福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2025年1月号 月報
憲法講座「檻の中のライオン」
月報記事
会員 塩村 貴秀(73期)
1 はじめに
令和6年11月24日に、筑後部会弁護士会館にて、憲法講座が開催されました。本講座は、筑後部会憲法委員会が毎年主催するもので、一般市民の方々に憲法問題についてさらに関心を持っていただくことを主な目的としたイベントです。今回は、広島弁護士会所属の楾大樹(はんどう たいき)先生を講師としてお招きし、講演を行っていただきました。日曜日にもかかわらず、約30人もの多くの方々にご来場いただき、とても充実した憲法講座となりました。その様子をお伝えします。
2 楾先生のご紹介
楾先生は、ひろしま市民法律事務所の所長を務めておいでですが、その傍らで、憲法に関する講演活動や執筆活動を精力的に行っておられます(現在は業務のほとんどが講演活動とのことです)。特に講演活動は全国から引っ張りだこで、全国47都道府県で1000回以上の講演実績をお持ちです。本講演の日も、53日間で62講演という過密日程の中でご登壇いただきました。代表的な著書に「檻の中のライオン」があり、本講演も、同書の内容を基にお話していただきました。
3 開会
筑後部会会長の岡田先生の開会のあいさつが終わり、講演がスタートしました。楾先生の近況についてのユーモアたっぷりの話から始まり、会場もとてもリラックスした雰囲気となりました。
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岡田部会長の開会のあいさつ
4 憲法を守るべきなのは国民みんな?そうじゃない?
講演の初めに、楾先生は、「憲法を守るべきなのは国民みんなでしょうか。そうじゃないでしょうか。」と会場に問いかけます。会場では、国民みんなに手を挙げる方、そうじゃない方に手を挙げる方と、意見が分かれました。この会場の様子を受け、楾先生は、憲法99条には公務員に対して憲法擁護尊重義務が課されていることを指摘し、公務員(政治家)こそが憲法を守らなければならない主体であり(国民みんなではない)、国民はそれら公務員(政治家)がきちんと憲法を守っているかを選挙における投票行動を通して監視しなければならない存在であると解説なさいました。憲法は国家権力を規制するためのルールであり、我々国民は、その憲法を国家権力がきちんと守っているのかどうかを監視すべき存在なのです。このような国家権力と憲法との関係を、国家権力=ライオン、憲法=檻に例えて、憲法の全体像を網羅的に解説していただくというのが、本講座の内容です。
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楾先生の軽快なトークからスタート
5 檻の中のライオン
国家権力をライオン、憲法を檻に例えた憲法の各条項の楾先生による解説は非常にわかりやすく、斬新なものでした。例えば、ライオン(国家権力)が入る檻(憲法)を改修(改正)するのは我々国民です(憲法第96条第1項)。また、檻(憲法)から出たライオン(国家権力)の言うことは聞かなくていいことになっています(憲法第98条第1項)。さらに、ライオン(国家権力)に言いたいことを言えないと良いライオン(国家権力)を選べませんが、そうならないために檻(憲法第21条、表現の自由)があります。そのほか、ライオン(国家権力)が誰かをえこひいきしないように、檻(憲法第14条、平等権)があり、みんな平等に扱われることになります。
等々、楾先生は、そのほかの憲法の条項についても、檻とライオンに例えた非常にわかりやすい解説を行っていただきました(紙面の都合上全てをご説明することができないのがもったいないほど、分かりやすい解説でした)。来場された一般市民の皆様もしきりに頷きながら講演に聴き入っておられ、我々弁護士などの法曹以外の方にも大変分かりやすい内容だったと思います。
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いろんなぬいぐるみを使って説明する楾先生
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檻とライオンのぬいぐるみを使って説明する楾先生
6 懇親会
楾先生の軽快な語り口と分かりやすい内容により、講演はあっという間に終わってしまいました。最後は筑後部会憲法委員会委員長の高峰先生より閉会のあいさつがあり、本講座は無事終了いたしました。
その後は、楾先生、筑後部会憲法委員会の有志、来場者として参加していた九大ロースクール生6人とで懇親会を行いました。憲法のお話や楾先生のプライベートのお話など、興味深いお話をたくさんお聞きすることができ、とても良い懇親会となりました(楾先生、二次会までありがとうございました)。
7 おわりに
憲法に関する講演と聞くと、どこか難しかったり、固かったりというイメージが付きまといがちです。しかし、本講座における楾先生のお話は、楾先生のお人柄もありますが、とてもイメージしやすく、身近な事についての話としてスッと自分の中に入ってきました(おそらく会場の皆がそうだったと思います)。とても新鮮な体験でした。楾先生は、今後も精力的に講演活動を行われるとのことですので、まだ講演を聴かれたことのない方は、是非1度聴講されることをおすすめいたします(福岡でも講演予定があるとのことです)。
本年も大変充実した憲法講座になったと思います。筑後部会憲法委員会では、来年以降も一般市民の方々に向けた憲法講座を企画してまいります。来年の憲法講座も、本年と同じくらい充実した講座となるよう、しっかり取り組んでいきたいと思います。最後に、本講座にご協力いただいた楾先生に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。