福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2023年8月号 月報
中小企業法律支援センターだより 九州北部税理士会との事業承継研究会
月報記事
中小企業法律支援センター 鬼塚 達也(71期)
1 研究会開催までの経緯
当会は、九州北部税理士会との間で、令和3年3月16日付で事業承継支援の連携に関する協定を締結いたしました。会員相互の交流と研鑽の場を提供することを目的として、事業承継に関する研究会を継続的に開催することを計画していたところ、新型コロナウイルス感染症のため開催延期を数度経て、ようやく令和5年6月1日に第1回事業承継研究会(以下「第1回研究会」といいます。)を開催することができました。
2 第1回研究会の内容
第1回研究会は、テーマを「事業承継(M&A)はこう考える!~弁護士の視点・税理士の視点~」として、弁護士池田耕一郎先生(当センター)及び税理士山田陽介先生(九州北部税理士会 中小企業対策部部長)から、事業承継(M&A)の心構え、他方士業に求めるものや他方士業が介入すべきタイミング等をご報告いただきました。
池田先生からご報告いただいた内容の一部を以下記載いたします。
・事業承継は特殊な分野ではない。話をとことん聞くことが重要である。
・弁護士が事業承継支援に携わる意義として、①事業承継のあらゆる場面に法律が関係すること、②対策をしなかったことによるリスクを知っているからこそアドバイスができること、③他方当事者との交渉を行うことが常に生じるところ、法律上交渉に関する代理業務ができるのは弁護士のみであることが挙げられる。
・事業承継に資する法的手段として、分散している株式等の集約方法(相続人等に対する売渡請求など)、先代経営者の保証債務の処理方法(経営者保証ガイドラインの適用)、遺留分の民法特例(除外合意・固定合意)などがある。
・事業承継支援は信頼できる士業との連携が必要不可欠である。
山田先生からご報告いただいた内容の一部を以下記載いたします。
・事業承継においては税務だけでなく財務支援を行う必要があり、税理士がかかわる意義がある。
・税理士は税額を抑えることを第一に考えがちであるが、無理な節税をしたことにより、株式の分散、過大な借入金、利益の圧縮がされ、事業承継のハードルが上がってしまうこともある。
・決算書を見て、(税引後利益+減価償却)と(長期借入金÷5年)を比較して後者が大きければ、その会社の資金繰りは苦しいはずである。
・事業承継は自力で解決できなとも周りの力を借りて解決できる協力体制が必要である。
3 第1回研究会後の懇親会
第1回研究会の後に懇親会を行いました。当センターから15名、九州北部税理士会から13名が参加し、大変賑やかな会になりました。私事ですが、偶然にも、懇親会に参加された税理士の方で、私の出身中学校の先輩が複数おり、地元の話で盛り上がりました。
4 今後の予定
第1回研究会及び懇親会が盛況であり、第2回研究会を開催予定です。ご興味のある方がいらっしゃいましたら、当センターの会員までお知らせください。