福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2023年4月号 月報
福岡人権ホットライン研修(LGBTの問題について)
月報記事
人権擁護委員会 事務局長 塩山 乱(64期)
2023年2月13日午後1時半より、弁護士会館2階大ホールで福岡人権ホットライン研修に参加いたしました。
1 はじめに
福岡人権ホットラインとは、福岡県の委託で、毎月1回(毎月第4金曜日の15時から18時まで)、弁護士会館で実施している無料電話相談で、毎回2名体制で人権に関する相談に応じています。
今年は、LGBTに関する講演として、OVER THE RAIN BOWの代表である荒牧明楽さんに講演をして頂きました。
2 講演内容
⑴ アンコンシャスバイアス
まず、荒牧さんから差別が発生する原因として、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)というものの存在を説明されました。
その際、以下のような設問が提示されました。
「父親が、後部座席に息子を乗せて運転をしていたところ、トラックと正面衝突し、父親は即死、息子は重体となった。息子は、すぐに病院に運ばれて、海外でも著名な脳外科医の手術を受けることになった。脳外科医が手術室に入り、患者の顔をみたところ、脳外科医は「この子は、私の息子です!」と叫んだ。」
皆さん、この文書を読んでどのように感じるでしょうか。違和感はないでしょうか。
もう皆さん分かったと思いますが、この脳外科は、母親なのです。
荒牧さんは、「海外でも著名な脳外科医、という記載で、皆さん無意識に男性だと思いこんでいませんか、これがアンコンシャスバイアスです。」とご説明をされ、なるほど自分でも意識していないのに、思い込みがあるのだと改めて気づかされました。このように、自分では気づかないうちに、差別していることがあるのかもしれません。
⑵ LGBTQおよび体験談について
その後、荒牧さんは、LGBTQの内容についてご説明をされ、日本および世界の現状について、説明をされました。 また、荒牧さんは、ご自身の小さい時のことから体験談をお話されました。詳細はここでは差し控えますが、小中高校時代の葛藤、カミングアウトに至る経緯まで、様々なお話をされ、その壮絶な人生に参加者は圧倒されました。ご興味のある方は、荒牧さんの著書である「トランスジェンダーの私が語るまで」(NR出版)を読まれてください。
⑶ 参加者との意見交換
その後、荒牧さんから、以下のような設問が示され、参加者が3名程度で話し合い、意見を交換するという時間が持たれました。設問は以下のようなものです。
①トランスジェンダーの人から、「自己の性自認に従ってトイレに入ったところ、中にいた女性から変質者であると通報されてとても傷ついた!これは、私が悪いの?」と相談を受けた。あなたなら、どのように回答をしますか。
②あなたが、子供から同性愛者であり、パートナーがいる、とカミングアウトを受けた際、どのように感じますか、また何と声を掛けてあげますか。
これらの設問について、絶対的な正解はありませんが、相手の気持ちを考慮して考えることが重要になると思います。皆さんは、どのように答えますか。
3 最後に
今回は、LGBTに関する講演でしたが、人権ホットラインでは、毎年様々な人権に関するテーマで講演が行われています。是非、皆様も来年度参加いただければと思います。