福岡県弁護士会 裁判員制度blog

2008年7月 1日

刑の量定(量刑)

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

刑の量定(量刑)とは、有罪の被告人に科す刑罰の種類と重さを決めることです。

○ 刑罰の種類と重さの決定
 裁判員と裁判官は、被告人が有罪であると判断したときは、次に、被告人に科すべき刑罰の種類と重さを決めなければなりません。これを刑の量定といいます。そして、刑の量定をすることを、一般に量刑というのです。
 ある犯罪行為をしたと認められると、被告人はその犯罪について有罪となります。その行為を犯罪と定めている法律には、刑罰の種類と重さの範囲も同時に定められています。その範囲内で、被告人に科す刑罰の種類と重さを決めることになります。
 たとえば、刑法には、「人を殺した者」は、死刑か無期懲役か5年以上の有期懲役に処すると定められています。そこで、まず死刑か、無期懲役か、有期懲役かのいずれかを選択します。有期懲役を選んだら、その長さも決めます。

○ 刑罰の増減
 ただし、一定の理由があるときは、刑法などの条文で定められた刑よりも軽い刑を科したり、重い刑を科したりできる場合があります。
 情状による酌量減軽や、刑期を終えて5年以内に罪を犯したときの累犯加重です。
 たとえば、無期懲役では重すぎる、かといって有期懲役で20年以下にするのは軽すぎると考えたときには、無期懲役を選択したうえで酌量軽減したら30年までの懲役を言い渡すことができます。
 また、殺人罪の有期懲役の下限は5年ですが、軽減したら執行猶予も可能な3年以下の刑にすることができます。

○ 陪審制度との違い
 裁判に市民が参加する制度は、広く世界各国でみられますが、陪審制度では、ふつう市民は刑の量定にまでは関わりません。市民が刑の量定にも加わるのは、日本の裁判員制度の特色の一つです。
 

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2008年7月15日

情状・情状酌量

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

情状とは被告人の有罪および罪名が決まったうえで、刑を決めるために考慮すべき具体的な事情です。

情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)とは、被告人の有罪および罪名が決まったうえで、刑を決めるために被告人にとって有利な具体的事情を考慮することです。

○ たとえば、検察官が論告のとき、「被告人には、情状酌量の余地はなく、実刑に処すべきである」と主張します。
 また、弁護人は最終弁論において、「被告人には、以下のとおり、酌量すべき情状があり、執行猶予にすべきであると考えます」と主張します。

○ 情状とは
 情状という言葉は、被告人にとって有利な事情、不利な事情の両方を含んでいます。
 犯罪の経緯に関する事情である犯情と、それ以外の事情に分かれます。
 犯情とは、被害者との関係、動機、犯行の手段・態様、被害者の人数・状況、被害の程度、犯行の回数・地域、犯行の軽重、共犯関係(人数、役割)、犯行直後の状況(逃走経路、犯行隠ぺい)などがあります。
 それ以外の事情とは、被告人の生い立ち、性格、人間関係、職業関係、家族関係、被害者の状況、被害の回復状況、弁償、被害感情、被告人の後悔や反省の状況、被告人の身柄引受けや監督など、広い範囲にわたります。

○ 情状の検討
 被告人・弁護人が有罪であることを認めている事件では、裁判官と裁判員は被告人の情状を検討して、量刑を決めることになります。
 検察側の論告において、被告人にとって不利な情状が触れられ、弁護人の最終弁論においては、被告人に有利な情状が主張されます。
 評議では、これらの事実の有無を認定し、量刑について考慮することになります。

○ 情状酌量による刑の減軽
 情状酌量というときの「情状」は、被告人にとって有利な事情のみを意味しています。酌量すべき情状があるときには、任意的減軽事由にあたるので、刑を軽減することができます。減軽するかどうかは、裁判員と裁判官が評議で決めます。

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2008年7月29日

勾留・未決勾留日数の算入

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○ 勾留とは、判決が決まるまでのあいだ、被疑者・被告人を拘束しておくこと。裁判官が決定する。未決勾留ともいう。
○ 未決勾留日数の算入とは、量刑を決めるときに、判決が決まるまで拘束されていた日数の全部かその一部を、すでに刑を受けたものとみなすこと。

○ たとえば、弁護人は最終弁論のとき、次のように言います。
  「被告人は、すでに6ヶ月以上の長期間にわたり勾留され、その自由を制限されてきました。これは、すでに刑罰を受けたと同じです。
  これ以上、被告人に厳罰を科す必要はまったくありません」
  また、裁判官は判決言い渡しのとき、次のように言います。
 「主文。
  被告人を懲役7年に処する。
  未決勾留日数中150日を右刑に参入する」

○ 勾留は刑罰ではない
  勾留は刑罰ではなく、被告人が勾留されているからといって、被告人が犯人であるということにもならない。
  裁判所は、被告人が証拠を隠滅したり、逃亡したりすると疑われる理由があるときには、被告人の身体を拘束することができる。これを勾留という。
  勾留は、裁判が適切に進められるようにするために行われるもの。もし、被告人が証拠を隠したり、逃亡してしまったりしたときには、裁判が適切に行われなくなってしまう。そこで、被告人がそのようなことをすると疑われる理由があるときには、被告人を勾留することになる。
  被告人が勾留される場所は、拘置所が原則となっているが、起訴されたあとも警察署の留置場に勾留されることがある。

○ 勾留期間は刑罰にカウントできる
  勾留は刑罰ではないといっても、自由を制限されていることには違いないので、懲役刑や禁固刑などの刑罰と同様の苦痛を被告人に与える。
  そこで、被告人の刑の重さを決めるときには、判決までに勾留されていた日数の全部または一部については、すでに刑を受けたものとみなすことができる。
  これが、未決勾留日数の算入である。

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2008年7月30日

累犯

『裁判員のための法廷用語ハンドブック』(三省堂)より紹介します。(な)

○ 累犯とは、懲役刑の刑期を終えて5年以内に、再び懲役刑が科せられる犯罪を行うこと。
 そのときには刑期の上限が2倍になる。

○ たとえば検察官は冒頭陳述のとき、「被告人には累犯にあたる前科があります」と言います。

○ 累犯になると必ず重く処罰される
  同じ犯罪を行った場合でも、それがまったくはじめての犯罪である場合と、これまでにも犯罪を行っている場合とでは、その刑の重さに違いが出てきて当然だ。
  前に犯罪を行ったことがある被告人が、新たな事件の裁判で有罪とされた場合には、前科があるということで、刑の量刑にあたって、刑を重くする方向で考慮することができる。
  刑法では、ある条件を満たす前科がある場合をとくに累犯とよび、かならず重く処罰することにしている。その条件とは、「前に犯罪を行って懲役刑に処せられた人が、その刑期を終えてから5年以内にまた罪を犯し、それについて有期懲役刑に処する」場合である。

○ 累犯加重
  累犯にあたる前科があるときには、その人に言い渡すべき刑期の上限を、法律で定めている刑の上限の2倍とすることになっている。これを累犯加重という。
  たとえば、「10年以下の懲役」と定められている罪の場合は、「20年以下の懲役」になる。
  累犯にあたる前科があるかどうかは、裁判官が説明する。

○ “再犯”と同じではない
  一般には、過去のどの時点で犯されたかどうかに関係なく、2度目、3度目の犯罪を“再犯”とよんでいる。これは、重く処罰する“累犯”より広い意味になる。

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