問うことは、人に不可能なことを要求する結果になってしまいます。

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2008年10月15日

心神喪失・心神耗弱

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○心神喪失とは
精神の障害により、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが、まったくできない状態。

○心神耗弱とは
精神の障害により、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが、非常に困難な状態。

○たとえば
検察官が最終の論告のとき、「弁護人は、被告人は本件犯行当時、心神喪失の状態にあり、責任能力がなかったなどと主張します。しかし、被告人の精神鑑定を行った○○医師の証言によれば、被告人に責任能力があったことは明白です」と述べます。
また、弁護人が最終弁論のとき、「被告人は本件犯行当時、心神耗弱状態にあり、完全な責任能力がありませんでした。刑を軽減すべきです」と述べます。


○精神の障害として典型的なのは、統合失調症など幻覚や妄想を伴う病気です。しかし統合失調症の場合でも重度であるかどうか、またその他の精神病や知的障害の場合は、その症状や程度がどのようなものか、慎重に検討されることになります。
長期にわたる病気だけでなく、麻薬や向精神薬などの薬物の影響や、飲酒によって異常な酩酊状態になり、意識障害を引き起こしたケースなどでも、心神喪失と認められることがあります。

○心神喪失とは、やってよいこととやってはいけないことを判断し、またはやってはいけない行為を抑えることが「まったくできない」状態ですが、心神耗弱とは、それが非常に困難な状態のことです。
 完全なものではなくとも責任能力があることになりますから、刑罰を科すことはできます。しかし、完全な責任能力がある場合と同じというわけにはいかないので、刑の軽減をしなければならないのです。

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