福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)
2022年10月号 月報
谷間世代への一律給付実現全国リレー集会 in 福岡
月報記事
司法修習費用給費制復活緊急対策本部 委員 武 寛兼(69期)
1 はじめに
令和4年8月20日、福岡県弁護士会館2階大ホールにて、「谷間世代への一律給付実現全国リレー集会in福岡」が開催されましたので、ご報告いたします。
2 新里先生からの基調報告
日弁連の司法修習費用問題対策本部・本部長代行の新里宏二先生(仙台弁護士会所属)から、基調報告をいただきました。
令和4年6月14日に行われた院内集会で、小林日弁会長から「一律給付は、日本の司法インフラを担う若き法曹に希望と勇気を与える、将来投資として極めて意義のある投資」であると述べられたことや、参加した国会議員から、不公正の是正の声や「運動がやっと5合目まできた」、「国会議員の過半数の賛同を得たとき制度が実現する」との声があったことのご報告がなされました。
その他に、「谷間世代」への一律給付を認めることの必要性や意義などにも言及されました。
院内集会の中で、国会議員から、「5合目まできた」、「過半数の賛同を得たとき制度が実現する」など、具体的な数字に言及されていることは特に印象的でした。
さいごは、司法修習費用問題についての全国リレー集会は、71期から復活した司法修習費用給付制の実現の前年頃に実施したのに続いて2度目の開催であり、このリレー集会を機に一律給付を実現させましょうと締めくくられました。
新里先生の基調報告
3 谷間世代の声
続いて、谷間世代の声として、山本隼巳会員(68期)から報告をいただきました。
法曹は法治国家の基本的インフラであり、司法修習期間中に一切給付のなかった谷間世代に摩耗が生じていること、インフラの補修は早期にする必要があることが説明されました。
また、アンケートで多数寄せられた谷間世代の声として、「修習専念義務を課しながら生活費は借金という制度は理不尽、不合理だったと言わざるを得ない」、「国や社会に育ててもらったという意識を持ちにくい」などが紹介されました。
4 谷間世代のチャレンジ報告
谷間世代の弁護士が取り組んでいる活動報告として、谷間世代の弁護士から報告がありました。
(1) 國府朋江会員(65期)からの報告
國府会員からは、「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット」での活動を中心に報告がありました。
國府会員は、障害者のヘルパーの時間(「支給量」)が自立した生活に必要なだけ保障されるように、障害者団体と協力して活動をしているそうです。このような活動が、障害者や障害者を支援する人たちの生活に必要不可欠であることは明らかで、日弁連の若手チャレンジ基金制度でブロンズジャフバ賞を受賞されたそうです。ただし、このような活動の実情としては、効率的に報酬を得やすい仕事ではないとのことでした。
修習期間中の費用の貸与を受けた谷間世代は、修習終了後6年目から、毎年7月に貸与を受けた額の10分の1を10年間返済しなければなりません(私は69期の谷間世代ですが、今年の7月に1回目の返済が始まりました。)。
國府会員からは、障害のある人の権利を守るこれらの活動については、事務所から支えてもらって活動ができているが、「返済のための10年間は、自分のためにお金をかけてはいけない期間、貸与を受けて、使ってしまった自分へ罰を科している期間だと思っている。」との報告があり、とても印象的でした。
國府会員の報告
(2) 米山功兼会員(68期)からの報告
米山会員からは、「福岡における若手弁護士による中小企業支援」について報告がありました。
米山会員は、中小企業法律支援センターの活動を通じて、中小企業への法律相談の窓口を設け、弁護士に相談することによって法的リスクの発見や回避につなげ、コンプライアンスや法的問題への対応意識の向上等に尽力されているそうです。
中小企業の多くは零細・個人企業であり、費用面から弁護士へのアクセスがなく、結果的に事業が破綻してしまったり、窮状に陥ってしまったりする事業者を救済することを目的の一つとしているそうです。
これらの活動も多くの谷間世代の弁護士により支えられているとのことでした。
米山会員の報告
5 国会議員からのメッセージ
このリレー集会には、共催であった九弁連の先生方のご協力もあり、福岡県内外の多くの国会議員から谷間世代を応援する旨の、もしくはこの問題の解決に取り組むとするメッセージ(合計34通)をいただくこともできました。
私が特に印象的だったのは、会場で挨拶を頂いた議員の「谷間世代への一律給付実現は、「救済」ではなく、法曹養成制度の中の過去の制度の誤りを謝罪して是正する、原状回復をするもの」、「戦争準備のための戦闘機購入に比したら微々たるもの」、とのお話でした。
弁護士会館での国会議員本人出席(4名)、ZOOMによる議員本人出席(4名)、議員秘書による代理出席(4名)など多数あり、多くの国会議員に興味を持っていただいたことは、谷間世代への一律給付実現に向けて大きな励みになると思います。
6 さいごに
谷間世代への一律給付実現全国リレー集会の第1走者として、福岡集会が開催されましたが、上記のとおり、その内容はとても充実したものであったと思います。
繰り返しになりますが、共催の九弁連の先生方の呼びかけのおかげもあり、九州各地の国会議員から多くのメッセージをいただくこともできました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。また、コロナ禍のなか、九弁各会からも沢山の会員に駆けつけて頂き、また、ZOOMで視聴して頂きました。会場出席者70名強、ZOOM視聴者70名強という沢山のご参加を頂きましたことにも、この場を借りて感謝申し上げます。
今後も全国リレー集会のバトンは繋がれていきます。ZOOMでの参加も可能ですので、できるだけ多くの先生方(特に谷間世代の先生方)にご参加いただくようお願い申し上げます。
鬼木議員からのご挨拶