福岡県弁護士会 裁判員制度blog
2007年10月29日
裁判員裁判の評議のすすめ方
評議の司会は誰がするのか、裁判官の発言はどうあるべきか、『季刊・刑事弁護』52号に、各地の模擬裁判員裁判の経験をふまえた座談会の記事がありました。とても参考になりましたので、紹介します。(な)
○ 裁判長は司会に徹して、裁判員の発言を求めるような評議をすすめた。裁判長は一生懸命に意見を聞こうとするが、なかなか裁判員の意見が出てこなくて、裁判官と裁判員だけの一方通行の単線化した議論になっていた。どうしたら「議論の複線化」ができるか。
○ 東京では、司会は右陪席にやらせて、裁判長は何かあったときに議論を修正するときにしか発言しないというように進んでいた。
○ 司会を担当している右陪席は、自分の意見はほとんど言わないで、ほかの人に言わせていた。
○ 大阪では、裁判長が最初に「この点について皆さんどう思われますか」とオープンな質問で口火を切った。
○ 裁判員がいろいろ話をはじめると、「この点はどう思われますか」と、右陪席が疑問をぽんと挟む。右陪席は、裁判員の意見が一つの意見に収斂されてくると、また別の視点をぽんと入れる。そういう意味で多角的な検討を可能にしているような状況だった。
○ 右陪席はホワイトボードに皆さんの意見を書いたり、ときに自分も発言してみたりしていた。
○ 発言を振るのは常に裁判長というわけではなくて、裁判官それぞれが裁判員に振っていた。裁判官同士も、誰が司会進行役と限定せず、いろんな立場に立っていた。
○ 視点をいくつも入れる。それも裁判官の考え方として出すわけではない。誘導の形で出すのでなく、「この点についてはどう思われますか」というように、議論に新たな視点を投げ込むという感じで、非常に上手にすすめていた。
○ 京都では、裁判官3人の発言の割合は裁判長が8、右陪席が1.5、左陪席が0.5くらい。裁判長が司会進行もやり、裁判員の発言を要約するが、要約の仕方やそれを受けて裁判員へ振る質問の仕方自体に裁判長の意見が入っていた。誘導したい方向性も見えている。だから、発言を振られた裁判員は、こう答えないといけないと思ってしまう。
○ 裁判官の右と左で意見が分かれるときは、積極的にそれを言ったほうがいい。ただし、言うタイミングもある。あまり早く言うと、裁判官は知識もあると思われているし、情報もある。必然的に、裁判員が裁判官の意見に従ってしまうという結果が生まれる。そこが難しい。