福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2024年7月号 月報
あさかぜ基金だより
月報記事
弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 石井 智裕(72期)
人吉に見学にいきました
あさかぜ基金法律事務所の所員弁護士の石井です。あさかぜは、弁護士過疎偏在問題の解消のため、弁護士過疎地域で働く弁護士を養成する公設事務所です。あさかぜで養成を受けた弁護士は九弁連管内のひまわり基金法律事務所や弁護士過疎地に所在する法テラス7号事務所(総合法律支援法第30条第1項7号)に赴任していますが、日弁連の支援を受けて、弁護士過疎地で独立開業した弁護士もいます。中嶽修平弁護士(66期)は、平成28年3月にあさかぜを卒業して、熊本県人吉市にて「ひとよし法律事務所」を開業しました。
私たち所員は、去る4月5日に、ひとよし法律事務所を訪問、見学し、中嶽弁護士から開業までの苦労話や開業してからの弁護士活動の実情をつぶさに聴くことができました。
人吉では豪雨災害からの復興が進んでいます
私が泊まった誠屋という宿は、令和2年7月の豪雨での被害をうけて休業していた漬物屋が元の場所に再建されて、新たに宿を併設して開業したところでした。
また、豪雨災害以降、人吉では多くのカフェがオープンしたそうです。
開業にあたって
中嶽弁護士は開業準備で苦労したこととして、複合機はリースだったが、その他の什器備品類は、新品で購入することになり、初期費用が高くなってしまった。福岡と違って、中古でオフィス用品を揃えるのが難しいので、過疎地での開業では什器備品は新品で揃えるか中古だったらどこで入手するのか情報入手に注意と工夫が必要とのことでした。
また、事務職員についても、応募が少なく、経験者がおらず、事務職員は自前で養成する覚悟が必要だということでした。
受任経路の工夫
中嶽弁護士は人吉で3人目の弁護士として開業しました。そのため、受任経路の開拓には工夫をしたそうです。たとえば、ホームページの作成や人吉球磨地区のすべての税理士と司法書士に挨拶へいったりしたそうです。やはり、隣接職種との共同は大切のようです。
令和2年7月の豪雨災害を受けて
人吉の豪雨災害を受けて災害に対するリスクマネジメントの必要性を中嶽弁護士は強調していました。
たとえば、ハザードマップを活用し、その地域における浸水や土砂崩れなどの災害リスクをあらかじめ把握しておいて、万一のときに備えること、個人情報はハードディスクとクラウドを利用したデュアルでの保管を行い、紛失を防ぐこと、固定電話、FAXや携帯電話など複数の連絡手段を確保して、外部との連絡が途絶しないよう工夫しておくことなどです。
司法過疎地赴任に向けて
私は令和2年1月にあさかぜに入所し、司法過疎・偏在地域への赴任に向けて、あさかぜで養成を受けてきました。まだに赴任先は決まっていませんが、司法過疎地に赴任するにあたっては中嶽弁護士の話も参考にして、日々の業務に精進していきたいと考えています。皆様どうぞあさかぜへの応援をよろしくお願いします。