福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2024年9月号 月報
「子どもの権利条約批准30周年記念イベント」開催!
月報記事
子どもの権利委員会 委員 長本 祐佳(67期)
第1 はじめに
今年は日本が「子どもの人権条約」を批准して30周年!という節目の年ということで、令和6年7月27日(土)、福岡県弁護士会館にて子どもの権利条約批准30周年記念イベントを開催いたしました。
第2 今回のテーマ
今回のテーマは「インクルーシブ教育」。
皆様、インクルーシブ教育をご存知ですか?インクルーシブは和訳すると「すべてを包み込む」という意味になります。インクルーシブ教育は、多様な特性や個性を持ったすべての子どもたちが、同じ学校に通い、同じ環境で一緒に学ぶ、という新しい教育の考え方です。このような教育を通して、子どもたち一人ひとりが、自分とは違った個性や価値観を受け入れる心を育み、それぞれの長所を最大限に生かして、より自由に社会で活躍できる共生社会の実現に繋がると考えられています。
第3 当日の様子
(1) 映画「みんなの学校」上映
今回のイベントの目玉は映画「みんなの学校」の上映会。
映画「みんなの学校」は、「すべての子どもの学習権を保障する」という理念のもと、インクルーシブ教育を実践している大阪市住吉区にある大空小学校の日常を描いたドキュメンタリー映画です。"THE・エンターテインメント"という感じの映画ではないので、一体どれくらいの方がいらしてくださるのだろうかと内心ドキドキしていましたが、大人64名、子ども16名、合計80名もの方々がお越しくださいました。その中にはなんと鹿児島からお越しくださった方もいらっしゃったとか!(ありがとうございます!!)この映画に対する、そしてインクルーシブ教育対する社会的な関心の高まりを感じました。
会場
この映画の舞台である大空小学校では、通常学級の対象となる子どもも、特別支援学級の対象となる子どもも、すべての子どもたちが同じ教室で学んでいます。言葉を持たない子、学校にいるのが苦手な子、感情のコントロールが苦手な子、暴力をふるってしまうこともある子、様々な特性のある子どもたちがいるということもあり、ときにトラブルが発生してしまうこともあります。この映画で描かれている大空小学校での日常は、ある場面では強く共感し、ある場面では深く考えさせられ、嬉しくなったり悲しくなったりと強く感情を揺さぶられるものばかりでした。そのため、心に残った出来事も、ある出来事に対する見方も、考えさせられるポイントも、この映画を観る人それぞれにあるように思います。個人的には、これまで学校に安心できる場所がなく不登校気味で、登校しても校内に2時間いるのが限界で学校から逃げ出そうとしてしまうこともあったお子さんが、何が苦手でどうすれば大丈夫になるのか、何ができて何ができないのかといったことを先生やクラスメイトに伝え、どうするかを一緒に考えていく中で、人間関係を築いていき、最終的に生き生きと学校生活を送ることができるようになっていく過程に強く心を打たれました。これまで逃げ出すほど学校が苦手だったのに、生き生きと学校に通えるようになった我が子を見て涙を浮かべる親御さんの姿に、思わず私も涙してしまいました。「学校で分離されて生活していたのに、社会に出てからいきなり共生なんて難しいに決まっている。
パネル
学校の中で、ともに学び、ともに遊ぶ中でこそ、関わり合い方を学んでいけるものでしょ。」というある先輩の言葉が思い出されました。この映画の上映時間は106分とそれなりに長いものでしたが、あっという間に感じました。
クイズラリー
(2) クイズラリー
映画上映後は、福岡県弁護士会館内にて子どもの権利に関するクイズラリーを行いました。福岡県弁護士会館内にあるパネルに隠されているヒントをもとにクロスワードパズルを埋めるとあるキーワードが浮かび上がってくるというもので、皆さん、ユニセフの子どもの権利条約に関する解説パネルをしっかりと読みながら解いてくださっていました。パネルがよくまとまっていて分かりやすいと写真を撮ってくださっている方もいらっしゃいました。
クイズラリーの景品では、やはり手作り缶バッチが子どもたちに大人気で、皆さん楽しそうに作っていました(一時、長蛇の列ができるという盛況ぶりでした!)。個人的には、福岡県弁護士会の弁護士あるあるファイルをゲットできて嬉しかったです。
第4 最後に
今回のイベントでは、子どもたちひとりひとりが自分らしく生きるとは何なのかということや、「インクルーシブ教育」とは一体どのようなものなのかについて、改めて考えることができるよい機会となりました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
缶バッチ