福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2023年5月号 月報

「ジュニアロースクール2023春in福岡」リアル開催!

月報記事

法教育委員会 委員 土田 礼二朗(74期)

1 はじめに

令和5年3月29日、「ジュニアロースクール2023春in福岡」が開催されました。
新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和に伴い、今年のJLSは、4年ぶりに完全リアル(オフライン)で開催されました。
私自身は最近福岡県弁護士会に入会させていただいたばかりで、JLS当日のみの参加でしたので、以下、主に当日の様子についてご報告させていただきます。

2 今回のテーマ

2022年4月から、民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられたのに伴い、18歳から裁判員になることができるようになりました。これにより、高校在学中や高校を卒業したばかりで、まだほとんど社会経験がない人でも、実際に裁判に参加し、重大な判断を迫られることになるかもしれません。
そこで、法教育委員会では、成人が身近に迫った中高生に対して、刑事裁判の仕組みを学ぶと同時に、他人の意見を聞くこと、他人を説得すること、そして人を裁くということについて考えてもらいたいと思い、今回のJLSでは、刑事模擬裁判を行い、中高生には裁判官として参加してもらうこととしました。
具体的には、傷害事件の模擬裁判を委員の先生方が実演し、参加者の皆さんには、証人や被告人への補充尋問(質問)を行ってもらったり、実際に被告人が有罪か無罪かの判決を下してもらいました。

野田部会長による開会の御挨拶
3 当日の様子

⑴ 今回は、4年ぶりのリアル開催ということに加え、人気の刑事模擬裁判ということもあり、定員100名が申込み締切の約10日前に埋まるという盛況ぶりでした。
当日は、残念ながら急遽不参加となってしまった生徒さんもいましたが、総勢98名(中学生23名、高校生75名)の生徒さんにご参加いただきました。
生徒さんには7~8名ずつの班に分かれてもらい、それぞれの班に1人もしくは2人のサポート弁護士が同席しました。

会場の様子

⑵ 今回の題材は、
「とある大学の学生が襲われた。被害者は犯人の顔を見ていなかったが、事件前に被害者と口論していた同じ和太鼓クラブの部員が犯人として起訴された。」
というものでした。
被告人が所持していた太鼓のばちから被害者の服の繊維が検出されたり、犯行状況を見ていた目撃者も存在していたのですが、それらの存在から本当に有罪と認定できるのか、という点が主な争点となり、私がいた班でもこれらについての意見がよく出てきました。
補充尋問は、各班で意見をまとめた上で、代表者が挙手して質問するという形式で行われましたが、時間の関係で質問を打ち切るまで、途切れることなく手が挙がっていました。

補充質問の様子

「目撃者と被告人の位置関係はどのようなものであったか」「被告人の太鼓のばちが被害者に接触する機会は他にもあったのか」などの質問は当然のように出てきており、被告人のアリバイや被告人の動機について触れた質問もありました。
回答の際は、被告人役の吉田幸祐先生、目撃者役の平嶋先生、被害者役の高尾先生が名演技を披露してくださりました。生徒さんにも受けが非常に良く、回答の度に会場が沸いておりました。あまりにも名演技だったためか、平嶋先生の発言が全面的に信用されなかったのが印象的でした。中高生の生徒さんたちの中にも、酔っ払いの発言は信用できないとの印象があったのでしょうか。
生徒さんたちは実にたくさんの質問をしてくださり、裁判長役の吉田俊介先生が補充で質問する必要がほとんどないほどでした。

評議の様子

⑶ 判決の評議も班ごとに決めてもらい、それを集計して判決を下すという形式で行いました。
議論の際は、付箋を用いて有罪方向の事実と無罪方向の事実とを整理して判断している班が多くありました。

論告と弁論の際に、判断方法について触れたおかげで、生徒さんたちも考え方は迷っていなかったように思えます。
有罪とするか無罪とするかの結論で迷っている班は多数ありましたが、目撃者の証言が信用できず、合理的疑いを差しはさむ余地がないというには証拠が足りないことから、全ての班で無罪の結論となりました。吉田幹生先生による講評の際に、班としては無罪判決としたが、個人的には有罪の意見だったという生徒さんに手を挙げてもらったところ、意外と多くの手が挙がったので、個人的には、どういう理由から有罪と思ったのか、なぜ班の意見として押し切れなかったのかなど、詳しく聞いてみたかったなと思います。

4 おわりに

約3時間半で模擬裁判を最初から最後までやり、かつ、間に議論の時間を2回設けるという非常にタイトなスケジュールでしたが、鎌田先生をはじめとして、キャップの稲吉佑紀先生をはじめとする実行委員の先生方(陰のキャップは鎌田祥太先生とうかがっています。)の入念な準備や、吉田俊介先生をはじめとする当日のキャストの先生方の名演技のおかげで、滞りなく盛況に終えることができました。私は当日の参加だけでしたが、今回のJLSも大成功であったと思っております。 今回のJLSは4年ぶりの完全リアル開催でしたが、委員の先生からは、やはりリアル開催のほうが議論などを円滑に進めやすいし、何より盛り上がって楽しいという意見が多数ありました。

オンラインにはオンラインの良さがありますが、対面でなければ伝わらないこともあると思いますので、今回リアル開催できたことは非常に喜ばしいことであったと思います。

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